介護休業給付とは|介護で休業した際の給付金受給要件と支給額の計算法

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
介護休業給付とは|介護で休業した際の給付金受給要件と支給額の計算法

介護休業給付は、家族の介護のために休業する際の申請や、収入補償を行うために給金などを支給する雇用保険のいち制度です。現在、65歳以上の高齢者は総人口の27.3%を占めており、「超高齢者社会」といわれています。このことから、働きながら家族の介護をする方が年々増加しています。

介護と仕事を両立させるのに必要不可欠な制度が介護休業給付ですが、

  1. 申請すれば一体いくらもらえるのか
  2. 申請の手続きはどのような手順を踏めば良いのか

などが気になる部分だと思います。

そこで今回は、介護休業給付の申請方法や給付金の計算方法などについて詳しくご紹介しますので、参考にして頂ければ幸いです。

介護休業給付とは

家族が日常生活を送るにあたって、歩行や排泄、食事等を自力で行うことが困難になった場合、介護のために仕事を休業することもあるでしょう。そういった事情があって会社を休んだ場合に利用できるのが介護休業給付という、雇用保険に含まれる雇用継続のための制度で、休業の申請や収入を補償するための給付金を受け取ることができます。

この項目では、介護休業や給付金についてご紹介します。

介護休業の取得要件|介護休業を最大93日間・3回に分けて取得することが可能

介護休業が取得できる日数は最大93日です。平成29年以前、介護休業の取得は要介護家族1名に対して原則1回でした。しかし、平成29年1月1日からは法改正により、介護家族1名に対して最大3回まで分割して取得することができるようになりました。

参照元:厚生労働省|改正育児・介護休業法のポイント

介護休業給付金の受給額|最大で約7割程度の収入保障が受けられる

介護休業期間中、月の収入が休業開始時点よりも8割未満に減ってしまっている場合に介護休業給付金を受けることができます。介護休業給付金では、休業期間中の賃金が13%未満の場合は休業前の収入の67%が、13%以上の場合は80%までの差額が支払われます。(参照元:厚生労働省

介護休業給付金の受給要件と支給額の計算方法

介護休業給付金の受給要件と支給額の計算方法
介護休業給付で受給することのできる給付金は、休業期間中に会社から支給されている賃金によって金額が変動します。この項目では、給付金の受給要件と計算方法などをご紹介します。

給付金制度利用のための要件|収入の上限・就業時間

ハローワークインターネットサービスで規定されている介護休業給付の受給要件は以下の通りです。

  1. 介護休業期間中の各1か月毎に休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと
  2. 就業している日数が各支給単位期間(1か月ごとの期間)ごとに10日以下であること。(休業終了日が含まれる支給単位期間は、就業している日数が10日以下であるとともに、休業日が1日以上あること。)

引用元:ハローワークインターネットサービス|介護休業給付について

1つ目の要件については、介護休業期間中に給与が支払われていない会社であれば問題はありません。2つ目の要件は介護休業を開始してから1ヶ月単位で20日以上休んでいることが必要になります。

つまり、介護休業給付の収入補償は、介護休業を開始してから同時に支給されるものではなく、休業を開始して暫く経ってから出ないと申請できないと言うことになります。実際には、介護休業開始日から終了日までの期間について支給要件を審査し、支給が認められる期間(最大3ヶ月)について一括で支給がされます。

支給金額の計算方法

介護休業給付金の支給金額の計算方法は以下の通りです。

支給額= 休業開始時の日給 × 67% (支給率)

※休業期間中に労働賃金が支給される場合は支給額が変動します。

なお、休業期間中に会社から特別手当などの賃金が支払われている場合は以下のように利率が変動します。

  • 支給賃金が休業開始時点の13%以下の場合、支給率は67%
  • 支給賃金が休業開始時点の13%以上80%以下の場合、賃金の80%との差額を支給

では、実際に計算してみましょう。

<計算条件>

  • 休業前の平均月収は28.5万円
  • 就業規則で介護休業時には3割(30%)の手当が支給されている

<計算例>

給付金は日次給与で計算するため、月収から日給を計算します。

285,000(円)➗ 22(営業日)≒ 12,955(円/日)

この場合、会社からの支給賃金は13%を上回っているため、80%までの差額が支給されます。よって、日次支給額は以下の通りになります。

12,955×(0.8 – 0.3)≒ 6,478(円)

月の支給日数が30日の場合、介護休業給付金の月次支給額は以下のようになります。

6,478 × 30 = 194,340(円)

介護休業給付(休業・給付金)を受けるための4つの知識

介護休業給付(休業・給付金)を受けるための4つの知識
介護休業の申請を受けるには、休業する労働者や対象となる家族の状態などに条件があります。この項目では、休業や給付金の申請時の条件や申請期間などについてご紹介します。

なお、介護休業や介護による時間外労働(残業)免除などの申請書は、こちらからダウンロードできます。

介護休業給付を利用するための前提条件

介護休業給付は雇用保険の失業等給付に含まれています。そのため、制度を利用するためには前提として以下の条件が必要になります。

  • 同一の事業所で1年以上勤続していること
  • 介護休業明けに引き続き雇用の見込みがあること

制度の対象者となる家族と介護休業

介護休業を取得できる対象の介護は、基本的に常時介護を必要としている要介護状態であることです。要介護状態とは、怪我や病気・加齢などによって身体機能が低下し、2週間以上、日常生活(歩行、排泄、食事)で介助が必要な状態であることです。

また、対象となる要介護者は以下のような家族であることが条件とされています。

配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)

  • 父母(養父母を含む)
  • 子(養子を含む)
  • 配偶者の父母(養父母を含む)
  • 同居かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫

休業開始は2週間前までに会社に申し出る

介護休業は、休業開始予定日の2週間前までに会社に申し出なければなりません。また、会社側は介護休業を請求された場合、拒否することはできません。ただし、労働者側の申し出が遅れた場合は、介護休業の開始を一定の範囲内で指定することは可能です。

厚生労働省では、介護休業の開始について以下のように規定しています。

  • 労働者は、希望通りの日から休業するためには、介護休業を開始しようとする2週間前までに申し出ることが必要です。
    これより遅れた場合、事業節は一定の範囲で休業を開始する日を指定することができます。
  • 期間を定めてこようされる労働者の介護休業の場合で、一の労働契約期間の末日まで休業した後、労働契約の更新に伴って更新後の労働契約期間の初日を介護休業開始予定日とする申出をする場合には、2週間前までに申出がなかった場合でも、事業主は開始日の指定をすることはできず、労働者は申出通りの日から休業を開始できます。
  • 労働者は一定の時期までに申し出ることにより、事由を問わず、1回かぎり休業を終了する日を繰り下げ変更し、介護休業の期間を延長することができます。

引用元:厚生労働省|介護休業の期間2−申出期限・変更の申出等−

介護休業給付金は非課税対象

介護休業給付で受け取る給付金は課税対象にはなりません。そのため、次年度の住民税の金額対象、所得税・復興特別所得税などによる差し引きの対象にはならないのです。

介護休業給付金の申請手順

介護休業給付金の申請手順
介護休業給付金は、必要書類を務めている事業所に提出することで申請できます。事業所からハローワークに申請がされ、給付のための審査を受けることになります。なお、ハローワークでの審査で不支給の決定がなされた場合は、不服申し立てを行うことも可能です。

この項目では、介護休業給付金の申請手順についてご紹介します。

必要書類

介護休業給付金を申請する場合は、以下のような書類が必要になります。

  • 雇用保険被保険者休業開始賃金月額証明書
    休業前の労働日数や支払われている労働賃金を記載する書面です。用紙は、こちらからダウンロードすることが可能です。
  • 賃金台帳や出勤簿など
    「雇用保険被保険者休業開始賃金月額証明書」の内容を証明するために添付資料として提出します。
  • 介護休業給付金支給申請書
    休業する労働者や介護対象者の被保険者番号・個人番号な度を記載する書面です。

介護休業給付金申請用紙の書き方

介護休業給付金申請用紙は、ハローワークや社内の担当窓口でもらうことも可能です。また、こちらからダウンロードすることもできます。

労働者が介護休業給付金申請用紙で記載する事項は以下の通りです。書面を記入する際に、マイナンバーなどの個人番号が必要になるため、事前に準備しておくことをおすすめします。

  • 個人番号(マイナンバー)
  • 雇用保険の被保険者番号
  • 氏名
  • 介護休業開始年月日
  • 介護対象者(家族)の個人番号
  • 介護対象者の氏名
  • ボーナスなどの賞与を除いた労働賃金と受け取った期間

提出先

会社の担当窓口に書類を提出します。会社側から、介護休業給付金支給申請書が管轄のハローワークに提出されることになっています。

もし不支給となってしまったら

介護休業給付の申請を行った際に給付金などが不支給と決定されてしまった場合は、不支給が決定された日から3ヶ月以内に管轄ハローワークに審査請求を行うことができます。

審査請求は、郵送でも来所でも行うことができます。詳しくは最寄りの「ハローワーク」に問い合わせてみましょう。

※全国ハローワークの所在案内はこちらから

介護休業給付に関するよくある質問

介護休業給付に関するよくある質問
厚生労働省に寄せられた介護休業に関する質問をいくつかご紹介します。

派遣社員などの有期雇用の介護休業給付の受給要件について

Q. 有期雇用労働者の場合、受給要件は異なりますか。

無期雇用労働者(契約期間の定めのない方)と受給要件が異なります。

有期雇用労働者は、上記問2の要件に加え、介護休業開始時において、同一の事業主の下で1年以上雇用が継続しており、かつ、介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでないことが必要です。

引用元:厚生労働省|Q&A~介護休業給付~

介護休業給付の申請者について

Q. 介護休業給付の支給申請は、介護休業を取得している被保険者が行うのでしょうか。

介護休業給付の申請手続は、原則として、事業主を経由して行う必要があります。

ただし、被保険者本人が希望する場合は、本人が申請手続きを行うことも可能です。

引用元:厚生労働省|Q&A~介護休業給付~

受給中の就労について

Q. 介護休業期間中に就労した場合、介護休業給付はどうなりますか。

就労した場合、1支給単位期間において、就労している日数が10日以下でなければ、その支給単位期間については支給対象となりません。

また介護休業終了日の属する1か月未満の支給単位期間については、就労している日数が10日以下であるとともに、全日休業している日が1日以上あることが必要です。
この就労している日数は、在職中の事業所以外で就労した分も含まれます。

引用元:厚生労働省|Q&A~介護休業給付~

介護休業の取得を妨げるのは「ケアハラ」

介護休業の取得を妨げるのは「ケアハラ」
介護休業の取得を妨げたり介護をきっかけとして嫌がらせを行ったりすることは、ケアハラ(ケア・ハラスメント)として違法な行為と考えられています。

会社は労働者から介護休業の取得を請求された場合、拒否することができません。また、介護をきっかけとして降格・解雇・雇い止めなどの不当な扱いをすることは違法であり、許されません。もしも会社からこのような不利益を受けた場合は、弁護士に相談することで解決することが可能です。

関連記事:ケアハラとは|育児介護休業法改正で変わった4つの制度と対処手順

ケアハラは違法性が高い

上記でも述べましたが、会社は労働者から育児休業の請求があった場合には法定の拒否事由が認められない限り、これを拒否することはできません。また、家族の介護をきっかけとして、当該労働者に対して嫌がらせ、制度利用の妨害、待遇面での不利益を与える行為も育児介護休業法に違反する行為です(このような行為を近年「ケアハラ(ケア・ハラスメント)」と呼ぶことが有ります。)。

第十二条  事業主は、労働者からの介護休業申出があったときは、当該介護休業申出を拒むことができない。

2  第六条第一項ただし書及び第二項の規定は、労働者からの介護休業申出があった場合について準用する。この場合において、同項中「前項ただし書」とあるのは「第十二条第二項において準用する前項ただし書」と、「前条第一項及び第三項」とあるのは「第十一条第一項」と読み替えるものとする。

3  事業主は、労働者からの介護休業申出があった場合において、当該介護休業申出に係る介護休業開始予定日とされた日が当該介護休業申出があった日の翌日から起算して二週間を経過する日(以下この項において「二週間経過日」という。)前の日であるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該介護休業開始予定日とされた日から当該二週間経過日までの間のいずれかの日を当該介護休業開始予定日として指定することができる。

4  前二項の規定は、労働者が前条第四項に規定する介護休業申出をする場合には、これを適用しない。

引用元:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

ケアハラで降格・解雇・雇い止めにあった際は弁護士に相談

育児休業や介護休業を取得してから1年以内の期間内に降格・解雇・雇い止めなどの不利益な扱いを受けた場合、これが法律で禁止される不利益取扱いに該当する可能性があります。このような場合は、会社に当該取扱いが許されるのかどうか確認し、それでも解決しない場合は弁護士に相談することをお勧めします。

このような取扱によって、労働者に何らかの損害が発生した場合、会社に対する損害賠償請求を検討する余地があります。また、将来的に同様の行為がされないよう、その差し止めも検討するべきでしょう。

まとめ

家族の介護は、見通しが立ちにくく、いつ何が起きるか分からないものなので精神的負担が大きなものです。「仕事をしながら介護を行う」・「介護が落ち着いたらまた働きたい」という方にとって介護休業給付は、ひとまず雇用を継続することができ、ある程度の収入が保障される制度です。

介護での負担は大きなものですが、制度をうまく利用し、仕事を続けながら家族と向き合うことができればいいですよね。

この記事で、家族の介護と仕事の両立を考えている方の手助けができれば幸いです。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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