雇用保険未加入は違法!2つの相談先と失業等給付の概要

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
雇用保険未加入は違法!2つの相談先と失業等給付の概要

雇用保険は、週20時間以上働く方が必ず加入しなければならない、失業時や休業時などの収入補償や就職支援などのための制度です。

雇用保険が未加入の場合は、会社側には罰則などが科されることもあります。

今回は、平成29年度に法改正があった保険料の引き下げ育児休業期間の延長(10月1日施行)など、制度の概要や加入義務、未加入の際の相談先などにご紹介します。

雇用保険の加入義務と罰則

雇用保険は週20時間以上働く労働者が強制加入となる保険で、企業は対象の労働者を未加入のままにしている場合は罰則を受ける可能性があります。

また、対象の労働者が雇用保険に未加入である場合は、後から遡って加入させることも可能です。

この項目では、雇用保険の加入義務と罰則についてご紹介します。

雇用保険は週20時間以上働いている労働者は強制加入

雇用保険は被保険者資格を有する労働者が必ず加入しなければならない保険です。なお、契約社員やパートタイムで働いている場合も、週の労働時間が20時間以上の場合は被保険者資格がありますので加入しなければなりません。

< 雇用保険の適用基準 >

(1)  31日以上引き続き雇用されることが見込まれる

(2)  1週間の所定労働時間が 20 時間以上である

対象者が未加入の場合は会社に罰則が課される可能性もある

労働者が加入対象であるにもかかわらず、会社の怠慢や虚偽の報告によって雇用保険への加入手続きを行わなかった場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科される可能性があります。

第八十四条  労働保険事務組合が次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした労働保険事務組合の代表者又は代理人、使用人その他の従業者は、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一  第七条の規定に違反して届出をせず、又は偽りの届出をした場合
二  第七十六条第一項の規定による命令に違反して報告をせず、若しくは偽りの報告をし、又は文書を提出せず、若しくは偽りの記載をした文書を提出した場合
三  第七十六条第三項(同条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反して証明書の交付を拒んだ場合
四  第七十九条第一項の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは偽りの陳述をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合
引用元:雇用保険法

雇用保険は遡って加入することも可能

雇用保険は2年間までなら遡って加入することができます。なお、会社側の怠慢によって未加入だった場合は、それ以上遡って加入できることもあります。

後の項目「雇用保険制度の概要|知ってくべき4つの失業等給付」でご紹介する手当の受給を行う際に未加入であることが発覚したという場合であっても、ハローワークの担当職員に事情を説明し、未払い分の保険料を納めることで手当を受けることが可能です。

雇用保険の保険料と加入有無の確認|未加入時の相談先

雇用保険の保険料と加入有無の確認|未加入時の相談先

雇用保険に加入しているかどうかは給与明細などで確認することもできますが、悪質な企業の中には労働者から雇用保険料を徴収していたのにも関わらず未加入にしていたというケースもあります。

この項目では、雇用保険の加入確認の仕方と未加入時の相談先についてご紹介します。

保険料の労働者負担は給与の0.3%

雇用保険の保険料は、給与に対して0.3%となっています。農林水産業・清酒製造業・建築業の方は給与の0.4%など、職種によっては変動することがあります。

 厚生労働省|平成29年4月から雇用保険料が引き下がります

引用元:厚生労働省|平成29年4月から雇用保険料が引き下がります

雇用保険の加入有無を確認するにはハローワークに書類提出 |未加入時の相談先

雇用保険の加入有無はハローワークに雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票を提出することで確認することができます。確認の際は、身分証明証が必要になります。

もしも、確認した際に雇用保険に未加入であることが発覚した場合は、早急にハローワークに相談してください。

労災(労働災害保障保険)は労働基準監督署に確認する

労災は、管轄が労働基準監督署になるため、加入有無も労働基準監督署で確認することになります。労働基準監督署内の労働保険適用担当の方に相談しましょう。

雇用保険制度の概要|知ってくべき4つの失業等給付

雇用保険制度では以下のように、大きく分けて「失業等給付」と「雇用保険二事業」の2種類の給付があります。失業等給付は、保険料が労働者と会社の折半で支払われており、全ての加入者が利用することができる給付制度です。

雇用保険二事業は、全額企業が負担して行う労働者の能力向上雇用の安定のための制度です。そのため、内容は企業によって異なります。

ハローワークインターネットサービス|雇用保険制度の概要

引用元:ハローワークインターネットサービス|雇用保険制度の概要

この項目では、失業等給付に含まれる4つの給付制度についてご紹介します。

求職者給付|失業時の収入補償・一時給付金

求職者給付とは、65歳未満の労働者の失業時に収入補償を行ったり、高齢者(65歳以上)の失業時に一時金を支払うものです。

65歳未満(一般被保険者)の失業時収入補償は「基本手当」をいい、受給するためには以下の要件を満たしてなければなりません。なお、船員の方は、ハローワークではなく地方運輸局での手続きを行うことになります。

  • ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
    したがって、次のような状態にあるときは、基本手当を受けることができません。
  • 病気やけがのため、すぐには就職できないとき
  • 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
  • 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
  • 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき
  • 離職の日以前2年間に、被保険者期間(※補足2)が通算して12か月以上あること。
    ただし、特定受給資格者又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可。
    ※ 補足2 被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切っていた期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算します。

引用元:ハローワークインターネットサービス|基本手当について|受給要件

就職促進給付

就職促進給付で重要となるのは「再就職手当」です。これは、失業時の基本手当を受給している方が再就職した際に受けることのできる一時金です。

支給額 = 基本手当(日次支給額)×  60%〜70%(支給残日数によって変動)

教育訓練給付

教育訓練給付は、厚生労働省が指定した職業訓練を終了した際に受講費用の一部が支給される給付制度です。

教育訓練給付の子宮要件や対象プログラムはハローワークなどで確認することができます。

雇用継続給付

雇用継続給付は高齢、育児、介護などの理由によって一時的に働くことが困難になった際、雇用を継続するために受けることのできる給付手当です。

高齢者雇用継続給付

高齢者雇用継続給付は、60歳を超えた労働者が60歳時点と比べて労働賃銀が75%以上下がった場合に差額分を支給する給付制度です。支給額は以下の通りです。

  • 60歳時点の賃金との差額分が61%未満の場合
    支給額=現在の賃金×15%
     
  • 60歳時点の賃金との差額分が61%以上75%未満の場合
    支給額=現在の賃金×(0%以上〜15%)

育児休業給付

育児休業給付は、育児休業を取得労働者のうち、以下の要件を満たす方が受給することができる給付制度です。育児休業は、平成29年10月から最大2年(子が満2歳に達する)まで延長することが可能になりました。

  • 育児休業期間中の各1か月ごとに、休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと。
  • 就業している日数が各支給単位期間(1か月ごとの期間。下図参照)ごとに10日(10日を超える場合にあっては、就業している時間が80時間)以下であること。
    (休業終了日が含まれる支給単位期間は、就業している日数が10日(10日を超える場合にあっては、就業している時間が80時間)以下であるとともに、休業日が1日以上あること。)

引用元:ハローワークインターネットサービス|雇用継続給付

なお、企業は対象の労働者から育児休業を請求された際に、拒否することはできません。育児休業や産前産後休業を取得したことのみを理由として、待遇や人事評価を下げる行為は法令違反です。

介護休業給付

介護休業を取得した際に受け取ることのできる手当です。介護休暇は93日まで取得することができ、与えられた日数の範囲内で回数を分けて取得することも可能です。支給額は以下の通りです。

支給額 = 休業開始時の日給 × 67% (暫定支給額)

※休業期間中に労働賃金が支給される場合は支給額が変動します。

なお、2017年1月に行われた法改正により、介護休業が最大3回まで取得できるようになりました。介護休業を取得させない、取得したことのみを理由として待遇や人事評価を下げることは法令違反です。

雇用保険が未加入のブラック企業は社会保険も確認

雇用保険が未加入のブラック企業は社会保険も確認

雇用保険は正社員や週20時間以上働いているパートタイム、アルバイトの労働者が必ず加入しなければならない保険です。しかし、保険料負担などの経費を削減するために、未加入のままにさせるという企業もあります。

これらの企業は、雇用保険だけでなく、社会保険も未加入となっている可能性も高いのです。雇用保険の加入を確認する際は、社会保険もあわせて確認するようにしましょう。

まとめ

雇用保険は週20時間以上働く労働者は強制加入となる保険です。失業や休業など一時的に働けない状態になった際に、生活費や次の仕事につくための補償を受け取ることができるため、未加入の場合は早急にハローワークなどで手続きを行うようにしてください。

この記事で、雇用保険に関する疑問が解消されれば幸いです。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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