自賠責保険の慰謝料の金額|請求する際の注意点と増額するためのコツ

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
自賠責保険の慰謝料の金額|請求する際の注意点と増額するためのコツ

自動車の購入時には自賠責保険への加入が法律で義務付けられているので、加害者が任意保険(車保険)に未加入であっても、被害者は自賠責保険会社から保障を受け取ることができます。

自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。

引用元:自動車損害賠償保障法第三章一節

交通事故の慰謝料請求は専門知識が求められるため複雑ですが、この記事では自賠責保険の慰謝料請求について分かりやすく紹介していきますので、自賠責保険の基礎知識を確認しておきたい場合はぜひ参考にしてみて下さい。

 

自賠責基準で請求できる慰謝料

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、入通院をする傷害を負わされた精神的苦痛に対して請求できる慰謝料です。入通院の日数が長引くほど高額になり、自賠責保険では以下の計算式で慰謝料が算出されます。

  1. 『4,200円』×『通院日数』×『2』
  2. 『4,200円』×『実通院期間』

①と②の少ない方が適用される。 50日の実通院期間で20日の通院日数の場合>

『4,200円』×『20日』×『2』=16万8,000円:適用

『4,200円』×『50日』=21万8,000円:不適用

<120日の実通院期間で70日の通院日数の場合>

『4,200円』×『70日』×『2』=58万8,000円:不適用

『4,200円』×『120日』=50万4,000円:適用

実通院期間は事故後に初めて診察を受けた日からカウントが始まり、医師から治療はもう必要ないと判断されるまでの期間になります。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、交通事故により後遺症を負わされた精神的苦痛に対して請求できる慰謝料です。後遺症の度合いによって請求できる慰謝料の額が決定します。

等級

慰謝料額

等級

慰謝料額

1級

1,100万円

8級

324万円

2級

958万円

9級

255万円

3級

829万円

10級

187万円

4級

712万円

11級

135万円

5級

599万円

12級

93万円

6級

498万円

13級

57万円

7級

409万円

14級

32万円

後遺障害慰謝料は等級認定申請の手続き後に等級の値が決まってから請求という流れになりますが、なるべく高い値の等級を認定してもらうためには、あらかじめ後遺障害申請のコツについて確認しておくと良いでしょう。

関連記事:後遺症と後遺障害の違い|後遺障害等級認定を受けやすくなるポイント

死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、交通事故で被害者を失った精神的苦痛に対して請求できる慰謝料です。被害者の立場や遺族(相続人)の人数によって請求できる慰謝料は変動します。

請求する要項

慰謝料額

死者本人に対する慰謝料

350万円

慰謝料を請求する遺族が1人の場合

550万円

慰謝料を請求する遺族が2人の場合

650万円

慰謝料を請求する遺族が3人の場合

750万円

+死亡者に扶養されていた場合

200万円

(※遺族が死者本人に扶養されていた場合のみ200万円が加算される。遺族が1人で扶養されている場合:350万円+200万円+550万円=1,100万円)

自賠責保険の補償には限度額がある

自賠責保険の補償には限度額がある  

自賠責保険の限度額

自賠責保険の補償額には限度額が定められていて、損害賠償(慰謝料も含む)がこの限度額内であれば自賠責保険会社に全て請求できます。

  1. 傷害に対する保障の限度額:120万円
  2. 後遺障害に対する保障の限度額:75~4,000万円
  3. 死亡事故に対する保障の限度額:3,000万円

ただ、自賠責保険は非営利団体が交通事故の最低限の保障をする目的で提供しているサービスなので、被害者が重い後遺症を負う事故や亡くなった事故だと、損害賠償額が限度額を超えてしまうケースがほとんどだと言えるでしょう。  

限度額を超えたらどうなるか

損害賠償の請求が自賠責保険の限度額を超えた場合は、残りの残債を加害者(加害者契約保険会社)に請求ができます。限度額を超えた損害賠償が免除されるわけではないのでご安心下さい。

ちなみに、加害者が自賠責保険への加入を怠っていた場合でも政府保障制度により国から自賠責保険と同額の保障を受けられます。政府保証制度とは、無保険事故やひき逃げで損害賠償請求が難しい立場の加害者に対しての救済制度です。

自分に過失がある場合は減額される

交通事故では過失割合に関係なく怪我を負った側が被害者として扱われますが、被害者の過失割合が70%を超える場合だと自賠責保険の限度額は20%減額されてしまいます。また過失割合が100%の場合は自賠責保険の保障を受けることはできません。

  1. 傷害に対する保障:120万円→96万円
  2. 障害補償:75万円~4,000万円→56万円~3,200万円
  3. 死亡補償:3,000万円→2,400万円

過失割合は保険会社が過去の裁判結果などを参考に決定しますが、全く同じ状況の事故など存在しないので納得できない結果が出ることもあるかもしれません。そのような状況の場合は以下の記事の対処法をご参考に下さい。

関連記事:追突事故の過失割合|加害者と過失割合の主張が分かれた場合の対処法

示談交渉の基礎知識

示談交渉の基礎知識  

慰謝料は損害賠償(示談金)の一部である

ここまで損害賠償という単語が何度か登場してきましたが、損賠賠償とは入通院費用や休業中の給料の補償などの実質損害と上記で紹介した慰謝料の全てを含めたものです。

慰謝料は損害賠償(示談金)の一部である

また、示談交渉で請求する損害賠償のことを示談金と呼ぶので、示談金と慰謝料は同じものだと認識して頂ければ問題ありません。

交通事故においての示談交渉は、損害賠償をいくら請求するのかを決める話し合いの場になるので、その際に上記の基準に従って慰謝料を請求すると良いでしょう。

慰謝料の計算には3つの基準がある

上記では自賠責保険を基準とした慰謝料を紹介しましたが、実は慰謝料の計算方法には3つの基準があり、どれを基に算出するかによっても慰謝料の額が変わってきます。

  1. 自賠責基準:自賠責保険の限度額を基にした計算方法
  2. 任意保険基準:保険会社内のデータを基にした計算方法
  3. 弁護士基準:弁護士が過去の裁判結果と法律を基にした計算方法

交通事故の大半は任意保険基準で慰謝料が計算されますが、最低限の補償を定めるのがは自賠責基準、慰謝料請求を弁護士に依頼した場合の基準となるのが弁護士基準です。(※下記で紹介していますが弁護士基準での請求が最も高額です)

示談交渉で慰謝料を請求する流れ

示談交渉で慰謝料を請求する流れ

示談のタイミングは治療の終了後

示談交渉のタイミングは、治療終了もしくは後遺障害認定を受けて損害賠償請求額が全て計算できる状態になった後です。

示談は一度成立してしまうとその内容を後から変更することは出来ません。例えば、示談後に請求し忘れた治療費があったことが発覚しても、後から加害者に対して支払いを求められないのでご注意下さい。

加害者が示談を急かしてくる場合はなるべく早めに決着をつけて請求される慰謝料を少なくしようと目論んでいる可能性が高いので、要求には応じずに担当医に相談して治療がまだ必要である旨を伝えてもらうと良いでしょう。  

加害者が示談に応じない際の対処法

加害者がいつまでも示談交渉に応じてくれず損害賠償請求ができない状態が続くようであれば、損害内容を立証して加害者に請求する損害賠償請求訴訟の手続きをする必要があります。

交通事故の損害賠償請求には損害及び加害者を知ってから3年(事故発生から20年)という期限が定められているため、損害賠償請求の権利が消失する前に早めに対処しなければいけません。

ちなみに、治療費の一部だけでも支払ってもらえれば時効を中断させることも可能なので、損害賠償請求訴訟が難しいという状況であれば、下記の時効の中断をさせる対処法をご参考にどうぞ。

関連記事:交通事故における慰謝料請求の時効を中断させる3つの方法

慰謝料を増額するなら弁護士依頼をする

慰謝料を増額するなら弁護士依頼をする

弁護士基準の慰謝料が最も高額

少しでも高額な慰謝料を請求したい場合は弁護士への依頼が有効です。保険会社の都合が基準となる自賠責・任意保険基準と異なり、法に基づいた正当な金額を請求できるので弁護士基準は3つの中で最も高額な慰謝料を請求できます。

算出基

1カ月間(30日)入院した場合の慰謝料

12級の後遺障害を負った慰謝料

妻子と3人暮らしの男性の死亡慰謝料

自賠責基準

12万6,000円

93万円

1,200万円

任意保険基準

25万2,000円

100万円

1,500~2,000万円

弁護士基準

53万円

280万円

2,800万円

上表を見るとお分かり頂けると思いますが、自賠責基準と弁護士基準では請求できる慰謝料は2倍以上も増加します。

加害者が未保険者の場合は何も手続きをしなければ最も少額な自賠責基準での慰謝料請求になってしまうので、それでは足りないという場合には弁護士への依頼を検討した方が良いでしょう。  

弁護士依頼でかかる費用の相場

弁護士費用を厳密に定める法律はないので弁護士によって料金形態は異なりますが、以下の表の費用が示談交渉依頼の大体の相場と言われています。

【示談交渉】

着手金

報酬金

着手金あり

10~20万円

報酬額の10~20%

着手金なし

無料

報酬額の20~30%

関連記事:交通事故にかかる弁護士費用の相場|費用の節約法と依頼先を選ぶコツ

弁護士に依頼をするかの判断は『弁護士基準の慰謝料-弁護士費用>自賠責基準の慰謝料』になるかどうかです。自分で計算するのが難しい場合はまず法律相談だけ受けて、自分は依頼するべきか弁護士に判断してもらいましょう。  

弁護士依頼をおすすめできる状況

基本的に死亡事故と後遺障害が絡む事故は弁護士に依頼した方が得になる可能性が高いと言えます。その2つの状況であれば慰謝料が高額になるので、弁護士基準と自賠責基準の慰謝料に差が生じやすいからです。

また、それ以外の状況でも入通院が半年以上も続いているなど、入通院慰謝料が高額になる場合は弁護士基準の方が得になるかもしれません。

ちなみに、自分が加入している任意保険に弁護士費用特約のサービスが付属していれば、保険会社から弁護士費用を負担してもらえるので、その場合は何も迷わずに弁護士に慰謝料請求を依頼することをおすすめします。

関連記事:弁護士費用特約とは|保障内容と慰謝料を増額させるお得な使い方

 

まとめ

自賠責基準の慰謝料は自賠責保険の限度額を基準とした慰謝料なので、他の基準と比べて請求できる慰謝料が低めに設定されています。

自賠責保険は交通事故被害者の最低限の保障を確保するためのサービスなので仕方ないとは言えますが、当記事で紹介した通り弁護士基準であれば慰謝料を増額できますので、少しでも多くの慰謝料を請求したい場合は弁護士依頼を検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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