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KL2020・OD・037
掲示板やSNS、ブログなどネット上には様々な情報を提供することができますが、中には個人を特定した悪質な書込みをする方もいます。そしてネットは多くの方が閲覧することができますので、ネットを通じて自分の誹謗中傷に関する内容が第三者に知れ渡ることは不本意なことでしょう。
誹謗中傷の中には、悪質なものもあり、内容によっては名誉毀損に該当する場合もあります。名誉毀損など法的に権利を侵害する書き込みに関しては、削除の申請や投稿者に対して損害賠償請求をすることができますが、名誉毀損に該当するのはどういった場合なのでしょうか。
今回の記事では、ネット上における名誉毀損の知識や、誹謗中傷を受けた場合の対応方法についてまとめてみました。
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目次
では、早速ですがネット上での名誉毀損に該当する書き込みについて説明していきます。
名誉毀損について理解するためには、ネット上ではどのような書き込みが、法的に第三者の権利を侵害するのかを理解しなければなりません。一般的に、ネット上の誹謗中傷による権利侵害には、名誉毀損以外に「侮辱」、「プライバシー侵害」があげられます。
ネット上の書き込みとはいえ、上記の内容に該当するものがあった場合、誹謗中傷の対象者は投稿者から法的に権利侵害されたことになります。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:第五章 不法行為(第七百九条―第七百二十四条)
第二百三十条
第一項:公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
第二項:死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
引用元:刑法第二百三十条
第二百三十一条
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
引用元:刑法第二百三十一条
では、どのような時に名誉毀損に問われるのでしょうか。例えば、SNSのタイムラインや掲示板など他の人が見ることができる場所で、「〇〇は不倫していた」とか、「〇〇は過去に刑務所に入っていた」など名指しで誹謗中傷することは名誉毀損に該当します。この場合、実際に不倫をしていたのか、刑務所に入っていたのか事実であることは問われません。
事実確認をすることができることが名誉毀損に該当するための条件であるため、本当に行われていたのかどうかは重要ではないのです。それに対して、「〇〇は嫌な奴である」、「〇〇は頭が悪いと思う」など、事実確認ができない誹謗中傷に関しては侮辱に該当します。
しかし、誹謗中傷の内容が、公的に利害が絡んだものであり(公共性)、利害を目的(公益性)としたものでかつ、真実である(真実性)場合は、名誉毀損は成立しません。例えば、会社の不正を暴露するようなケースです。もし、投稿者側が公共性、公益性、真実性を主張・立証できた場合、名誉毀損が成立しないということです。
では、ネット上で名誉毀損と受け取れる誹謗中傷を受けた時の、対応方法について説明していきます。
投稿者へ交渉するのと同時に、SNSやブログサービス、掲示板など書き込みが行われたサービスを提供している会社へ削除の依頼を申出してください。申出をする際には、削除依頼する書き込みのどこの箇所が、法的に権利侵害しているのかを説明しましょう。削除依頼に応じてもらいやすくなるからです。
申出を行うと会社側は、投稿者へ書き込みの削除に同意するのか確認を行いますが、この確認に対して投稿者から7日以内に返答が貰えなかった場合、投稿の内容は削除されます。反対に、投稿者が同意しない場合は、会社側の判断により削除するかどうかが決まります。
もし、会社側が削除依頼に応じない場合は、裁判所を介して会社側へ書き込みを削除してもらうための仮処分の申立を行ってください。
まず、誹謗中傷に関わる情報は、書き込みが行われた日付と共にスクリーンショット機能などを用いて全て保存してください。書き込みが削除されることもあるので、発見した段階で保存するようにしましょう。
TwitterやFacebookなどのSNS上のタイムラインや、アメブロやFC2などのブログサービスを通じて、誹謗中傷を受けた方は、メッセージ機能を介して、投稿者へ直接コンタクトを取って削除してもらえるよう交渉してみましょう。この際、「削除していただけない場合は警察・弁護士に相談する」、「法的手段も検討している」ことを文面に加えると削除してもらいやすくなります。
ネット上において名誉毀損とされる書き込みが行われた場合、投稿者に対して損害賠償請求をすることができます。では、どのように損害賠償請求をするのかその手順について説明していきますが、裁判を申し立てるためには投稿者の氏名・住所などを特定しなければなりません。
投稿者の身元を特定するためには、まず実際に書き込みのあったSNS、ブログ、掲示板などを管理している会社に対して、投稿者のIPアドレスを請求します。請求する上で、「ネット上の誹謗中傷は名誉毀損に問われるのか?」でお伝えしたように、書き込みのどの内容が名誉毀損に該当するのかを説明するといいでしょう。
ケースバイケース、請求に応じてもらえない場合もあります。もし、対応してもらなかった場合は、会社に対して発信者情報開示請求の申立を行ってください。
次に取得したIPアドレスを元に、プロバイダ会社を特定しますが、「IP SEACH」でIPアドレスを入力し、検索をするとプロバイダが特定することが可能です。プロバイダ会社が特定できたら、今度は、投稿者(IPアドレスの持ち主)の氏名、住所などの情報を特定するために、今度はプロバイダ会社へ発信者情報開示請求の申立を行います。
投稿者の身元が特定できたら、今度は投稿者に対して名誉毀損による損害賠償請求を行いますが、まずは内容証明郵便を介して個人間で慰謝料に関する話合いをすると良いでしょう。内容証明郵便は、書類を郵送した事実を証明することを目的とした郵便であり、裁判を行う際に証拠として提出することができます。
請求書には、「話合いがまとまらない場合は損害賠償請求の申立を検討している」などの文言を加えると効果的です。
もし、話合いがまとまらなかったら、今度は裁判所にて損害賠償請求の申立を行いましょう。申立後は、裁判所から投稿者へ答弁書を提出する機会が与えられますが、請求内容、答弁書の内容を元に裁判所は判決を下します。
実際のところネット上の名誉毀損により損害賠償請求をするメリットはあるのでしょうか。損害賠償請求は弁護士に依頼することが一般的ですが、損害賠償請求が必要かどうかは、弁護士費用と慰謝料を比べた上で判断することが必要です。慰謝料の相場は、
上記の通りになりますが、それに対して弁護士費用は、以下の通りになります。
着手金 | 報酬金 | ||
損害賠償請求 | 裁判外 | 約10万円 | 慰謝料の16% |
裁判 | 約20万円 | 慰謝料の16% | |
IPアドレス開示 | 開示請求仮処分 | 約20万円 | |
プロバイダ業者と交渉 | 約5万円~10万円 | ||
両方 | 約30万円~ |
弁護士費用は各事務所によって異なる上に、慰謝料も状況によって異なります。そのため、どれくらいの慰謝料が見込めるのか、弁護士費用はどれくらいかかるのかは一度、弁護士に相談してみてください。
ネットの名誉棄損の慰謝料相場は、被害状況によって異なりますが、基本的には以下の通りです。
では、判例を交えながら紹介します。
原告の会社の従業員であった被告がSNSやブログで、原告が代表取締役を務める会社が反社会勢力と取引を行っている、タレントの娘のために各所を買収したなど投稿を行った事件です。
被告は同内容を執拗に投稿しただけでなく、原告や関係者からの通知や警告などを無視し、より過激な内容の記事を投稿し、原告の釈迦的評価を著しく低下させた。また、原告の娘に対しても「殺す」などの穏便ではない表現を用いた記事を投稿したことなどから、100万円の慰謝料が認められました。
弁護士費用の10万円を併せ110万円の支払いが命じられました。
参照元:令和元年9月12日 東京地裁 文献番号 2019WLJPCA09128009
投稿者に対して刑事告訴を行いたい方は、警察に相談してください。この際に、手続きをスムーズに済ませるために、投稿者の身元が特定できた段階で刑事告訴を行うことをオススメします。
刑事告訴をするためには、警察に告訴状、被害届のどちらかを提出しなければなりません。被害届とは、被害を受けたことを申告するための書類であり、警察が事件として扱ってくれるかは警察の判断次第です。それに対して、告訴状は、加害者を処罰させるための申立をする書類になりますが、被害届よりも告訴状の方が警察も事件として対応してくれる傾向にあります。
また、警察が事件として取り扱うにあたり、申立てる罪状が親告罪(被害者側の告訴が必要とする犯罪)に該当する場合は、告訴状が必要になります。名誉毀損罪は、親告罪に該当するため、ネット犯罪の名誉棄損罪で訴えたい場合は、警察へ告訴状を提出してください。
告訴状には、被害内容と、名誉棄損罪に該当する理由について具体的に記載した上で、証拠と共に提出します。警察は法的に権利が侵害されていると認めなければ動いてくれないため、告訴状を作成する際は弁護士に相談すると良いでしょう。
告訴状が正式に受理され、警察が事件として取り扱ってくれることが決まり次第、警察は投稿者を捜査し、逮捕の必要性があれば被疑者として逮捕します。逮捕後は、留置所に投稿者の身柄が確保されますが、逮捕から勾留期間は最大23日間です。刑事手続きでの起訴は検察官が行いますが、警察が捜査して集めた証拠を元に起訴するかの判断が行われます。
起訴後の刑事裁判では、投稿者の有罪・無罪に関する審理が行われますが、有罪判決が出た場合の判決内容は罰金刑もしくは懲役刑のどちらかです。
刑事告訴をする方は、刑事裁判によって慰謝料を受け取ることはできません。もし、金銭を請求したい場合は、示談交渉をする必要がありますが、示談交渉とは相手の罪状を軽くする代わりに示談金を支払わせるための交渉です。示談交渉は、相手側から申し出するケースも多く、金銭的な請求を望まれる方は示談交渉をしましょう。
ネット上の誹謗中傷でも、内容によっては名誉毀損に該当します。ネット上の書き込みに対して名誉毀損で訴えたい方が当記事を参考にしていただけたら幸いです。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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