過労死裁判の判例と裁判を起こす手順|遺族が企業に請求出来るものとは

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
過労死裁判の判例と裁判を起こす手順|遺族が企業に請求出来るものとは

社会問題になっている過労死で、裁判を起こして戦っている遺族の方も多くいらっしゃいます。故人の無念、報われなかった生前の苦しみを国に、企業に対して責任を求める訴えは決して簡単なことではありません。

過労死する人が増える中で、企業にも直接的な影響を与える事件もあります。ここではそんな過労死裁判に関して、過労死による訴えを起こされた企業や過労死裁判について、ご紹介していきます。

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過労死による裁判で企業が訴えられた判例

過労死による裁判で企業が訴えられた判例

大事な家族を過労死で失い、国や企業を相手に裁判を起こすケースは新聞をはじめ、様々なメディアで報道されています。過労死が発生したら、労働災害として各種給付金の支給をはじめ、企業への損害賠償請求も行われます。

裁判では国に対して過労死による労災や損害賠償請求を認めさせるため、企業側の長時間労働を行った責任などを追及していきます。企業に対して起こされた過労死裁判のなかには、驚くべき勤務実態が明かされることもあります。

そうした中で、企業への責任はもちろん、損害賠償請求も求められます。そんな過労死裁判について、近年行われた実例を見てみましょう。

直接的な雇用関係にない過労死に対して解決金に応じた希少な例

大手コンビニエンスストアのフランチャイズ店で働いていた男性従業員が、長時間労働の末に亡くなりました。業務中、脚立から落ちて頭の骨を折り、急性硬膜下血腫のため命を落としてしまいます。男性は過労死ラインと呼ばれる目安をはるかに超えた、月218時間以上の長時間労働を強いられていたといわれています。

これに対して企業として、多額の解決金を支払うことにより和解が成立しました。企業と直接的な雇用関係にない従業員に対して、和解金に応じるケースは極めて異例となります。それだけ問題が大きかったことを暗に意味しています。

参考:ファミマ、過労死訴訟で和解

過労死したとは頑なに認めない例

真摯に対応してくれる企業ばかりとは限りません。大手飲食チェーン店の過労死裁判では、長時間労働をさせてはいないと主張していたケースもあります。

過労死した新入社員の男性社員が、就寝中に急性心不全で亡くなります。男性は入社してから、初任給に残業80時間込みで提示された金額であると説明を受けました。そのため男性は、無理を押して働き続けていましたが、最終的に命を落とす結果になってしまいます。

しかし裁判では、月100時間以上の残業は一般的と企業側は主張してきました。これに対して地裁、高裁、最高裁すべてで会社の訴えを退け、企業はもちろん役員個人に対しての責任を認めます。

会社と役員に対して多額の損害賠償金を支払うよう決定が出されます。大企業の役員個人に対しての責任が認められたケースについては、この裁判が初めてだという。

参考: 庄や過労死裁判

大手広告会社で過労死した女性の例

過労死裁判の中には、現在も戦いが繰り広げられているものもあります。とある広告会社で起こった女性社員の過労死も有名な話です。この女性社員は某大手広告会社に入社後、月100時間を超える残業を毎月行っていたといわれています。

しかし残業時間は、もっと多いのではないかとすら予測されています。女性はうわごとのように、死にたいと呟く回数が目に見えて増えていったといわれています。そして最期に、母親に遺書メールを送った直後に、社員寮の4階から投身自殺を図ります。

その後、母親が起こした裁判で労災をはじめ、企業責任を問うための裁判が現在も行われている最中です。

参考:電通の女性新入社員自殺

訴えを起こされた会社は大きな社会的影響を受ける

過労死裁判において、遺族による訴えで責任と損害賠償請求の2つを追及します。同時に、裁判が起こることにより企業への社会的影響も大きく関係してきます。従業員を過労死させたというと、すぐにブラック企業だと指さされてしまうからです。

一度でもブラック企業と名指しされてしまうと、ネガティブなイメージが先行して、様々な企業プライスに悪影響を及ぼしてしまいます。過労死で身内を亡くした方は、諦めずに訴えを下げないことが重要です。実を結び、個人の名誉と無念を回復させることも十分に可能なのです。

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過労死の裁判には3種類ある

過労死の裁判には3種類ある

過労死した身内のため、裁判を起こすことは簡単ではありません。裁判によっては、国を相手取るか、企業を相手取るかでその中身と問いかけたい主張は異なるのです。過労死をめぐる裁判では、そうした点もきちんと把握しておかなくてはいけません。

過労死を扱う裁判は、大きく分けて3つあります。

民事裁判

過労死による損害賠償請求を求める裁判は、一般的に民事裁判になります。刑事事件との違いは、犯罪行為について処罰するかどうかが大きな点です。

民事裁判では、原告と被告が主張する内容を法律に当てはめて、原告の主張が認められるかどうかを判断します。損害賠償請求の金額は、過労死した人の給与や働いてきた経験などから算出されます。

請求段階では請求額は最大限で計算するのが通例であるため、判決で主張が認められても請求通りの金額がもらえることはあまりないのが特徴的です。

刑事裁判

過労死した従業員の労働環境について労働基準法で犯罪とされる行為があったかどうか判断する刑事裁判です。

例えば、長時間労働や割増賃金未払いについて有罪であるとの判決が下された場合、労働基準法第32条、37条違反により最高で懲役6か月または罰金30万円の刑に処されます。

行政裁判

3つ目に、行政裁判について紹介していきます。行政裁判は、長時間労働によって死亡したと認定してもらうための裁判になります。過労死の事件に当てはめると、こちらの裁判では企業を相手取るのではなく、労働基準監督署を相手取っての裁判になります。

遺族が労働監督署へ故人が過労死したと思ったら、労災申請をするために労働基準監督署へ労災補償給付を申請します。ただ必ずしも認定されるとは限らないため、認定されてなかった場合は次に審査請求を行います。

ここでも決定が得られなかったら再審査請求を求めます。そこでも納得できる結果が得られなかったとき、ようやく行政裁判の段階へ進みます。

裁判では、労災認定ができるかどうかを判決していきます。労災認定された場合、不認定とした行政処分が取り消され、労働災害補償給付を受け取ることができます。

過労死の裁判をするまでの流れ

いきなり裁判ではなく、まずは故人に対する労災が認められるかどうかを判断するために必要な手続きから行います。

申請から給付までの大まかな流れ

過労死についても、以下のような手順で進めることで労災と認定してもらいます。

では具体的に、各段階でどんなことをしていけばいいのか、見ていきましょう。

申請時に必要な書類の準備

労災を申請するときには、所定の書類を集める必要があります。申請する給付金の内容により若干異なります。

制度

必要書類

療養給付 療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)
休業給付 休業補償給付支給請求書(様式第8号)
障害給付 障害補償給付支給請求書(様式第10号)医師の診断書
遺族年金 遺族補償年金支給請求書(様式12号)死亡診断書身分関係を証明のための戸籍謄本被災労働者によって、生計が維持した証明となる書類
介護給付 介護補償給付・介護給付支給請求書(様式第16号の2の2)医師の診断書
二次健康診断給付 二次健康診断等給付請求書(様式第16号の10の2)一時健康診断結果の写し

申請する労災によって必要な書類が異なるので、きちんと確認してから書類を用意しましょう。

参考: 厚生労働省

手続きには時効がある

労災を申請するにあたり、気を付けなくてはならないことがあります。それは、申請する内容によっては時効があるということです。時効の時期については、以下のようになっています。

給付金の種類 時効
療養給付
2年
休業給付
葬儀給付
介護年金
二次健康診断給付
障害給付
5年
遺族給付
傷病年金 時効なし

過労死の場合は、労働者が亡くなった翌日には労災を申請することができます。期限は亡くなった翌日から数えて最低2年となっているので、ご注意ください。

参考:厚生労働省

労基署長に提出

必要書類を集めたら、続いてそれらを労基署長へと提出します。申請は労働者、またはその関係者が行わなくてはなりません。必要な書類を揃えるにあたっては、弁護士に助言をもらうとスムーズに集めやすいです。

そうして提出された書類をもとに、不備がないことを確認して提出します。

労基署による事実確認を調査

提出された書類をもとに、労基署が労災と確認できるか事実確認をするために調査を行います。この結果によって、まず労災と認定できるか否か、判断していきます。

審査請求をする

提出した労災の申請が認定されなかったとき、3か月以内に不服申立をすればもう一度調査をしてもらうことができます。これが審査請求といいます。それでも労災として認定されなかったときは、2か月以内に申立てをすれば再度、調査をしてもらうことができます。

これを再審査請求になります。ただ再審査請求になると、結果が出るまでに半年近く時間がかかるといわれているので、注意が必要です。

国や企業に対して裁判を起こす

審査請求、再審査請求ともに納得のいく結果が出なかったら裁判を起こします。ご遺族の方は労基署の処分に対して取消訴訟を提起することもできますし、企業に対して直接損害賠償請求を求めることもできます。

なお、労災認定を待たずに企業に対して裁判を起こすこともできます。

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過労死による労災で受け取れるものは何か

過労死による労災で受け取れるものは何か

過労死裁判では、様々な請求をすることができます。しかし、裁判を行わないでも労災として受け取ることができるものはあります。

では過労死した身内の方が、労災を申請したときに受け取れる給付・支給には何があるのでしょうか。そちらについても、ご紹介していきます。

労働者が死亡したとき、労災認定で受け取れるもの

労災では、存命中と死亡したときとで若干受け取れるもの、そうでないものがあります。まずは、記事のテーマにもなっている過労死による労災を受けた労働者の遺族が受け取れる主な給付金についてみていきましょう。

葬儀給付

過労死による労災で亡くなった方に対する葬儀代が支給されます。金額は、労働者が生前にもらっていた賃金に左右されます。金額については、平均賃金の30日分と315,000円を合わせたもの、または平均賃金の60日分の金額が大きいほうが支給されます。

利点として、葬儀が行われる前に請求することもできるので、必要に応じて申請しましょう。ただ、実際にかかった葬儀代は考慮されず、生前にもらっていた賃金により金額が決定するのでご注意下さい。

参考:厚生労働省

遺族補償給付

労働者が過労死で死亡した場合、当時その人の収入で生計を維持していた方を対象とする方に、遺族補償年金が支給されます。ただし配偶者以外の方が受け取る場合、夫や父母、祖父母の方は55歳以上、子供や孫は18歳になった時に初めて迎える3月31日までの人に限られています。

参考:厚生労働省

労働者が存命のとき労災認定で受け取れるもの

もし、過労死寸前だった人が存命しているとしましょう。死亡しなくても、心身に不調がある場合には労災を申請する条件を満たしているかもしれません。

自分はもらえないかもしれない、そう思う前に相談をするのは大事なことです。そんなときは、次のような給付が受けられるかもしれません

療養給付

まず、過労死により心身の不調をきたして、その後病院での治療にかかった費用を負担してもらえます。これを療養給付といいます。

療養給付を受ける際には、厚生労働省が指定する労災指定病院で受けるのが原則となっています。近くに指定病院がなくても受けることはできますが、そのときは費用をすべて立て替えることになります。

参考:厚生労働省

休業給付

労災により、仕事を休業しなければならない人もいるでしょう。そうした人を対象にした、休業給付という給付金があります。こちらは就業していたとき、賃金の60%を受け取ることができます。また、これに加えて、特別支給金として賃金の20%を受け取ることができます。

1つ注意したいのが、これまでもらっている賃金の合計からではなく、賞与などの手当を除いて計算した金額が基準となります。

参考:厚生労働省

障害給付

長時間労働などによる傷病によって後遺症が残ったときに給付される、障害給付と呼ばれるものもあります。こちらは、後遺症がどのくらい重症かにより、給付されるものが変わってきます。

後遺症には等級がつけられていて1級から7級と認定された方には、障害年金と障害特別年金、障害特別支援金の3つが支給されます。年金は2か月に1回の割合で支給され、一時金は1度きりの給付となります。

8級から14級と認定された方は、障害一時金、障害特別一時金、障害特別支給金の3つが支給されます。これらはすべて1度きりの給付となっています。

参考:厚生労働省

介護給付

今後の生活にサポートが欠かせない人に対して受けられる介護給付と呼ばれるものもあります。

介護給付を受けるためには、上記に紹介した障害年金にて、障害認定が1級、または2級の後遺障害に認定されなければなりません。さらに、進行形で介護を受けていて、病院などに入院しておらず、老人ホームなども利用していないことも条件として満たす必要があります。

過労死の裁判について弁護士に依頼する場合

親しい人を過労死によって亡くし、裁判を起こすことになったときは、弁護士に依頼する人が多いと思います。

弁護士に依頼すると、次のようなメリットがあります。

  • 会社との交渉が任せられる
  • 法律の観点から様々なサポートをしてもらえる
  • 労災などで必要になる書類を作成してもらえる
  • 相談はもちろん、裁判まで一括してサポートしてもらえる

肝心の弁護士を選ぶとき、まずは自分が話しやすい相手かどうかを見極めましょう。長い付き合いになるかもしれませんので、自分と相性がいいかどうかを確認します。そのうえで、これまでどのくらい労働問題に関する案件にかかわってきたのかなどを考慮して、弁護士を決定します。

【関連記事】過労死問題を弁護士に相談する際の費用と弁護士の探し方をご紹介

 

まとめ

過労死を取り上げた裁判は、数多く判例があり、過労死裁判には刑事裁判、民事裁判、行政裁判など様々な種類のものがあります。しかし、基本は裁判までいかなくても労災を申請するうえでの調査、話し合いで解決するケースもあります。

労災を申請するときは自分やご家族の方から行動する必要がありますが、弁護士に一任することで法律的なサポートを得られて安心して任せられます。

大事な身内が過労死して、労災を申請するにあたりどうしたらいいのかお悩みでしたら、一度弁護士にご相談してみてください。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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