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KL2020・OD・037
労働問題で度々耳にするのが「固定残業制だから残業代が出ない」という言葉です。固定残業制は、一定時間の残業代を含めた金額を固定給として支払うものですが、固定残業制だからといって残業代を支払わなくていいわけではありません。
今回は、固定残業制での残業代の考え方と未払いの残業代があった場合の請求方法についてご紹介します。
目次
固定残業とは正式には「固定残業代制」といい、あらかじめ一定の時間分の残業代が固定残業代として支払われる制度です。固定残業代の考え方としては、一定時間分の残業代は残業をしてもしなくても固定残業手当などで支払われ、一定時間分を超えた残業代は追加で支払われることになっています。
また、固定残業は定額残業、みなし残業と呼ばれることもあります。
固定残業代とは、企業(会社)がある程度の残業時間を想定して一定時間分の残業代を給与に含むことです。固定残業代では、残業をした月もしていない月も固定残業代として毎月支払われます。
また、固定残業代で定められた時間以上の残業をした場合は追加で支払われることになっています。追加支給がされていない残業代は未払い残業代となります。
みなし残業も固定残業代と同じように、一定の残業代を給与として支払うことです。正式には「みなし労働時間制」といい、「事業場外労働制」と「裁量労働制」に分けられます。どちらも、所定労働日につき「●時間働いたものとしてみなす」として賃金が支払われます。なお、残業代の考え方としては固定残業代と同じようにみなし残業代以上の時間、残業した場合は追加支給になります。
関連記事:みなし残業は違法?知っておくべき「みなし残業制度」の正しい知識
企業は残業代計算の手間を省くために固定残業やみなし残業の制度を導入します。固定残業やみなし残業は外回りの営業職や研究者、エンジニア、デザイナーなどの実働時間を管理することが難しい職種に導入されることが多いです。これらの職種の方は、一定時間労働をしているという想定で賃金が設定されています。
固定残業代(みなし残業代)、定額残業代は労働時間と支給額によっては違法性が高いと言われています。先の項目でもお伝えしましたが、固定残業は固定残業代の時間以上の残業をした場合は追加支給されることになっています。
つまり、固定残業以上の残業代が追加支給されていない場合は違法になるのです。
参照元:残業代が出ない理由と違法性
企業が固定残業やみなし残業を適法で導入するためには次のポイントを押さえなければなりません。もしも、今勤めている会社で以下のポイントが満たされていない場合は、違法性が高いと言えます。
固定残業やみなし残業を導入する場合は就業規則、賃金規定、労働契約などで「基本給(月給)」に固定残業代が含まれているということが明確に定められていなければなりません。
求人などでは、「給与/月給250,000円以上 ※固定残業代(38,000円、20時間相当分)含む。20時間超過分は別途支給」などの表記がなければなりません。また、表記の例の通り、20時間超過分は別途支給など固定残業代を超えた時間の残業代は支給されなければなりません。
給与明細などに固定残業代やみなし残業時間が基本給に含まれるとして「基本給250,000円(固定残業代20時間を含む)」などの表記を行うことは違法です。固定残業代やみなし残業時間は基本給と分けて記載しなければなりません。正しい例は「基本給250,000円以上 ※固定残業代20時間、38,000円」のような表記です。
固定残業やみなし残業を導入している企業は求人募集を行うときに固定残業制やみなし労働制であるということを明確に表記しなければなりません。全国求人情報協会では、固定残業の求人表示を以下のように注意喚起しています。
求人広告の給与において固定残業代を含む金額を表示する場合、
1固定残業代の金額
2その金額に充当する労働時間数
3固定残業代を超える労働を行った場合は追加支給する旨
の記載をお願いします。
求人募集の時点で、上記の条件を満たしていない企業は、違法性が高いので注意してください。
固定残業手当があるといっても、その固定残業手当自体が違法な場合もあります。固定残業制を導入する際、固定残業手当が最低賃金を下回って設定してはいけないとされています。もしも、固定残業手当が固定残業時間に対してあまりにも少ないという場合は、違法性が高いといえます。
適切な固定残業代の大まかな計算方法は以下の通りです。
【固定残業手当】➗【固定残業時間】=時間あたりの固定残業代
詳しい計算方法は後の項目で解説しますので参考にしてください。
【関連記事】
残業時間の平均|残業代が少ないときにできること
固定残業制は残業代を支払わなくていいという制度ではありませんので、固定残業制だからといって残業代が出ないということはありません。
固定残業制の場合、支払われている固定残業代よりも多く働いた分は支払われなければなりません。固定残業だからといって未払の残業代を支払わない場合は違法です。
残業代の未払いは労働基準法違反にあたります。企業には残業代を支払う義務があります。労働基準法では、残業代の支払いについて以下のように定めています。
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
引用元:労働基準法
上記のことは固定残業制であっても同じです。未払い残業代は労働基準法の違反にあたる行為なのです。未払いの残業代は請求することが可能ですので、残業代に疑問を持ったら残業代請求の準備をしましょう。
関連記事:未払い残業代を企業に請求して支払ってもらう5つの手順
固定残業代の計算方法は、固定残業代分を除けば基本的に他の残業代の計算と同じです。この項目では固定残業の場合の残業代計算についてご紹介します。
まず、企業で定められている固定残業手当が適切なものか計算しましょう。固定残業手当が適切な金額かどうかは、時間あたりの賃金を計算することでわかります。時間あたりの賃金は以下の式で計算できます。
【固定残業手当】÷【固定残業時間】=時間あたりの固定残業代
時間あたりの固定残業代は最低賃金を上回っているものでなければなりません。各都道府県の最低賃金は、厚生労働省の地域別最低賃金の全国一覧で確認することができます。
残業代を計算する際に気をつけるべきポイントは2つあります。
実働の残業時間の計算を以下の計算式で行います。
【月給(円)】÷【月の労働日数×8時間】×【割増率】×【残業時間】=実働残業代
未払い残業代は実働残業代から固定残業手当を差し引いた金額になります。
【実働残業代】−【固定残業手当】=未払いの残業代
未払いの残業代があった場合は、残業代請求を行うようにしてください。残業代請求の方法は後の項目で取り上げています。
関連記事:残業代の計算方法と知っておくべき未払い残業代請求のイロハ
Aさんは2月に合計40時間の残業をしましたが、月給は28万5,000円でした。給与明細を見ると内訳は、基本給20万円、住宅手当2万円、通勤手当1万円、家族手当5,000円、固定残業手当5万円となっていました。
残業代の計算式は以下の通りです。
【月給(円)】÷【月の労働日数×8時間】×【割増率】×【残業時間】=実働残業代
各種で手当を除いた【月給(円)】は基本給より、20万円。閏年を除いた年の【月の所定労働時間(時間)】は、(365日-年間休日)×1日の所定時間÷12ヶ月で求められます。今回は140時間として計算します。【割増率】は月60時間以下なので、1.25倍とします。
【20万(円)】÷【140(時間)】× 【1.25】 × 【40】≒71,429
固定残業手当として月々5万円支払われていたので未払い残業代は以下の式になります。
71,429 − 50,000 = 21,429
上記のことから、Aさんは2月の未払い残業代として21,429円を請求することできます。
【関連記事】:残業代の計算方法と知っておくべき未払い残業代請求のイロハ
残業代請求の大まかな流れは次のとおりです。
詳細は、『残業代請求の方法とは|手順や流れを解説』をご覧ください。
働いている時間に対して固定残業代が見合わないという場合は、残業代請求をすることが可能です。残業代請求は個人で行うこともできますが多くの手間と時間がかかります。また、企業との交渉もあるため精神的負担もかかると考えられます。残業代請求を弁護士に相談した場合、残業代請求にかかる多くの手間を省略できる他、企業との交渉を代理で行うことができるため精神的負担も軽減されます。
【関連記事】:残業代請求を弁護士に相談するメリットと弁護士の選び方
固定残業制であっても、残業代は支払われます。もしも残業代と労働時間が合わない、未払いの残業代があるという方は残業代請求をしましょう。残業代請求は、過去2年分までという期限がありますので、未払い残業代の請求を考えている方は早めに行動しましょう。
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