労働基準監督署へ相談できる内容とは?相談から解決までの流れと対応

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
労働基準監督署へ相談できる内容とは?相談から解決までの流れと対応

労働基準監督署は全国321署にあり、企業の法律違反から労働者を守る、『最も身近な相談窓口』としての役目を果たしています。あなたの働いている企業が契約に反して過酷な労働を課していたり、残業代を支払わなかったりする場合は労働基準監督署に相談しましょう。

この記事では、労働基準監督署に相談すべき内容とそうでない内容、具体的な相談方法や解決までの流れを紹介します。

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労働基準監督署に相談・通報すべき内容とそうでない内容

まずは、労働基準監督署に相談すべき内容とそうでない内容をはっきりさせましょう。実際に相談できるのは労働に関する法律違反のみです。とはいえ、法律については知識がない方も多いでしょう。

相談すべき内容とそうでない内容を具体的にあげて紹介していきますので、自身にあてはまるものがあるか確認してみましょう。

従業員や会社の法律違反に関しては迷わず相談

労働基準監督署に寄せられる相談の多くが、労働基準法違反に関するものです。一言に労働基準法といっても、色々な決まりがありますので、以下に自分にあてはまるものがあるか確認してみましょう。

契約書に関してよくある相談

  • 契約期間は3年のはずなのに、1年で契約満了と言われてしまった
  • 契約書に記載されている賃金と実際の賃金が違う
  • 勤務地が契約と違った
  • 始業時間、就業時間が契約と違う
  • 契約時に約束した休日が与えられない

賃金に関してよくある相談

  • 賃金が未払いとなっている
  • 残業代がきちんと支払われていない
  • 最低賃金を下回っている(最低賃金法)
  • 時間外・深夜・休日労働にもかかわらず、賃金が割増されていない

労働時間に関してよくある相談

  • 残業時間が月45時間を超えている(36協定)
  • 1日8時間労働にも関わらず休憩がない

有給休暇に関してよくある相談

  • 有給休暇が支給されていない
  • 有給休暇の日数が勤続期間に応じたものではない
  • 有給休暇の取得を拒否されてしまった

解雇・退職について

  • 予告なしに突然解雇された
  • 退職させてもらえなかった

上記であげた内容はあくまで代表的な例です。上記に該当しない場合でも、法律違反に該当しそうな場合は相談することをおすすめします。

従業員・会社との民事トラブルは弁護士へ相談

従業員や会社とのトラブルで、慰謝料請求や内容の撤回を求めるのであれば、弁護士に依頼してしまった方が、早く解決する可能性があります。例えば以下のようなケースです。

  • パワハラ・セクハラなどハラスメントに関する慰謝料請求
  • 不当解雇による慰謝料請求・解雇の撤回
  • 未払い残業代・給料の回収
  • 退職時に起こるトラブル
  • 労災隠しによる損害をうけた
  • 退職代行の依頼 など

労働問題解決の得意な弁護士へ相談してみましょう。

労働基準監督署に相談するメリット・デメリット

労働基準監督署に相談するとどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

具体的なメリット・デメリットを確認した上で、自身の悩みの場合、本当に労基署に相談するのが最良な選択なのかを改めて考えてみましょう。

労働基準監督署に相談するメリット・デメリット

労基署に相談するメリット

ここでは労働基準監督署に相談するメリットについてご紹介します。

無料で相談できる

労働基準監督署は厚生労働省の第1線機関であり、国が運営しているため、営利目的の組織ではありません。

そのため、労働者は無料で労働基準監督署に相談できます。
無料で相談できることは労働者にとって大きなメリットといえるでしょう。

注意や指導、是正勧告を行ってくれる可能性がある

労働者からの相談内容を労基署が法令上問題のある事案であると判断した場合、企業に対して注意や指導、是正勧告を行います。

労基署の行動により、企業が労働者の相談した問題に対して、適切な対応を行うようになるケースも少なくありません。

残業代の未払いや労災隠し、有給の取得拒否、不当解雇等の問題を解決できる可能性があります。

企業が労働基準法等の法律違反を犯している場合、労働者側から無料で解決できる方法があることは大きなメリットです。

職員が労務関係の法律に詳しい

労基署への労働者からの相談に応じてくれるのは、労務関係の法律に詳しい職員です。

相談に応じてくれる労基署の職員は、日々企業の監督活動を行っているため、労務関係の法律に詳しいケースがほとんどです。

相談した内容に対する自身の会社の対応は法律違反なのかどうかを確認する意味合いでも、労基署に相談するメリットは大きいでしょう。

労基署に相談するデメリット

ここからは労働基準監督署に相談するデメリットについてご紹介します。

証拠がないと具体的な対応がされない場合がある

労基署は刑事的な捜査権限を持ちますが、法律違反を犯している証拠の有無や違法性の程度等を総合的に考慮した上で、捜査を決定します。

そのため、具体的な証拠もなく捜査をお願いしたところで、証拠不十分で相手にされないこともあるでしょう。
そもそも、企業が法令違反を犯していないと考えられる場合も捜査を求めることは難しいでしょう。

より悪質な相談が優先されるケースがある

労基署には日々、多くの相談が寄せられます。
労基署の職員数も限られているため、より悪質な法律違反を犯している事案の相談が寄せられている場合、自身の相談内容より優先的に対応されるケースもあります。

もし法律違反の程度が軽いものだと判断された場合、後回しになり、即座に対応を行ってもらうことが難しいこともあるでしょう。

刑事的な労働関係法令違反以外は命令できない

労働基準監督署は刑事的な労働関係の法令違反に対して、司法警察事務業務の一環として捜査や差し押さえ、逮捕等の権限を持ちます。

しかし、民事的な損害賠償請求や残業代請求等について相談しても、労基署が支払い義務等について命令を行うことはありません。

民事的な事案に関して労基署が出来ることは、あくまで注意や指導、是正勧告までに留まるでしょう。

労働基準監督署への相談方法

労働基準監督署への相談方法相談方法はいくつかありますので1つずつ紹介します。匿名での相談も可能ですが、匿名の人より実名で相談した人の相談の方が対応を優先する傾向にあるようです。

電話

ひとまず相談してみたい方は、電話相談をするのがおすすめです。厚生労働省のホームページから監督署の所在地を確認し、自身の職場、もしくは自宅に一番近い署に連絡するのがよいでしょう。

他にも、厚生労働省の「労働条件相談ほっとライン」という電話相談窓口もあります。

労働条件に関する悩み等はこちらを利用すると良いでしょう。

労働条件相談ほっとライン

労働基準監督署の都道府県毎の所在地

労働条件相談ほっとライン

メール

『緊急性はないものの、とりあえず相談をしたい』という人はメールでも相談も可能。優先度が低くなってしまう可能性はあるものの、手軽に相談できる上に、伝えるべき内容をきちんとまとめてから相談できるところが魅力的です。

メールをする際は以下のリンクから送信してください。

【参考リンク:「労働基準関係情報メール窓口」送信フォーム – 厚生労働省

直接訪問する

相談内容が深刻で、1日でも早く解決に導きたいと考えている場合には、直接監督署を訪れて相談するのがおすすめです。訪問する際に、自身の相談内容を裏付けるものや、証拠を持参すると、より早く対応してもらえる可能性があります。証拠には例えば次のようなものがあります。

  • 契約書
  • タイムカードや出退勤時間がわかるもの
  • 問題となる上司の発言を録音したもの
  • 会社とのやりとりがわかるメール

労働基準監督署に相談の際に準備すべきもの

労働基準監督署に実際に相談する前に事前に準備しておくべきものをご紹介します。

相談前にできる限り以下で説明している資料について用意しておきましょう。

会社との連絡を示す資料

会社とのやり取りを示すメモや、メール文面、録音音声、指示書類等を持参しましょう。

会社とのやり取りの中に労働基準法違反の証拠がある可能性もあります。

会社の法律違反を示す資料

労働基準監督署に実際に注意・指導、是正勧告等を行ってもらうためには、会社が法律違反を犯していることを客観的に証明できる証拠の提出が重要です。

例えば、残業代未払いの場合、

  • タイムカード
  • 勤務シフト、業務日報
  • パソコンのログイン・ログオフ記録
  • Email上のやり取り履歴

等の具体的な残業時間が分かる証拠を収集する必要があります。

相談までの経緯を時系列でまとめた資料

職員に整理した状態で自身の身に起こった出来事を伝えるために、時系列で出来事をまとめた資料を用意しておくことをお勧めします。

相談内容や請求内容を事前にまとめたもの

何も考えずに自身の身に起こった出来事を伝えていると、最終的に何を相談したかったのかを忘れてしまいがちです。

労基署の職員に何を相談し、どういう対応を行ってほしいのかをあらかじめ明確にしたうえで相談しましょう。

相談の際には、まずはどのような内容を相談したいのかを伝えてから、出来事を時系列に整理して伝えることでスムーズに職員に自身の相談内容を伝えることが出来るでしょう。

雇用契約書

自身の勤務先が分かると、どの会社の問題なのかを労基署の職員がスムーズに対応できるため、雇用契約書や従業員しか持ち得ない就業規則等の書類を持参することをお勧めします。

労働基準監督署への相談から解決までの流れと対応

労働基準監督署への相談から解決までの流れと対応最後に、実際に相談してから問題が解決するまで、監督署がどのような流れで対応してくれるのかを説明します。

労働者からの相談・通報

まずは労働者からの相談や通報を受けるところからすべてがはじまります。相談する際は、自身が企業に対し違反だと思う点、相談したい点をきちんとまとめた上で、できればそれを証明できる証拠を用意しておきましょう。

また、悪質性が低い場合には、ここで労働者に対しアドバイスを行い、そのアドバイスに従っても解決できなかった場合に次のステップに進むこともあるようです。

企業に対する聞き取りや調査

労働者の相談・通報内容について労基署側で調査が必要と判断した場合、企業に対する聞き取りや調査を行います(予告なしで企業側にの立入り調査をすることも)。この調査では、企業の役職員から事実関係を聴き取ったり、必要な資料を提出させたりということが行われます。

法律違反がある場合、是正勧告を行う

調査の結果法律違反が認められる場合、通常は違反行為についての指導や是正勧告が行われます。是正勧告をする際には『是正勧告書』が交付され、違反した内容と是正期日(改善までの期限)が記載されています。

これを受け取った企業は、指摘事項について是正を要する場合は是正した上で報告書を提出し、是正を要しない場合はその旨意見を付して報告書を提出します。

再監督の実施

報告書の提出を受けた労基署から、企業に対して是正状況確認のための再調査が入ることもあります。

悪質な場合は司法処分

違反の内容の悪質性が高かったり、繰り返し指導してもそれに応じなかったりした場合には、労基署から検察に対して労基法違反について刑事告発がされることもあります。

まとめ

労働基準監督署に相談すべき内容とそうでない内容、相談方法や、相談から解決までの流れなどを紹介しました。監督署に対して相談すべきか悩んでいる人は、この記事の内容を確認して、相談すべきかどうか検討しましょう。

また、労働基準監督署に相談すべきでない民事的な争いの場合には、弁護士への相談を視野に入れることをおすすめします。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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