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KL2020・OD・037
後遺症(こういしょう)とは、病気やケガなどの治療を続けても完全に治らず、症状が残ってしまうことをいいます。手足の麻痺症状や関節の可動域低下、大きな傷跡などが後遺症になりますが、『後遺障害』とは違う意味になります。
後遺障害の場合だと、交通事故が原因で受傷した症状が対象になり、労働能力の喪失を理由に慰謝料や損害賠償金を請求することが可能になります。なので、被害者は後遺症を負った以上に精神的苦痛に見合う損賠賠償を請求するために、後遺障害として認めてもらう必要があります。
今回は後遺症と後遺障害の違いを説明した上で、後遺障害の要件を満たすためのポイントを解説いたします。症状の重さによっては仕事に復帰できないこともありますので、被害者は十分な額の慰謝料や損害賠償金をもらうための方法を知っておくべきでしょう。
目次
後遺症と後遺障害について大まかな意味では同じになりますが、医学的な考え方と法律上の定義によってそれぞれ分かれます。概略を図で表すと以下の通りになり、後遺障害は後遺症の一部という考え方になります。
後遺症については医師が判断するものであり、交通事故に限らず様々な原因で負った病気やケガが、治療を続けても一向に回復しない状態のことをいいます。
対して後遺障害の場合、交通事故が原因で負った後遺症が対象になり、労働能力の喪失が見込まれる症状が残った状態のことをいいます。
後遺障害に関しては医師が決めるものではなく、自動車損害賠償保障法施行令にて定められた後遺障害等級の条件を基準に、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所にて判断されます。
後遺障害として認めてもらう理由としては慰謝料の請求が主に関わってきますが、事故を起こした加害者側に求める慰謝料や損害賠償金は、請求のタイミングや目的がそれぞれ異なります。
後遺症による肉体的・精神的苦痛を補償するために法律上で後遺障害等級が定められています。目安の相場になりますが、後遺障害等級に認められた場合に得られる後遺障害慰謝料の額は以下表の通りになります。
後遺障害等級は後遺症の重さによって14段階に分かれていますが、等級が高いほどもらえる慰謝料額が上がります。場合によっては1,000万円以上の高額な慰謝料になりますので、確実に請求するべきだといえるでしょう。
【表:後遺障害慰謝料の相場表】
等級 | 自賠責保険基準 | 任意保険基準(推定) | 弁護士基準 |
1級 | 1,100万円 | 1,300万円 | 2,800万円 |
2級 | 958万円 | 1,120万円 | 2,370万円 |
3級 | 829万円 | 950万円 | 1,990万円 |
4級 | 712万円 | 800万円 | 1,670万円 |
5級 | 599万円 | 700万円 | 1,400万円 |
6級 | 498万円 | 600万円 | 1,180万円 |
7級 | 409万円 | 500万円 | 1,000万円 |
8級 | 324万円 | 400万円 | 830万円 |
9級 | 245万円 | 300万円 | 690万円 |
10級 | 187万円 | 200万円 | 550万円 |
11級 | 135万円 | 150万円 | 420万円 |
12級 | 93万円 | 100万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 60万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
後遺障害慰謝料以外にも、将来的な収入の減少を補償してもらうための損害賠償金も必要になります。後遺障害等級の認定を受けると後遺障害逸失利益の請求が可能になり、被害者の基礎収入や労働能力が喪失した度合いに応じて損害が補償されます。
また、後遺障害慰謝料の額に関連する3つの慰謝料基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)や後遺障害逸失利益の算定方法については「後遺障害等級認定で獲得できる慰謝料」で解説していますので、合わせてご確認いただければと思います。
後遺障害認定の申請方法では『事前認定』と『被害者請求』の2種類がありますが、被害者自身で申請手続きを進める被害者請求の方法を利用すれば、後遺障害等級の認定を受けた時点で自賠責保険分の損害賠償金を受け取ることが可能になります。
任意保険会社との示談交渉を始める前に一部の保険金を受け取れるメリットのほか、被害者自身の判断で等級認定の申請手続きに必要な書類を集めることができますので、基本的には被害者請求で申請することをオススメします。
上記では後遺障害等級の認定における慰謝料・損害賠償金請求の目的を取り上げましたが、後遺障害として認めてもらうための要件(条件)を被害者は知っておくべきでしょう。
交通事故によって生じた後遺症であることを証明する必要があります。交通事故と症状発生の時期が適合しているかどうか、事故状況に見合ったケガの程度であるかどうか、といった点が確認されます。
全部で14段階ある後遺障害等級の条件に該当するかどうかも重要になりますが、両目の失明や肘関節以上で両腕を損失するなど非常に重い後遺症の場合は後遺障害第1級になります。また、追突事故などによって引き起こされるむち打ち症といった軽い後遺症では、一番低い後遺障害第14級に該当します。
後遺障害等級の条件は「後遺障害等級の認定基準」でも取り上げていますが、等級別の細かい認定条件については下記リンクより確認することができますのでご参考ください。
検査や診断の結果については『他覚所見』とも言われるものです。被害者(患者)が後遺症の状態について申告する『自覚症状』だけでなく、第三者からの目でも後遺症の存在が明らかになるように他覚的所見も必要になってきます。
他覚的所見ではレントゲンやMRI画像における証明のほか、むち打ち症など画像での証明が難しい症状の場合は検査テストで補うことがあります。
症状固定については後遺症の定義と同様に、治療を継続しても症状が良くも悪くもならない状態のことですが、担当の医師から症状固定を診断してもらうことで後遺障害等級の認定申請が可能になります。
以上が後遺障害として認められるための4つの要件になりますが、どれか1つの要件を満たしていないと後遺障害等級の認定申請で等級非該当の結果になってしまう可能性ありますので注意が必要です。
交通事故に遭ってから後遺障害等級の認定申請をする経緯も含め、被害者が覚えておくべき5つのポイントについて下記でまとめましたので順番に見ていきましょう。
交通事故が発生した直後、被害者は現場で慌てるかもしれませんが、加害者側の連絡先のほかに任意保険会社を確認しておきましょう。
仮に事故当時に確認できない状況であっても、交通事故証明書を取得すれば加害者側の任意保険会社が分かるようになります。特に被害者請求の場合において、任意保険会社より申請で必要な書類を一通り送ってもらうようにするべきなので必須の確認事項になります。
入通院を続けて回復に専念するべきですが、任意保険会社との示談交渉を早めに行って示談金をもらうようにしたり、後遺障害等級の認定を急かして症状固定を早めに決めるなどの判断は避けるようにしましょう。
症状によっては症状固定までの期間が長く治療がずっと続くこともありますが、後遺障害等級の認定を受けるためには十分な治療を受ける必要があります。また、症状固定前で任意保険会社との示談交渉を行うのは極力避けた方が良いでしょう。治療費がまだ確定していない段階で決められる示談金額では不十分である可能性があります。
参照元:「症状固定の時期を決める基準」
症状固定後は担当の医師に後遺障害診断書を作成してもらいます。また、被害者請求で申請手続きを行う場合は被害者自身でそのほかの書類を作成したり、病院より検査結果の画像データなどを請求したりする必要があります。
なお、後遺障害等級認定の申請で必要な書類などについては「被害者請求のメリットと申請方法」にて取り上げています。
被害者請求の場合は自賠責保険会社へ(事前認定の場合は加害者側の任意保険会社へ)申請書類を提出します。損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所にて審査が行われて、等級認定の可否結果が被害者へ来ます。
等級認定の審査結果が出てから加害者側の任意保険会社との示談交渉が始まります。『後遺障害として認めてもらう3つの目的』でも説明した通り、被害者請求の場合は示談交渉前に自賠責分の保険金を受け取れます。
しかし、事前認定で申請手続きを進めた場合、示談金は一括の支払いになりますので被害者は示談交渉後まで保険金を受け取ることができません。また、「示談条件に同意しない限りは保険金を支払わないものとする」と任意保険会社より不利な交渉内容をつきつけられることもあるため、事前認定での申請では任意保険会社との交渉が難しくなるケースも考えられます。
もし、被害者の後遺症が後遺障害として認められず後遺障害等級では非該当の結果になった場合、それで終わりではなく異議申立ても可能なので、後遺障害等級の申請を再度行う選択肢があります。
後遺障害等級認定を受けられなかった場合、『後遺障害として認められるための4つの要件』で解説したような後遺障害の条件を満たしていない可能性があります。
他覚的所見になる検査結果が不十分であったり、症状固定のタイミングが妥当でないと見なされたりすると等級非該当になってしまうので、異議申立てでは新たな資料を提出するべきでしょう。
また、自賠責保険会社への異議申立てを検討する際には、弁護士に相談することをオススメします。法律的な知識を持っている専門家に任せた方が確実であり、状況に応じて裁判で争うことも可能になります。
交通事故に関係する後遺障害等級と合わせて後遺症について解説しましたが、後遺障害であることを認めてもらうために確実に等級認定申請を進めるべきでしょう。場合によっては被害者自身での対応や判断が難しいこともありますので、困ったときは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
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KL2020・OD・037
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