逸失利益の計算方法|正当な損害賠償を請求するための基礎知識

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
逸失利益の計算方法|正当な損害賠償を請求するための基礎知識

逸失利益(いっしつりえき)とは、視力が低下したり肩が上がらなくなったりなど、交通事故の後遺症によって低下・喪失した労働力分の収入を保障するための損害賠償です。後遺症だけでなく被害者が亡くなった場合も逸失利益の請求が認められます。

逸失利益は後遺障害や死亡の事案でよく登場する単語ですが、恐らく大半の人は事故に遭って初めて知ることになるでしょう。

そこで、当記事では逸失利益の計算方法についてご紹介していきますので、損害賠償請求を検討されている場合はぜひ参考にしてみて下さい。

交通事故の逸失利益は2種類ある

逸失利益には『後遺障害逸失利益』と『死亡逸失利益』の2種類があります。それぞれ計算の方法や請求の条件が異なるので、まずはその違いについて確認しておきましょう。

後遺障害逸失利益 

後遺障害逸失利益(こういしょうがいいっしつりえき)とは、交通事故の負傷が後遺障害に認定された場合に請求できる逸失利益です。冒頭の通り、後遺症による労働力低下により減少した収入を保障するための損害賠償になります。

ただし、後遺障害逸失利益は後遺症が原因で減少した収入を保障するものであるため、後遺症を負っても収入が減らない状況だと、請求が認められないケースもあるのでご注意ください。

死亡逸失利益

死亡逸失利益(しぼういっしつりえき)とは、交通事故で被害者が亡くなった場合に請求できる逸失利益です。亡くならなければ将来的に得られていたはずの収入を保障するための損害賠償です。

逸失利益では67歳が定年と考えられるため、例えば被害者が30歳に亡くなった場合は『67-30』の37年分の逸失利益が請求できます。被害者は67歳を超えている場合はこの先の収入はないと判断され逸失利益の請求は認められません。(※後遺障害も同様)

逸失利益の計算式

逸失利益の計算式

<後遺障害逸失利益の算出方法>
『後遺障害逸失利益』=『1年あたりの基礎収入』×『労働能力喪失率』×『ライプニッツ係数』

<死亡逸失利益の算出方法>
『死亡逸失利益』=『1年あたりの基礎収入』×『生活控除率』×『ライプニッツ係数』

交通事故の逸失利益は上記の計算式により算出されます。それぞれの計算科目の詳細については以下をご参考にください。

1年あたりの基礎収入

1年あたりの基礎収入は直近の年収が適用されます。会社員の場合は昨年の賞与分を含む合計収入、個人事業主の場合は前年度の申告所得です。

無職者・専業主婦・学生・幼児など収入がない者の場合は、厚生労働省がその年に発表した賃金センサスの性別別の全年齢平均年収が適用されます。無収入でも逸失利益を請求できる可能性はあるのでご安心ください。

また、アルバイト・パートなど収入が賃金センサスの年収よりも低い場合は、将来的に収入が増える可能性があったことを証明できれば、自分の年収でなく賃金センサスの年収の適用が認められるケースもあると言われています。

ライプニッツ係数

ライプニッツ係数とは、将来に得るはずだった収入を一括で受けとって得られた利益を控除するために使う指数です。(※10年後に得られるはずだった1,000万円を前倒しで得たら10年という期間の利益が発生するのでそれを控除するために使う)

ライプニッツ係数は67-年齢』の数値が上記の計算式に適用されます。ただし、むちうちの後遺障害を負った状況だけは例外なのでご注意ください。12等級の場合は10、14等級の場合は5のライプニッツ係数が適用されます。

労働能力喪失年数

ライプニッツ係数

労働能力喪失年数

ライプニッツ係数

1

0.9524

18

11.6896

2

1.8594

19

12.0853

3

2.7232

20

12.4622

4

3.546

21

12.8212

5

4.3295

22

13.163

6

5.0757

23

13.4886

7

5.7864

24

13.7986

8

6.4632

25

14.0939

9

7.1078

26

14.3752

10

7.7217

27

14.643

11

8.3064

28

14.8981

12

8.8633

29

15.1411

13

9.3936

30

15.3725

14

9.8986

31

15.5928

15

10.3797

32

15.8027

16

10.8378

33

16.0025

17

11.2741

34

16.1929

労働能力喪失年数

ライプニッツ係数

労働能力喪失年数

ライプニッツ係数

35

16.3742

52

18.4181

36

16.5469

53

18.4934

37

16.7113

54

18.5651

38

16.8679

55

18.6335

39

17.017

56

18.6985

40

17.1591

57

18.7605

41

17.2944

58

18.8195

42

17.4232

59

18.8758

43

17.5459

60

18.9293

44

17.6628

61

18.9803

45

17.7741

62

19.0288

46

17.8801

63

19.0751

47

17.981

64

19.1191

48

18.0772

65

19.1611

49

18.1687

66

19.201

50

18.2559

67

19.2391

51

18.339

   

労働能力喪失率(後遺障害逸失利益)

労働能力喪失率とは、後遺症の等級ごとの労働能力喪失率を定めたものです。等級ごとに以下の数値が適用されます。

後遺障害等級

1級

2級

3級

4級

5級

6級

7級

労働能力喪失率

100%

100%

100%

92%

79%

67%

56%

後遺障害等級

8級

9級

10級

11級

12級

13級

14級

労働能力喪失率

45%

35%

27%

20%

14%

9%

5%

後遺障害逸失利益の計算方法については以下の記事で詳しく解説しています。

性格な逸失利益計算を行うには不可欠な知識なので、一度確認いただくことをお勧めします。

生活控除率(死亡逸失利益)

生活控除率とは、将来得られていたはずの収入から利用するはずだった生活費を控除する名目で使われる数値です。法律の定めではありませんが、一般的には下表のような数値が用いられることが多いです。

一家の支柱

被扶養者1人の場合

40%

被扶養者2人以上の場合

30%

女性(主婦、独身、幼児を含む)

30%

男性(独身、幼児を含む)

50%

逸失利益の計算例

逸失利益の計算例

後遺障害逸失利益の例

後遺障害4級の後遺障害を負った場合

<30歳サラリーマン、年収500万円の計算式>
『500万円(基礎収入額)』×『82%(労働能力喪失率)』×『16.7113(37のライプニッツ係数)』=『約6,851万円(逸失利益)』

後遺障害7級の後遺障害を負った場合

<40歳サラリーマン、年収550万円の計算式>
『550万円(基礎収入額)』×『56%(労働能力喪失率)』×『14.643(27のライプニッツ係数)』=『約4,510万円(逸失利益)』

等級14級のむちうちを負った場合

<25歳サラリーマン、年収400万円の計算式>
『400万円(基礎収入額)』×『5%(労働能力喪失率)』×『4.3295(5のライプニッツ係数)』=『約86万円(逸失利益)』

死亡逸失利益の例

既婚で一家の大黒柱の場合

<45歳サラリーマン妻と子供2人扶養、年収700万円の計算式>
『700万円(基礎収入額)』×『1-30%(生活費控除率)』×『13.163(22のライプニッツ係数)』=『約6,449万円(逸失利益)』

独身で1人暮らしの場合

<35歳サラリーマン、年収600万円の計算式>
『600万円(基礎収入額)』×『1-50%(生活費控除率)』×『15.8027(32のライプニッツ係数)』=『約4,740万円(逸失利益)』

正当な金額の逸失利益を請求するコツ

正当な金額の逸失利益を請求するコツ

後遺障害申請は被害者請求で行う

逸失利益の金額は後遺障害の等級が最も大きく影響してくるので、正当な金額を請求するには後遺症認定の等級申請を正確に行う必要があります。

後遺障害の申請方法には、保険会社に手続きを一任する事前認定と被害者本人が手続きを進める被害者請求の2種類がありますが、少しでも希望通りの等級認定を受ける確率を高めたい場合は被害者請求で申請をしましょう。

保険会社は事務的に手続きを進めるだけなので等級認定されやすいよう特別な配慮をしてくれませんが、被害者請求であれば自分で証拠資料を収集して提出できるので、保険会社に任せるよりも被害者本人で手続きを進めた方が高い等級が認定されやすくなるといわれています。koui

関連記事:被害者請求とは|交通事故の被害者が適正な慰謝料獲得のために知るべきこと

弁護士に請求手続きを依頼する

上記で紹介した被害者請求の手続きを弁護士に依頼すれば、後遺障害認定に有効な証拠集めと書類作成を専門家に任せられるので、正当な後遺障害認定を受けられる確率を更に高められます。

自分で後遺障害認定の手続きは難しいと感じたり申請を出して希望通りの等級認定がされなかったりした場合は、弁護士依頼を検討してみると良いでしょう。(※後遺障害申請には回数制限はないので何度でも申請可能)

交通事故の損害賠償請求を弁護士に依頼するとメリットが沢山あります。

実際に獲得できる損害賠償金額も大きく変わる可能性が高いです。

一度以下の記事から交通事故の損害賠償を弁護士に依頼するメリットについて確認して、納得したら弁護士に一度相談してみましょう。

弁護士に依頼する際のポイント

弁護士依頼にはもちろん費用が発生しますが、交通事故被害においては費用を差し引いてもプラスになることが多いです。正当な損害賠償を請求できて慰謝料も増額し事故対応の手続きを弁護士に一任できるなど沢山メリットがあります。

弁護士に依頼する際は以下のポイントもチェックしましょう。

  • 弁護士依頼で損害賠償の増額金額を確認する
  • 交通事故分野を得意とする弁護士を探す

弁護士の詳しい選び方については「交通事故の問題解決を有利に進めるための弁護士の選び方まとめ」をご覧ください。

まとめ

逸失利益の計算はライプニッツ係数や労働能力喪失率など聞きなれない単語が多くて難しいですが、自分が請求できる金額の目安をちゃんと把握しておけば、損害賠償請求の手続きが有利に進めやすくなります。

特に逸失利益が関わる損害賠償は高額になる可能性が高いので、示談をする前に事前知識を身に着けて正当な金額を判断できるようにしておきましょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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