給料が下がる?働き方改革に潜む4つの問題

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
給料が下がる?働き方改革に潜む4つの問題

最近テレビなどでよく、『働き方改革』について報道していますね。

賛成している人もいれば、反対している人もいるようですが、反対する人たちにはどのような根拠や理由があるのでしょうか。都合の良い情報ばかりに気をとられず、問題点にもしっかりと目を向ける必要があります。

この記事では、働き方改革の大まかな内容とその裏にある問題点について触れていきます。

正規・非正規の不当な賃金格差がなくなる問題点

少子高齢化の影響で、日本の労働力人口(働ける人の数)は年々減少しています。この状況では、国は発展するどころか衰退していく一方です。

国は人口減少に歯止めをかけるために、『同一労働同一賃金』を考案しました。

その大まかな内容は、『同じ条件・責任のもとで働いている労働者に対しては、雇用形態に関係なく同様の待遇を与えよう』というものです。

条件や規定が細かいので断言はできませんが、非正規社員には、次のようなメリットがあります。

  • 正規雇用者同様の基本給をもらえる
  • 正規雇用者と同様に昇給する
  • 正規雇用者同様に各種手当(役職手当、ボーナス、時間外労働手当など)をもらえる
  • 正規雇用者同様に福利厚生が受けられる

正規雇用者と非正規雇用者の不当な賃金格差をなくし、『雇用形態に関係なく出産・子育て』ができる国にする、というのが本来の目的です。

一体、この制度はどのような問題点があるのでしょうか。

問題点1:正規雇用者の賃金が下がる可能性がある

非正規雇用者の待遇を正規雇用者と同じレベルまで上げてしまうと、経営が厳しくなる会社も多いと思います。そういった会社は、非正規雇用者の条件を良くするのではなく、正規雇用者の条件を下げる可能性があります。そうなると正規雇用者のモチベーションが下がって労働生産性も低下することが懸念されます。

問題点2:企業が人を雇うのをためらうようになる

非正規雇用者を雇うのにもたくさんのお金が必要になれば、企業は気軽に人を雇うことができなくなります。人件費削減のために、少ない人数で仕事をこなそうと思えば一人ひとりの仕事量は多くなります。結果、残業時間の増加や労働環境の悪化などを招く恐れがあります。

残業時間に上限が設けられる問題点

残業時間に上限が設けられる問題点

長時間労働のせいで疲労が貯まっていたり、体調を崩したりしている人がたくさんいます。そのような状態で効率良く仕事をするのは難しいでしょう。

効率よく働けないせいで余計に時間がかかり、さらなる長時間労働につながる。個人の労働生産性の低下が会社に影響を与え、会社の労働生産性の低下が最終的には国全体の労働生産性の低下につながっていきます。

労働生産性を高めて、かつ国民の健康を守る。そのために国は時間外労働に上限を定めることにしました。

具体的にはまだ決まっていませんが、『残業時間に上限を設け、違反した企業には罰則を与える』といった内容が検討されています。

残業時間に上限が設けられ、長時間労働にストップがかかるのは労働者にとってはありがたいはずですが、どのような問題があるのでしょうか。

問題点1:家でこっそり仕事をする人がでてくる

残業時間を規制するだけでは根本的解決にはなりません。本来は、『一人ひとりにあたえる業務量を調整、適切にすることでそれぞれが無理なく働ける状況をつくる』ことが重要なはずです。

例えば、毎月長時間残業をしていた人が会社からいきなり「今月からは残業時間に上限ができたので○○時間以上は残業しないでください。」と言われたとします。残業ができなくなったことでやり残された仕事はどうなるのでしょうか。

結果として、タイムカードを切ってルール通りに退社したあと、自宅で作業をすることになることになるだけではないでしょうか。

従業員の人数を増やす、会社のルールを変えるなどしなければ根本的な解決にはむかわないはずです。

問題点2:残業の上限を規制することで生活できなくなる人もいる

自分の意志で長時間労働をしている人も少なからずいるはずです。例えばシングルで子育てをしている人、借金がある人など、事情があってとにかくお金を稼ぎたい人たちです。

無理はするべきではありませんが、長時間労働をしなければならない人たちからそれを取り上げるのはどうなのでしょうか。

会社から強制的にさせられている長時間労働に関しては規制するべきですが、自分の意志で行う長時間労働に関しても規制するのは、問題もあるでしょう。

裁量労働制が拡大する問題点

日本では労働時間に応じて給料を支払うのがスタンダードになっていますね。ですが、『労働時間と労働に対する成果が結びつきにくい』仕事もたくさんあります。例えば弁護士やコピーライターなどです。

そういった仕事をしている人たちを対象に、『仕事の進め方や時間配分を労働者の裁量にゆだねる』のが裁量労働制です。

例えば1日のみなし労働時間を8時間と決めた場合、実際の労働時間が6時間だとしても10時間だとしても、8時間働いたとみなし、8時間分の給料が支払われます。

問題点1:残業時間が長くなる可能性がある

裁量労働制が適用された場合、定時という概念がなくなります。

今までのように、『決まった時間に出勤し、決まった時間になったら帰宅できる』わけではなく、『好きな時間に出勤し、成果をあげた人間・目標を達成した人間』から帰宅できるようになります。

みなし労働時間の中ではこなせそうにない大量の仕事が課されていたり、達成できそうにない厳しい目標が設定されていたりする場合は『労働時間が長いのに残業代が出ない』という労働者が大きな損をする状況におちいる可能性があります。

問題点2:『仕事のできない人』にとっては不利な制度である

今までの制度では労働時間に対して給料が支払われていたので、『仕事がおそい人』や『成果が出せない人』にとってはやさしい制度でした。

裁量労働制が適用された場合、全く同じ仕事をしているAさんとBさんがいたとします。

Aさんは6時間で仕事を終え、帰宅しましたが、Bさんは12時間かかってしまった、などの状態に陥る可能性もあります。

女性が働きやすい社会をつくる上での問題点|最終的な裁量は企業の手に委ねられる

女性が働きやすい社会をつくる上での問題点|最終的な裁量は企業の手に委ねられる

女性が労働に参加しやすい社会をつくることで、女性はより柔軟に人生を選択することができます。また、労働力人口が増えることが国の経済成長につながる可能性もあります。

国としては育児後の女性の復職のために『教育訓練給付』の上限額や給付期間の増加や、女性の復職に積極的な企業に対しては助成金を支払うとしています。

とはいえ、復職を望む女性に対する支援を国が手厚くしたところで、最終的に女性を雇うかどうかは企業の自由です。

女性が出産・育児後に復職できるのが当たり前の社会になるのは望ましいことですが、その風潮に逆らうのが難しくなった企業は、女性を雇うこと自体をやめてしまう可能性があります。

まとめ

働き方改革の中でも特に重要な部分と、それに関する問題点をとりあげましたがいかがでしたでしょうか。一見魅力的なものばかりですが、企業に悪用されてしまった場合は労働環境がより悪化する可能性もあります。

働き方改革の適用はまだ先になりますが、事前に問題点を理解した上で、適用後の転職活動などに役立てていただければ幸いです。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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