詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役|詐欺罪の基礎知識と逮捕要件まとめ

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役|詐欺罪の基礎知識と逮捕要件まとめ

詐欺罪とは、誰かを欺(あざむ)いてその人の財物を交付させたり、誰かを欺くことで財産上不法の利益を得たり他人にこの利益を得させた場合に成立する知能犯の一種で、刑法246条に規定されています。

(詐欺)

第二百四十六条  人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

引用元:刑法246条

このとき、詐欺罪を構成する行為によって1項詐欺罪・2項詐欺罪と区別することがありますが、本質的には「人を欺いて財産を詐取または欺かれた人の処分行為によって財産上不法の利益を得る犯罪等」が詐欺罪にあたると考えていただければ良いかと思います。

詐欺罪は、10年以下の懲役刑が科される重い罪で、初犯であっても執行猶予がつかないケースが多くありますので、基本的な知識を押さえて置くべき犯罪の1つといえます。

この記事では、詐欺罪の具体例や基本的な知識、逮捕された際の流れなどをご紹介いたします。

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詐欺罪の構成要素|法定刑は10年以下の懲役

詐欺罪の構成要素|法定刑は10年以下の懲役

詐欺罪は、刑法246条1項・2項で構成要件や刑罰が定められていますが、懲役刑だけが想定されている重い罪ということができます。また、詐欺罪は執行猶予がつきにくい犯罪類型であり、いわゆる「受け子」として何も知らずに犯罪に加担してしまうケースも増えているため、まずは詐欺罪の概要をご紹介したいと思います。

1項詐欺罪の構成要件

1項詐欺罪とは、人を欺いて財物を交付させた際に成立する詐欺罪で、要は「他人を騙して」「他人の占有する」「他人の動産・不動産、電気」を取得した場合に罪に問われるということになります。

(詐欺)

第二百四十六条  人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

引用元:刑法246条

窃盗罪と大きく違う点は、不動産も詐欺罪の客体に含まれるということです。また、電気については窃盗罪(235条・245条)でも詐欺罪(246条・251条・245条)でも「財物」になります。

  1. 欺罔(欺く行為)
  2. 錯誤(さくご)
  3. 処分行為
  4. 財物の移転

2項詐欺罪の構成要件

2項詐欺罪は、1項詐欺罪と異なり、財物の交付ではなく「財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させること」が処罰対象になります。

2  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

引用元:刑法246条

2項詐欺罪の構成要件も、

  1. 欺く行為
  2. 錯誤
  3. 処分行為
  4. 利益の移転

で、1項詐欺罪と概ね同じ考え方で判断していきます。ただし、2項詐欺罪の場合は「不法の」利益という表現から、「不法の手段によって」利益を得た場合が処罰対象になります。

得られた利益が不法なものという意味ではないことから、例えば詐欺賭博によって客に債務を負担させると2詐欺罪が成立するといえます(最決昭和43年10月24日)。

具体例でみる詐欺罪の逮捕要件

具体例でみる詐欺罪の逮捕要件

以上が詐欺罪の概要になりますが、実際に詐欺罪で逮捕される可能性があるのはどのようなケースなのでしょうか。ここでは、身近な詐欺罪の具体例をご紹介していきたいと思います。

金属片等を利用した公衆電話機などの不正使用は詐欺罪になるか

通貨に似た金属片などを利用して公衆電話機や自動販売機などを不正使用する行為は、「人を欺く」行為ではないので、原則として詐欺罪にあたるとは言えません。

しかし、財物の取得があれば別途窃盗罪などの罪が問題になるほか(単に利益を得ただけに過ぎない場合には利益窃盗として不可罰です)、偽造通貨を利用した場合には偽造通貨行使罪に問われることになりますので、詐欺罪にならない可能性が高いとは言え、避けるべき行為であると言えるでしょう。

釣銭詐欺は詐欺罪になるか

買い物をした際などにお釣りが多かった場合、あなたはどうしますか?

実は、釣り銭が多いことに気がついていたのに黙って受け取ってしまうと、詐欺罪にあたる可能性があります。

①釣り銭が多いことにその場で気づいたのに黙って受け取った場合

この場合、1項詐欺罪の構成要件を満たしており(不作為による1項詐欺罪)、お店側が訴えると罪に問われてしまう可能性があります。

あまりにも金額の誤差が大きくなければ神経質にならなくて良いとは思いますが、褒められた行為ではありませんし、一応詐欺罪の構成要件を満たす行為であることは覚えておいてください。

②釣り銭を受け取ってしばらくしてから多いことに気づいたが、そのまま放置し持ち帰った場合

この場合、占有離脱物横領罪が成立する可能性はあります。ただし、こちらに関しても罪に問われるケースは稀なので、金額が少額であれば怖がらなくても大丈夫でしょう。とはいえ、この場合でも罪にあたる可能性がある行為であることは忘れないでくださいね。

③釣り銭が多いことに後で気づき、後日返すように言われたのに、釣り銭は多くなかったと主張した場合

この場合は、2項詐欺罪と占有離脱物横領罪が問題になります。ケースによって判断が分かれることになりますので、金額が多額であり、心配な方は弁護士に相談するのがおすすめです。

無銭飲食・無銭宿泊は詐欺罪になるか

いわゆる食い逃げや、会計時にお金がないことに気がついた場合には、詐欺罪に問われる可能性があります。

①注文時に既に支払意思がなかったケース

まず、注文時点(宿泊の場合はチェックイン時点)で既に支払の意思がない場合には、注文やチェックインをするという行為自体が「欺く行為」といえ、作為による詐欺罪が問題になります(大判大正9年5月8日「飲食店又は旅館で注文主又は宿泊者が、支払の意思がないのに、その事情を告げずに単純に注文又は宿泊する場合は、その注文又は宿泊行為自体が欺罔行為である」)。

そのため、無銭飲食の場合は1項詐欺罪が、無銭宿泊の場合は2項詐欺罪がそれぞれ問題になりますが、これに関連して、キセル乗車については2項詐欺罪を認めた裁判例がありますし、タクシー等の無賃乗車の場合も2項詐欺罪が成立する可能性があります。

②会計時に支払能力がないことに気づいたケース

この場合は、「代金債務を免れる」といえるため、2項詐欺罪が問題になります。特に店員を騙して逃走した場合には詐欺罪が成立するケースがあり、逆に店員等の隙をついて逃走したような場合では利益窃盗とされ、不可罰となります。

これだけ聞くと「逃げちゃえばOK」と感じられるかもしれませんが、そんなに上手くは行きません。逃走の際に誰かを怪我させてしまうと最悪の場合は強盗罪になりかねませんし、誰が見ても犯人だと分かる状況だと現行犯逮捕の危険もあります。

逃げる=罪に問われないというわけではありませんので、安易に食い逃げ等をしないようにしましょう。

誤振込と詐欺罪の関係

誤振込で預金を受け取ってしまったケースでも、詐欺罪が成立する可能性が非常に高いといえます。

まず、誤振込がなされた時点でその金銭の占有は銀行等の金融機関に属するわけですが、誤振込に気づいてこれを隠して預金を払い戻すことが欺罔行為(欺く行為)といえるため、預金の払戻しを窓口係員から受けた場合には詐欺罪が成立すると考えるのが判例(最決平成15年3月12日等)です。

判例の考え方を採ると、ATM等の機械から誤振込された預金を受け取る場合には窃盗罪が、ATMを利用して誤振込された預金を他人の口座に送金すると電子計算機使用詐欺罪が成立するといえるので、このような場合は払い戻しを受けるのは危険であると言えるでしょう。

詐欺罪で逮捕された際の手続きの流れ

詐欺罪で逮捕された際の手続きの流れ
基本的にどのような容疑で逮捕されたとしても、

次のような流れで進みます。

  • 警察による逮捕:最長48時間
  • 検察庁への送致:最長24時間
  • 勾留:原則10日、延長の場合最大20日
  • 起訴・不起訴の判断

詐欺罪の量刑と時効

詐欺罪の量刑と時効

詐欺罪は、10年以下の懲役刑が科されることになっています。そして、詐欺罪の時効については、刑事訴訟法250条2項から読み取ることができます。

第二百五十条  時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。

一  無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年

二  長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年

三  前二号に掲げる罪以外の罪については十年

2  時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。

一  死刑に当たる罪については二十五年

二  無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年

三  長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年

四  長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年

五  長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年

六  長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年

七  拘留又は科料に当たる罪については一年

引用元:刑事訴訟法250条

詐欺罪は長期15年未満の懲役にあたる罪なので、時効期間は7年ということになります。

まとめ

詐欺罪は身近な行為からも成立しうる犯罪なので、被害者だけでなく加害者になってしまう可能性が誰にでもあります。自分から積極的に欺く行為をしなくても、知っていることを黙っていただけで欺罔行為と判断されるケース(不作為による詐欺罪の可能性)もありますので、黙っていればバレないと安易に考えるのは避けたほうが無難でしょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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