交通事故に関する示談書の作成例と確実に示談金を受け取るための対策とは

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
交通事故に関する示談書の作成例と確実に示談金を受け取るための対策とは

交通事故の示談書(じだんしょ)は、加害者より受け取る示談金額などを定める書面であり、加害者側の任意保険会社と行う示談交渉で話し合った内容を証拠として残すために作成されるものです。

基本的には示談金額を提示する任意保険会社が示談書を作成することが多いですが、示談金額以外にも重要な項目があるため、見逃してしまうと被害者側が不利な条件で示談を成立させてしまう可能性があります。

それと、任意保険会社が決める示談金額は低く設定されていることもあるため、妥当な額であるかどうかを見極めるために、慰謝料や損害賠償金などの相場を把握して、自分で示談書を作成して交渉するべきでしょう。

今回は示談書を作成する際に知っておくべきことをまとめましたので、示談書のフォーマットを含めてご参照いただければと思います。

交通事故で示談書を作成する目的と理由

交通事故で示談書を作成する目的と理由

示談書の記載内容について確認する前に、『そもそも示談書とはいつ、どのような目的で作成するのか』といった概要を最初に説明していきます。

加害者側より支払われる示談金額(慰謝料と損害賠償金額)を確定させる

交通事故における示談交渉では加害者より支払われる示談金の金額について話し合われますが、示談金は慰謝料等の損害賠償金を全て含めた金銭のことです。
参照元:「交通事故の示談金相場|示談金の一部である慰謝料額を決める基準

示談金額の確定と支払いにより当事者同士が和解する

支払われる示談金額が確定することで示談が成立し、当事者同士の和解が認められます。交通事故の被害内容によっては1,000万円以上の高額な示談金になるケースもあるため、合意内容を書面で残す必要があるでしょう。

示談書は基本的に任意保険会社側で作成する

冒頭で説明した通り、示談書は加害者側の任意保険会社で作成してもらうことが多いですが、記載内容に不備があったり示談金額に納得がいかなかったりする場合は、被害者側から主張するために自分で示談書を作る場合も出てきます。

示談交渉をする時期はケガが完治してから|または後遺障害等級の認定を受けてから

示談交渉をするタイミングも重要であり、基本的には交通事故で負ったケガが治ってから(後遺症として残った場合は後遺障害等級認定を受けてから)任意保険会社と示談を始める必要があります。

理由としては、完治していない場合や後遺障害等級の申請中である場合は請求する損害賠償金(治療費)や慰謝料が確定していないからです。また、任意保険会社より早期的な示談成立を要求する場合もありますが、治療費の打ち切りを目的としていることもあるので注意しましょう。

※示談交渉については『示談交渉の適切なタイミングは?』でも解説しているので、併せてご確認いただけますと幸いです。

交通事故の示談書に記載するべき事項

交通事故の示談書に記載するべき事項

交通事故案件で利用される示談書には決まったフォーマットはありませんが、記載するべき事項はある程度決まっているので以下にて取り上げます。

事故内容|交通事故証明書を参考

交通事故の内容や状況について記載する必要があり、具体的な以下の項目があります。

  • 交通事故の発生日時
  • 交通事故の発生場所
  • 当事者(被害者と加害者)の氏名と住所
  • 交通事故証明書番号、登録車両番号
  • 交通事故の概況

交通事故の経緯について細かく書く際には、取得した交通事故証明書を参考にすると正確に記載できます。交通事故証明書は自動車安全運転センター事務所の窓口や郵便局より発行の申請ができますが、インターネットからの申し込みもできるようです。
参照元:「自動車安全運転センター 各種証明書のご案内

示談金額と支払方法|支払期限も重要

交通事故の示談書で一番重要であるのが、上記で説明した通り示談金額です。ただし、金額以外にも支払い方法を明確に決めておく必要があり、特に加害者が一括で払えない場合において分割払いの条件(1回の支払い額や支払期限)も確認するべきです。

示談金の内訳と根拠|後遺障害等級の認定や過失割合が算出基準

示談金額を交渉する上で、示談金の内訳と根拠が妥当であるかどうかが確認されます。慰謝料といっても入通院慰謝料に後遺障害慰謝料、死亡慰謝料といった種類に分かれ、損害賠償金も治療費だけでなく休業損害や後遺障害逸失利益など収入の損失に関する項目があるので、それぞれの損害賠償金の算出基準を考える必要があるでしょう。

参照元:「交通事故慰謝料を正しく計算し適正な慰謝料を獲得する全手順

それと、後遺障害等級認定を受けた場合は等級に見合う額の慰謝料であるかが問われますが、相場に基づく慰謝料の全額支払われるケースが全てではなく、被害者側に多少の過失が認められた場合には過失相殺により示談金が減額されるので、過失割合も正しく明記しておきます。

【関連記事】
▶「後遺障害等級の認定基準|適切な等級に認定されるための基礎知識
▶「追突事故の過失割合|加害者と過失割合の主張が分かれた場合の対処法

清算条項|債務(債権)の範囲確定

また、交通事故の示談書で当事者同士の問題を解決し、示談書以外では一切の債務や債権が発生しないことを確定させるために、『示談書で取り決めた内容以外の債権債務は存在しない』という清算条項を示談書に明記します。

示談書のフォーマット例

示談書のフォーマット例

上記の記入事項を参考に、以下で示談書の文例を作成しましたのでご活用いただければと思います。当事者同士(加害者と被害者)の署名捺印で、示談の合意が確定します。

 

示 談 書

《事故当事者》

加害者(甲) 住所 :東京都新宿区西新宿○-○-○

       氏 名 :アシロ 太郎

       運転者氏名:同上

       登録番号 :品川○○ あ 〇〇〇〇

被害者(乙) 住所 :東京都新宿区西新宿○-○-○

       氏 名 :アシロ 花子

       運転者氏名:同上

       登録番号 :品川○○ い 〇〇〇〇

事故発生場所 :東京都世田谷区 若林3丁目 交差点

事故発生年月日:平成28年 〇〇月 〇〇日

《事故概況》

上記日時、場所において乙が上記車両を運転して交差点を直進しようとしたが、右折レーンより追い越しをしようとした甲の車両に追突されたもの。

本事故により甲はむち打ち症(頸椎捻挫)の後遺症を負い、後遺障害第14級9号の認定を受けた。

《損害額》

甲は乙に対し、合計1,900,000円の支払い義務があることを認める。

(内訳)

治療関係費:200,000円

休業損害:400,000円

入通院慰謝料:500,000円

後遺障害慰謝料:800,000円

なお、上記の金額は以下の責任割合を基に過失相殺をされたものである。

・甲の責任割合:90%  ・乙の責任割合:10%

《支払い条件》

甲は損害額1,900,000円を平成29年8月末迄に、乙の指定する銀行口座へ送金する。※振込手数料は甲の負担とする。

双方協議の結果、上記の条件をもって示談解決した。よって、今後いかなる事情が生じたとしても一切の異議申立てを認めず、示談書で取り決めた内容以外の債権債務が存在しないことを確認する。

平成29年7月1日
住所:東京都新宿区西新宿○-○-○
氏名:アシロ太郎     印
住所:東京都新宿区西新宿○-○-○
氏名:アシロ花子     印

示談金を確実に支払ってもらうための対策

示談金を確実に支払ってもらうための対策

示談書を作成しても、加害者から示談金を支払ってもらわなければ意味がありません。加害者が踏み倒す可能性があるので、確実に示談金を支払わせるための対策について以下で説明します。

違約金の設定をする

加害者側の経済状況が怪しく、分割払いでも支払いが滞りそうな場合には違約金(または遅延損害金)を設定するのが良いでしょう。

指定した支払い期限までに示談金(損害賠償金や慰謝料など)が支払われない場合のことを考えて、『支払い期限日の翌日より残金の支払いが済むまで、年18%の割合による金員(違約金)を支払うものとする』などと《支払い条件》に追記することになります。

違約金は固定額(〇〇万円の支払い)という指定もできますが、一日でも早く示談金を支払ってもらうためには年利率で違約金を上乗せした方が適切です。

公正証書化をしておく|強制執行が可能

加害者が示談金を支払わなかった場合には裁判を提起する手間がかかります。

ただし、公証役場を利用して示談書を公正証書化にすることで、示談金の支払いが滞った段階ですぐに強制執行の手続きを取れるようになります。

公正証書化にするためには、示談書に『金銭債務を履行しない場合、強制執行を受けても異議がない』と追記しておいた上で、最寄りの公証役場に作成を依頼します。
参照元:「日本公証人連合会 公証役場一覧

公正証書をつくる費用

公正証書を作成するには以下表の通り、目的の価格(示談金額)に応じた手数料を支払う必要があります。当事者の負担になる費用であるためデメリットになりますが、示談書の証拠能力を高めて確実に示談金を支払わせる執行力を考えると、手数料を払う価値はあるといえるでしょう。

目的の価額

手数料

100万円以下

5,000円

100万円を超え200万円以下

7,000円

200万円を超え500万円以下

11,000円

500万円を超え1,000万円以下

17,000円

1,000万円を超え3,000万円以下

23,000円

3,000万円を超え5,000万円以下

29,000円

5,000万円を超え1億円以下

43,000円

1億円を超え3億円以下

43,000円
※5,000万円までごとに、13,000円を加算

3億円を超え10億円以下

95,000円
※5,000万円までごとに、11,000円を加算

10億円を超える場合

249,000円
※5,000万円までごとに、8,000円を加算

参照元:「日本公証人連合会 手数料

任意保険会社より提示された示談内容に不満がある場合には?

任意保険会社より提示された示談内容に不満がある場合には?

被害者側が示談書を作成する状況というのは、任意保険会社から提示されて示談内容(示談金額)などに不満がある場合になりますが、任意保険会社へ妥当な示談条件を主張する際の注意点について最後にまとめました。

治療費の支払いを一部拒否された場合|治療の妥当性について訴える

被害者が負担した治療費の一部を任意保険会社から支払ってもらえない場合があり、特に後遺症(後遺障害)として症状が残る基準になる症状固定をめぐって任意保険会社と争われるケースがあります。

症状固定は治療の継続性を判断するものであり、基本的には担当の医師と話し合って決めることです。したがって、任意保険会社から治療費の支払い拒否や打ち切りをされた場合には医師と相談し、診断書などで治療の妥当性について証明する必要があるでしょう。

参照元:「症状固定後の示談で被害者が有利に交渉を進めるための方法

示談交渉が長くかかりそうな場合|損害賠償請求権の時効を考慮する

示談がまとまらず長くかかりそうな場合には、損害賠償請求権の時効を考慮するべきです。交通事故による損害賠償の請求権は、事故発生日より3年以内だと法律で規定されています。

3年を過ぎると加害者から示談金をもらう権利を失ってしまうため、加害者側に念書を書かせて治療の一部を支払ってもらったりして時効を中断させる対応も考えるようにしましょう。

参照元:「交通事故の示談交渉では3年の時効が存在する

示談金(慰謝料)の相場を確認|弁護士への依頼で慰謝料が増額される

示談交渉で妥当な額の示談金を見極める場合は、慰謝料や損害賠償金の相場を知っておくことも大事ですが、示談金を増額させる方法も重要です。

一般的には弁護士に依頼することで、裁判事例を基にした高額な弁護士基準による示談金の請求ができるため、任意保険会社より提示された示談金額に納得がいかない場合は、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょう。

【関連記事】
▶「交通事故の示談交渉で弁護士に依頼するメリットとタイミング
▶「交通事故の示談金相場|示談金の一部である慰謝料額を決める基準

自分だけの判断が難しい場合は絶対に署名捺印はしないこと

上記で説明した通りの注意事項をおさえた上で任意保険会社との示談交渉に対応していただければと思いますが、示談条件を承諾できるかどうか悩む場合には、絶対に示談書へ署名捺印はしないようにするべきです。

示談書に一度でも署名捺印してしまうと撤回が非常に難しくなるため、示談書の確認は慎重に行い、必要に応じて担当の医師や弁護士と話し合って判断するのが正しいやり方です。

まとめ

交通事故における示談書の作成方法について解説しましたが、被害者側が不利な示談条件で承諾しないように記載内容を確認して、加害者側の任意保険会社と話合うことが重要になります。

自分だけでは示談交渉が不安に思った場合でも弁護士に依頼すれば代理してくれるので、弁護士に相談して早期的な和解を目指しましょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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