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KL2020・OD・037
交通事故に遭ってしまった場合は、加害者に対して慰謝料請求を行うことになりますが、最も気になるのは「どのくらいの額を請求することができるのか」という点ではないでしょうか。
交通事故の被害者が請求できる慰謝料は、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3種類に分類されます。また、交通事故の慰謝料を算定する上では、参考となる3つの基準があり、それぞれ自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準と呼ばれます。どの基準を採用するかにより、算定される慰謝料額は異なります。
なお、交通事故の被害者が支払われる損害賠償金は上記のような慰謝料だけではありません。被害者は交通事故と因果関係のある損害全てについて補償を受けることができます。法的手続外で解決する場合、このような損害の範囲・金額については加害者(加害者側保険会社)との協議・交渉により決めることになります。したがって、納得のいく金額について支払いを受けるためには、この協議・交渉が重要になります。
この記事では、交通事故の慰謝料の相場や、慰謝料を増額するためのポイントについて解説します。
目次
冒頭でも述べた通り、慰謝料の算定にあたっては自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つの計算基準が設けられています。ここでは、それぞれの計算基準について記載したいと思います。
自賠責基準とは、車やバイクの運転者であれば加入が義務づけられている「自賠責保険」での算定基準を指します。自賠責基準は、あくまで被害者の最低限度の保護を目的としているため、慰謝料の基準としては3つの中で最も低いものとなっています。
なお、自賠責基準での慰謝料等の損害賠償額の支払い金額や支払い基準は、法律により明確に決まっており、交渉の余地はありません。また、負傷、後遺症、死亡に対する補償については一定の上限があります。
もっとも、実際の示談交渉では自賠責基準に拘束される理由は特にないため、請求する慰謝料額が自賠責保険の基準・上限を上回っても問題はありません。
任意保険基準とは、加害者が任意加入している保険会社が内部的に用意している慰謝料算定基準です。
任意保険の基準は各保険会社が独自に設定しており、特に公開もされていないので、明確に把握することはできませんが、一般的には自賠責保険基準より少し高い程度であると言われています。
弁護士基準は別名「裁判所基準」ともいわれ、裁判での過去の判例を参考に日弁連交通事故相談センターが公表している基準です。なお実際の裁判実務でも、慰謝料を算定する際は弁護士基準を用いて計算しています。
弁護士基準は、裁判を行った結果認められた金額を参考にして集計されているため、慰謝料の相場として最も妥当性が高く、また金額も高い傾向にあります。
計算基準だけでなく、慰謝料の種類についても3つのタイプに分類され、以下のように被害状況によって該当するものは異なります。
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ここでは、実際にそれぞれの算定基準を用いた慰謝料の計算方法について簡単にご紹介します。なお任意保険基準についてはあくまで推定であり、実際の算定額を保証するものではありませんので、ご留意ください。
入通院慰謝料とは、事故によるケガを治療するために入院したり、通院したりした場合の精神的な苦痛に対する補償です。通院期間や実通院日数に応じて慰謝料額も増えるようになっていますが、青天井というものではありません。
自賠責基準で計算する場合の入通院慰謝料については、①・②のうち計算結果の小さい方が適用されます。
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<計算例>
「1ヶ月間(30日)の治療期間中に20日通院した場合」 ①4,200円×20日×2=16万8,000円 ②4,200円×30日=12万6,000円 ⇒②が適用 |
「3ヶ月間(90日)の治療期間中に40日通院した場合」 ①4,200円×40日×2=33万6,000円 ②4,200円×90日=37万8,000円 ⇒①が適用 |
任意保険基準で計算する場合、入通院慰謝料の相場としては以下の通りです。ただし、慰謝料詳細については保険会社ごとにバラつきがあるため、あくまで以下は目安の一つとしてご覧ください。
<任意保険基準の入通院慰謝料(単位:万円)>
治療期間が長くなるにつれて、増額率が逓減(増加する部分の金額が少しずつ減っていく)するようになっています。なお、この欄に記載がないほどに入通院が長引いても、打ち切りという訳ではありません。
弁護士基準で計算する場合、入通院慰謝料の相場は他覚症状がある場合/ない場合でそれぞれ異なります。なお、他覚症状とは「怪我の症状について他者が客観的に把握できる状態」を指し、具体的には負傷の部位・程度が画像により確認できることです。それぞれについてまとめると以下の通りです。
<他覚症状がある場合(単位:万円)>
<他覚症状がない場合(単位:万円)>
上記で解説した入通院慰謝料について、通院期間ごとにそれぞれまとめると以下のように異なります。
通院期間 |
自賠責基準 |
任意保険基準 |
弁護士基準 |
1ヶ月間 |
8万4,000円 |
12万6,000円 |
28(19)万円 |
2ヶ月間 |
16万8,000円 |
25万2,000円 |
52(36)万円 |
3ヶ月間 |
25万2,000円 |
37万8,000円 |
73(53)万円 |
4ヶ月間 |
33万6,000円 |
47万8,000円 |
90(67)万円 |
5ヶ月間 |
42万円 |
56万8,000円 |
105(79)万円 |
※自賠責基準については1月あたりの通院日数を10日と仮定。
※弁護士基準については、()外は他覚症状がある場合、()内は他覚症状がない場合を指す。
後遺障害慰謝料は、交通事故で負傷し、治療を尽くしたにもかかわらず一定の後遺症が残ってしまい、これについて一定の労働能力の喪失が認められる場合(このような後遺症を「後遺障害」といいます。)の精神的な苦痛に対する補償を言います。症状に応じて第1級~第14級まで等級が定められており、「どの等級に該当するか」によって相場の慰謝料額は変動します。
なお後遺障害についてスムーズな補償を受けるためには、相手自賠責保険により治癒後に残った後遺症が「後遺障害」である旨の認定を受ける必要があります。詳しくは「後遺症と後遺障害の違い|後遺障害等級認定を受けやすくなるポイント」をご覧ください。
自賠責基準で計算する場合、後遺障害慰謝料の相場としては以下の通りです。
<自賠責基準の後遺障害慰謝料(単位:万円)>
等級 |
慰謝料額 |
等級 |
慰謝料額 |
1,100万円 |
324万円 |
||
958万円 |
255万円 |
||
829万円 |
187万円 |
||
712万円 |
135万円 |
||
599万円 |
93万円 |
||
498万円 |
57万円 |
||
409万円 |
32万円 |
任意保険基準で計算する場合、後遺障害慰謝料の相場としては以下の通りです。
<任意保険基準の後遺障害慰謝料(単位:万円)>
等級 |
慰謝料額 |
等級 |
慰謝料額 |
1,300万円 |
400万円 |
||
1,120万円 |
300万円 |
||
950万円 |
200万円 |
||
800万円 |
150万円 |
||
700万円 |
100万円 |
||
600万円 |
60万円 |
||
500万円 |
40万円 |
弁護士基準で計算する場合、後遺障害慰謝料の相場としては以下の通りです。
<弁護士基準の後遺障害慰謝料(単位:万円)>
等級 |
慰謝料額 |
等級 |
慰謝料額 |
2,800万円 |
830万円 |
||
2,400万円 |
670万円 |
||
2,000万円 |
530万円 |
||
1,700万円 |
400万円 |
||
1,440万円 |
280万円 |
||
1,220万円 |
180万円 |
||
1,030万円 |
110万円 |
上記で解説した後遺障害慰謝料について、等級ごとにそれぞれまとめると以下のように異なります。
等級 |
自賠責基準 |
任意保険基準 |
弁護士基準 |
1級 |
1,100万円 |
1,300万円 |
2,800万円 |
2級 |
958万円 |
1,120万円 |
2,400万円 |
3級 |
829万円 |
950万円 |
2,000万円 |
4級 |
712万円 |
800万円 |
1,700万円 |
5級 |
599万円 |
700万円 |
1,440万円 |
交通事故の被害者が亡くなってしまった場合は、被害者の遺族に対して死亡慰謝料が支払われます。死亡慰謝料としては、被害者本人に対するものと、被害者の近親者固有のものがあります。
自賠責基準で計算する場合、死亡慰謝料の相場としては以下の通りです。
<自賠責基準の死亡慰謝料(単位:万円)>
請求する要項 |
慰謝料額 |
死者本人に対する慰謝料 |
350万円 |
死亡者に扶養されていた場合(※) |
200万円 |
慰謝料を請求する遺族が1人の場合 |
550万円 |
慰謝料を請求する遺族が2人の場合 |
650万円 |
慰謝料を請求する遺族が3人の場合 |
750万円 |
※死亡者に被扶養者がいる場合のみ200万円が加算。
(遺族が1人で扶養されている場合:350万円+200万円+550万円=1,100万円)
任意保険基準で計算する場合、死亡慰謝料の相場としては以下の通りです。
<任意保険基準の死亡慰謝料(単位:万円)>
死亡者の立場 |
慰謝料額 |
一家の支柱(※) |
1,500~2,000万円 |
配偶者、母親 |
1,500~2,000万円 |
上記以外 |
1,200~1,500万円 |
※当該被害者の世帯が、主として被害者の収入によって生計を維持している場合を指す。
弁護士基準で計算する場合、死亡慰謝料の相場としては以下の通りです。
<弁護士基準の死亡慰謝料(単位:万円)>
死亡者の立場 |
弁護士基準 |
一家の支柱 |
2,800万円 |
配偶者、母親 |
2,500万円 |
上記以外 |
2,000~2,500万円 |
上記で解説した死亡慰謝料について、死亡者の立場ごとにそれぞれまとめると以下のように異なります。
死亡者の立場 |
自賠責基準 |
任意保険基準 |
弁護士基準 |
一家の支柱 |
350万円 |
1,500~2,000万円 |
2,800万円 |
配偶者・母親 |
350万円 |
1,500~2,000万円 |
2,500万円 |
上記以外 |
350万円 |
1,200~1,500万円 |
2,000~2,500万円 |
交通事故の示談において、加害者に対して請求できる損害賠償金は慰謝料だけではありません。
インターネット上の記事の中には、慰謝料と損害賠償を混合しているようなものもあるようですが、あくまで慰謝料は「加害者に対して請求できる損害賠償の一部」にすぎません。ここでは加害者に対して請求できる損害賠償について、慰謝料のほかにどのようなものがあるのか見ていきましょう。
積極損害とは、ケガの治癒等により支出せざるを得なかった分の損害を指します。具体的には、治療にかかった費用や、治療のための交通費などが該当します。ここでは、積極損害として請求できる項目を一覧にして記載しておきます。
<積極損害の項目一覧>
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消極損害とは、交通事故によって本来獲得できていたはずの収入が獲得できなかったことに伴う損害を指します。消極損害は、以下のように休業損害と逸失利益の2つに分類されます。
休業損害とは、交通事故で負傷したことにより一定期間就労が不可能となった場合に、当該不就労により得られるはずの収入が得られなかったことに伴う損害を指します。被害者は交通事故と因果関係のある範囲で、休業損害を加害者(加害者側保険会社)に請求することができます。
例えば、「月給40万円・就労不可能期間3ヵ月」というケースの場合、この3ヶ月について交通事故との因果関係があると仮定すれば、請求するべき休業損害額は120万円ということになります。
ただし注意点として、休業しても実質的な収益減がなければ休業損害を請求することはできません。例えば、仕事は休んだものの、その間について給与が支払われているという場合には休業損害は認められません(もっとも、当該給与が欠勤に有給休暇を充てたことで支払われた場合には、有給休暇を消化したことに伴う損害がなお認められますので休業損害は否定されません)。
また、「休業損害が請求できる休業期間が明確でない」というケースもあります。代表的なのが専業主婦です。専業主婦は就労していないものの、家事労働に従事する者として休業損害を請求できます。しかし、専業主婦の休業はこれを客観的に証明することが難しいため、休業期間をどう考えるべきかでしばしば揉めます。
逸失利益とは、被害者が交通事故で負傷してた後遺障害が残ったような場合や死亡した場合に、将来得られたはずの収入の全部又は一部が得られなくなったことに伴う損害を指します。逸失利益は、以下のように後遺障害逸失利益と死亡逸失利益の2つに分類されます。
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が発生し、労働能力の全部又は一部が喪失されたことに伴い、将来得られることが想定されていた収入が当該喪失分について得られなくなったことに伴う損害を指します。計算式としては以下の通りですが、やや複雑なため、詳しくは「逸失利益の計算方法|正当な損害賠償を請求するための基礎知識」を参照してください。
<計算式>
後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間×ライプニッツ係数 |
※基礎収入:事故前の被害者の年収。
※労働能力喪失率:後遺障害による労働喪失能力の割合をパーセンテージで表したもの。
※労働能力喪失期間:労働能力の喪失を認めることができる期間
※ライプニッツ係数:将来付与分の利息を割り引く際の係数。
死亡逸失利益とは、被害者が死亡してしまった際に、死亡しなければ得られたであろう収入が得られなくなったことに伴う損害を指します。計算式としては以下の通りですが、こちらについても詳しくは「逸失利益の計算方法|正当な損害賠償を請求するための基礎知識」を参照してください。
<計算式>
死亡逸失利益=(基礎収入―生活費控除率)×労働能力喪失期間×ライプニッツ係数 |
※生活費控除率:将来獲得できたであろう収入から、支出するはずだった生活費を控除する際に用いる数値。
交通事故の被害者になってしまった場合、法的手続外で解決するのであれば、加害者又は加害者側保険会社との間で損害賠償額について協議・交渉を行うことになります。
相手から適正な提案があればよいのですが、多くの場合、相手方から提示される金額は適正額を下回ることが多いです。ここでは、慰謝料請求にあたって適正額で示談するためのポイントについて記載します。
入通院慰謝料は、どの基準を用いた場合でも通院期間と通院日数を加味して計算されます。そのため、通院日数と通院期間が増えれば、基本的に慰謝料額も高くなります(青天井ではありませんし、増額の幅には限界があります)。
慰謝料を得るためにだけに不必要な通院や過剰な通院を行うべきでないことは当然ですが、「面倒だから」「仕事が忙しいから」と必要な治療についてもこれを怠れば、結局、本来受け取るべき慰謝料額よりも低い金額しか受け取れないということになりかねません。交通事故による負傷の程度に応じた、適切な治療を定期的・継続的に受けることが大切です。
なお、下記の後遺障害の認定のプロセスでも、必要な治療を適切に受けているかどうかは重要です。後遺障害認定の申請には担当医師の作成した「後遺障害診断書」が必要となりますが、必要な定期通院をしていないと医師から「経過を十分に見ていないので作成できない」と作成を断られてしまうケースもあるそうです。
症状固定(治療を行ったにもかかわらず治癒しない障害が残ること)となった時点で一定の後遺症が残ったような場合は、当該後遺症について後遺障害認定を受けるかどうか検討するべきでしょう。
というのも、当該後遺症について、法的手続を履践せずにスムーズな解決を目指すのであれば、相手自賠責保険から後遺障害として認定を受ける必要があります。
もしも当該認定を受けることができれば、示談交渉により、負傷についての補償だけでなく、後遺障害についての補償も併せて受けられる可能性が高いです。
上記のとおり、相手方(特に相手保険会社)からの賠償提示額は往々にして低額に抑えられている場合が多いです。相手保険会社は、基本的には加害者側の立場ですし、保険会社自体も営利企業であるため、損害賠償額を敢えて高めに算定・提案するインセンティブはありません。
そのため、被害者側でより適正な補償を望むのであれば、相手保険会社と示談金について辛抱強く協議・交渉をする必要があります。しかし、それでも素人と保険会社では交渉力に格差があり、思うように交渉を進めるのは通常困難です。
そこで、相手保険会社と本気で交渉したいのであれば早めに弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士であれば相手保険会社以上に交渉力がありますので、適正な金額で示談がまとまる可能性が飛躍的に高まります。
慰謝料等の交渉を弁護士に依頼する際に注意してほしい点があります。それは交通事故に注力している弁護士に依頼をするということです。
弁護士が扱うことのできる法律分野は多岐にわたります。そのため、一人の弁護士があらゆる分野においてたくさんの経験を積んでいるという可能性は低いです。依頼先によっては、妥当な慰謝料を獲得できない場合もあるため注意しましょう。
交通事故の被害者救済を積極的に扱っている弁護士は、当サイト『あなたの弁護士』より探すことができます。地域ごとに簡単に絞り込み検索ができるため、慰謝料交渉について依頼したいと考えている方はぜひご利用ください。
慰謝料の相場と、その増額方法について理解していただけましたでしょうか。
保険会社が提示する慰謝料額は妥当でない可能性があります。もし少しでも不安なことがあるならば、『あなたの弁護士』から希望内容に合った弁護士を探し、交渉を依頼することをおすすめします。
決して安くない弁護士費用。いざという時に備えてベンナビ弁護士保険への加入がおすすめです。
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