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KL2020・OD・037
日本ではマルチ商法=いかがわしいビジネスといったイメージが付いている事もあり、世間的に嫌われているものだという意識はあると思います。では、実際には何が問題点になっているのかご存知でしょうか。
今回は、マルチ商法の問題点やねずみ講、マルチまがい商法との明確な違いに付いて解説してきます。マルチ商法に感情的な抵抗を示す人の中には、マルチ商法とねずみ講などの区別がついていない人もいると思いますので、ここでは両者を区別して純粋にマルチ商法の問題点をお話していきます。
目次
最初にマルチ商法の立ち位置を明らかにしておきましょう。日本ではマルチ商法にいいイメージがなく、よくねずみ講などと混同されます。では具体的にどこが違うのでしょうか、1つずつ見ていきましょう。
マルチ商法は特定商取引に関する法律で連鎖販売取引と定義されています。会員を勧誘し、新しく会員になった人がさらに会員を勧誘することで組織が拡大していきます。
第三章 連鎖販売取引
(定義)
第三十三条 この章並びに第五十八条の二十一第一項及び第三項並びに第六十七条第一項において「連鎖販売業」とは、物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。以下この章及び第五章において同じ。)の販売(そのあつせんを含む。)又は有償で行う役務の提供(そのあつせんを含む。)の事業であつて、販売の目的物たる物品(以下この章及び第五十八条の二十一第一項第一号イにおいて「商品」という。)の再販売(販売の相手方が商品を買い受けて販売することをいう。以下同じ。)、受託販売(販売の委託を受けて商品を販売することをいう。以下同じ。)若しくは販売のあつせんをする者又は同種役務の提供(その役務と同一の種類の役務の提供をすることをいう。以下同じ。)若しくはその役務の提供のあつせんをする者を特定利益(その商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんをする他の者が提供する取引料その他の主務省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう。以下この章及び第五十八条の二十一第一項第四号において同じ。)を収受し得ることをもつて誘引し、その者と特定負担(その商品の購入若しくはその役務の対価の支払又は取引料の提供をいう。以下この章及び第五十八条の二十一第一項第四号において同じ。)を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんに係る取引(その取引条件の変更を含む。以下「連鎖販売取引」という。)をするものをいう。
引用元:特定商取引に関する法律 第三十三条
簡単に言うと、マルチ商法も法律では認められていますので、特定商取引法をきちんと守っていれば、何も問題のないビジネスモデルではあります。しかし、後述する、ねずみ講やマルチまがい商法などもあり、世間体には良いイメージがありません。
ねずみ講とは、会員を増やすごとに入会金の一部を紹介料として得る仕組みのことをいいます。子以下のメンバーが得た紹介料のうち半分は本人に、もう半分は上のメンバーに配分されていきます。特定の商品を販売して儲けているのではなく、新しい会員が払う入会金だけで回っているビジネスだから、勧誘を続けなければ儲からない仕組みになっています。
親に近い早い段階ではじめたメンバーほど儲かるシステムになっており、1978年にできた無限連鎖防止法という法律で規制されています。マルチ商法と違うのは、
の2点になります。
マルチまがい商法は悪徳マルチ商法とも呼ばれます。流通システムはマルチ商法と同じですが、
といった点でマルチ商法と異なります。アメリカではピラミッド商法と呼ばれ、これも法律で禁止されています。ただ、商品があるという点でねずみ講とは異なる点であると言えます。
日本でマルチ商法が悪いという風潮がある理由の1つは、マルチ商法とねずみ講、マルチまがい商法の区別がついていない人が多いからです。日本では過去三回マルチ商法(ねずみ講やマルチまがい商法を含む)ブームがあり、度々社会問題になりました。結果、「マルチ商法=金儲けのために悪いことをしている」と無条件に思い込んでいる人もいるでしょう
また、感覚的に拒否反応があるからマルチ商法は問題だと言われても納得いかないと思うので、具体的にどこが問題になったのかを例を挙げながらご説明します。
マルチ商法の勧誘を受けると、誰でもはじめられると言われることが少なくありません。しかし、誰でも始められるのと、誰でも成功できるのは別問題だと明確に理解しておいた方がいいでしょう。
ここで、マルチ商法で年収1,000万円を達成できる確率はどのぐらいなのかを見ていきましょう。
2010年の売上が925億円、売上の30%が販売員の報酬に回されるようですので、会員全体の報酬額は925億×0.3=308億円になります。販売員は72万人いると言われており、一人あたりの年間報酬額は308億÷72万=4万2778円です。つまり平均年収は4万2,778円ということになります。
ただし、会員の中に報酬目当てでなく単に商品が好きで利用しているだけの人もいる点には注意しておかねばなりません。
もし、1人あたりの年収が4万3千円だとすると、年収1,000万円を達成するには1,000万÷43,000円=233人分の報酬を1人で独占できなければなりません。アムウェイだけで年収1,000万円を達成している人数は72万÷233人=3,090人、わずか0.004%の方だけだということになります。
不労所得への道は険しそうです。
会員がアムウェイ商品を購入すると、金額の77%がPVとして付与されます。(1PV=1.35円)また、自分が勧誘した人が商品を購入すると、自分もPVを得られます。アムウェイは実績に応じてピンレベルというものが上がっていきます。ピンレベルごとの年収も公開されており、エメラルドDDになってはじめて年収が800~1200万円に達するようです。
エメラルドDDになるには、150万PVを6ヶ月達成した人間をグループ内に3人育成し、そこからさらに6ヶ月150PVを維持してもらわねばなりません。150万PVを達成するには、月262万円分の商品を売らなければなりません。しかも、PVは月ごとにカウントされ通算では数えられません。
仮に2,300円のシャンプーを月1で買ってくれる人がいたとしても、PVは1,660です。仮に同じ商品だけを売ると仮定すれば、150万PV分販売するには月に903人に1本ずつ売らねばなりません。
900人勧誘するか、より高額な商品、例えば2万3,000の商品を90人に売ることで、やっとピンレベル最下位のSPを達成できます。ちなみにSPの年収は10~100万円です。
自分だけでなく、勧誘したメンバーの売上もあわせてPVを達成できればOKですが、いくらの商品を何人ぐらいに売る必要があるのかはお分かりいただけたかと思います。
マルチ商法が違法でないのは、あくまでも特定商取引に関する法律に則って活動しているときのみです。しかし、販売は社内教育を施されるわけではないので法律に関して素人です。誰でもはじめられるがゆえに、欲に目がくらんでいる知識のない販売員が、モラルや法律に反した勧誘をしてしまうのが問題の本質です。例えば、禁止行為には以下の様なものがあります。
1.一般連鎖販売業者は、(中略)不実のことを告げる行為をしてはならない。
2.統括者、勧誘者又は一般連鎖販売業者は、(中略)人を威迫して困惑させてはならない。
3.統括者、勧誘者又は一般連鎖販売業者は、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに(中略)勧誘をしてはならない。
引用元:特定商取引に関する法律 第三十四条
どういうことでしょうか。例えば、「誰でも儲かる」「簡単に不労所得を得られる」という誘い方は現実を正しく伝えていないため1の不実告知に引っかかります。
2は相手が怖がるような勧誘をしてはいけませんという意味です。
3つ目の事項は勧誘目的だと告げないままセミナーに連れて行くなということです。
しかし、実際の勧誘は「〇〇に会わせたい人がいる」「すごい人がいる」「人生が変わるセミナーがある」という風にされ、行ってみるとマルチだった、というケースが跡を絶ちません。これをブラインド勧誘と言います。
本来であれば、「これからマルチ商法にあなたを勧誘します、一緒にすごいセミナーに行って成功しましょう」と勧誘目的であると伝えねばなりません。
このように特定商取引に関する法律に従っていると、マルチ商法の勧誘の難易度はかなり上がるため、意図的であろうがなかろうが法律・モラルに反した勧誘をする会員がでてきます。
このように、マルチ商法の勧誘に関しては特定商取引法で厳しく規定されていますが、守っていない人も多いのが現状です。
マルチ商法は、知識はないけど野心だけはある若者をターゲットにしているように思います。「素敵な商品だからこそ、まずは大切な人に教えてあげよう。」などと言われて家族や友達に商品を売るよう促されます。
ただでさえ、日本でのマルチ商法の印象は良くないうえに、欲にくらんで自分勝手な勧誘をしていれば友達が離れていくのは想像に難くありません。
販売員は社員ではなく業務委託です。よって、販売員が問題のある勧誘をして問題になっても、「業務委託だから販売員本人の問題だ」と本社側が言い逃れすることもできます。
また、販売員は商品を売る前に会員価格で本社から商品を仕入れます。販売員が売れようが売れまいが本社には購入代金分のお金が入り、売れなかった場合は販売員が在庫を抱えることになります。
さらに、強引な勧誘のせいで人間関係が崩壊しても、完全に自己責任です。
上記で触れたように、年収1,000万円を達成するには毎月本社が開発した商品を売りまくる必要があります。大抵の人はこれまでの人間関係だけだと限界が来るので、新たな人間関係を開拓します。
その人と会うために電車代や食費がかかってももちろん自腹ですし、何回も会わないと会員にするのは難しいでしょう。もちろん全員が応じてくれるわけではありませんし、その人に販売力がある保証もありません。勧誘するコストがすべて販売員にのしかかってきます。
上記の勧誘コストに加え、商品の仕入れにもコストがかかります。さらに、ピンレベルの基準を満たすために自分で商品を買う人もいます。そのために借金をする人も多くなっています。
では、具体的にどんなトラブルがあったのでしょうか?国民生活センターのHPでは以下のような事例が記載されています。
マルチ商法は過去3回のブームがあり、その度に「マルチ商法=金だけが目的の悪いこと」というイメージを世間に植え付けてきました。したがって、最近ではマルチ商法のことをよく知らない学生や20代がターゲットになっていることも少なくないようです。
将来が見えず不安で、世の中のことを知らないが野心だけはある若者に対し、「権利収入に興味はないか?」「サラリーマンは奴隷、ビジネスオーナーになって夢を叶えよう」と都合のいいことばかりをいって勧誘したり、逆に不安を煽ったりもします。
しかし、上記で見てきたように、結局のところ自分が権利収入を得るには誰かに高額な商品を売らねばなりません。夢や成功などといっても結局は勧誘される人を金づるとしか見てない人もおり、例えば上記の事例のようなトラブルが発生しています。
国民生活センターによると、毎年1万件近くのマルチ商法に関する相談が寄せられているようです。
ここでは入会する前と入会した後、商品を購入してしまった場合を想定して対処法をお話していきます。
これはもうきっぱり断るしかありません。そもそも強引な勧誘は先に見たとおり特定商取引に関する法律に違反しています。興味が無いとはっきり言う、着信拒否するなどの明確に意思表明をしましょう。
特定商取引に関する法律を守っている限りは一応合法なので、入会してみるのもありかと思います。ただ、成功できそうな雰囲気で入会を決めていないか、成功するには具体的に何ヶ月以上いくら売り上げたり勧誘したりしなければいけないのかをざっと計算して理にかなった判断をしようとしているのか確認しておくといいでしょう。
勢いにつられて入会したけど不信感があるから退会したくなったとします。原則退会はいつでもできるので、悩むより行動したほうが早いかと思います。あまりにしつこく引き止められるのであれば、国民生活センターに相談しましょう。
マルチ商法の場合、契約書面を受け取ってから20日以内であればクーリングオフができます。
連鎖販売取引の際、消費者(無店舗個人)が契約をした場合でも、法律で決められた書面を受け取った日(商品の引渡しの方が後である場合には、その日)から数えて20日間以内であれば、消費者は連鎖販売業を行う者に対して、書面により契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます。
引用元:特定商取引法ガイド|(8)契約の解除(クーリング・オフ制度)(法第40条)
また、クーリングオフ期間が過ぎていても条件を満たしていれば中途解約制度に則りお金を返してもらえます。
平成16年11月11日以降の契約については、連鎖販売契約を結んで組織に入会した消費者(無店舗個人)は、クーリング・オフ期間の経過後も、将来に向かって連鎖販売契約を解除できます。そのようにして退会した消費者は、以下の条件をすべて満たせば、商品販売契約を解除することができます。
1.入会後1年を経過していないこと
2.引渡しを受けてから90日を経過してない商品であること
3.商品を再販売していないこと
4.商品を使用または消費していないこと(商品の販売を行ったものがその商品を使用または消費させた場合を除く)
5.自らの責任で商品を滅失またはき損していないこと
引用元:特定商取引法ガイド|(9)中途解約・返品ルール(法第40条の2)
クーリングオフするにせよ中途解約制度を利用するにせよ、必ず書面で行いましょう。ハガキを両面コピーし、簡易書留や特定記録郵便で必ず証拠を残しておきます。
ハガキは次のように記入するといいかと思います。
上記の対処法だけ解決できることも多いですが、相手が悪質な業者・販売員だった場合は簡単に解決できないかもしれません。ここでは、そんなときに頼りになる相談先を2つ紹介します。
経済的に余裕がない人が専門家に無料で法律相談をできる、国によって設立されたサービスです。法的なトラブルを抱えているがどこに相談すればいいかわからないという人も気軽に利用できます。
消費者被害について相談できる機関です。消費者問題に詳しい相談員が在籍しており、悪徳マルチへの対処に関しても知恵を貸してくれるでしょう。
マルチ商法自体は違法ではないものの、特定商取引法をよく知らない販売員が強引な勧誘をすると、それは違法行為になります。
また、「誰でもできる」「権利収入を得て夢を叶えよう」と言う割にはそれがどれだけ難しいことなのか説明しないのも問題でしょう。
もしも、すでにマルチ商法の問題に巻き込まれている方は、国民生活センターや法テラスなどの然るべき相談先に相談するようにしましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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