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KL2020・OD・037
交通事故が原因で後遺症を負った被害者は、慰謝料や損害賠償金を請求するために後遺障害等級の認定を受ける必要がありますが、等級認定が非該当であったり不当に低い等級にされたりした場合、異議申し立てをする必要があります。
しかし、後遺障害等級申請について再請求をしてもおよそ9割が等級変更を認められない結果となっています。一度受けた審査結果を覆すことは難しいとされていますが、異議申し立てにより等級認定がされるケースや上位の等級認定を受ける可能性はゼロではありませんので、納得のいかない審査結果であれば被害者は諦めずに主張するべきでしょう。
平成26年度 審査結果件数 | ||
等級変更あり | 等級変更なし | 再調査・その他 |
760(約6%) | 11,143(約92%) | 290(約2%) |
参照元:「平成27年度 自動車保険の概況」
今回は異議申し立てを含め、後遺障害等級の認定結果を争う3つの方法について解説します。再請求では手間のかかる手続きになりますが、もらえるはずの慰謝料を失わないように異議申し立ての方法を確認していきましょう。
目次
後遺障害等級の認定を受けられない場合、申請手続きで提出した書類が不十分である可能性が高いです。後遺障害等級の条件に該当することを医学的な資料で証明することが求められますが、客観的な証明が難しい症状においては立証不足であると判断される場合があります。
等級認定基準とされる4つの要件を下記にて記載します。なお、全部で14段階ある後遺障害等級の症状的な条件については「後遺障害等級の認定基準」で取り上げていますのでご参照ください。
仮に病院での検査結果(診断書やMRI画像)で後遺障害等級に該当する症状が客観的に証明されても、交通事故が原因で発症したかどうかが不確かであれば等級認定されないことも考えられます。
また、症状固定についても重要なポイントであり、治療を継続しても症状が良くも悪くもならない状態であることを担当の医師より診断してもらう必要があります。症状固定の時期が早いと重篤性が認められず等級が下げられる恐れもありますので、医師と相談して適切な症状固定日を決めるべきでしょう。
参照元:「被害者が知るべき症状固定のタイミング」
後遺障害の異議申し立ては何度でも可能です。しかし、上記でも取り上げたように再請求における等級変更(または等級認定)の可能性は決して高くありませんので、申請回数を増やすだけで認定されるものではないでしょう。
また、自賠責保険会社への異議申し立て以外にも2つの方法がありますので、状況に応じて手段を検討した方が良いとされています。
異議申し立てを含め、後遺障害等級の認定結果を争う方法は3つあります。
基本的には自賠責保険会社への異議申し立てが一般的な方法になりますが、自賠責保険・共済紛争処理機構(自賠責紛争処理機構)と訴訟で主張することも可能ですので、3種類の対応方法について個別に見ていきましょう。
まずは自賠責保険会社に対する異議申し立てですが、再度等級認定の申請を行うにあたって『被害者請求』の利用をオススメします。
『事前認定』での申請も可能ですが、再請求先になる任意保険会社に手続きを任せるやり方では確実とはいえません。被害者が有利になるような書類を被害者自身で集める必要がありますので、事前認定での異議申し立てでは等級変更なし(または等級非該当)の結果が返ってくる可能性が高いと思われます。
参照元:「被害者請求のメリットとデメリット」
異議申し立てで必要な書類は『異議申立書』のほか、症状を医学的に証明する資料も準備するようにしましょう。
異議申し立てをする上で必ず提出する書類になります。後遺障害診断書と同様に症状を立証する大事な書類になりますが、具体的な記載内容については次項で説明します。
後遺障害診断書など、医師からの診断内容が書かれた書類を添付して異議申立書の捕捉をするようにしましょう。
特に後遺障害診断書については記入事項に不備がある場合、医師に追記してもらう必要があります。等級認定を受けるために必要な内容を医師に書いてもらい、確実に症状を証明することが大切になります。
参照元:「後遺障害診断書の書き方」
そのほかにも検査結果やレントゲン・MRI写真も症状に応じて揃えておくべきです。また、写真での証明が難しいむち打ち症については、神経学的なテスト(スパーリングテスト)の結果を提出して補完する手段もあります。
※スパーリングテストとは、椅子に座っている患者の頭部をつかみ、痛みや痺れがある箇所に身体を傾けさせて圧迫させ、痛みや痺れがあるかどうかを確認する検査方法のことです。
異議申立書については保険会社より入手することも可能ですが指定の書式はないため、必要事項を記載すれば被害者自身で作成したフォーマットでも提出できます。異議申立書における基本的な記載事項は以下の通りであり、論理的に立証する必要があるでしょう。
《異議申立書のレイアウト例》
申請先の保険会社や申立人を記載する必要がありますが、被害者が未成年の場合は法定代理人である父や母の氏名を書くことになります。また、交通事故証明書を確認して自賠責保険会社の証明書番号と事故発生日も書くようにしましょう。
損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所より通達された審査結果に対し、何が不当であったのかを指摘する必要があります。
後遺障害等級非該当であった結果から等級認定を要求することや、後遺障害第14級で認定されたのを後遺障害第12級に変更することなど、被害者側が求めている内容を示します。
再請求が妥当であることを示すためには被害者の自覚症状や他覚的所見(診断結果や検査結果)などの資料を添付するべきでしょう。また、症状や治療の経過などを記録した診断書なども重要な書類になります。
後遺障害等級の認定基準を参考に、本来的には全部で14段階ある後遺障害等級のどれに該当するべきだったのかを明記します。
改めて被害者の要求内容や異議申し立てをする目的について最後にまとめます。
被害者請求で申請する場合は自賠責保険会社へ書類を提出することになります。また、事前認定の場合、申請書類の送付先は加害者側の任意保険会社になります。
自賠責保険会社へ異議申し立てをした場合、症状内容にもよりますが審査期間の目安は2ヵ月~6ヶ月程度だとされています。
任意保険会社への異議申し立てについて上記で説明しましたが、メリットとデメリットを確認しましょう。
後遺障害等級認定のメリットになりますが、等級に認定されるかどうかで請求できる慰謝料や損害賠償金が大きく変わりますので、一度は後遺障害等級非該当の結果になっても異議申し立てをするのは重要なことです。
また、後遺障害慰謝料については認定等級によって慰謝料相場が異なりますので、症状の重さに見合わせない低い等級に認定された場合も再請求して慰謝料を上げるようにするべきでしょう。
参照元:「後遺障害等級で獲得できる慰謝料」
ただし、再請求をすれば絶対に等級認定されたり等級が上がったりする訳ではありませんので、時間と労力をかけて医学的な証拠になる書類を集める必要があります。一度出た審査結果を覆すことは正直難しく、それなりの手間をかけて異議申し立ての準備をすることが被害者に求められるでしょう。
自賠責紛争処理機構(自賠責保険・共済紛争処理機構)へ申請することで後遺障害等級の認定結果変更も可能になりますが、あまり利用されていない方法です。平成27年度の審査件数は940件にとどまり、そのうち後遺障害に関する変更件数は74件です。異議申し立てと同様、変更率は低く10%未満という結果になっています。
自賠責保険・共済紛争処理機構における 平成27年度 ・有無責・後遺障害別変更件数等の推移 |
||||
審査件数 | 有無責 | 後遺障害 | 変更合計 | 変更率 |
940件 | 14件 | 74件 | 88件 | 9.4% |
※有無責とは、保険金の支払いをめぐる事案のことです。
参照元:「自賠責保険・共済紛争処理機構 平成27年度事業報告(抜粋)」
異議申し立てと違い自賠責紛争処理機構への申請は1度だけであり、既に紛争処理を行った事案である場合、再申請はできません。なお、申請条件については下記の通り定められていて、再申請の不可に関しても《申請に当たっての注意》の(7)で記載されています。
申請に当たっての注意
次のいずれかに該当する場合、本機構では紛争処理を行いませんのでご注意願います。
(1) 民事調停または民事訴訟に係属中であるとき又は当事者間の紛争が解決しているとき
(2) 他の相談機関または紛争処理機関で解決を申し出ている場合
※他の機関での中断・中止・終結の手続きをされた場合には受け付けることができます。
(3) 不当な目的で申請したと認められる場合
(4) 正当な権利のない代理人が申請した場合
(5) 弁護士法第72条に違反する疑いのある場合
(6) 自賠責保険・共済から支払われる保険金・共済金等の支払額に影響がない場合
※例えば、既に支払限度額まで支払われている場合
(7) 本機構によって既に紛争処理を行った事案である場合
(8) 自賠責保険・共済への請求がない場合あるいはいずれの契約もない場合
(9) その他、本機構で紛争処理を実施することが適当でない場合
※この場合、解決のために適当と思われる他の方法があればご案内いたします。
自賠責紛争処理機構に申請するために必要な書類は以下の通りです。
基本的には自賠責保険会社へ提出する異議申立書と同じような内容を書くことになります。書面のフォーマットは自賠責紛争処理機構のホームページより確認することが可能です。
DL【紛争処理申請書】
参照元:「紛争処理申請書記入例」
申請理由や請求の内容について別紙で詳しく書く必要があります。異議申し立ての場合と同じく、交通事故と症状の因果関係や症状固定の事実を明確に表すようにしましょう。
DL【申請書別紙】
自賠責紛争処理機構に申請する上で必要な同意書もインターネット上からダウンロードできます。
DL【同意書】
異議申し立ての場合と同じく、診断書などを用意する必要があります。一通りの書類を集められたらチェックリストで確認をしましょう。
DL【送付資料チェックリスト】
自賠責紛争処理機構に申請書類を提出した後は紛争処理委員会による審査が行われます。紛争処理委員会とは専門的な知識をもっている医師や弁護士、学識経験者などで構成されている組織のことで、紛争処理委員会による審査期間の目安は3ヵ月程度だとされています。
裁判を起こす場合も1回だけ(三審制)になり、訴訟手続きにおける被害者側の負担が大きくなりますが、変更認定される可能性が低い異議申し立てや自賠責紛争処理機構への申請よりは効果的な方法だといえます。
訴訟は最終的な解決方法になり、被害者と加害者の双方が裁判で主張して、裁判官による判決か当事者同士の和解で解決されます。事案内容にもよりますが、訴訟の場合は長いと解決まで1年以上かかることもあります。
裁判所側は自賠責保険側(損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所)で出された審査結果を参考にすることもありますが、裁判で提示された証拠を基に判断します。
訴訟をする場合は被害者だけの対応は難しいため、専門的な知識を持っている弁護士に依頼した方が良いでしょう。交通事故案件に携わっている弁護士であれば後遺障害の立証に必要な資料や書類作成の方法を把握しているので、より的確な主張をすることが可能になります。
正確な証拠を提示することで認定される等級が上がる可能性もありますので、弁護士依頼費用を考慮しても弁護士に依頼する価値はあると思われます。
異議申し立てを検討している段階で被害者側が心掛けておくべきことを最後にまとめます。被害者にとって手間がかかる対応になりますが、変更率の低い審査になるため異議申し立てでは準備に時間をかける必要があるでしょう。
『等級認定基準になる後遺障害の4つの要件とは?』でも取り上げたように後遺障害等級の認定では基準があります。症状固定になるまで通院を継続した記録を用意したり、後遺障害の証明に必要な資料について医師と相談するなどの対応が重要になってきます。
もちろん嘘の申告は良くありませんが、被害者自身も症状の重篤性について正確に医師に伝えて、細かい自覚症状を診断書に書いてもらうようにしましょう。担当の医師と被害者(患者)とのコミュニケーションも怠らないようにすることが大事です。
医学的な資料が不足しているようであれば、病院で検査を受け直す必要も場合によってはあります。検査内容を変えることで症状の証明が明確になる可能性もありますので、医師の判断を仰いて適切な検査方法を検討するようにしましょう。
訴訟対応に限らず、異議申し立てでも弁護士による協力が重要になってくるでしょう。弁護士に依頼することで適切な資料を集められるだけでなく、被害者側の負担が少なくなるメリットがあります。
弁護士への依頼で等級認定が受けやすくなることが期待できるほかに、任意保険会社との示談交渉を有利に進められます。詳細については「交通事故の示談交渉で弁護士に依頼するメリット」で解説していますので合わせてご確認いただければと思います。
後遺障害の異議申し立てについて、自賠責紛争処理機構への申請と訴訟での解決方法と合わせて説明しましたがお分かりいただけましたでしょうか。
異議申し立ては被害者にとって大きな労力を要しますが、後遺障害による精神的な苦痛を補償するための慰謝料を獲得する上では必要なことです。悩んだ時は早めに弁護士に相談して解決するようにしましょう。
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KL2020・OD・037
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