ブラック企業の完全対策|就職前と後の状況別の対策3選

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
ブラック企業の完全対策|就職前と後の状況別の対策3選

ブラック企業とは、長時間労働やパワハラなどが横行していたり、未払い賃金が発生している、労働環境が粗悪な会社のことを言います。厚生労働省によると約8割を超えた会社がブラック企業の可能性があるとされています。今回はブラック企業の対策方法をご紹介していきます。

ブラック企業の定義

ブラック企業とは、一般的に支払われるべき賃金が未払いであったり、長時間労働を強いられたりする企業のことを指します。

厚生労働省では、「ブラック企業」という言葉を使った定義はされていませんが、「若者の使い捨てが疑われる企業等」として対策を行なっています。厚生労働省が明言している「若者の使い捨てが疑われる企業等」の特徴には長時間労働やパワハラが挙げられています。

ブラック企業の特徴

ブラック企業の特徴には

  • 違法な時間外労働
  • 賃金不払残業がある
  • 過重労働による健康障害防止措置が実施されていない

などの点が挙げられるとされており、上記の問題点のある企業が8割を超えていることがわかっています。

詳細は、『ブラック企業の5大特徴|勤めている人ができる3つの対処法』をご覧ください。

就職前にできるブラック企業かどうかを見極める方法

会社がブラック企業であるかどうかを就職する前に調べることができます。ブラック企業から抜け出そうと焦って転職したら、またブラック企業だったということを防ぐためにも会社の情報を精査することが必要です。

インターネットで調べる

就職先を選ぶ際、インターネットで会社を調べて応募する人も多いと思います。インターネットで会社を調べる際には以下のポイントに注意しましょう。

評判

最近では、会社の評判や口コミをインターネットで調べることができます。スマートフォンやパソコンで「(会社名)   評判」や「(会社名)   口コミ」などで検索をすると情報が出てきます。また、「(会社名)   ブラック」と直接検索するのも一つです。ただし、ここで出てくる情報は正確なものではない可能性もあります。あくまでも参考程度に考えてください。

離職率

一般的に離職率が50%以上の会社は、ブラック企業である可能性が高いといわれています。離職率はインターネットやハローワーク、大学の就職相談窓口でも調べられますが、会社の機密情報にあたるため公開していない場合もあります。

雇用条件

給料や労働時間、休日などの条件が詳しく定められていない場合はブラック企業の可能性が高いです。また、ブラック企業では、求人票で定められていても入社したら条件が変わっていたということも少なくありません。インターネットや求人業などの募集要項は保存しておきましょう。

福利厚生などの制度

週30時間以上、または従業員501人以上の会社で週20時間以上働く労働者は社会保険や厚生年金に加入することが義務付けられています。会社の福利厚生制度などの欄に、社会保険や厚生年金、労働災害などの項目がない場合はブラック企業である可能性が高いです。就職をする前に求人票などで福利厚生制度の確認もしておきましょう。
関連記事:厚生労働省|社会保険の適用拡大

面接時に見ておくべきポイント

面接時にも雇用条件の説明がある場合があります。その際は求人票などの募集要項と一致しているかなどを確認しましょう。面接時に受けた説明はなるべく記録に残すようにしましょう。また、可能であればコンプライアンスやハラスメントの相談窓口や労働組合などの有無も確認しましょう。

内定者研修などで見ておくべきポイント

内定者研修などで洗脳のような研修があったり、研修費を給与から差し引いたりする会社はブラック企業である可能性があります。研修が会社指示のもと、業務の一環として行われた場合は会社負担になりますし、業務に従事した場合は賃金が発生します。

就職後に考えるべきブラック企業への対策

なんとか内定をもらって入社したら、ブラック企業だったという場合もあります。この項目では、働きながらブラック企業かどうかを判断するための対策をご紹介します。

試用期間中の解雇をする場合の対策

入社後に試用期間を定めている会社も多いと思います。試用期間中であっても、雇用契約は結んでいるので解雇には正当な事由が必要になります。また、試用期間の期間を定めていなかったり期間を一方的に延長することはできません。

雇用条件通知書は必ず確認すること

入社後に受け取る雇用条件通知書などは必ず良く確認して、保存しておきましょう。採用応募をした際に見た求人票などの条件と異なっていないか確認することがポイントです。

労働条件の変更をしてくる場合の対策

会社は、労働者にとって不利益になる労働条件の変更を一方的に行うことはできません。労働条件の変更ができるのは、労働者と会社の双方の合意があったときです。一方的な賃金の値下げや、雇用形態の変更は違法の可能性が高いです。

ハラスメント(セクハラ、パワハラ)をしてくる人がいる場合の対策

パワハラやセクハラなどのハラスメントをするブラック企業は、ハラスメントの解決方法を考えましょう。パワハラやセクハラなどは、内容によっては違法行為になります。会社はハラスメントに対して防止措置を取らなければなりません。

防止措置とは、労働者からハラスメントの相談を受けた際に対処して、さらに再発防止のための策を講じることです。 会社にハラスメントの相談をしたのに取り合ってくれないという場合は、労働局に相談するといいでしょう。

一般的なハラスメントの対処フローを図にまとめました。また、セクハラの対処方法については「上司からセクハラにあった時に実践すべき対処法」、パワハラの対処方法については「パワハラに対する目的別相談窓口」で詳しくお伝えしています。

ハラスメント(セクハラ、パワハラ)をしてくる人がいる場合の対策

ブラック企業のせいで精神障害になったら

ブラック企業で長時間労働やパワハラなどによって、うつ病などの精神障害を発症した場合は労災申請をすることができます。うつ病などの精神障害が労災として認定されると、業務によって起きた怪我や病気の治療費が補償されます。

ブラック企業でうつ病や精神障害を発症した場合は、労働局に精神障害による労災認定について相談してください。

関連記事:パワハラで労災認定が受けられる条件と申請方法まとめ

会社を辞めるときにできるブラック企業への対策

働いているうちに、勤めている会社がブラック企業だから辞めようと考える方も多いと思います。ブラック企業を辞める際は、退職などで揉めることがあります。この項目ではブラック企業を退職する時の対策をご紹介します。

しつこい退職勧奨・退職強要をする場合の対策

「お前なんか(会社を)辞めてしまえ」、「辞めないのなら(関係のない部署に)異動だ」などと言い退職に追い込むのは、退職勧奨や退職勧告と呼ばれる行為にあたります。執拗な退職勧奨や退職勧告は、退職の強要にあたり不法行為なのです。

労働者が望まない退職を強要することは、民法709条に定められている権利の侵害になり、損害賠償請求を行うことも可能です。退職は、労働者本人の意思でなければできないので退職勧奨にあった場合、従う必要はありません。

第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 引用元:民法

会社を辞めさせないのも違法

先ほどもお伝えしましたが、退職は労働者本人の意思でなければできません。会社は退職を拒否することはできません。退職は民法627条では以下のように定められています。

第六百二十七条  当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
 引用元:民法

法律上は14日前に退職の申し出をすると、雇用契約の解除ができることになります。会社が辞めさせないと主張しても、あなたが退職日の14日前に退職届を提出すれば退職できるのです。ただし、円満に退職をしたい場合は少なくとも1ヶ月前には直属の上司などに退職の意思を伝えましょう。

ブラック企業を辞める方法

ブラック企業を辞めることを考えている方にできる、退職のための準備があります。例えば、ブラック企業の退職理由がパワハラだった場合は退職事由を「自己都合」ではなく「会社都合」にすることができます。

自己都合と会社都合の退職には失業保険の受給などで差が出てきますので、失業保険の受給を考えている方は会社都合での退職をお勧めします。

ブラック企業の辞め方は「ブラック企業の辞め方と辞める際に考えるべきこと6つ」で詳しくお伝えしていますので、ご覧ください。

ブラック企業への対策方法は必ず相談すること

ブラック企業に苦しめられている、今働いている会社はブラック企業なのではないかと疑い始めたという人は、周囲の人に相談するようにしましょう。ブラック企業に長く勤めていると、どんなに異常な労働環境であっても気付けないことがあります。

また、「ブラック企業のポイント」でお伝えした内容にあてはまる労働環境で働いている方は、労働基準法に違反していることも考えられます。

労働基準監督署に相談する

賃金の未払いや長時間労働などは労働基準法に違反する行為です。今支払われている残業代が労働時間と見合わない、過重労働で体が持たないと感じている方は、労働基準監督署にブラック企業の相談をしましょう。労働基準監督署ではメール相談も行なっているため気軽に利用することができます。また、今支払われている残業代に疑問を持った方は、未払いの残業代を請求できる方法もあります。併せてご覧ください。

労働局に相談する

ブラック企業の労働条件に疑問を持っている、パワハラやセクハラなどのハラスメントに悩まされている場合は、労働局の総合労働相談コーナーを利用するといいでしょう。労働局では、相談した内容が悪質であると判断したら、会社で行われているハラスメントや労働条件の調査を行うことができます。

弁護士に相談する

ブラック企業によって働けない状態になった、退職に追い込まれたなどの損害が発生した場合は、ブラック企業を相手に訴訟を起こすことも可能です。訴訟を起こす場合は弁護士の力が必要になりますので、弁護士に相談することも考えてみてください。なお、残業代の請求やハラスメントなどの訴え方は以下の記事で詳しく取り上げていますのでご覧ください。

【関連記事】

まとめ

労働基準法などの法律からみると、ブラック企業という会社は世の中の半数以上を占めています。ブラック企業を避けるために、ブラック企業の対策ばかりを考えて完璧な就職先を探そうとすると、かえって選択肢が狭まってしまうこともあります。全ての条件を満たす会社を探すことは難しいですが、その中でも自分にとってより良い条件の会社を見つけるということがブラック企業の対策につながるのではないでしょうか。 

今回は、ブラック企業の定義や、会社が守らなければならない法律などに触れながらブラック企業の対策方法をご紹介していきました。しかし、ここで紹介したもの以外にも、あなたが会社をブラック企業だと感じる点はあると思います。

大切なことは、あなたにとってブラック企業かどうかということです。もしも仕事がつらいと思っている方は、一般的にブラック企業かどうかではなく、自分がどう感じているかに重点を置いて行動しましょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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