資格商法の手口と対策|誰でも取れる資格に将来性があるのか考えよう

( 17件 )
分かりやすさ
役に立った
この記事を評価する
この記事を評価しませんか?
分かりやすさ
役に立った
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
資格商法の手口と対策|誰でも取れる資格に将来性があるのか考えよう

資格商法(しかくしょうほう)とは、「就職・転職に有利」「将来国家資格になる」などの嘘や誇大表現を使い、消費者に教材費や授業料を支払わせる商法を言います。

手法自体は違法ではありませんが、次のような問題点があります。

  • 契約をさせるために誇張した情報を伝える
  • 授業料に対して資格の価値が割に合わない
  • 割に合わないが問題にはなりにくい価格設定
  • 資格自体の価値が希薄なこともある
  • 有力な資格と混同しやすい名前の資格がある

将来の不安につけこんだり、将来の安心感をちらつかせたりする手法は他のセールスでも見られるため問題はありません。

資格商法の場合、上記のような問題点があるにもかかわらず、被害額がそこまで大きくないため問題になりにくい点が悪質です。

今回は、資格商法の手口と事例、資格商法で損しないために知っておきたいこと、被害に遭った際の対処法についてお伝えします。

資格商法の手口|資格があれば将来安泰?

あまり価値のない資格をあたかも将来の安定を得られるものと錯覚させ、不安な人の気持ちにつけ込むのがこの手口の特徴です。詳しく確認していきましょう。

よく売り込まれる資格

資格商法で売り込まれることが多い資格には次のものがあります。

  • 社会保険労務士
  • 電気主任技術者
  • 宅地建物取引士
  • ネイリスト
  • 心理カウンセラー
  • 情報処理技術者
  • 旅行業務取扱管理者
  • 労務管理士
  • 特許管理士
  • 整体師

これらの資格には、次の共通点があります。

  • 比較的簡単に取得できる資格
  • 受験資格が誰にでもある資格
  • 国家資格や独占業務があると錯覚しやすい資格

例えば弁護士や公認会計士に価値があるのは明らかですが、難易度や勉強時間を考えると、将来性があるとわかっていても取得する人は少ないでしょう。

誰でも比較的楽に取れて、なおかつ価値がありそうな資格や、価値がありそうな名前の資格がよく売り込まれているように思います。

嘘や誇大表現を使い契約をさせる

  • 「このテキストを使えば簡単に行政書士になれる」
  • 「就職に有利」
  • 「資格を活かせる仕事を紹介する」

など嘘や誇大表現を使って契約をさせる問題点があります。

例えば心理カウンセラーの資格ですが、病院や学校で勤務するためには臨床心理士の資格が必要な場合がほとんどですから、難易度の低いカウンセリング資格をとっても就職には有利になりにくいです。

あいまいな返事を承諾と判断し勝手に契約を結ぶ

業者の勧誘に対して「考えておきます」などと曖昧な返事をした場合に、勝手に承諾だと解釈され、テキストが送られてくる場合があります。

電話をして問い合わせても「いると言っただろ」などとまともに相手にされないでしょう。

価格に対してテキストの内容が薄い

授業料や教材費に対して、テキストが薄すぎる場合もあります。どんなテキストを使い、どんなカリキュラムでどんな人が教えてくれるのか、契約前には必ず確認したいものです。

契約後追加料金が発生する

契約時には知らされなかった費用がのちのち発生するパターンです。

追加の講習だったりテキストだったり、お金を取る方法はいくつかありますが、一度契約してお金を払い勉強をしてきた手前、追加費用を払わざるをえません。

一度騙されると二次被害に遭う可能性も

一度騙されるような騙されやすい人はいいカモですから、同じ業者や別の業者に再びターゲットにされやすくなります。

「手数料を払えばリストから個人情報を削除し、もう勧誘が来ないようにできる」と電話をかけ、お金を騙し取る手口もあります。

資格商法の事例

資格商法の事例を確認していきましょう。

勤務先に資格取得講座の受講を勧める強引な勧誘が何度もかってきて、根負けして「わかりました」と言ってしまった。業者から契約書類が送られ、総額45万円を36回払いで支払うという契約書に氏名等を記入して2週間前に返送した。しかし、その後も勧誘の電話や「執拗な勧誘を止めさせてやる」といった電話は止まらず、仕事に支障が出る。契約したものも全く必要がなかったものなので解約したい。7年前から40万円程度の資格取得関連の契約を3回したことがあるが、全て完済している。

(男性 給与生活者)

引用元:国民生活センター

上記の例のように、強引に押されて契約してしまうような人は業者からすればいいカモです。

契約をすればしつこい勧誘から逃れられると思ったのかもしれませんが、現実は逆です。騙される人は騙され続ける危険性があるので、どんな理由があろうが不要なものは断り、一度でも騙されないことが大切です。

資格商法で損しないために知っておきたいこと

資格商法で損しないために知っておきたいこと

資格が持つあたかも役に立ちそうな雰囲気や勧誘者の口車と、現実で役に立つかどうかをわけて考えるのが騙されないコツです。

『資格』という言葉の権威性にだまされない

資格が大好きな人はいっぱいいますよね。資格があれば就職に有利だとか、将来安心できそうだとか、そんな風に思ってはいないでしょうか。

確かに資格が有益な場合もあります。ただ、資格には国家資格もあれば民間資格もあります。民間資格は良いものもありますが、価値の無いものも多くなっています。

特定の仕事をするために必要な資格以外は役に立つ保障はない

例えば、訴訟を代理したければ弁護士になるしかありませんし、監査がしたければ公認会計士になるしかありません。

このような独占業務をするために資格が必要な場合には習得をすれば将来性もありますが、不安から漠然と誰でも取れるような資格を取ったところで、あまり意味はありません、

資格よりも目的意識が大事

資格ありきで考えるのではなく、何を達成するのかをまず決めましょう。その上で資格が必要だと判断するなら取れば良いと思います。

何をしたいのかが明確になっていないのに「将来役に立ちそうだから」となんとなく取得しても、よほど良い資格でなければ役立つ可能性は低いでしょう。

高ければいいわけではない

「安かろう悪かろう」という言葉がありますが、逆に「高かろう良かろう」と無意識に考えてしまうこともあります。

そのため資格商法や情報商材などではあえて高い金額を設定し、価値を演出する場合があることを憶えておいてください。

実際に仕事をしている人に聞いてみる

例えば「心理カウンセラー」の資格に興味があるとしたら、カウンセラーとして学校や病院で働いている人に、「心理カウンセラーの資格があると就職できますか?」と聞いてみましょう。就職に役に立たないことがわかります。

勧誘者の言うことではなく、実際に働いている人の情報の方が信憑性があります。

いらないものは断固として断る

資格商法に限らず、悪徳商法の被害を防ぐ最もいい方法は、断固として断ることです。

資格商法に遭ってしまったときの対処法

最後に、資格商法に遭った際にどう対処すべきかについてお伝えします。

クーリングオフをする

資格商法は下記のいずれかに該当します。

  • 電話勧誘販売
  • 通信販売
  • 訪問販売

電話勧誘販売や訪問販売の場合には、書面を受け取ってから8日間はクーリングオフ可能ですから、契約をして8日たっていないのであればクーリングオフしてしまいましょう。また、通信販売の場合でも一定の場合にはクーリングオフができる場合もあります。

ハガキに次のように記入し、両面のコピーを取ったうえで簡易書留や特定記録郵便を業者に送付しましょう。

国民生活センター|クーリング・オフ

引用元:国民生活センター|クーリング・オフ

期間を過ぎていてもクーリングオフできる場合もある

  • クーリングオフ妨害行為
  • 書面を受け取っていない
  • 不実告知・事実不告知
  • 威迫

などがあった場合、期間を過ぎていてもクーリングオフをしたり、契約を取り消したりできます。

クーリングオフ妨害行為とは、「クーリングオフはできない」「一度契約したものを解約したいだなんて非常識だ」などと嘘をついたりゴネたりすることでクーリングオフを封じる行為を言います。

嘘をついて契約させるのが不実告知で、知らないと消費者が損することを伝えないで契約をさせるのが事実不告知です。

威迫とは、消費者に恐怖を感じさせて契約を結ばせることです。

これらのようなクーリングオフ妨害行為があった場合は、再び書類を受け取ってから8日間クーリングオフが可能になり、不実告知・事実不告知・威迫があった場合は契約を取り消すことができます。

業者が応じてくれない場合は専門家に相談する

相手も消費者からのクレームにはなれているため、すんなりクーリングオフできない場合もあるでしょう。そんなときは、専門家に相談することで解決の糸口が見えてくるかもしれません。

消費者生活センター

消費者被害について相談できる独立行政法人です。クーリングオフさせてもらえない場合など、自力で問題を解決できない場合に相談すると対処法を教えてもらえます。

弁護士

複数回騙されるなどして、騙された額が高額になった場合などは弁護士に相談することで、お金を取り戻してもらえる可能性があります。業者が姿をくらませたり、時間がたって立証が難しくなったりするまえに相談されることをおすすめします。

まとめ

資格商法でだまされないためには、「資格を取ればなんとかなるだろう」という考えを捨て、不要なものはきっぱり「いりません」と断ることです。

将来が不安になるときは誰にでもあることでしょう。ただ、努力の方向性を間違えないよう情報収集をしたり、楽に稼ぎたいという思いを捨てないことには、いつまでたっても甘い言葉につられてしまうことになるかと思います。

数十万~数百万の弁護士費用、用意できますか?

決して安くない弁護士費用。いざという時に備えてベンナビ弁護士保険への加入がおすすめです。

Cta_merci

離婚、相続、労働問題、刑事事件被害、ネット誹謗中傷など、幅広い事件で弁護士費用の補償が受けられます。

【ベンナビ弁護士保険が選ばれる3のポイント】

  • 保険料は1日あたり約96円
  • 通算支払限度額1,000万円
  • 追加保険料0円で家族も補償

保険内容について詳しく知りたい方は、WEBから資料請求してみましょう。

ベンナビ弁護士保険に無料で資料請求する

KL2020・OD・037

この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

この記事を見た人におすすめの記事

この記事を見た人におすすめの法律相談

  • 悪徳商法
    「利権ビジネス」をうたい文句に毎月「200万」配当金を配ると言うことで、3...
  • ビジネスセミナー
    大学生の息子が、友達の紹介でビジネスセミナーに参加して、バイナリーオプショ...

new悪徳商法の新着コラム

もっと見る

悪徳商法の人気コラム

もっと見る

悪徳商法の関連コラム

編集部

本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。

※あなたの弁護士に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
 詳しくはあなたの弁護士の理念と信頼できる情報提供に向けた執筆体制をご覧ください。

※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。