労働基準法で逮捕される事例|会社への罰則と労基署からの指導の対処法

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
労働基準法で逮捕される事例|会社への罰則と労基署からの指導の対処法

「労働基準法違反で逮捕なんかしていたら日本から会社がなくなっちゃうよ!」現代の日本の労働環境だとそんな風に思う方も多いかもしれませんが、労働基準法違反も犯罪行為と定められているものもあります。

そのため、状況によっては逮捕に繋がる可能性も十分にあります。

この記事では労働基準法違反と逮捕の関係性についてご紹介しますので、会社に労基署から指導が入るとどうなるのかを確認しておきたい場合はぜひ参考にしてみて下さい。

悪質な労働基準法違反は逮捕される

労基署には逮捕権がある

労働基準法違反が明白かつ重大であり、かつ労基署(労働基準監督署、以下より労基署と記載)からの再三の指導・勧告によっても改善がないという場合、労基署が同違反について刑事事件として立件することがあります。また、非常に珍しいケースですが、労基署が当該違反行為を繰り返す経営者を逮捕するということもあります。

逮捕は警察官の仕事というイメージが強いですが、労基署にも特別司法警察職員という役職が存在し、逮捕・強制調査・証拠品の押収など警察に準ずる権限が与えられているのです。

労働基準監督官は、この法律違反の罪について、刑事訴訟法 に規定する司法警察官の職務を行う。

引用元:労働基準法102条

労働基準法を破ったら即逮捕というわけではありませんが、労基署の判断によっては後々に逮捕まで発展する可能性があることを認識しておくと良いでしょう。

労働基準法違反で科される罪

罰則

違反事項

1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金 ・強制労働の禁止(第5条)
1年以下の懲役または50万円以下の罰金 ・中間搾取の廃除(第6条)・最低年齢(第56条)・年少者の坑内労働の禁止(第63条)・女性の坑内労働の禁止(第64条の2)
6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金 ・均等待遇(第3条)・男女同一賃金の原則(第4条)・公民権行使の保障(第7条)・賠償予定の禁止(第16条)・前借金相殺の禁止(第17条の2)・強制貯蓄(第18条第1項)・解雇制限(第19条)・解雇の予告(第20条)・退職時等の証明(第22条第4項)・労働時間(第32条)・休憩(第34条)・休日(第35条)・時間外および休日の労働(第36条第1項但書)・時間外・休日及び深夜の割増賃金(第37条)・年次有給休暇(第39条)・年少者の深夜業(第61条)・年少者の危険有害業務の就業制限(第62条)・妊産婦の危険有害業務の就業制限(第64条の3)・産前産後休業(第65条)・妊産婦の時間外労働等(第66条)・育児時間(第67条)・職業訓練に関する特例(第72条)・療養補償(第75条)・休業補償(第76条)・障害補償(第77条)・遺族補償(第79条)・葬祭料(第80条)・寄宿舎生活の自治(第94条第2項)・寄宿舎の設備および安全衛生(第96条)・監督機関に対する申告をした労働者に対しての不利益扱い等(第104条2項)

参照元:労働基準法

上表では逮捕(懲役)の罰が課される労働基準法違反をまとめさせて頂きました。ちなみに、上表に記載のもののほか、30万円以下の罰金刑が定められた違反行為もあります。

労働基準法違反の逮捕事例

労働基準法違反の逮捕事例

最低賃金法違反

新宿労働基準監督署は,平成27年3月2日,居酒屋経営者を最低賃金法違反の疑いで逮捕し,平成27年3月3日,東京地方検察庁に同経営者を身柄と共に送検し,当該居酒屋を経営する法人も書類送検した。

引用元:東京労働局|厚生労働省

逮捕された経営者はその以前にも給与未払いの行政指導を受けていましたが、それに従わず出頭命令も拒否し続けたため、罪証隠滅の可能性が疑われ逮捕され書類送検という流れに繋がりました。

長時間労働による労災事故

法定基準を超えた連続出勤・長時間勤務により、自動車運転の代行業務を勤める雇用者が労災を起してしまい、重大な刑事責任が問われる案件と判断され逮捕されてしまった事例。

参照元:平成28(わ)556  道路交通法違反,労働基準法違反被告事件

会社は以前にも時間外労働の指導を受けているかつ、雇用者が過重労働による過労状態であることを認識しつつも業務を命じているため、相応の刑事責任は免れないと判断され1年6ヵ月の懲役が命じられました。

雇用者から労基署へ相談される可能性が高い違反行為

雇用者から労基署へ相談される可能性が高い違反行為

賃金・残業代の未払い

賃金や残業代などの給与不払いは、労働基準法の知識がない雇用者でも不当な扱いをされていると直ぐに気が付ける違反行為のため、労基署へ相談される可能性が高いです。

未払い賃金に関しては言うまでもありませんが、未払い残業代もネットで労働基準法の知識を得る労働者が増えた影響により、違反行為に気が付き対処される事例が増えていくことでしょう。

たとえ、会社で残業代は出さないと定めていたとしても、当然ですが就業規則よりも国の法律(労働基準法)が優先されてしまうのでご注意下さい。

最低賃金を下回る給料

正社員であってもその基本給与が最低賃金法の給与を下回っているようであれば、労働基準法違反として扱われてしまいます。

雇用者は残業・夜勤・休日出勤などの特別手当を除いた基本給与で必ず最低賃金法で定められた価格以上の賃金を支払わなければいけません。下記の計算式のように『基本給与+残業代』で最低賃金を超えていても違反行為になるので注意が必用です。

<東京都(958円)で月22日勤務した正社員の場合>
〇『20万円(基本給与)』>『16万8608円(958×8×22)』
×『15万円(基本給与)+残業代5万円』<『16万8608円(958×8×22)』

長時間労働

メディアで長時間労働が取り上げられ『ブラック企業』という名称が普及した近年では、勤務時間に関して法律上の知識を持つ労働者も増えました。

労働基準法36条に基づいたサブロク協定により、残業時間の上限は原則月45時間と定められています。これを超えて時間外労働を命じるためには、同協定に特別条項を定め、これに従った手続を履践しなければいけません。

このような上限を超える残業行為は、労働者側が良しとしていても違法な時間外労働となります。そのため、当該事実が労基署に発覚した場合、是正指導・勧告の対象となってしまいます。

労災隠し

社内・業務中に労働者がケガをしたら、会社はその事実を労基署に報告して労働障害保障を与える義務があり、これを怠った場合は労災隠しとして扱われてしまいます。

労働者が故意でケガを負ったという状況でない限りは、基本的に社内・業務中での負傷は全て労災補償の対象になるので、「怪我が軽いから、自分の不注意だから」と断る違反行為をしないようお気を付けください。

労基署が会社に調査しに訪れたら

労基署が会社に調査しに訪れたら

指導を素直に受け入れ必ず改善をする

労災で労働者が亡くなったなど、よほど重大な違反行為でない限りは1回の指導で即逮捕というケースはほとんどありえません。

しかし、上記の逮捕事例を見ると分かりますが、労基署から注意されたにも関わらず全く改善の余地が見られず、何度も雇用者から労基署へ相談されているような状況だと逮捕(少なくとも刑事立件)に踏み切られてしまう可能性があります。

特に直接調査に訪れた労基署の職員をぞんざいに扱ってしまえば、悪質な企業と印象を抱かれ刑事手続の対象となる可能性が高くなってしまうので、指導に対しては誠実に対応しましょう。

相談者を特定して処分しない

労基署は誰から相談があったのかを明かすことはありませんが、指導内容が労災や解雇問題など対象者が少ないものだと、誰から相談があったのか予測できてしまう場合もあるかもしれません。

ただ、もしそれを理由に相談者に何らかの処分を行えば、その行為は労働基準法違反に該当するため、再び労基署に相談をされると処罰を受ける可能性が高いのでご注意下さい。

事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
〇2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

 引用元:労働基準法104条

会社には雇用者が労基署へ相談に行く権利を奪いそれを理由に不利益を与えることは禁じられているので、労基署へ相談されたくなければ、労働基準法を遵守した正当な経営を心掛けましょう。

もしも逮捕されてしまったら

もしも逮捕されてしまったら

逮捕された後の流れ

上図は逮捕されてから罪が確定するまでの流れです。逮捕された時点ではまだ罪は確定されず、勾留後に起訴が決定して初めて犯罪として処罰を受けることになります。

  • 警察による逮捕:最長48時間
  • 検察庁への送致:最長24時間
  • 勾留:原則10日、延長の場合最大20日
  • 起訴・不起訴の判断

逮捕されてから最大23日間は身柄を拘束され外部との連絡が絶たれます。起訴され有罪となれば罰金や懲役の刑罰が科されることになります(仮に懲役刑でかつ執行猶予がつかない場合、刑務所に入れられてしまいます。)。

不用意な発言はせず直ぐに弁護士を呼ぶ

逮捕された時点では、被疑者は無罪の推定を受けます。尋問を受ける前に弁護士からアドバイスを受ければ、状況によっては長期の身柄拘束を免れる可能性があります。

逮捕されて尋問が始まる前に警察は「弁護士を呼びますか?」と必ず訪ねてくれるので、少しでも罪を軽くしたいのであれば必ず弁護士を呼びましょう。

会社での顧問弁護士がいなくても当番弁護士制度という弁護士を初回無料で呼べる制度もあるのでぜひご活用下さい(また、顧問弁護士は労働や契約回りの法律は得意かもしれませんが、刑事事件にまで精通しているとは限りません)。

弁護士からアドバイスを受ける前に尋問が始まる場合もありますが、「弁護士がくるまで回答はしません」と黙秘権を行使すれば、不用意な発言で不利な状況に陥る事態を避けることも可能です。

経営者が逮捕されたら会社は倒産するのか

「経営者が逮捕されたか事業は廃止しなければいけない」という法律は存在しないので、『経営者の逮捕=会社の倒産』となるわけではありません。

ただ、経営者は逮捕されている期間事業に関わることが出来なくなりますし、罪が確定し全国に公開されてしまえば会社の評判にも悪影響が生じるため、経営者の逮捕が倒産のきっかけとなる可能性は十分にあると言えるでしょう。

事業の継続と社員への給与支払いが滞りなく継続できる会社であれば、経営者が逮捕されても存続できるかもしれませんが、社員数が多い大きな会社でない限りは現実的には難しいのではないかと思われます…。

まとめ

労働基準法違反でも、労基署からの注意を何度も無視して違反を繰り返すような状況の会社だと、責任者が逮捕されてしまうケースもあります。

「赤信号みんなで渡れば怖くない」と軽視されている労働基準法ですが、国で定められた歴とした法律なので、決してぞんざいに扱わずに指導が入った場合には、誠実に対応するように心がけていきましょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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