未払い残業代を企業に請求して支払ってもらう5つの手順

弁護士法人ネクスパート法律事務所
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未払い残業代を企業に請求して支払ってもらう5つの手順

給与明細を見て、あんなにたくさん働いたのに残業代が労働時間に見合わないと感じたことはありませんか?

残業代の未払いは違法性が高く、勤務時間外で稼働した分であれば、基本的に残業代は支払われるのが原則であり、もし未払いの残業代があれば、会社に請求すれば未払いの残業代は支払ってもらうことができます。

では、その未払いの残業代はどうすれば支払ってもらえるのでしょうか。今回は未払いの残業代請求の手順や、請求する上で必要なものについてご紹介していきます。

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未払いの残業代は支払請求することができる

労働基準法32条では、「使用者(企業)は、労働者に対して1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならない。」とあります。

第三十二条  使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
○2  使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
引用元:労働基準法第32条

この「1日8時間、週40時間」を法定労働時間と言い、この拘束時間を超えて働いた場合には残業代が発生し、未払いの残業代があれば請求する権利があるのです。

ただし、「変形時間労働制」や「裁量労働制」などの少し特殊な労働契約を結んでいる場合は、この法定労働時間を超えても残業にならないケースもあります。

残業代の未払いは違法性が高い

今お伝えした通り、企業は1日8時間、週40時間を超えた労働に対して割増賃金(残業代)を支払う義務があります。

労働基準法で定められた法定労働時間を超えた残業代の未払いは、労働基準法違反になるので違法性が高いということになり、罰則の対象になっています。

残業代が発生する仕組み

労働時間には、労働基準法で定められた「法定労働時間」と、企業が就業規則や給与規定で定めた「所定労働時間」の2つがあります。法定労働時間とは、1日8時間、週40時間の労働のことです。

なお、所定労働時間が法定労働時間を下回る場合、法定労働時間内であり、かつ、所定労働時間を超えることもあります。その場合は残業代請求ができないケースもありますので、残業代請求を行う前に就業規則などは必ず確認するようにしてください。

残業代を支払わない企業の特徴

残業代をさまざまな条件を使って支払わない企業はよく存在しますが、法定労働時間を超えた時間の残業代は、法律で決められた支払われるべきお金です。では、一体どんな企業が残業代を支払わないのか、残業代を支払わない傾向にある企業の特徴を以下にまとめました。

固定残業(みなし残業)の悪用

固定残業(みなし残業)とは、固定給に残業代があらかじめ含まれている労働契約のことです。

みなし残業制を採用している企業の場合、何時間までがみなし残業とされているのかを明確にしていないケースがあり、就業規則などにも記載がないので、残業代を請求しても「みなし残業に含まれている」として、請求に応じない場合があります。

しかし、給与に含まれている固定残業代よりも多く労働をした場合、追加で残業代を請求することができますので、気づいた段階で積極的に請求していくことをおすすめします。

関連記事:固定残業代の仕組み|導入されているなら知るべき5つのコト

雇用契約で「残業代の支払いはしない」との記載

「雇用契約書に残業代は支払わないという旨が記載されている」などは、たとえ署名をしてしまったという場合であっても、残業代を請求することができます。残業代を支払うということは法律で定められた義務なので、その雇用契約自体が違法であると考えられます。

タイムカードや就業時間の記録を実働時間よりも短くさせる

定時になると「一旦タイムカードを押そうか」などと上司に促される、また、定時をすぎるとタイムカードを押すことができなくなるというケースをよく聞きます。

未払いの残業代を請求する際は勤務時刻の把握は重要な証拠になりますが、実際の労働時間を証明するものはタイムカードや勤務表だけではありません。業務用メールアカウントの送受信記録やパソコンのログイン記録など、タイムカード以外にも「その時間に会社で働いていた」と立証できる証拠はいくらでもあります。

勤務外業務を行っていた記録があれば、残業代が発生していることを立証でき、支払いを請求することができますので、証拠になりそうなものは積極的に残しておきましょう。

管理職などを理由に残業代を支払わない

「管理職だから残業代はつかない」と言って残業代を支払わない企業もあります。実際、残業代が支払われない管理職というものもあり、「管理監督者」にあたる方が該当しますが、たとえ管理職であっても残業代が支払われる場合もあります。

厚生労働省によると、管理監督者は労働条件の決定やその他労務管理について経営者と一体的な立場にある人のことを指しています。例えば、飲食店などの店長はアルバイトの採用には関わりますが、直接的に労働条件に関わることはしません。

よって、店長は管理監督者には該当しない可能性があります。管理監督者には該当しないが、管理職として残業手当が支払われていない場合は「名ばかり管理職」にあたるので、残業代を請求できる可能性は高いでしょう。

関連記事:名ばかり管理職の特徴|管理監督者に認められた正当な待遇について

年俸制

「年俸制だから残業代は支払わない」と言われたという方も多いのではないでしょうか?しかし、残業代は年俸制とは関係がありません。年俸制の場合、多くは固定残業と同じように一定の残業代を含んだ金額が支払われています。

もし、支払われている残業代よりも多く残業を行なった場合は、追加で残業代が支払われますが、これを企業側が怠った場合は未払いの残業代として請求することができます。 もし、月々に支払われている残業代に疑問を持ったら、まずは残業代をご自身で算出してみるのも良いでしょう。残業代の大まかな計算の仕方は次の項目でご紹介していきます。

残業代を実際に計算方法する手順と必要な証拠

残業代を実際に計算方法する手順と必要な証拠

残業代請求を行うには明確な残業時間と未払いの証拠が必要です。これらの証拠は、日々の記録が重要となってくるので残業代請求を行うと決意したら、少しずつ集めていくようにしましょう。

残業代の計算方法

【月給(円)】÷【月の所定労働時間(時間)】× 1.25 × 【時間外労働時間】

となっています。尚、ここでの【月給(円)】は家族手当・通勤手当・住宅手当などの諸手当を除いて計算してください。

【計算式から出た数字】−【実際に支払われている残業代】= 未払いの残業代

ここで出された残業代は大まかなものです。厳密な残業代は、所定時間や就業規則・給与規定によって異なるので弁護士に相談するのが良いでしょう。ただし、残業代請求が可能な残業代ができるのは過去2年間分までです。

関連記事:残業代の計算方法と知っておくべき未払い残業代請求のイロハ

未払いの残業代請求には証拠が重要

未払いの残業代を請求する場合、労働時間のわかる資料として、主にタイムカードや勤務表、業務日報など始業と終業の時刻がわかるものを用意しましょう。この他にも業務用メールアカウントの送受信記録やパソコンのログイン記録など、その時間に業務を行なっていたことがわかる記録であれば証拠になります。

また、出勤と退勤の時刻をノートに書き留めておくなども有効でしょう。さらに、業務用メールや業務指示のメモ書きなどは上司からの指示による残業であることの証拠となるので手元に残しておくことも有効です。

就業規則・給与規定のコピー

就業規則や給与規定には、所定労働時間や時間外労働の規定が書かれています。「所定労働時間を超えて就業した場合は割増賃金を支払う」との規定があれば、法定労働時間内であっても残業代を請求できるので確認しておきましょう。

未払い残業代の金額計算

残業代の計算方法については先にも記載しましたが、月々の給与明細と照らし合わせて、なるべく正確な金額を算出してください。

未払いの残業代はいつまで遡れるのか?

残業代の請求は過去2年分までに限ります。労働基準法115条によると、「賃金、災害補償、その他の請求権は2年の時効をもって消滅する」とあります。未払いの残業代請求をする場合は、2年間を超えると請求できなくなりますので早めに行動しましょう。

第百十五条  この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によって消滅する。
引用元:労働基準法第115条

未払いの残業代を請求する手順

残業代請求の大まかな流れは次のとおりです。

  • 労働時間(残業時間)が証明できる資料の作成
  • 残業代の計算
  • 残業代支払依頼書の作成
  • 労働基準監督署への申告
  • 労働審判申立の手続き

詳細は、『残業代請求の方法とは|手順や流れを解説』をご覧ください。

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もし未払いの残業代を請求しても相手にされない場合

もし未払いの残業代を請求しても相手にされない場合

労働審判や少額訴訟などで和解が成立すると、支払合意書や和解調書・調停調書で相手方に残業代の支払いを命じることができます。企業は支払合意書や和解調書・調停調書に記載されている内容には速やかに従わなければなりません。

もし、調書や支払合意書に記載されている和解金額が期日までに支払われていなかった場合、相手方の所在住所を管轄している地方裁判所に必要書類を提出して「強制執行」の手続きを行うことができます。強制執行では「執行文」が相手方に付与され、銀行預金などの差押え手続きがされます。

まとめ

いかがでしょうか。未払い残業代は違法性が高く、「残業代請求」ができるということを頭の片隅に置いておいてください。ただし、残業代請求ができるのは過去2年分の残業代に限りますので、月々に支払われている残業代に少しでも疑念を持たれている方は、早めの行動を起こして頂くのが良いでしょう。

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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