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KL2020・OD・037
後遺障害(こういしょうがい)とは、負傷の治療が完了した後に身体に残ってしまった障害です。障害の症状によって1~14等級の基準が設けられていて、適用される基準により請求できる損害賠償の金額が変動します。
後遺障害は自賠責保険が定めた基準によって後遺症の等級が判断されるので、身体障害者手帳の内容は無関係で全くの別物であると言えるでしょう。そのため、正当な損害賠償を請求するには、事前に後遺障害の基礎知識を把握しておかなければいけません、
この記事では交通事故の損害賠償の金額に大きく影響する後遺障害の知識をまとめていますので、交通事故被害で後遺症の可能性がある場合はぜひ参考にしてみて下さい。
目次
後遺障害は治療完治後に身体に残った障害と冒頭で紹介しましたが、さらに明確化すると交通事故との関連性を客観的に証明・説明できて労働能力の喪失を伴う状態であり、自賠責基準の等級に該当する障害と定義されています。
後遺障害はあくまで後遺症の一種です。後遺症で上記の条件に該当する場合は後遺障害として扱われます。
関連記事:後遺症と後遺障害の違い|後遺障害等級認定を受けやすくなるポイント
後遺障害の等級は全部で14の基準が定められていて、第1級が最も重く第14級が最も軽い症状で設定されています。
軽度な負傷だと12~14等級あたりが適用されるケースが多いですが、視力を失ったなど重度の負傷をした場合は1~3等級が適用される可能性が高いです。それぞれの等級の症状の詳細は以下のリンク先を参考にしてください。
等級 |
症状と認定基準 |
第1級 |
|
第2級 |
|
第3級 |
|
第4級 |
|
第5級 |
|
第6級 |
|
第7級 |
|
第8級 |
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第9級 |
|
第10級 |
|
第11級 |
|
第12級 |
|
第13級 |
|
第14級 |
関連記事:後遺障害等級の認定基準|適切な等級に認定されるための基礎知識
後遺症が複数ある場合は併合認定が適用されて等級が繰り上がるケースがあります。併合認定とは、系列の違う後遺障害が複数ある際に等級を合わせて認定する認定基準で、以下のルールにより等級が決定されます。
基本的に14等級以外の後遺症が複数存在するような状況であれば、等級が繰り上げられる可能性が高いでしょう。
関連記事:後遺障害の併合認定|併合認定により慰謝料が増額する理由
症状固定とは、これ以上の治療を続けても症状に改善がないと判断される状態です。リハビリや投薬を続けることで多少は良くなっても、症状が完全に回復しない状況であれば症状固定として扱われます。
医師から症状固定の診断を受けた後に後遺障害診断書を作成してもらい、その後に申請手続きに取り組むのが後遺障害認定の基本的な流れです。
ちなみに、後遺障害診断書は医師が判断する症状(他覚症状)と患者が自分で訴える症状(自覚症状)を基に作成されます。医師に任せきりにするよりも患者も積極的に関わって申請書を作成した方が間違いなく認定の確率が高められるでしょう。
関連記事:後遺障害診断書の書き方|等級認定が受けやすくなる3つのポイント
治療期間が長引いていると保険会社から早く症状固定をするようにと催促されるケースは珍しくありません。ただ、安易に応じてしまうとその後の治療費などの損害賠償を請求できなくなるのでご注意ください。
症状固定の診断があると治療は終了したと見なされるので、保健会社はそれ以降の損害賠償を支払う義務がなくなります。そのため、保険金の支払いを少なくしようと症状固定を催促してくるケースがあるのです。
しかし、上記で紹介した通り症状固定のタイミングを決めるのは病院の担当医なので、保険会社に急かされたとしても慌てず医師に相談し、その判断を優先するようにしましょう。
関連記事:症状固定は誰が決めるのか|被害者が知るべき症状固定のタイミング
後遺障害認定の申請には被害者本人が手続きに関わる被害者請求と保険会社(加害者の)に手続きを一任する事前認定の2通りの方法があります。
事前認定:後遺障害診断書を保険会社に提出して手続きを一任する
被害者請求:被害者自らが後遺障害申請の手続きを進める
事前認定は手間がかかるというデメリットがありますが、自分で症状の状態を伝える証拠を作成できるので、保険会社に手続きを任せる事前認定よりも後遺障害が認定される確率が高いといわれています。
医師が作成する後遺障害診断書だけで後遺症の事実が証明できる状態かどうかが申請方法を選ぶうえでの一つの考慮要素といえます。
例えば、骨折や骨の変形など画像診断によって客観的に障害の有無を明確に証明できる状態であれば、後遺障害等級が認定される可能性は相当程度高いため、わざわざ自分で資料を集めて手続きをする必要は高くないかもしれません。しかし、そうでない場合(例えばむちうちで他覚所見がなく、自覚症状しか認められない場合)には、後遺障害診断書に加えて症状の存在を推認させるその他資料を提出する方が、後遺障害認定の可能性は高まるでしょう。
後遺障害の申請方法の選択方法は、他者から見て後遺症があることが一目瞭然の状態なら事前認定、本人の主張がないと後遺症の有無の判断が難しい状況なら被害者請求がおすすめと言えます。
後遺障害は申請をしたからと言って必ず認められるわけではありません。予定よりも低い等級に認定される、または後遺障害自体が認定されない場合もあります。
思うような等級申請を受けられない場合は、交通事故と後遺症の因果関係や症状の根拠をちゃんと証明できていないなど、提出した書類が不十分である可能性が高いです。もし申請結果に納得いかないようであれば、再提出もしくは異議申し立ての手続きをしましょう。
後遺障害申請は回数に制限がないので原則上では何度でも再提出可能です。ただ、申請書類の内容を見直しても不備が見当たらない場合は再提出を続けても認定される望みは薄いので、異議申し立てを行い自賠責保険会社へ内容の再検討を依頼してください。
関連記事:後遺障害の異議申し立て|後遺障害等級の認定結果を争う3つの方法
むちうちとは、後方や側面からの強い衝撃により首がしなることにより首の骨や神経が傷付いてしまう負傷です。交通事故被害の代表的な負傷の1つであると言えるでしょう。
ただ、むちうちはレントゲンやMRIでも異常が発見されづらく、本人の自覚症状しかないというケースが多いため、後遺障害が認められにくい負傷であるとも言えます。
他覚症状の見られないむちうちの後遺障害の等級は14級ですが、後遺障害認定の有無によって慰謝料の金額が大きく変わってくるので、むちうちの治療が長引いている場合は後遺障害の認定を意識して動いていく必要があります。
関連記事:むちうちの慰謝料を計算する方法|後遺障害慰謝料を増額するコツについて
むちうちの後遺障害認定を獲得したいのなら、まず医師にむちうちの症状を後遺障害だと認めてもらわないといけません。病院への通院は怠ることなく一貫した症状の主張を継続していきましょう。
通院をサボってしまうと治療に積極的でないと思われますし、診察の度に痛む箇所が変わるようでは症状の有無について疑問が生じてしまいます。このようなケースでは、後遺障害の認定が困難となる可能性があるのでご注意ください。
むちうちが後遺障害として扱われる目安は6ヵ月ほどだと言われているので、その時期が近くなったら担当医に症状固定について相談してみることをおすすめします。
関連記事:むち打ちの治療法と後遺症(後遺障害)として認定してもらう方法まとめ
以下では後遺障害認定により請求できる2つの損害賠償をご紹介します。もし交通事故全体の損害賠償が知りたい場合は以下の記事をご参考にください。
関連記事:交通事故の示談金|簡単に自分でできる示談金の計算方法
後遺障害慰謝料とは、交通事故被害で後遺症を負わされた精神的苦痛に対して請求できる慰謝料です。後遺症の等級と以下3つの算出基準によって慰謝料の金額が決定されます。
自賠責基準:加害者が保険未加入の際に適用される
任意保険基準:加害者が保険加入者の際に適用される
弁護士基準:弁護士依頼をした際に適用される
等級 |
自賠責基準 |
任意保険基準(目安) |
弁護士基準 |
1,100万円 |
1,300万円 |
2,800万円 |
|
958万円 |
1,120万円 |
2,400万円 |
|
829万円 |
950万円 |
2,000万円 |
|
712万円 |
800万円 |
1,700万円 |
|
599万円 |
700万円 |
1,440万円 |
|
498万円 |
600万円 |
1,220万円 |
|
409万円 |
500万円 |
1,030万円 |
|
324万円 |
400万円 |
830万円 |
|
255万円 |
300万円 |
670万円 |
|
187万円 |
200万円 |
530万円 |
|
135万円 |
150万円 |
400万円 |
|
93万円 |
100万円 |
290万円 |
|
57万円 |
60万円 |
180万円 |
|
32万円 |
40万円 |
110万円 |
後遺障害逸失利益とは、交通事故で負った後遺症により低下した労働能力分の収入に対する損害賠償です。被害者の年齢・収入・後遺障害の等級によって損害賠償の金額が決定されます。
関連記事:後遺障害逸失利益の算定|賠償金増額のための3つのポイント
状況 |
後遺障害逸失利益 |
年収600万円50歳男性が10級の後遺障害を負ったケース |
約1,825万円 |
年収500万円40歳男性が7級の後遺障害を負ったケース |
約4,100万円 |
年収400万円30歳男性が3級の後遺障害を負ったケース |
約6,684万円 |
<後遺障害逸失利益の算出方法>
『後遺障害逸失利益』=『1年あたりの基礎収入』×『後遺障害該当等級の労働能力喪失率』×『労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数』
算出方法の基になる『1年あたりの基礎収入』『後遺障害該当等級の労働能力喪失率』『後遺障害該当等級の労働能力喪失率』については以下をご参考ください。
1年あたりの基礎収入は直近の年収が適用されます。収入がない子供や専業主婦は『賃金センサス』のその年の性別別全年齢の平均年収がされるので、事故当時に無収入であっても後遺障害逸失利益は可能です。
後遺障害等級 |
1級 |
2級 |
3級 |
4級 |
5級 |
6級 |
7級 |
労働能力喪失率 |
100% |
100% |
100% |
92% |
79% |
67% |
56% |
後遺障害等級 |
8級 |
9級 |
10級 |
11級 |
12級 |
13級 |
14級 |
労働能力喪失率 |
45% |
35% |
27% |
20% |
14% |
9% |
5% |
ライプニッツ係数は『67-年齢』の数値が上記の計算式に適用されます。但し、12級や14級といった低い等級の場合、症状によっては労働能力喪失期間が10年、5年等限定的に評価される可能性がありますので、注意して下さい。
労働能力喪失年数 |
ライプニッツ係数 |
労働能力喪失年数 |
ライプニッツ係数 |
1 |
0.9524 |
18 |
11.6896 |
2 |
1.8594 |
19 |
12.0853 |
3 |
2.7232 |
20 |
12.4622 |
4 |
3.546 |
21 |
12.8212 |
5 |
4.3295 |
22 |
13.163 |
6 |
5.0757 |
23 |
13.4886 |
7 |
5.7864 |
24 |
13.7986 |
8 |
6.4632 |
25 |
14.0939 |
9 |
7.1078 |
26 |
14.3752 |
10 |
7.7217 |
27 |
14.643 |
11 |
8.3064 |
28 |
14.8981 |
12 |
8.8633 |
29 |
15.1411 |
13 |
9.3936 |
30 |
15.3725 |
14 |
9.8986 |
31 |
15.5928 |
15 |
10.3797 |
32 |
15.8027 |
16 |
10.8378 |
33 |
16.0025 |
17 |
11.2741 |
34 |
16.1929 |
労働能力喪失年数 |
ライプニッツ係数 |
労働能力喪失年数 |
ライプニッツ係数 |
35 |
16.3742 |
52 |
18.4181 |
36 |
16.5469 |
53 |
18.4934 |
37 |
16.7113 |
54 |
18.5651 |
38 |
16.8679 |
55 |
18.6335 |
39 |
17.017 |
56 |
18.6985 |
40 |
17.1591 |
57 |
18.7605 |
41 |
17.2944 |
58 |
18.8195 |
42 |
17.4232 |
59 |
18.8758 |
43 |
17.5459 |
60 |
18.9293 |
44 |
17.6628 |
61 |
18.9803 |
45 |
17.7741 |
62 |
19.0288 |
46 |
17.8801 |
63 |
19.0751 |
47 |
17.981 |
64 |
19.1191 |
48 |
18.0772 |
65 |
19.1611 |
49 |
18.1687 |
66 |
19.201 |
50 |
18.2559 |
67 |
19.2391 |
51 |
18.339 |
|
|
後遺障害が関わる損害賠償請求は弁護士に依頼をした方が得になるケースが多いと言われています。以下ではその理由と依頼の判断基準についてご紹介します。
上記の『後遺障害慰謝料』の相場額を見てお気づきだと思いますが、基本的に交通事故の慰謝料は弁護士に慰謝料請求を依頼した際に適用される弁護士基準が最も高額です。
等級 |
自賠責基準 |
任意保険基準(目安) |
弁護士基準 |
1,100万円 |
1,300万円 |
2,800万円 |
|
32万円 |
40万円 |
110万円 |
交通事故の大半は任意保険会社が交渉窓口となる結果任意保険基準が適用されますが、弁護士基準と比較してもらうと慰謝料の金額が2倍以上も変わってくることがおわかり頂けるかと思います。
また、後遺障害が関わる損害賠償請求は入通院慰謝料(入通院をする怪我を負った精神的苦痛に対する慰謝料)も高額になりやすいので、それらを含めると3倍近く慰謝料の金額が増額するケースも珍しくありません。
関連記事:入通院慰謝料の相場・計算式|治療時の注意点と請求を高額にする方法
弁護士依頼をすると被害者請求の手続きを弁護士に任せられます。証拠書類の作成に医師へ後遺障害申請書を書いてもらう際のアドバイスなど手厚いサポートが受けられるので、自分だけで手続きを進めるように後遺障害が認定される確率はグッと高くなるでしょう。
関連記事:症状固定で弁護士に相談する場合|症状固定を適切に決める方法
また、示談交渉までの保険会社への対応と手続きを一任でき、慣れない対応で時間を取られることもなくなるので、事故処理の精神的な負担を軽減できるのも弁護士依頼のメリットの1つです。
弁護士依頼の判断基準は『弁護士基準の慰謝料-弁護士費用>任意保険基準』になっているかですが、後遺障害が絡む損害賠償請求は慰謝料が高額になりやすいので、弁護士依頼をした方が得になる可能性が高いでしょう。
近年では法律相談を無料で引き受けてくれる弁護士も増えてきているので、自分が弁護士依頼をするべきかどうか見積もりを出してもらってから判断するのも良いかもしれません。
また、自分の加入している保険に弁護士費用特約が付属している場合は保険会社から弁護士費用を負担してもらえるので、その場合は何も迷わずに弁護士依頼を検討することをおすすめします。
関連記事:弁護士費用特約とは|保障内容と慰謝料を増額させるお得な使い方
後遺障害が関わる事故被害は損害賠償が高額になる可能性が高いですが、後遺障害申請の手続きの進め方によって後遺症の等級が変わることもあるので、正当な金額を請求するには当記事で紹介した後遺障害の基礎知識を身につけておく必要があります。
専門的な用語が多いので少し難しいかもしれませんが、損害賠償の金額に大きく関わってくるので、必ず事前に予習をしておきましょう。
また、後遺障害の損害賠償請求は弁護士に依頼した方が得になる可能性が高いので、相談だけでも検討されてみてはいかがでしょうか。
決して安くない弁護士費用。いざという時に備えてベンナビ弁護士保険への加入がおすすめです。
離婚、相続、労働問題、刑事事件被害、ネット誹謗中傷など、幅広い事件で弁護士費用の補償が受けられます。
【ベンナビ弁護士保険が選ばれる3のポイント】
保険内容について詳しく知りたい方は、WEBから資料請求してみましょう。
KL2020・OD・037
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