後遺障害逸失利益の計算方法|賠償金増額のための3つのポイント

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
後遺障害逸失利益の計算方法|賠償金増額のための3つのポイント

左肩が上がらない・視力が落ちた・1人で歩けなくなったなど、交通事故の後遺症が原因で労働能力が低下して収入が減少する状況になった場合は、その減少した分の収入を逸失利益として請求することが可能です。

交通事故の被害者には、後遺症を負った日から定年(67歳)までの期間分の逸失利益を請求できる権利が認められています。(※例外もあり)

この記事では後遺症を負った際の逸失利益の計算方法や請求のポイントについてご紹介しますので、交通事故被害で後遺症の可能性がある場合はぜひ参考にしてみて下さい。

後遺障害逸失利益の計算方法

<後遺障害逸失利益の計算式>
『後遺障害逸失利益』=『1年あたりの基礎収入』 ×『後遺障害等級の労働能力喪失率』×『 ライプニッツ係数』

上記は後遺障害逸失利益の金額を決めるための計算式です。まず、それぞれの計算科目にどんな数値が当てはまるのかを確認して、大まかな計算方法を把握しておきましょう。

1年あたりの基礎収入額

『1年あたりの基礎収入額』は事故被害者の年収が適用されます。会社員であれば事故から昨年の年収、個人事業主や企業代表者などは昨年に提出した確定申告の収入を基にして計算されるケースが一般的でしょう。

「事故時に収入がない人はどうなるの?」と不安に思われるかもですがご安心ください。専業主婦や学生など、非労働者が後遺症を負った場合には厚生労働省がその年に発表した賃金センサスの男女別の平均年収が適用されるケースが多いです。(※専業主夫は女性の平均年収を適用)

【H28年度の男女全年齢平均年収】

男性

女性

約549万円

約376万円

また、労働をしていて収入があっても賃金センサスの平均年収よりも年収が少ない場合でも、将来的に収入が増加する可能性を証明できれば、現在の収入ではなく賃金センサスの年収を適用することが認められる可能性があります。

後遺障害該当等級の労働能力喪失率

労働能力喪失率は認定された後遺障害等級に応じて決められています。等級が高いほどより多くの労働能力を失っているとされて、下記表を確認すると後遺障害第1級~3級の労働能力喪失率は100%となっています。

【後遺障害等級における労働能力喪失率】

後遺障害等級 1級 2級 3級 4級 5級 6級 7級
労働能力喪失率 100% 100% 100% 92% 79% 67% 56%
後遺障害等級 8級 9級 10級 11級 12級 13級 14級
労働能力喪失率 45% 35% 27% 20% 14% 9% 5%

後遺障害等級の認定等級に応じた慰謝料の相場を知りたい方は以下の記事から確認してください。

ライプニッツ係数

ライプニッツ係数は被害者の年齢を基準に決められる労働能力喪失年数に対応した値であり、後遺障害逸失利益などの損害賠償金を一括で受け取る際の中間利息を控除する指数になります。

労働能力喪失年数ごとのライプニッツ係数は下記の表であり、後遺障害逸失利益の計算式でも記載したように被害者の基礎収入に労働能力喪失率に加えて、ライプニッツ係数をかけた値が後遺障害逸失利益における損害賠償金額となります。

なお、労働能力喪失期間の通常条件としては症状固定が確定してから就労の終期とされる67歳までの年数になりますが、被害者が未就労者である場合や68歳以上の高齢者である場合は例外扱いです。

労働能力喪失年数 ライプニッツ係数 労働能力喪失年数 ライプニッツ係数
1 0.9524 18 11.6896
2 1.8594 19 12.0853
3 2.7232 20 12.4622
4 3.546 21 12.8212
5 4.3295 22 13.163
6 5.0757 23 13.4886
7 5.7864 24 13.7986
8 6.4632 25 14.0939
9 7.1078 26 14.3752
10 7.7217 27 14.643
11 8.3064 28 14.8981
12 8.8633 29 15.1411
13 9.3936 30 15.3725
14 9.8986 31 15.5928
15 10.3797 32 15.8027
16 10.8378 33 16.0025
17 11.2741 34 16.1929
能力喪失期間(年数) ライプニッツ係数 能力喪失期間(年数) ライプニッツ係数
35 16.3742 52 18.4181
36 16.5469 53 18.4934
37 16.7113 54 18.5651
38 16.8679 55 18.6335
39 17.017 56 18.6985
40 17.1591 57 18.7605
41 17.2944 58 18.8195
42 17.4232 59 18.8758
43 17.5459 60 18.9293
44 17.6628 61 18.9803
45 17.7741 62 19.0288
46 17.8801 63 19.0751
47 17.981 64 19.1191
48 18.0772 65 19.1611
49 18.1687 66 19.201
50 18.2559 67 19.2391
51 18.339  

被害者が18歳以上の未就労者である場合

18歳以上の被害者が働いていない場合の労働能力喪失期間については、18歳(または大学卒業時)から67歳までになります。

被害者が18歳未満の学生・幼児である場合

また、被害者が18歳未満の学生や幼児である場合は、現在の年齢から67歳までのライプニッツ係数より、現在の年齢から18歳までのライプニッツ係数を差し引いて算出されます。

例をあげると、被害者が10歳の場合は以下の通りです。

  • 10歳~67歳(就労の終期)までのライプニッツ係数:18.7605(57年間)
  • 10歳~18歳(就労の始期)までのライプニッツ係数:6.4632(8年間)

よって、適用するライプニッツ係数は18.7605-6.4632=12.2973と算出されます。

被害者が高齢者である場合

被害者が就労の終期とされる67歳に近い場合や67歳を超えている場合は、平均余命の2分の1を労働能力喪失期間とします。ただし、現在の年齢から67歳までの期間が平均余命の2分の1より長ければ、通常の基準(67歳までの年数)が労働能力喪失期間に適用されます。

むちうちの後遺症を負った場合

交通事故の代表的な後遺症であるむちうちですが、むちうちで一生ずっと後遺症が残るケースは稀なため、基本的には定年までの年数分のライプニッツ係数は適用されません。むちうちの後遺症は等級によって以下の基準が設けられています。

障害等級

労働能力喪失年数の目安

ライプニッツ係数

軽いむち打ち症(第14級

5年

4.3295

重いむち打ち症(第12級

10年

8.8633

関連記事:自動車事故で生じるむちうちの特長|治療を進めていく際の注意点とは

また、むちうち以外でも定年までのライプニッツ係数が適用されないケースもあるのでご注意ください。自分の症状の詳細は後遺障害の診断をしてくれた担当医に確認してみると良いでしょう。

後遺障害逸失利益の具体的な計算例

後遺障害逸失利益の計算方法|賠償金増額のための3つのポイント

例1|サラリーマンの場合

被害者の年齢・性別・職業

35歳の男性・会社員

事故前の年収(基礎収入)

550万円

後遺障害の症状

脊柱(背骨)に奇形を残すもの

認定等級

第11級(労働能力喪失率:20%)

 1年あたりの基礎収入 × 後遺障害該当等級の労働能力喪失率 × ライプニッツ係数
550万円×0.2(20%)×15.8027(32年の労働能力喪失年数)≒1,738万円

例2|専業主婦の場合

被害者の年齢・性別・職業

25歳の女性・専業主婦

事故前の年収(基礎収入)

約376万円
(賃金センサス 女子全年齢の平均給与額)

後遺障害の症状

軽いむち打ち症

認定等級

第14級(労働能力喪失率:5%)

1年あたりの基礎収入 × 後遺障害該当等級の労働能力喪失率 × ライプニッツ係数
376万円×0.05(5%)× 4.3295(5年の労働能力喪失年数)≒約81万円

例3|未成年の場合

被害者の年齢・性別・職業

18歳の男性・高校生

事故前の年収(基礎収入)

約569万円
(賃金センサス 男性全年齢の平均給与額)

後遺障害の症状

片眼の視力が0.02以下に低下

認定等級

第8級(労働能力喪失率:45%)

1年あたりの基礎収入 × 後遺障害該当等級の労働能力喪失率 × ライプニッツ係数
569万円×0.45(45%)× 18.1687(49年の労働能力喪失年数)≒約4,651万円

いまいち、計算例を見ても計算方法が分からないという場合は以下の記事で逸失利益の計算方法について分かりやすく解説しています。

一度計算方法が分からない場合はご覧ください。

後遺障害逸失利益を増額させる3つのポイント

後遺障害逸失利益を請求するためには後遺障害等級の認定を受ける必要がありますが、後遺障害を判断する症状固定の決め方や申請手続きの内容によっては、適切な等級に認定されない可能性もあります。

後遺障害逸失利益については上記で説明した通り、後遺障害等級(労働能力喪失率)が低いと損害賠償金額が減少しますので、上位の後遺障害等級に認定されるためのポイントを確認しておきましょう。

適切な症状固定を医師と相談して決める

後遺障害等級認定の申請条件として、治療を続けても回復しない状態になることを医学的に判断すべきでしょう。症状固定(後遺症と判断するタイミング)は基本的に担当の医師と被害者で相談して決めるべきことです。

 気を付けなければならないのが、加害者側の任意保険会社より症状固定の催促をされる時です。任意保険会社は治療費の打ち切りを目的としている可能性があるため、軽々と応じるべきではないでしょう。

また、早期的に症状固定を決めてしまうと症状の重篤性が認められないこともあり、等級が下がってしまう恐れもあるためご注意ください。

詳細記事:症状固定で損しない方法|示談を有利に進めるために知るべき全知識

後遺障害等級認定の申請では被害者請求を利用する

症状固定後の等級認定申請には、被害者本人が申請手続きを進める被害者請求と加害者の保険会社に手続きを一任する事前認定の2通りの申請方法がありますが、少しでも希望の等級が認定される確率を高めたい場合は被害者請求で手続きを進めましょう。

被害者請求は被害者自身が申請上必要な書類を集められるので、後遺障害等級の申請を有利に進めることが可能です。

詳細記事:被害者請求とは|交通事故の被害者が適正な慰謝料獲得のために知るべきこと

事前認定は保険会社に手続きを一任できるので手間が不要なのがメリットですが、認定されやすいよう特別な配慮はしてもらえないので、後遺症の症状が他者から見ても明確な状況でないなら利用は避けた方が無難かもしれません。

弁護士に依頼する

症状固定を決めるタイミングや被害者請求での申請方法について疑問があったり、任意保険会社との交渉が上手くいかなかったりした場合は、交通事故案件に詳しい弁護士に相談してみるのが良いでしょう。

過去事例などを把握している弁護士であれば、どのような医学的資料を提出すれば上位等級に認定できるかを知っているので、高い等級の後遺障害認定が認められる確率が高くなります。

損害賠償が高額になりやすい後遺障害が関わる事故では弁護士費用を差し引いても依頼した方が得になるケースが多いので、法律相談をした際に示談金と費用の見積もりを出してもらい、条件が良ければ依頼を検討してみてはいかがでしょうか。

交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼することにはメリットが沢山あります。

弁護士費用についても抑えるポイントがあり、それぞれ以下の記事で解説していますのでご覧ください。

弁護士に依頼する

症状固定を決めるタイミングや被害者請求での申請方法について疑問があったり、任意保険会社との交渉が上手く行かなかったりした場合は、交通事故案件に詳しい弁護士に相談してみるのが良いでしょう。

過去事例などを把握している弁護士であれば、どのような医学的資料を提出すれば上位等級に認定できるかを知っているので、弁護士への依頼も検討してみましょう。

後遺障害逸失利益の請求額に納得がいかない場合は?

後遺障害逸失利益の請求額に納得がいかない場合は?

後遺障害等級に認定されても等級が低く、後遺障害逸失利益の請求額が少なくなることも考えられますが、後遺障害による収入減が無い場合については請求自体が不可能になることが多いです。

復帰後に減収がない場合は請求が難しい

むち打ち症など症状が軽いケースであると、仕事に復帰してからも収入の変化がないこともあり得ます。なので、将来的な昇給が難しいことや減収を回避するために相当な努力をしたことなどを証明しない限りは後遺障害逸失利益の請求は難しいでしょう。

損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を填補することを目的とするものであるから、労働能力の喪失・減退にもかかわらず損害が発生しなかつた場合には、それを理由とする賠償請求ができないことはいうまでもない。

引用元:裁判所|最判昭和42年11月10日民集21巻9号2352

関連記事:無職でも逸失利益が認めらえる基準|計算方法と被害者の状況例まとめ

不当に低い等級で認定された場合は異議申し立てを検討する

症状の重さに見合わない低い等級に認定されても、被害者に再請求は認められています。異議申し立ては何回でも可能ですが簡単に等級変更が認められる訳ではなく、被害者の要望においては全体の9割が認められない結果になっています。

詳細記事:後遺障害の異議申し立て|後遺障害等級の認定結果を争う3つの方法

それでも上位の等級認定を受けられる可能性は残されているので、審査結果に納得がいかない場合は医学的な資料を集めて後遺障害の重篤性や交通事故との因果関係について立証するようにしましょう。

まとめ

労働能力の喪失による収入面の賠償について解説しましたが、後遺障害逸失利益は被害者の一生に関わる損害賠償なので適切な額を請求するべきです。

後遺障害等級認定の申請や任意保険会社との交渉において困ったことがあれば、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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