有給休暇の繰越とは|有給休暇の年間付与日数と消化できない理由まとめ

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
有給休暇の繰越とは|有給休暇の年間付与日数と消化できない理由まとめ

取得した有給休暇、使用しなかった分の日数は次年度に繰り越せることをご存知ですか?

有給休暇は所定労働日が週5日以上、所定労働時間が週30時間以上の場合、勤務してから6か月経過時点で10日付与されます。次年度はその1年後、勤務してから1年6か月後にまた新たな有給が付いてきます。

そんな有給ですが、使わなかったら自然消滅してしまうまで規定期間が設けられています。

労働者に与えられる正当な権利、正しく運用していくにもその仕組みはきちんと理解しておきたいところ。この記事ではそんな有給休暇の繰越について紹介していきます。

有給休暇の繰越で特に知っておきたい点

有給休暇は、法律的には有休権という労働者の権利です。当該権利は賃金と同様行使可能な日から2年間で時効消滅します。そのため、付与日から2年内であれば法律上付与される有給休暇は繰越して使用することができます。 (参照元:労働基準法115条)

なお、法律の範囲を超えて付与される有給休暇は、法律ではなく会社のルールにより規律されますので、繰越上限は会社のルールにより決まります。

新規に取得した有給と繰越した有給ではどちらを先に消化するのか

有給休暇は上記の通り労働者の権利です。そのため、どの有休権を行使するかは労働者の判断により決まります。通常は時効消滅が迫っているものから使用するのが合理的意思といえますので、付与日の古いものから使用されていくと考えて構わないでしょう。

繰越は無効にすることはできない

有給休暇の繰越はできないと企業に言われたというケースがあるようですが、上記のとおり有休権の消滅時効期間は2年です。そのため、法定の有給休暇をこれより短い期間で消滅させること(繰越を認めないこと)は違法であり、いくら就業規則で規定しても意味がありません。

しかし、法定の範囲を超えるものは上記の通り会社のルールに従いますので、就業規則に繰越制限があればそれに従うことになります。

ケース別|有給休暇が付与される日数

ケース別|有給休暇が付与される日数

有給休暇の取得は労働者に与えられた権利です。初年度は6か月勤務し、出勤した日数が8割以上の労働者に付与されます。一定の支給要件を充足していれば、アルバイトやパートといった非正規雇用の方も対象です。

ただ取得条件と付与日数については正規雇用と非正規雇用では異なりますので、その点についても紹介していきましょう。

社員の場合

正社員として雇用されている一般社員の方は、上述に記したように出勤総数がおよそ8割以上だったとき、有給休暇が付与されます。ここでいうところの正社員とは、週所定労働日数が5日以上、週所定労働時間が30時間以上の方を指します。

そんな方々の有給付与日数については、以下になります。

勤務日数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

アルバイト・パートの場合

続いて非正規雇用である、アルバイトやパートの方についてです。1週間の労働時間が30時間以上であり、労働日数が5日以上の方については一般社員と同じ日数が付与されます。

それ以外の、1週間の労働時間が30時間未満になる短期間労働者も一定の条件を満たせば有給休暇が付きます。労働条件は異なるので、所定の条件を満たしていないと有給は付与されません。

短時間労働者であるアルバイト・パートの方が有給休暇を取得する条件と付与日数については、以下の表のようになります。

週所定 1年間の所定

勤務年数

労働日数

6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月
4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

公務員の場合

民間企業に勤める正社員、アルバイトやパートとはまた違った有給休暇を取得するのが、国家公務員です。

公務員の場合、有給休暇の内容・範囲は人事院規則等により定められていますので、通常の労働者とは異なる取扱いになります。

有給休暇の繰越時効まですべて使いきれない理由

有給休暇の使い方は人それぞれです。所用があるとき、体調不良で仕事を休むときなど、様々な使い方ができるのでメリットといえるでしょう。また半日だけ仕事をして残りは有給で消化する、といった方法もあります。

民間企業であれば取得してから2年間は繰り越すことができます。その分だけ翌年に持ち越せるわけですが、取得した分だけ有給を使用しているかといえば、実はそうでもないのです。

労働者にとって有給休暇は大事な権利ですが、取得しても消化しきれない理由もあります。世界単位で見れば日本の有給取得率は非常に低いといわれていますが、その理由も実に真面目な日本人らしさがにじみ出ています。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構

(引用元:独立行政法人 労働政策研究・研修機構) 

(※外部リンクへ飛びます)

基本は毎日仕事へ行くのが当たり前と考えている人が多いらしく、病気や急な用事の時に利用できるようにと考えている人が64.6%と大きな割合を見せています。

そのほかにも、休むと職場の他の人に迷惑になるからが60.7%、仕事量が多すぎて休んでいる余裕がないからが52.7%と、休むに休めない事情に悩まされているようです。

有給休暇の取得率

色々な理由で有給休暇を繰越しても消化できない人がいるのは、有給休暇の取得率からみても明らかです。有給休暇の取得日数から計算した取得率は、世界で見ても最低だといわれるほどの数値になっています。

  1人平均付与日数 1人平均取得日数 取得率
平成28年度統計 18.1日 8.8日 48.7%
18.4日 8.4日 45.8%
17.2日 9.3日 54.1%
1,000人以上 19.1日 10.4日 54.7%
300人以上999人以下 18日 8.5日 47.1%
100人以上299人以下 17.7日 7.9日 44.8%
30人以上99人以下 17日 7.4日 43.7%

(参照元:厚生労働省 平均年次有給休暇の取得状況)

平成28年度調べのデータを見てもらうとわかるように、取得日数はおよそ17日前後となっているのに、実際に取得した日数は10日以下と取得率が50%を切る結果を出しています。大手企業の一部は50%を超えていますが、それでもやっと取得日数は通常の半分程度と取得率の低さがよくわかります。

有給休暇を利用しない理由はそれぞれですが、使わずに時効を迎えて切り捨てている人が多いのです。

まとめ

有給休暇を取得してから、時効となる2年間は翌年度に取得していない日数を持ち越すことができます。ただ労働者の権利とはいっても、実際に有給休暇を利用するにしても、諸々の理由が絡んでなかなか取得できない人が多いのも日本の労働社会の功罪といっていいでしょう。

労働者にとって休むことも大事なことです。休みづらいなどの理由もありますが、たまには羽を伸ばして静養する日を設けてみてはいかがですか。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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