マルチ商法は違法?違法性のある勧誘方法とその断り方

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
マルチ商法は違法?違法性のある勧誘方法とその断り方

日本ではマルチ商法の評判が非常に良くありません。その理由としてマルチ商法が違法であるという認識がありますが、実をいうとマルチ商法は合法です。それなのに、一体なぜマルチ商法=いかがわしいビジネスという風潮があるのでしょうか?

今回は、マルチ商法の法的な立ち位置を説明したうえで、評判が悪い原因について述べます。また、ビジネス自体は合法でも勧誘の仕方が違法な場合が多く、具体的にどんな勧誘が良くないのかをお話します。また、誘われたときの上手な断り方も後半でご説明しますので、あわせてご確認ください。

マルチ商法自体は違法ではない

「マルチ商法は合法だ」というよりも、「違法ではないものの様々な規制がされている」と言った表現の方が正しいかもしれません。マルチ商法は、特定商取引法の中でも連鎖販売取引として定義されています。詳しく見てみましょう。

連鎖販売取引として定義されている

特定商取引法33条では、マルチ商法(連鎖販売取引)を次のように定義しています。

1.物品の販売(または役務の提供など)の事業であって

2.再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を

3.特定利益が得られると誘引し

4.特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするもの

引用元:消費者庁|特定商取引法の規制対象となる「連鎖販売取引」

簡単に言うのであれば、「商品の販売実績に応じて報酬がもらえますよ」「新規会員を勧誘することで権利収入が得られますよ」と言って新規会員を増やし、その会員がさらに新しく会員を勧誘することで、組織がピラミッド状に拡大していく仕組みのことをマルチ商法と言います。

連鎖販売取引の規定から逸脱すれば違法

ただし、連鎖販売取引の規定を守らなければ違法となります。例えば、粗悪品を高額で売っていたり、会員費が高額だったりした場合はマルチまがい商法やネズミ講と判断され逮捕されかねません。

また、本社自体は法律を守っていても、個人事業主の形態を取っている販売員が特定商取引法に違反した勧誘をして問題になっている場合もあります。

マルチ商法の評判が悪い5つの理由

ここでは、違法でもないのになぜマルチ商法の評判が悪いのかを具体的に見ていきましょう。

ねずみ講だと思われている

会員が会員を勧誘してねずみ算的に組織が拡大していくことや、「儲かる話がある」「誰でも稼げる」といった勧誘の胡散臭さから、マルチ商法=ねずみ講と考えている人もいます。

ねずみ講は特定の商品を扱っておらず、会員費を分配することで利益を得ていますが、マルチ商法は商品の売買で稼いでいるという違いがあります。ただ、マルチ商法も会員として登録する際に30万円という高額な登録料がかかる場合も多く、実質的にはねずみ講と大差がなくなってきます。

加入前に金銭的なリスクを説明しない

「人に商品のすばらしさを伝えるには、まずはあなたが利用してみて商品の良さを知りましょう。」など、マルチ商法に加入すると上記のように言われて商品を買わされることがあります。会員価格で買えるとは言え、商品数も多いので初期費用の負担は軽くありません。

また、「成功したいならセミナーへの参加は必須」と言われ頻繁にセミナーに出ることになりますが、当然セミナー代や移動代がかかってきます。さらに、新たな会員を獲得するためには食事に何回も誘わねばなりません。

回数を重ねていくうちに勧誘にかかるお金も馬鹿になりませんし、加入してみたら予想以上にお金がかかったなど、事前にリスクを説明しないまま勧誘されることがあります

知り合いに売られると断りにくいから

知らない人に飛び込み営業をされるのであればまだ断りやすいですが、知り合いの誘いだとなかなか断れないという人もいるようです。しかも、勧誘されたての人はセールスの初心者で、なおかつ夢や不労所得と言った浮ついた希望に踊らされているだけで、具体的に達成までのビジョンが明確になっていません。聞いている方からすれば胡散臭いので、イメージがどんどん悪くなっていきます。

勧誘員にモラルがないから

マルチ商法をする人で権利収入に興味がない人は少ないでしょう。自分の下につけた会員のグループ売上が一定以上に達すると会員のランクが上がり、得られる収入の額が増えていきます。

マルチ商法で成功するには、個人で商品を売りまくるだけでは不十分です。会員をどんどん増やし、自分のネットワークを拡大・維持する必要があります。自分が不労所得を得るためにはどんどん会員を増やさねばならないので、欲に目がくらみ相手のことを考えない、自分本位な勧誘をする人が出てきます。

勧誘方法が法に触れることがある

特定商取引法を守っている限りは違法ではないのですが、マルチ商法は連鎖販売取引と呼ばれガッツリと規制をされています。規制をすべて守っていてはとても勧誘できないですし、販売員のほとんどは法律に関しては素人なので平気で違法な勧誘をしてしまいます。

しかし、知っていようが知っていまいが違法は違法です。次は、どんな勧誘方法が法律に触れているのかを具体的に見ていきましょう。

マルチ商法において違法性がある6つの勧誘方法

マルチ商法において違法性がある6つの勧誘方法

ここでは、法律に反している勧誘方法を見ていきます。

勧誘目的と告げないままアポを取る

「めったに会えない人がいる」「〇〇さんに合わせたい人がいる」マルチ商法の典型的な勧誘文句ですが、実は違法です。特定商取引法第33条の2項に、「氏名などの明示」という規定があります。

(1) 氏名などの明示(法第33条の2)

統括者(連鎖販売業を実質的に掌握している者)、勧誘者(統括者が勧誘を行わせる者)または一般連鎖販売業者(統括者または勧誘者以外の連鎖販売業を行う者)は、連鎖販売取引を行うときには、勧誘に先立って、消費者に対して、次のような事項を告げなければなりません。

1.統括者、勧誘者または一般連鎖販売業者の氏名(名称)(勧誘者、一般連鎖販売業者にあっては統括者の氏名(名称)を含む)

2.特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨

3.その勧誘にかかわる商品または役務の種類

引用元:消費者庁

この法律を遵守すると、正しい勧誘の仕方は次のようになります。「マルチ商法の勧誘をするのでご飯に行きましょう。成果を出している販売員の○○さんという人に合いませんか?商品は主に洗剤などの日用品を扱っています」

「誰でも簡単に稼げる」「絶対儲かる」と誇大表現を使う

実際にマルチ商法で稼げているのは全体の一部ですし、絶対儲かるビジネスなどありません。簡単に言うのであれば「嘘をついて勧誘してはいけませんよ」「話を盛ってはいけませんよ」と規定しているのが特定商取引法36条誇大広告などの禁止です。

(4) 誇大広告などの禁止(法第36条)

特定商取引法は、誇大広告や著しく事実と相違する内容の広告による消費者トラブルを未然に防止するため、表示事項などについて、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものより著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止しています。

引用元:消費者庁

1度断られたのにまた勧誘する

実は、断られているのに何度も勧誘するのもアウトです。

(2) 再勧誘の禁止等(法第3条の2)

事業者は、訪問販売を行うときには、勧誘に先立って消費者に勧誘を受ける意思があることを確認するように、努めなければなりません。

消費者が契約締結の意思がないことを示したときには、その訪問時においてそのまま勧誘を継続すること、その後改めて勧誘することが禁止されています。

引用元:消費者庁

これは訪問販売に関する法律なので、連鎖販売取引には関係ないと思うかもしれません。しかし、連鎖販売取引にも商品を売る行為が含まれているので訪問販売に関する法律も守らねばなりません。

家で勧誘する

勧誘員や勧誘員の先輩の家など、公共の場所以外で連鎖販売取引に勧誘するのは違法です。あくまでファミレスやホテルのラウンジなど、他の人がいるところで契約をせねばなりません。

(4) 禁止行為(法第6条)

4.勧誘目的を告げない誘引方法(いわゆるキャッチセールスやアポイントメントセールスと同様の方法)により誘引した消費者に対して、公衆の出入りする場所以外の場所で、売買契約等の締結について勧誘を行うこと

引用元:消費者庁

契約するまで帰らない|帰らせてくれない

勧誘が長時間にわたったり、なかなか帰らせてくれなかったりする場合は以下の法律に触れます。断っているのに帰らせてくれないのは違法です。

三  その統括者の統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売契約を締結しない旨の意思を表示している者に対し、当該連鎖販売契約の締結について迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘をすること。

引用元:特定商取引法第三十八条三号

クーリングオフの説明をしないまま勧誘した

クーリングオフに関する説明をしないなど、重大なことを事前にあえて説明しない行為を事実の不告知といいます。誰でも儲かるわけではないのに実際は一握りの人しか儲けていない事実を言わなかったり、不労所得を得るにはどれぐらいの負担があるのかを告げなかったりするのも、似たような問題になってきます。

1.勧誘の際、または契約の締結後、その解除を妨げるために、商品の品質・性能など、特定利益、特定負担、契約解除の条件、そのほかの重要事項について事実を告げないこと、あるいは事実と違うことを告げること。

引用元:消費者庁|(2) 禁止行為(法第34条)

マルチ商法に勧誘された時の上手な断り方

マルチ商法は知り合いに勧誘されるからこそ断りにくくて困ってしまうものです。ここでは、あなたがマルチ商法の勧誘をされたときにどう対処すればいいのかを考えていきましょう。

無警戒に誰にでも合わない

久しぶりに連絡が来たと思ったらいきなり二人で会いたいと言ってくる。堂々と断れない人は、この段階で近づかないようにしておくといいでしょう。また、どうしても断りにくければ、他に友だちを誘いましょう。こちらが「会えない」と言っているのに、相手もイヤとは言えないはずです。

こちらのニーズを伝えない

マルチ商法の会員は勧誘の仕方を仕込まれる際に、相手のニーズを事前に掘り下げて聞くよう言われます。「〇〇は将来の夢はないの?」「今の収入に満足している?」と聞かれたら勧誘を警戒しましょう。

もし、このときに不満を述べてしまえば、そのうち「誰でも始められるいい稼ぎ方がある」「最近ビジネスをはじめた」などといい出し、あなたが食いつくのを期待してきます。現状の満足感を探ってきたら下手に応じず、ビジネスの話をされてもスルーしたり話題を変えたりしましょう。

きっぱりと興味が無いという

マルチ商法自体に興味がないという方法です。気が弱い人や優しい人はなかなか言い出せないかもしれませんが、そもそも自分の利益しか考えていない人のために遠慮する理由があるのでしょうか。本当にあなたのことを思っていれば、しつこく勧誘はしてこないはずです。

また、マルチ商法の会員は自社や自社の商品を本当に良いものだと信じ込んでいて「自分は夢や喜びを広げる仕事をしている」「非常識に挑戦した者のみが最後に富を掴む」と本気で思い込んでいる場合も少くありません。

いずれにせよ、きっぱりマルチ商法自体に興味がないと伝えないことには、迷っているんだなと勘違いされかねません。

「人が苦手なのでやりたくありません」と断る

マルチ商法は会員を勧誘しないと儲けられない以上、新しく人脈を増やすのは必須になります。積極的に人と関わる仕事が嫌だといえば、相手も勧誘するメリットはあまりないはずです。

「あなたとはこれからも付き合っていきたいからこれ以上誘わないで」と断る

本当に迷惑しているので、このまま誘うのであれば関係を切るとほのめかします。この反応次第で相手の本性もわかりますから、今後の付き合い方を考えるいい機会になるかもしれません。

一度その場から離れる

勧誘に付いていったが帰れない場合、その場で答えを出すのは厳禁です。何とかしてとりあえずその場から離れましょう。「お金のことは家族と相談しなきゃいけないから」「ゆっくり判断したいから」「この後仕事があるから」などと言って一度その場を離れ、良い断り方を考えるなり、LINEをブロックするなりしましょう。

まとめ

マルチ商法は違法ではないものの、会員が特定商取引法の規定から逸脱した違法な勧誘を行っていることは少なくありません。セミナーに行ったり紹介された人にあったりするとどんどん断りにくくなりますから、早いうちから疎遠になるなり断るなりしておきたいところです。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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