就業規則の周知義務に関する線引き

労働問題
就業規則

会社の就業規則について
会社には就業規則の周知の義務があるとされていますが、周知の義務について具体的な線引きはありますか?

書面での明示、配布、依頼があった時だけの明示など様々、考えられますが一般的にはどの程度で義務を果たしていると認められるのでしょうか?

またその義務を怠った場合の罰則などありますか?
お手数ですがご教授、よろしくお願いします。

相談者(ID:)さん

2015年12月12日

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梅澤 康二
弁護士(プラム綜合法律事務所)

会社による就業規則の「周知」は、労基法106条に基づく周知と、就業規則の効力発生要件としての周...

会社による就業規則の「周知」は、労基法106条に基づく周知と、就業規則の効力発生要件としての周知の2つがあり、両者は必ずしも一致するものではありません。

前者の「周知」は、行政法規に基づく会社の義務として行わなければならない周知行為であり、「周知」の方法は、①常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、②書面を労働者に交付すること、③磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置することのいずれかとされています(労基法106条・労基規則52条の2)。
上記義務を履行しない場合は、行政法規に違反することになりますので、会社は労基署から是正勧告や指導等の行政処分を受けますし、違反を繰り返すなどの悪質な場合は30万円以下の罰金刑が科されることもあります(労基法120条第1号)。

後者は、就業規則の内容を労働者に有効に適用するため必要な措置としての周知行為であり、その方法は法律に明記されていません。しかし、判例・学説により、当該周知は「労働者がその内容を知ろうと思えば、いつでも知り得る状態に置くこと」が「周知」であると考えられています。したがって、この場合の「周知」は上記行政法規に基づく「周知」よりも広い概念となります(例えば、上記①~③の方法を採用していなくても、就業規則を人事部門のキャビネットに保管し、閲覧希望者は人事部門に申請するようにと通達している場合には、前者の「周知」としては不十分ですが、後者の「周知」としては十分です。)。
上記「周知」行為を行わない場合、行政法規違反ではないので特に労基署との関係でペナルティはありません(ただ、結局、後者の「周知」をしないことは、前者の「周知」もしていないことになるので、前者のペナルティが科されることになります。)。しかし、この「周知」さえもしていないと、労働者に対して就業規則で定めるルールを適用できないという重大な不利益を負うことになります。この不利益は、ある意味、上記行政法規違反よりも深刻といえます。

したがって、結論としては、会社は、前者の「周知」行為(労基法106条・労基規則52条の2で定める方法による周知)を行うことが、安全かつ確実ということになります。
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梅澤 康二
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