交通事故で逃げると逮捕の確率が上がる?逮捕される具体的な基準とは

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
交通事故で逃げると逮捕の確率が上がる?逮捕される具体的な基準とは

交通事故には「自動車と自動車の事故」「自動車と二輪車・自転車・歩行者等との事故」「自動車の単独事故」などの種類がありますが、自動車による交通事故は、死傷者を出してしまった事故を「人身事故」、人に被害がなく物などを損壊するにとどまる事故を「物損事故」として区別することがあります。

これらの事故によって逮捕されることはあるのでしょうか?

結論から言えば、交通事故であっても逮捕されるケースと逮捕されないケースがあり、軽微な事故であっても逮捕されるおそれは充分あります。

今回は、交通事故で逮捕されるケースに具体的な基準があるのかどうかについて、検討していきたいと思います。

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交通事故を起こすとどんな罪になるか

まずは、交通事故についてどのような罪に問われるのか、逮捕されるケースはどのようなものなのかをご紹介していきたいと思います。

交通事故を起こすと、「刑法」「道路交通法」「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)」という3種類の法律が問題になります。

事故の内容によっていずれかの法律で処罰されるかが決定するわけですが、1つの交通事故の際に2つ以上の法律が適用されたり、事故を起こした人の状況によってこれら以外の特別法(麻薬取締法など)が併せて適用されるケースもありますので、とりあえず具体的な罰則について簡単に整理してみたいと思います。

刑法上の罪|殺人と傷害

条文

量刑

殺人罪(199条)、殺人未遂罪(203条、199条) 死刑または無期もしくは5年以上の懲役
傷害罪(204条) 15年以下の懲役または50万円以下の罰金
業務上過失致死傷罪(211条) 5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金

(参照元:刑法)

刑法上の罪が問題になるのは、簡単に言えば運転者に「故意」すなわち「わざと交通事故を起こした」といえる事情が存在している場合が多いです。

例えば自暴自棄になってやけ酒をして、

  • 事故を起こしてやろう
  • 事故を起こしてもいいや

という気持ちで運転をしたところ、歩行者などを死傷させてしまった場合には、最悪の場合殺人罪も適用されるおそれがあります

業務上過失致傷罪・業務上過失致死罪に問われるケースもある

また、死傷の結果を惹起しやすい業務に従事している人が交通事故を起こすと、業務上過失致傷罪・業務上過失致死罪に問われるケースもあります。

ここでいう業務は「人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であり、かつ、他人の生命・身体に危害を加えるおそれのあるもの」のことで(最判昭和33年4月18日)、1回の行為でも継続して従事する意思がある場合には業務にあたるとされています。

業務上過失致死傷罪については、タクシーやトラック、バスなどの運転手を思い浮かべていただければ良いかと思いますが、無免許運転者が継続して自動車運転を行っている場合でも「業務」に該当しますので、職業で運転していない人であっても注意が必要です。

道路交通法上の罪|損壊・破損・護措置義務違反など

条文

量刑

道路標識等の移転・損壊(115条) 5年以下の懲役または20万円以下の罰金
建造物損壊(116条) 6月以下の禁錮または10万円以下の罰金
交通事故の際の救護措置義務違反等(117条) 5年以下の懲役または50万円以下の罰金(事故によって人を死傷した場合:10年以下の懲役または100万円以下の罰金)
酒気帯び運転・薬物運転等(117条の2) 5年以下の懲役または100万円以下の罰金
無免許運転、運転者にアルコールを提供した者等(117条の2の2) 3年以下の懲役または50万円以下の罰金
共同危険行為等(117条の3) 2年以下の懲役または50万円以下の罰金
交通事故の際の救護措置義務違反・アルコール提供(同乗者)等(117条の3の2) 2年以下の懲役または30万円以下の罰金
速度違反・過積載等(118条) 6月以下の懲役または10万円以下の罰金
信号無視、急ブレーキ、追い越し禁止等違反(119条) 3月以下の懲役または3万円以下の罰金
法人代表者等の責任(123条) 従業員等の行為者と同様の罰則を適用

(参照元:道路交通法第8章)

自動車運転の基本的なルールを定めたものが道路交通法(道交法)で、第8章以下には交通違反に関する罰則が細かく規定されています。物損事故などの場合は道交法による責任が問われることが多いかと思います。

ただ、同乗者やアルコール提供者への罰則も設けられていることから、交通事故を起こした際に真っ先に考えるべき法律と言えるでしょう。

自動車運転処罰法上の罪|運転致死など

条文

量刑

  • 酩酊運転致死傷罪、薬物運転致死傷罪(2条1号)
  • 制御困難運転致死傷罪(2条2号)
  • 未熟運転致死傷罪(2条3号)
  • 妨害運転致死傷罪(2条4号)
  • 信号無視運転致死傷罪(2条5号)
  • 通行禁止道路運転致死傷罪(2条6号)
  • 傷害の場合:15年以下の懲役(無免許の場合は6月以上の懲役※3号の場合を除く)
  • 死亡の場合:1年以上の懲役
  • 準酩酊運転致死傷罪、準薬物運転致死傷罪(3条1項)
  • 病気運転致死傷罪(3条2項)
  • 傷害の場合:12年以下の懲役(無免許の場合は15年以下の懲役)
  • 死亡の場合:15年以下の懲役(無免許の場合は6月以上の懲役)
発覚免脱罪(4条) 12年以下の懲役(無免許の場合は15年以下の懲役)
過失運転致死傷罪(5条) 7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金(無免許の場合は10年以下の懲役)

(参照元:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)とは、数々の重大事故の影響を受けて、平成26年に施行された比較的新しい法律です。

自動車運転処罰法では、飲酒運転や危険運転に加え、無免許運転、一定の病気を抱えたままの運転、発覚を免れようとしたことなどへの罪が規定されています。これによっていわゆる「逃げ得」などは一切なくなったので、交通事故を起こしてしまったら、真摯に救護措置等を行うことが大切です。

交通事故で逮捕される可能性が高いのは?

交通事故で逮捕される可能性が高いのは?

交通事故を起こした際に逮捕される可能性が高いのは、事故を起こした運転者に「逮捕の必要性」があると判断された場合です。

ここでは逮捕可能性の高い3つのケースについて、具体的な例を交えてご紹介いたします。

現行犯逮捕

現行犯逮捕とは、その名の通り罪を犯した人をその場で逮捕する制度のことで、刑事訴訟法212条に規定が置かれています。交通事故での現行犯逮捕として考えられるのは、事故を起こした運転手が逃げる素振りを見せたり、氏名や住所・勤務先などを頑なに黙秘したり、飲酒や薬物による影響が明らかであるなどのケースです。

現行犯逮捕の場合、警察官以外に犯罪を目撃し犯人を確知した一般人でも逮捕が可能になることから、事故の相手方や目撃者が事故を起こした人を逮捕し、警察官に引き渡すことが充分考えられます。

したがって、現行犯逮捕を避けたい場合には、あなたの氏名や住所等はきちんと伝え、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことをアピールすることが大切かと思います。

重大な事故|死亡事故や建造物の損壊

起こした交通事故によって沢山の人が死傷したり、他の犯罪を起こした後での交通事故であったり、重要な建造物などを損壊してしまうなどのケースでは、重大な事故と判断され逮捕の必要性が大きくなるといえます。

特に、飲酒運転や過労運転等で多数の死傷者を出してしまった事故では、運転者に逃げる意思などがなくても一旦は逮捕される可能性が高いと考えられるので、警察官等の指示にはきちんと従いましょう。

なお、事故の結果に驚いて逃げるような真似だけは絶対に避けるべきです。というのも、自動車運転処罰法では飲酒運転や薬物運転を隠すためにこれらの影響が出なくなるまで逃げることについての「発覚免脱罪」という規定が置かれていますし、道交法上の救護義務違反の罰則も軽くはありません。

どんなに重大な事故を起こした場合であっても、真摯に救護活動に協力したり、素直な態度で取り調べに応じたほうが絶対に後々あなたのためになりますから、怖くても逃げないことが大切です。

ひき逃げ

これは、後から発覚したらほぼ逮捕されると言っても過言ではないでしょう。平成28年版の犯罪白書によれば、平成27年度のひき逃げ事件のうち、死亡事故での検挙率は約95%(重傷事故は約71%)となっており、非常に高い検挙率であることが分かります。

軽微なひき逃げ事件の場合は検挙率がものすごく高いわけではありませんが、それでも捜査の結果検挙・逮捕されるケースは多々あります。

また、近年は防犯カメラが様々な場所に設置されていますから、逃げ切れる可能性も段々低くなってきているのかもしれません。

ひき逃げをしてしまうと悪質なドライバーとして捜査機関や検察官の心証は悪くなる一方ですし、ひき逃げの理由によっては罪が格段に重くなるリスクがありますので、特に大型車の場合には、運転中に違和感を感じたらできるだけ速やかに車両を確認し、もしも事故を起こしていた場合には警察署に出頭するなど真摯な態度を示しましょう。

交通事故の現状|逮捕されずとも当事者意識は大事

交通事故の現状|逮捕されずとも当事者意識は大事

交通事故は、起こしてしまった際に救護義務等を尽くし、きちんと警察等に連絡したうえで対応していれば、よほどのことがなければ逮捕されないのが通常です。

しかし、逮捕されないからといって罰がないわけではありませんから、中には交通事故を起こしても放置したり、逃げてしまうケースも目立ちます。

事故の発生自体は未だに多い

警視庁の統計によれば、平成28年の交通事故発生件数は49万9,232件、負傷者数は61万7,931人、死亡者数は3,904人と、軽微なものから重大なものまで非常に多くの交通事故が起こっています。

警察庁|平成28年における交通事故の発生情報

引用元:警察庁|平成28年における交通事故の発生情報

交通事故の発生件数自体は減少傾向

交通事故の件数自体は年々減少傾向にあり、平成28年度の交通事故死亡者数は昭和24年以来67年ぶりの3千人台とのことですが、依然として毎日多くの交通事故が発生しています。

交通事故で逮捕された場合の手続きとは

交通事故で逮捕されると、警察での取り調べがなされ、その後は勾留されたり在宅事件として扱われるといった流れで手続きが進んでいきますので、ここで簡単に整理してみましょう。

逮捕後の手続きの流れ

逮捕後の手続きの流れ
交通事故で逮捕されると、事故を起こした人は釈放されるまで弁護士以外の人と会うことができません。勾留請求がされなければ(勾留請求が却下されれば)最大72時間の我慢で済みますが、送検後に勾留請求が許可されると逮捕から最長23日間もの間、留置場などの刑事施設から出ることはできません。

逮捕されてしまうと、何かと不安が大きくなり、警察官等のプレッシャーも耐え難いものがあるかと思います。そういった際に非常に心強いのが弁護士の存在になりますので、国選なり私選なりで速やかに弁護士を選ぶことが大切です。

交通事故の場合は在宅事件も多い

交通事故の場合、基本的には在宅事件として処理されることになりますので、勾留までされるケースは同種前科があるとか、生じた結果が重大であるなどのよほどの事件と考えていただくのが良いかと思います。

在宅事件の場合は、身体拘束がない代わりに長期間の手続きになるケースがあることと、家宅捜索などがなされること、起訴されて有罪になると通常の刑事手続と同様に前科がつくことといった特徴があります。しかし、刑事事件で最もつらいのは身体拘束を請けることですので、勾留されるよりは格段に心が楽になるでしょう。

とはいえ、無罪を勝ち取るまたはより軽い罪で済ませたい場合には、弁護士ときちんと話し合い、その後の対応を練ることが重要になりますので、あなたに合った弁護士を見つけることがポイントになります。

もし交通事故で逮捕されてしまったら

もしも交通事故で逮捕されてしまったら、逮捕から検察官送致までの72時間でどれだけのことができるかが罪の重さを変えるといっても過言ではありません。

初動の弁護活動があなたの命運を分ける可能性は充分ありますので、弁護士をつけると何が変わってくるのかをご紹介いたしましょう。

弁護士を付けると何が違うのか

刑事事件には国選弁護人が利用できるというのをご存知の方は多いかと思いますが、国選弁護人には様々な制限があることまで理解している方は少ないのではないでしょうか。

実は、国選弁護人を利用できるのは勾留決定後であり、逮捕直後に呼べる弁護士というのは「当番弁護士」または「私選弁護人」に限られることになるのです。

当番弁護士は、逮捕された人が逮捕後に1度だけ呼ぶことのできる弁護士で(日弁連ホームページ参照)、取り調べの方針などについての法的アドバイスを求めることしかできません。利用の際に費用はかかりませんが、1事件で1度しか利用できませんし、あなたの弁護活動をしてくれるわけではないのです。

私選弁護人であれば、弁護士費用はかかるものの何度もあなたと接見できますし、示談交渉などを任せることも可能になりますから、早い段階で私選弁護人をつけておくことは重要なことと言えるでしょう。

なお、当番弁護士があなたに合う人であれば、そのまま依頼して私選弁護人になってもらうことも可能です。また、その後の弁護士選びの参考にもなりますので、逮捕されてしまったらまずは当番弁護士を利用して、その後の方針を決めるのがおすすめです。

まとめ

交通事故での逮捕は、事故を起こした運転者が真摯に事故処理を行っていれば避けられたであろう逮捕事例も多いので、事故を起こしてしまったらすぐに被害状況を確認し、警察や救急車を呼ぶ・救護活動を行うといったことが大切です。

もちろん、飲酒や薬物など自分に不利益な事実は隠したいでしょうし、会社などが心配になるのも当然のことかとは思いますが、交通事故で他人を死傷させたまま放置してしまうと更に大きなデメリット(裁判員裁判や指名手配のリスク)が生じる可能性がありますので、事故後にどうしていいかわからない場合には、弁護士へ相談することをおすすめします。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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