横領罪とは? 逮捕・起訴されないために加害者がすべきこと

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
横領罪とは? 逮捕・起訴されないために加害者がすべきこと

横領罪(おうりょうざい)とは、他人の所有物を横領した際に成立する犯罪です。横領と着服は同じ意味ですが、刑法では横領という言葉が使われます。

横領罪には①単純横領罪、②業務上横領罪、③遺失物等横領罪の3種類があります。このうち最も重い業務上横領罪の罰則は10年以下の懲役です。

この記事では、横領罪の種類や具体例、罰則、逮捕された後の流れ、逮捕されなくても起こりうるリスクについて紹介します。

記事の執筆者

鷹橋 公宣(たかはし きみのり

横領罪とは? 逮捕・起訴されないために加害者がすべきこと

振り込め詐欺や銀行員の巨額横領事件などの捜査を担当してきた元知能犯刑事。警察署勤務時代は幅広い事件を担当。現在は退職し、法律事務所などのコンテンツを中心に執筆活動を続けるWEBライターとして活動中。noteでは警察のウラ話やお役立情報を発信。

元刑事ライターきみぽんのnot

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横領罪の種類と具体例

一口に「横領」といっても、具体的な行為により成立する犯罪が異なります。ここでは、横領罪の3つの種類を具体例とともに紹介します。

単純横領罪(刑法第252条)

単純横領罪(刑法第252条)は、自己が管理する他人の所有物を横領した際に成立する罪です。5年以下の懲役に処される可能性があります。

具体的には以下のような行為が考えられます。

  1. 友人から借りていた本をそのまま転売した
  2. 友人から借りたものを返さないまま所有物にした
  3. 友人から預かったお金を自分のために費消した など

このように友人間のトラブルであっても横領罪は成立し得ます。そのため、このような横領行為について証拠が明確であるような場合には刑事事件として立件される可能性はゼロではありません。

ただ、一般的にはこのようなトラブルは民事の問題であるとして、よほど緊急性が高くない限り、警察は対応しないことが多いように思われます

業務上横領罪

業務上横領罪(刑法第253条)は、一定の立場に基づいて反復・継続して管理する他人の所有物を横領した際に成立する犯罪です。法定刑は10年以下の懲役刑と、単純横領よりも重いです。

具体的には以下のような行為が該当します。

  1. 会社の経理担当者として管理していた金銭を使い込んだ
  2. 取引先からの請求書を偽造して、支払われたお金を自分のものにした など

業務上横領は、個人間のトラブルではなく、明らかな犯罪行為として刑事事件化する可能性は高いです。そのため、被害者である会社等が証拠とともに刑事告訴すれば、警察が動く可能性は相当程度あります

遺失物等横領罪(占有離脱物横領罪)

遺失物等横領罪(刑法第254条)とは、

  1. 遺失物(落とし物)
  2. 漂流物(水中・水面にある遺失物)
  3. その他占有を離れた他人の物(上記以外で他人の占有を離れたもの)

このようなものを横領した際に成立する犯罪です。法定刑は1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料と比較的軽めです。

具体的には、以下のような行為があげられます。

  1. 街で放置されている無施錠の自転車に乗り去る
  2. 落し物の財布をネコババするする など

横領罪に類似する窃盗罪・背任罪との違い

横領罪に類似する窃盗罪・背任罪との違い横領罪と似て非なる犯罪として窃盗罪や背任罪があります。ここでは、3つの違いについて紹介します。

横領罪と窃盗罪の違い

自分が所持・管理する他人の物を領得する行為が横領罪、他人が所持・管理する物品を同意なく奪う行為が窃盗罪です。

この違いは、対象となる財物を行為者が所持・管理しているのか、被害者が所持・管理しているのかという点です。

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

引用元:刑法235条

例えば、借りている本を転売してしまうような行為は横領罪であり、他人の家から本を無断で持ち去るような行為が窃盗罪です。

横領罪と背任罪の違い

横領罪は、他人の所有権を侵害する行為を処罰対象としており、背任罪は他人との信頼関係を毀損する行為を処罰対象とします。いずれも委託信任関係を毀損する犯罪という点では同じですが、背任罪の方が対象行為の範囲が広いです。

刑法では、背任罪を次のように定義しています。

他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

引用元:刑法247条

例えば、取引先の選定において、取引先との癒着関係から、会社に不利益となるような契約を締結する行為などが背任行為に該当し得るといえます。

横領(業務上横領)が発覚する理由と経緯

「一度だけなら大丈夫」と軽い気持ちでやってしまったとしても、横領行為は犯罪です。発覚した場合には、重い刑事責任を問われる可能性もあります。

ここでは、業務上横領が発覚する理由や経緯について紹介します。

内部通報で発覚する

企業内で横領行為に手を染めているという場合、何かのタイミングで周囲から不審に思われる可能性があります。

このように不審を抱いた人間が、内部通報等で会社に報告し、会社が調査を進めた結果、横領行為が発覚するということはあり得ます。

税務署調査で発覚する

また、周囲には気づかれなくても、税務署調査を通じて不審な経理処理がされているとして明らかになる可能性も大いにあります。

横領を繰り返せば不審な金銭の流れが必ず残りますし、売上・原価・棚卸資産などの対応関係がおかしくなります。

このような経理・財務上の問題を税務署が認め、これを会社に報告することで、横領が発覚するということはよくあることです。

逮捕容疑は25年1月~27年6月、十数回に分けて入金し、横領したとしている。29年10月に税務調査で発覚して翌月に解雇され、警視庁が捜査していた。

引用元:産経新聞

また、税務署が行う調査の1つに、反面調査があります。反面調査とは、調査対象となる企業(A社とする)の帳簿を見ただけで実態を把握できなかった場合に、A社の取引先に行う調査のことです。

A社の帳簿に記載されている金額と取引先の帳簿に記載されている金額が異なれば、税務署が関係者にヒアリングを行います。その結果、横領の事実が浮かび上がる場合があります。

横領罪で逮捕されてからの流れ

横領罪で逮捕された場合、以下のような流れで進みます。

横領罪で逮捕されてからの流れ

  • 逮捕~送致:最長48時間
  • 送致~勾留請求:最長24時間
  • 勾留:原則10日、延長の場合最大20日
  • 起訴・不起訴の判断

「逮捕されない=無罪」ではない! 逮捕されなくても起こりうること

横領によって逮捕されないからと言って、刑事処分を受けないというわけではありません。

逮捕は被疑者の身柄を拘束する刑事手続の一つに過ぎません。逮捕がされない場合でも、在宅事件として刑事手続は進行します。以下、簡単に説明します。

逮捕されなくても刑事事件は進んでいる

刑事手続は、犯罪事実について行為者の刑事責任を確定させる手続きです。

逮捕されない場合でも、刑事手続が進行すれば、警察や検察の取調が行われたり、検察が事件を起訴したりということがあります。

このように身柄を拘束しないまま刑事手続を進めるケースを在宅事件といいます。

在宅事件の場合、身柄拘束がされないため、日常生活への影響は少なくて済むかもしれませんが、取調べには基本的に応じなければならないでしょうし、起訴されて刑事裁判を受ける場合には平日の日中に裁判所に出頭しなければなりません。

なお、在宅事件でも最終的に刑事裁判で有罪となれば、当然、前科が付きます(そして、日本の刑事司法は統計上99%以上有罪となると言われています)。

また、当初在宅事件で進められていても、途中で捜査機関が身柄拘束の必要があると判断すれば、逮捕・勾留の手続きが取られ、身柄を拘束されてしまうこともあります。

業務上横領が発覚した場合、会社から懲戒解雇される可能性が高い

これは刑事の問題ではなく、民事の問題ですが、業務上横領が発覚した場合、会社から即時懲戒解雇される可能性は高いでしょう

業務上横領は会社の信頼を著しく裏切る犯罪行為であり、懲戒解雇もやむを得ないとされる場合が多いです。そのため、仮に刑事事件化しなくても、職を失うという不利益を免れることは難しいかもしれません

もし横領に手を染めてしまったら

横領行為に手を染めてしまった場合に、上記のような民事・刑事での不利益を受ける可能性があります。

横領行為事態が非常に悪質な行為であるため、これはやむを得ないことですが、以下のような対応で責任が一定程度軽減される可能性もあります。

自己申告した上で被害弁済をする

横領が発覚してしまえば、上記の通り民事・刑事での責任を免れるのは困難です。他方、発覚前であれば、加害者にできることもあります。

例えば、加害者において被害者である会社に自己申告し、被害弁償を申し出ることをすれば、解雇はやむなしでしょうが、会社が殊更警察に被害申告をすることを避け、刑事事件化しないことも考えられます。

特に、会社との間で被害弁償等について示談が成立するような場合には、殊更刑事事件とする必要もないとして、このような処理がされる可能性は相当程度あります。

もちろん、自己申告した結果、会社を解雇され、刑事告訴もされてしまうということもあり得ます。そしてこれはやむを得ないことです。そのため、あくまで可能性の話程度にお聞きください。

まとめ

他人の物を横領するのは犯罪です。そのため、これが発覚した結果、逮捕されたり、起訴されたりということはあり得ます。

特に悪質とされる業務上横領はどこかで発覚する可能性が非常に高いです。したがって、最初からそのような行為に手を染めないことが極めて重要です。もし、自身の現状について何かしらの不安を覚えるのであれば、弁護士への相談も検討してみてはどうでしょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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