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KL2020・OD・037
日用品や健康食品などを販売するマルチ商法は有名ですが、中には旅行の会員権を商材にする会社もあるようです。会員権を販売するため、一見すると次のようなメリットがあります。
ただ、マルチ商法においてうまい話はつきもので、実際にはデメリットや問題点があるものです。
今回は、旅行会員権を商材にしたマルチ商法の勧誘手口と、他のマルチ商法と異なる点、旅行に関するマルチ商法の問題点と、勧誘された際の対処法をお伝えします。
目次
ここでは、旅行関係のマルチ商法ではどのような勧誘手口を用いるのかをお伝えします。
マルチ商法の勧誘員はあらゆる場所にいます。出会いの場所や合コン、スマホアプリなどあらゆる手段であなたと知り合いになり、後日2人で会えるようアポを取るなどしてあなたと仲良くなろうとしてきます。
勧誘員はフェイスブックやツイッターなどで、飲み会や旅行に行っている写真をよくあげているかもしれません。
マルチ商法では、会社に縛られず自由に暮らせることをよく勧誘時にアピールしてきますので、演出としてSNSに楽しそうにしている写真をあげなければなりません。
2人で会ったら最初は他愛のない話をしますが、徐々に「私はよく旅行に行っているんだ」という話をしはじめ、ターゲットが興味を持つと、「格安で旅行に行ける方法がある」と言いセールスレターを取り出します。
セールスレターを読むと、「会員費はいくらなのか」「何人勧誘すれば儲かるのか」といった疑問が生まれてくるかもしれません。
通常のマルチ商法であれば、ここで『師匠』『成功者』などと呼ばれる上級の会員を紹介し、勧誘員と師匠、ターゲットの3人で勧誘を勧めるABC勧誘に移行する場合も多いですが、旅行のマルチの場合はセールスレターを見せて興味を持ったら説明会に誘導するパターンも多いようです。
こういった誘導方法は会社や勧誘員のグループによって変わるので、他のパターンも警戒しておきたいところです。
説明会では、マルチ商法で“成功”した人が壇上に登り、自分がマルチの商材で人生がどう変わったのか、どんな成功を掴んだのかを騙ります。
説明会の会場は、勧誘された人だけでなく既に会員になっている人もいる点は忘れてはいけません。壇上で話している人がいかに胡散臭くても、会員にとっては目標の人物ですから、“成功者”の話に対し拍手を送ったり、声援を送ったりします。
計画的なのかそうなのかは定かではありませんが、彼らが無意識にサクラの役割を果たしていることは間違いないでしょう。
など、ターゲットがあたかも自分も変われるんじゃないか、と思うようなトークを繰り広げてきます。
ターゲットの中には、説明会が終わる段階で「自分も成功したい」と思っている人もいるでしょう。会場のテンションが上りきったところで、契約書を配り会員登録を促します。
勢いとその場のテンションだけで契約しないようにしたいものですね。
旅行関係のマルチ商法は、通常のマルチ商法と何が違うのでしょうか。以下でお伝えします。
通常のマルチ商法では、健康食品や生活用品など形のある商品を売るのに対し、旅行のマルチ商法はリゾート会員権などという無形のサービスを商材にしています。
会員登録をすると、通常よりも格安で旅行を楽しめるのだそうです。
マルチ商法では、販売能力の低い会員がノルマを達成するために自分で大量の商品を買い、大量に在庫を抱えるケースもありましたが、リゾート会員権は無形なので在庫を抱えることはありません。
など、健康に良い商品を売られる際にはよく聞きそうなセリフをあげましたが、実はこれらの言い回しはすべて薬事法に触れるためアウトです。
治療効果や予防効果を感じさせるような言い回し、誇大な表現を使った勧誘は薬事法の66条と68条に触れます。
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
引用元:薬事法第六六条
何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
引用元:薬事法第六八条
勧誘者は個人事業主なので、誰に教えられなくても薬事法を守って当然ですが、マルチ商法の場合は薬事法知らない人も多いでしょう。
ただ、旅行のマルチの場合は、商品ではなく旅行の会員権を売るので、薬事法は関係ないためほんの少しだけ勧誘がしやすくなります。
ただ、薬事法をクリアしてもマルチ商法は特定商取引法に反しない勧誘が難しいため、勧誘のしやすさはさほど変わらないように思います。
通常のマルチでは、本人や上級の会員がターゲットに関して説得をしますが、旅行のマルチではセールスレターが用意されているため、ターゲットを説得せずともセールスレターを見せれば済むようです。
これだけでセールスがしやすくなるような勧誘をされるかもしれませんが、真に受けない方が良いでしょう。
一回あたりの旅行費は確かに安いのかもしれませんが、そんなうまい話はありません。リゾート会員権を得るには25,000~150,000円程度の初期費用に加え、月間10,000円程度の維持費がかかります(会社や加入するプランによって具体的な金額は異なる)。
旅行に行ってもいない時点でこれだけお金がかかります。毎月一定数の会員を勧誘しないのであれば、普通に旅行に行った方が良いのではないでしょうか。会社で働いていれば年に何回も何回も旅行にいくわけにもいきません。
リゾート会員権を商材とするマルチ商法の会社にリゾネットがあります。同社は不適切な勧誘方法があったことを原因に、勧誘と契約の受付、締結を3ヶ月間停止するように東京都から命じられました。具体的な問題点は次の3つです。
参照元:Travel vision|3種リゾネットに行政処分、マルチ商法強引勧誘-旅行業は継続可
上記の事例を踏まえ、旅行会員権を商材にしたマルチにはどんな問題点があるのか確認していきましょう。
マルチ商法(連鎖販売取引)の勧誘をする際は、次の点を明示しなければなりません。
特に2つ目の「勧誘目的だと告げる」ができていない勧誘員が多いように思います。
統括者、勧誘者(統括者がその統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引について勧誘を行わせる者をいう。以下同じ。)又は一般連鎖販売業者(統括者又は勧誘者以外の者であつて、連鎖販売業を行う者をいう。以下同じ。)は、その統括者の統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、統括者、勧誘者又は一般連鎖販売業者の氏名又は名称(勧誘者又は一般連鎖販売業者にあつては、その連鎖販売業に係る統括者の氏名又は名称を含む。)、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る商品又は役務の種類を明らかにしなければならない。
などは誇大広告にあたる可能性があり、特定商取引法36条誇大広告等の禁止に違反します。
統括者、勧誘者又は一般連鎖販売業者は、その統括者の統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引について広告をするときは、その連鎖販売業に係る商品(施設を利用し及び役務の提供を受ける権利を除く。)の性能若しくは品質又は施設を利用し若しくは役務の提供を受ける権利若しくは役務の内容、当該連鎖販売取引に伴う特定負担、当該連鎖販売業に係る特定利益その他の主務省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない
引用元:特定商取引に関する法律第三十六条
断っているのに会場から返してくれないことを退去妨害といいます。返してくれないために契約してしまった場合、消費者はその契約を取り消せます。
当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。
引用元:消費者契約法四条三項二号
上記が契約の有効性に関する問題点だったのに対し、ここからは金銭面での問題点です。リゾート会員権を商材にしたマルチの場合、初期費用と月額が高額な点が特に問題のように思います。
これは、新規の会員が新しく会員を勧誘できようができまいが、関係なくかかってくる費用です。
サラリーマンで働くのが嫌で、楽に稼ぎたいと思っている人が、はたして毎月安定的に会員を増やしていけるでしょうか。
勧誘時にマルチ商法で稼ぐ難しさを伝えていれば問題がありませんが、大抵は「誰でも儲けられる」「旅行で生きていける」など都合のいいことばかり言われたとすると、ターゲットは入会後にギャップを受けるかもしれません。
バリバリ働いて会員を増やしていける人でないと、初期費用をペイしなおかつ生活費もまかなうのは難しいでしょう。
リゾート会員権を得たとしても、月間10,000円以上、年間120,000円以上の維持費がかかることを忘れてはいけません。
もしあなたがサラリーマンであれば、遠くへ旅行を行く機会は年に何回もないでしょう。仮にあったとしても、同じように年に何度も旅行にいくような人を勧誘しなければいけません。年の旅行回数が1回であれば、維持費だけで年間120,000円の会員権を得る合理性はありません。
最後に、旅行のマルチに勧誘されたときの対処法をお伝えします。
いらないものは断固として断りましょう。マルチの勧誘は法律に反していることも多く、
後にクーリングオフしたり契約を取り消したりすることもできますが、時間と手間と体力がかかりますので、断るのが一番労力を使わずに済みます。
関連記事:マルチ商法の上手な断り方と商品を買ってしまった際の対処法
説明会で高額な入会料がかかる旅行会員に登録してしまった人は、クーリングオフをしましょう。マルチ商法(連鎖販売取引)の場合、契約書面を受け取ってから20日間はクーリングオフできます。
関連記事:クーリングオフ書面の書き方と記入例|送付前に確認したい注意点3つ
自分だけでなんとかできない場合は専門家を頼りましょう。
消費者被害に関して相談できる独立行政法人です。クーリングオフさせてもらえなかったり、クーリングオフ期間が過ぎているけれど違法な勧誘行為があったりした場合などに、あなたがどういう対処をしていくべきなのか相談に乗ってくれます。
被害額が高額な場合は、消費者被害を解決した実績をもつ弁護士に相談するのもいいでしょう。相談に乗ってくれるだけでなく、返金がされるようあなたの代わりに動いてくれます。
リゾート会員権を商材にしたマルチ商法は、会員権を売るため在庫を抱えず、薬事法に触れない利点がありますが、高額な入会費や月額費でお金をとっているので、経済的負担がある点では他のマルチ商法と変わりません。
説明会に行った際などにしつこく勧誘されることもあるかもしれませんが、不要なものはきっぱりと断りましょう。周りの雰囲気に流されないことが大切です。
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KL2020・OD・037
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