【本当にあった事件】最期の一服がガソリンに引火 → 放火罪で逮捕

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
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【本当にあった事件】最期の一服がガソリンに引火 → 放火罪で逮捕

ショックな出来事があって自暴自棄になってしまった経験はないでしょうか?

昭和58年に奥さんに家出をされて悲しさのあまり自暴自棄となり、焼身自殺をしようと考えた男性がいました。

その男性が『最期の一服』として吸ったタバコが原因で家を燃やしてしまい、放火罪で懲役3年6ヶ月の処分となった判例があります。

なぜ、このようなことになってしまったのか?判決文から紐解いていきます。

自殺を決意したいきさつ

男性は結婚3年目。妻に愛情を抱いているものの、嫉妬深くささいなことで暴力を振るってしまう人でした。

暴力を振るうたびに、妻に謝り改心すると約束するも状況は変わらず、妻は真剣に離婚を考えはじめ家出することに。

家出の事実を知った男性は絶望しました。家の中を見渡すと、奥さんとの楽しい思い出が思い起こされるものがあり、部屋ごと燃やして焼身自殺を決意

家中のいたるところにガソリンを撒きました。

『最期の一服』がガソリンに引火

死ぬ前に『最期の一服』として、ライターでタバコに火をつけようとしたところ、気化したガソリンに引火し大爆発

男性がふりむくと爆風によって玄関の戸が吹き飛ばされてなくなっていたので、恐ろしくなり警察に自首しました。

男性は放火罪適用との判決

男性の弁護士はタバコに火をつける行為そのものは、放火を目的としたものではないと主張し放火予備罪(2年以下の懲役)であると主張しました。

一 弁護人は、被告人は本件家屋に火を放つ意思で部屋中にガソリンを撒いているものの、これだけでは出火しないから、右は放火の準備段階であって放火の着手があったとは言えず、

その後、被告人は心を落ちつけるためライターでタバコに火をつけようとしたところ、被告人の撒いたガソリンが気化していてこれに引火したものであり、タバコに火をつける行為も放火を意図したものではないから、放火の着手があるとは言えず

結局被告人は放火行為そのものをしていないから放火予備罪を構成するにすぎない旨主張

文献番号:1983WLJPCA07200010
※改行、強調は筆者による。

しかし、裁判所は家中にガソリンを撒いたことによって、ガソリン臭が充満しておりガソリンの引火性を考えるとガソリンを撒き散らした時点で火災が起きる現実的危険性が生じていたとして放火罪(5年以上の懲役)を適用

被告人によって撒布されたガソリンの量は、約六・四リットルに達し、しかも六畳及び四畳半の各和室、廊下、台所、便所など本件家屋の床面の大部分に満遍無く撒布されたこと、

右撒布の結果、ガソリンの臭気が室内に充満し、被告人は鼻が痛くなり、目もまばたきしなければ開けていられないほどであったことが認められるのであり、ガソリンの強い引火性を考慮すると、そこに何らかの火気が発すれば本件家屋に撒布されたガソリンに引火し、火災が起こることは必定の状況にあったのであるから、

被告人はガソリンを撒布することによって放火について企図したところの大半を終えたものといってよく、

この段階において法益の侵害即ち本件家屋の焼燬を惹起する切迫した危険が生じるに至ったものと認められるから、右行為により放火罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。

文献番号:1983WLJPCA07200010
※改行、強調は筆者による。

最終的に裁判所は、罪が発覚する前に自首したことを踏まえ、懲役3年6ヶ月の判決を下しました。

男性がその後、どうなったのかは不明ですが、刑務所で服役し自分を見つめ直すいい機会になったかもしれません。

何事も自暴自棄にならず、冷静な判断を心がけたいところですね。

参考判例

裁判年月日:昭和58年7月20日

裁判所名:横浜地方裁判所

事件名:現住建造物等放火被告事件

事件番号:昭58(わ)603号

文献番号:1983WLJPCA07200010

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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