後遺障害14級の逸失利益の計算方法とその他の損害賠償金

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
後遺障害14級の逸失利益の計算方法とその他の損害賠償金

逸失利益(いっしつりえき)とは、事故によって死亡、または後障害を負った人が、事故に合わずに無事生存していたら一生の間に得ていたであろう収入、もしくは後遺障害による労働力の減少による収入減分をいいます。

交通事故の被害者が後遺障害を負ったことが原因による収入減を補償することを目的とした逸失利益は、損害賠償金のうちの1つです。

今回は後遺障害14級と認定された際の逸失利益の計算方法を記載します。また等級1級~13級の後遺障害を負った際の逸失利益の計算方法や、死亡事故の場合の逸失利益の計算方法は、「後遺障害逸失利益の算定|賠償金増額のための3つのポイント」に詳しく書いていますのでこちらを参考にしてください。

後遺障害14級の逸失利益の求め方

ここでは逸失利益の求め方の計算式とその計算式に用いられる各項目について説明します。

後遺障害14級の逸失利益を求める計算式

逸失利益を求める計算式は以下の通りとなります。

基礎収入額(※1)

×

労働能力喪失率(※2)

×

労働能力喪失期間(※3)におけるライプニッツ係数(※4)

以下では、基礎収入額、労働能力喪失率、労働能力喪失期間、ライプニッツ係数の説明をしていきます。

基礎収入額(※1)

基礎収入額とは事故直前の一年間の収入のことをいいます。事故の被害がサラリーマンであれば、給与の年収(額面)が基礎収入額となります。収入のない主婦や学生の基礎収入額は賃金構造基本統計調査(賃金センサス)における平均賃金が原則として基準にされます。

サラリーマンの基礎収入額 サラリーマンの場合、事故前年の年収(額面)が基礎収入となります。。
自営業者や自由業者の基礎収入額 自営業者は、個人商店や会社組織になっていない工場の経営者のことを言います。自由業者は画家、音楽家、作家、弁護士、医師などを言います。このような職業の人の基礎収入額は事故前年度の所得税確定申告の時の年間所得額及び固定費を基準にします。
幼児、小・中・高校生の基礎収入額 これらの人は事故時に収入がありませんので統計に基づいて平均賃金を基礎に計算を行います。具体的には男女別の賃金センサス(賃金構造基本統計調査)を基に算定されます。
専業主婦の基礎収入額 専業主婦の場合も一般的には無職ですが、逸失利益が認められます。具体的には賃金センサスの女子労働者の学歴計・全年齢平均賃金を基準に算出します。
老人・失業者 老人の場合でも主婦については一定の逸失利益が認められますし、主婦でなくても労働に従事している人は逸失利益の請求が可能です。失業中の人や、一時離職中の人は、勤労意欲があり、就職する意欲があるなら逸失利益も認められます。その時の基礎収入額は、再就職先の賃金もしくは従前の会社の賃金を基準に求めます。

後遺障害14級の労働能力喪失率(※2)

労働能力喪失率とは後遺障害による労働の喪失割合を表した数字です。労働能力喪失率は職種、年齢、性別に基づき喪失割合が決まりますが、一般的には労働基準局が公表している労働能力喪失率表を基準にして求めます。

労働能力喪失率表

   
障害等級 労働能力喪失率 障害等級 労働能力喪失率 障害等級 労働能力喪失率
第1級 100/100 第6級 67/100 第11級 20/100
第2級 100/100 第7級 56/100 第12級 14/100
第3級 100/100 第8級 45/100 第13級 9/100
第4級 92/100 第9級 35/100 第14級 5/100
第5級 79/100 第10級 27/100    

労働能力喪失率表による後遺障害14級の労働能力喪失率は5%です。

労働能力喪失期間(※3)

労働能力喪失期間は、事故後に労働が可能な期間です。具体的には67歳までとされています。たとえば30歳で事故に遭い後遺障害を負った場合、労働能力喪失期間は37年となります。

ただし、むち打ち症に関しては一種の神経症状であり、何年後かには治るという医学上の意見が取り入れられており、労働能力喪失期間に制限が設けられています。実務的には14級の場合は労働能力喪失期間を5年程度、12級の場合は10年程度に限定する考えが一般的です。

ライプニッツ係数(中間利息控除率) (※4)

逸失利益は将来得るであろう利益を現在一括に受取るので、その将来にわたる期間の利息分(中間利息)を控除しなければなりません。この利息の控除に用いられる数字がライプニッツ係数です。

労働能力喪失期間におけるライプニッツ係数は以下の表の通りです。

   
能力喪失期間(年) ライプニッツ係数 能力喪失期間(年) ライプニッツ係数 能力喪失期間(年) ライプニッツ係数 能力喪失期間(年) ライプニッツ係数
1 0.9524 18 11.6896 35 16.3742 52 18.4181
2 1.8594 19 12.0853 36 16.5469 53 18.4934
3 2.7232 20 12.4622 37 16.7113 54 18.5651
4 3.5460 21 12.8212 38 16.8679 55 18.6335
5 4.3295 22 13.1630 39 17.0170 56 18.6985
6 5.0757 23 13.4886 40 17.1591 57 18.7605
7 5.7864 24 13.7986 41 17.2944 58 18.8195
8 6.4632 25 14.0939 42 17.4232 59 18.8758
9 7.1078 26 14.3752 43 17.5459 60 18.9293
10 7.7217 27 14.6430 44 17.6628 61 18.9803
11 8.3064 28 14.8981 45 17.7741 62 19.0288
12 8.8633 29 15.1411 46 17.8801 63 19.0751
13 9.3936 30 15.3725 47 17.9810 64 19.1191
14 9.8986 31 15.5928 48 18.0772 65 19.1611
15 10.3797 32 15.8027 49 18.1687 66 19.2010
16 10.8378 33 16.0025 50 18.2559 67 19.2391
17 11.2741 34 16.1929 51 18.3390    

逸失利益の計算例

ではここで具体的に後遺障害14級に認定された被害者の逸失利益の計算を行います。ただし被害者の状況は以下の通りとします。

被害者の年齢・性別・職業 35歳・男性
事故前の収入 420万円
後遺障害の症状 むち打ち症
後遺障害認定内容 後遺障害第14級9号
労働能力喪失期間 2年
労働能力喪失率 5%

基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間におけるライプニッツ係数

=420万円×0.05(5%)×1.8597≒39万円

よって上記の例の際の後遺障害逸失利益は約39万円となります。

後遺障害14級と認定された時のその他の損害賠償金

交通事故の被害者になってしまった場合、加害者に対して損害賠償金として請求できるものは逸失利益だけではありません。

ここでは後遺障害と認定された場合に請求できるその他の損害賠償金を記載して置きます。

積極損害

積極損害とは交通事故により被害者が出費しなければならなかった損害を言います。具体的には治療費、入院費などを含みます。また具体的な損害項目を一覧にして記載しておきます。

積極損害の項目 内容
①治療費・入院費 必要かつ相当な範囲で実費全額。健康保険の利用も可
②付添看護費 ●職業付添人の場合…実費全額●近親者付添人の場合…入院付添 1日につき5,500円~7,000円          …通院付添 1日につき3,000円~4,000円
③将来の介護費用(必要な場合) ●職業付添人の場合…実費全額●近親者付添の場合…1日につき8,000~9,000円
④入院雑費 1日につき1,400円~1,600円
⑤交通費 本人の通院におき、原則実費●タクシー代…ケガの相当性により認められる●自家用車…ガソリン代、高速代、駐車場代など
⑥装具 ●義足、車いす、義眼、かつら、眼鏡、コンタクトレンズなど
⑦子供の学習費・保育費など 受傷を原因とした学習の遅れを取り戻すための学習費や子供を預けなければならない場合の費用
⑧弁護士費用 訴訟になった場合認められる。裁判所認容額の1割程度

休業損害

休業損害とは事故の被害者が入院や治療のために仕事を休んだ際の損害です。被害者は休業により受けた損害分を加害者に請求することができます。これは逸失利益とは別で請求できます。

たとえば月収30万円のサラリーマンが二カ月休業した場合の休業損害は60万円となります。

入通院慰謝料

慰謝料とは損害を被ったことに対する精神的な負担を金銭で表したものです。そして入通院慰謝料は入院や通院を行ったことに対する慰謝料です。入通院慰謝料は通院や入院した期間により増額されます。

また慰謝料は入通院慰謝料、後述する後遺障害慰謝料ともに相場があります。それぞれ「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準」です。それぞれの慰謝料の相場は「自賠責保険基準」<「任意保険基準」<「弁護士基準」の順に高くなります。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、事故により被害が後遺障害を負ってしまったことに対する精神的な負担に対する慰謝料です。

自賠責保険基準での後遺障害14級の後遺障害慰謝料は32万円です。弁護士費用の後遺障害慰謝料は110万円となっています。

慰謝料に関して詳しく知りたい方は「交通事故慰謝料を正しく計算し適正な慰謝料を獲得する全手順」を参考にしてください。

後遺障害14級と認められる症状一覧

ここでは後遺障害14級として認められる症状を一覧にして紹介しておきます。

14級1号 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
14級2号 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
14級3号 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
14級4号 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
14級5号 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
14級6号 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
14級7号 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの
14級8号 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

まとめ

逸失利益は後遺障害を負ってしまった場合の収入の減少に関する保障です。後遺障害と認定されるには申請を行う必要があります。また交通事故の損害賠償にはその他にも紹介した通り、様々なものがあります。

交通事故はほとんどが示談で解決しますが、示談交渉を弁護士に依頼していれば損害賠償額の増額などのメリットがあります。交通事故の被害者になってしまった場合、一度弁護士に相談していてはいかがでしょうか。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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