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KL2020・OD・037
最低賃金法(さいていちんぎんほう)とは、労働者に支払われる給与の最低額を定めた法律で、労働者の安定した生活や労働力向上を目的とし、各都道府県に定められた法律です。
しかし最近では、この最低賃金を下回った額での労働を余儀なくされているケースも多々あり、社会問題となっています。そこで今回の記事では、知らず知らずのうちに最低賃金法を下回った労働をしていた場合の対処法について、その差額や未払い額を請求する方法をご紹介していきます。
目次
まずは、最低賃金法とは一体どのような法律なのか、どのように最低賃金が定められているのかについてくわしく見ていきましょう。
最低賃金法とはその名の通り、労働者に対して賃金の最低額を保証する法律のことです。労働者の生活の安定や、労働力の向上などを目的とし、職種や人種、雇用形態に関わらず、全ての労働者に適応されます。
この最低賃金は、時間額でその金額が定められます。例えば、最低賃金が958円(2017年10月時点)とされている東京都内において、時給850円のアルバイト雇用は最低賃金法に違反する、ということですね。
最低賃金は、公益代表、労働者代表、使用者代表で構成される「中央最低賃金審議会」によってまず審議され、そこで決定された最低賃金額が、今度は各都道府県にある「地方最低賃金審議委員会」に持っていかれ、そこで慎重に審議を行います。
最終的には、各都道府県の労務局長がその額を良しと判断することにより、それぞれの最低賃金が決定されるということです。
ではここで、主要都市における最低賃金を比較していきたいと思います。
今回は東京、愛知、大阪、福岡、北海道の5都市で比較してみます。
【東京:958円】
【愛知:871円】
【大阪:909円】
【福岡:789円】
【北海道:810円】
この5都市では一番高いのが東京、一番低いのが福岡という結果でした。大都市と呼ばれる地域でも、その差が大きいことがわかりますね。ちなみに、日本一最低賃金が低い都道府県は、熊本・大分・鹿児島・沖縄の737円です。
いったいなぜ、都市によってこれほどまで最低賃金に違いがあるのでしょうか?
まず思いつくのは、東京は物価や家賃が高いといった理由から、最低賃金も必然的に高くなってしまうという考え方です。たしかに東京と地方都市で家を借りる場合、たとえ同じような間取りであっても、その賃料には倍近くの差があることもよくありますからね。
家賃に関してはそのくらい、東京と地方で開きがあるのは事実です。
しかしよく考えてみると、たとえばCDや漫画、またはブランドの洋服や食料品などに関して、東京と地方都市との間で値段の違いがあるわけではありません。これら一般的に流通しているものに対しては、さほど値段の差はないのです。
東京都内の家賃はたしかに高いのかもしれませんが、じゃあそれだけで最低賃金が引き上げられているというと、単純にそうとは考えにくいのではないでしょうか。
生活水準はどの都市でもほとんど変わらないはずですから、東京の最低賃金が日本でもっとも高い理由は、この他にあると考えられます。そこで、大都市である東京が日本一最低賃金が高い理由として、集積の経済という考え方が理由として挙げられます。
集積の経済(しゅうせきのけいざい)とは、異業種の企業が集中して立地することで得られる外部経済のことをいう。都市経済学において、都市の成立要因のひとつとして指摘されている。
(引用元:Wikipedia)
集積の経済とは簡単に言うと、企業が多く集まることによってそこに競争が生まれたり、経済の流れが活発になるという考え方です。人やモノの移動・輸送効率も上がり、生産性も向上しますよね。
経済活動が活発になり、その企業が地方に比べて大きな利益を上げることができれば、それらが労働者に還元されるということも自然な考え方ですよね。
一極集中化が進む東京において、最低賃金が地方に比べてこれほどまでに高いのには、こうした理由があるといえるでしょう。
それではここで、最低賃金がきちんと支払われているのか、また、実際の計算例を書いていきたいと思います。
まず、最低賃金の対象となるのは、
【基本給+諸手当(皆勤手当・通勤手当・家族手当を除く)】
の、毎月の基本的な賃金に対してです。
臨時に支払われる結婚手当や賞与、時間外手当は最低賃金の対象にはなりませんので、注意が必要です。
それでは実際に例を挙げ、その計算方法をご紹介していきます。
確認ですが、最低賃金は時給額でその金額が決定されますので、時給制での契約の場合は、その金額とその都市の最低賃金とを比較してみてください。ここでは固定給、そして月給制、東京勤めのAさんのケースを例に挙げてみます。
計算式は、【対象となる月給×12ヶ月÷年間総所定労働時間】
この結果が、その都道府県の最低賃金を上回っていれば正当であるということです。
まずは毎月の月給額、年間の総所定労働時間など、労働条件を確認していきます。
*Aさんの例 「年間総所定労働日数」:250日 「月給」:20万円 (内訳:基本給16万円、通勤手当5千円、家族手当2万円、皆勤手当1万5千円) 「一日の労働時間」:9時間 |
これで計算してみましょう。通勤手当、家族手当、皆勤手当は最低賃金の対象とはならないので、対象となるのは基本給の16万円。計算式は以下の通りです。
【(20万円)-(5千円)-(2万円)-(1万5千円)=16万円】
となります。
年間の総所定労働時間は、【250日×8時間=2000時間】
ですね。
これを上にあげた
【対象となる月給×12ヶ月÷年間総所定労働時間】
に当てはめてみると、
【16万円×12ヶ月÷2000時間】
となります。
これを計算すると960円となり、東京都の最低賃金である958円を上回っていることがわかりました。
最低賃金をもらい忘れないためには、一体どういった対処方法があるのでしょうか?
時給制での契約であれば、その賃金を各都道府県の最低賃金と照らし合わせれば良いので、間違いはないかと思います。
しかし固定給の場合、なかなかその金額を計算するという機会はないのではないでしょうか。もしも不安がある場合は、自分が勤める都道府県の最低賃金をまず確認し、上の計算方法に当てはめて計算してみてください。
最低賃金は定期的に変わっていますから、その都度インターネット上で確認し、ご自身の労働条件と照らし合わせて計算をしていきましょう。
(東京都は現在、2年連続で最低賃金が上昇しています)
最低賃金法に沿わず、これを下回る額での労働を課していた場合は違法となり、使用者は罰せられます。
この場合、その差額分を会社側に請求することは労働者の正当な権利ですので、自信をもって行動に移していきましょう。
以下ではそのことについて、詳しく解説していきます。
ご自身の給料が最低賃金を下回っていた場合、その差額を請求することはできるのでしょうか?
結論から言うと、請求することはできます。
最低賃金を下回る給与の支給は法律上で違法となっていますので、しっかりと計算をし、その証拠をもって会社に請求しましょう。ただし、そのさかのぼり期間は所定の支給日より2年となっていますので、ご注意ください。
各都道府県で定められた最低賃金を下回っていた場合、最低賃金法第40条により、使用者は罰せられます。50万円以下の罰金の刑事罰の可能性などがありますので、犯罪行為だといえるでしょう。
最低賃金は、雇用形態によっての違いは全くありません。
正社員やアルバイト、パートや派遣であったとしても、最低賃金は一律です。
もちろん国籍も関係ありません。
未払いの額を請求する場合は、会社側に請求書を送付することが一般的です。この場合、支払いを迫る「催告」の意味も込められているので、普通郵便ではなく内容証明郵便で送りましょう。
上の計算式に当てはめ、給料が最低賃金を下回っているという証拠も合わせて記載することが大切です。
おおよその手順としては、以下のとおりです。
1.ご自身の給与を計算(【対象となる月給×12ヶ月÷年間総所定労働時間】し、最低賃金を下回っていることを確認する。
2.会社側に内容証明郵便でその旨を記載して送付する。(賃金の請求は労働者の正当な権利なので、自信をもちましょう)
この手順を踏んでも最低賃金が支払われない場合、下記のような行動を起こしていきましょう。
証拠をもって会社側に請求しても差額分が支給されない場合、その相談相手としてまず考えられるのは、労基局だと思います。相談方法としては、電話・メール・FAX・訪問など。ちょっとした相談、少し話を聞いてほしいといった場合には、電話相談が手軽でおすすめです。電話であれば、匿名でバレずに相談することもできますからね。
しかし、緊急性がある場合には、やはり実際に労基局へ訪問した方がいいでしょう。労基局には毎日多くの相談者が訪れていますから、全ての相談に対して完璧に対応することはできません。
そのため、抱えている問題をしっかりと整理し、緊急性があるということを理解してもらえるよう誠意をもった対応で、労基局へ訪問しましょう。その際、証拠となる資料を事前に準備をしておくことが大切です。
または、弁護士に相談するということもとても有効です。労働問題を専門とする弁護士に相談すれば話は早いですし、万が一裁判沙汰になったとしても、経緯を知っている弁護士であれば安心して全てを一任することができますね。
その分費用はかかりますが、交渉を1人で行うのは困難な場合もありますし、精神的に大きなストレスとなってしまうこともあるでしょう。相談料は無料という弁護士も増えていますから、まずは気軽に相談してみるというのもいいかもしれません。
結果を求めるのなら弁護士に相談するのが一番確実でしょう。
今回は、最低賃金法についてまとめていきました。
簡単に要約すると、下記のような感じです。
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時給制のアルバイトやパートであればすぐに確認できると思いますが、固定給で働いている方の場合、なかなかそれを確認することができなかったりするかと思います。
もしも疑問を感じる場合はこのコラムを読んでいただき、ご自身の労働条件を確認して、実際に計算してみるといいでしょう。
そこでもし最低賃金を下回っている場合には、自信をもって行動に移していってくださいね。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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