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KL2020・OD・037
寄与分制度とは、被相続人の財産の維持や増加に貢献した人に相続時の取り分増額を認める制度です。相続分は民法で決まっていますがこれだけで処理すると相続人間で不公平が生じることもあります。寄与分はこのような不公平を解消するための法制度です。
被相続人に対して貢献したと思っている人ならば、この寄与分をしっかりと受け取りたいと思うのが普通ですよね。
そこで今回は、どういった場合に寄与分が発生するのか、寄与分を受け取るためにはどうしたらよいのかなどについて、解説していきたいと思います。
目次
それでは、被相続人に対してどのような貢献をするとそれが寄与分として与えられるのでしょうか? そのことについて、ここで解説していきます。
家族の療養を子や配偶者が行うことは、単に法律上の扶養義務を遂行しただけであり、それだけで寄与分が与えられるとは考えにくいです。
しかし、被相続人の療養看護を手伝い、医療費や看護費用の支出を負担したり、看護は第三者に任せたがその費用を負担した場合などは、寄与分が与えられると考えられます。
被相続人の事業に従事し、労務を提供したことによって財産の維持増加に貢献した場合にも、寄与分が与えられると考えられます。
しかし、ケースにもよりますが、寄与分を受け取るにはそれが『特別な寄与』と評価されなければならないため、被相続人の事業に協力するに際し、給料を受け取っていたという場合は寄与分が発生しないと考えられます。
ですので、たとえば個人事業主の仕事に無報酬で従事したり、労務を提供することで財産の維持増加に貢献した場合は、寄与分を受け取ることができると考えられます。
会社の財産に貢献したとはいえ、それが直接被相続人の財産の維持増加に貢献しているとは言えないでしょう。なので、被相続人が個人事業主であるということが、寄与分が発生する典型的なパターンです。
被相続人に対し(被相続人が営む事業に対し)、財産の給付や利益を提供することで財産の維持増加に貢献した場合も、寄与分が付与されることが考えられます。たとえば、不動産の購入費用の一部を支払ったなどというケースです。
この際、財産の給付や利益の提供が無償(無報酬)で行われたか、その証拠が残っているかがポイントとなります。被相続人の借金の返済という貢献においても同様に、寄与分が与えられると考えられます。
寄与分を受け取るには、先ほども述べたようにその行為が『特別な寄与』と評価される必要があります。なので、たとえば親が病気になって長年看護をしたり、面倒を見ていたとしても、それは家族の扶養義務を遂行しただけだとみなされ、『特別な寄与』とはされない可能性が高いでしょう。
相続人が複数いる場合、「自分が一番介護をしたから寄与分をもらえるはずだ。」と考えていても、『特別な寄与』に当たらない限り寄与分は認められませんので、注意しましょう。
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
- 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
- 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
これらの条文からもわかるように、夫婦や直系血族であれば互いを助けるのは当然の行為とされており、それが寄与分の発生理由とはなりません。
被相続人の財産の維持増加に貢献したことが前提であり、その看護が精神的に大きな支えになったとしても、それが財産の維持増加に繋がっていなければ、特別な寄与とは認められないでしょう。
なので、その行為が『家族として当たり前』の枠を超えているかどうかが、論点となりそうです。
寄与分が認められた判例:
事件名:遺産分割申立事件寄与分を定める処分申立事件
被相続人に対する身上監護を理由とする寄与分の申立てに対し、被相続人が認知症となり、常時の見守りが必要となった後の期間について、親族による介護であることを考慮し、1日あたり8000円程度と評価し、寄与分を876万円と定めた事例。主文
相手方の寄与分を876万円と定める。裁判年月日 平成19年 2月 8日
裁判所名 大阪家裁
事件番号 平18(家)556号 ・ 平18(家)1358号
事件名 遺産分割申立事件寄与分を定める処分申立事件
裁判結果 認容 上訴等 確定
文献番号 2007WLJPCA02086001
一概には言えませんが、上記のようなケースが、一般的な寄与分がもらえるケースとなっています。
寄与分の計算方法は法律で決まっているわけではなく、一概にこれが正しいというものはありません。しかし、過去の判例などからだいだいの目安を計算することはできます。
ここではそれぞれについて、計算方法を解説していきます。
介護が必要な被相続人に対し、看護をしていたケースがこれにあたります。実際に自分が看護をしていた場合と、看護は第三者に任せ、その費用を自分が負担していた場合の2種類について解説していきます。
・自分が看護をしていた場合
これは、被相続人が介護士やヘルパーを雇わずに済み、支出の流入を抑えたことが、寄与分の計算対象となります。計算方法としては、介護士やヘルパーの日当額を基準として考えます。
【介護士・ヘルパーの日当額×療養看護をした日数×看護をした人の裁量的割合】
通常は、この計算式で計算されます。介護士やヘルパーのように専門的なスキルを持っていないということが考慮され、その日当額は基準値(介護士やヘルパーなどの日当)の7割~8割として計算されることが多いようです。
裁量的割合とは、被相続人との身分関係や、相続人がその行為で失った財産などを考慮して、それぞれの事案に応じてバランスをとるために判断するものです。
被相続人が個人事業主として営んでいた事業に、無報酬、またはそれに近い状態で働いていたことがこれにあたります。たとえば個人事業主である親の手伝いを10年間したにもかかわらず、無報酬(またはお小遣い程度)の給料しか支払われなかった場合です。
こういった場合には、まず1年間でもらうべき額を決めます。仮にこれが300万円だとすると、
【300万円×生活費控除割合(だいたい0.5くらいが相場です)×10年】
で計算され、1,500万円が寄与分となります。
また、家族で共同経営をしていた場合、家族という理由から給料があまり支払われなかったというケースでは、株の配当などが寄与分額にあたります。
寄与分額=【(本来得ていた報酬額+利益配分)-実際に支給された給付】となります。
親が不動産を取得するために、その購入費用を金銭的に援助したケースなどがこれにあたります。
この場合、
【相続時の不動産価額×(出資金額÷取得時の不動産価額)】
で寄与分額が計算されます。
たとえば、購入価格が3,000万円の不動産に対し、1,200万円の金銭的援助をして、相続時にその不動産が5,000万円まで価格が高騰したとします。
これを計算式に当てはめると、
【5,000万円×(1,200万円÷3,000万円)】
となり、寄与分は2,000万円となります。
たとえば遺言で『寄与分を長男に与える』と書かれている場合、これは寄与分として認められるのでしょうか?
結論から言うと、遺言に寄与分の指定を記載してもただちに相続人の寄与分が認められるものではありません。寄与分は共同相続人による遺産分割協議や家庭裁判所の審判で決定されるものであって、遺言により指定されるべきものではないからです。
しかし、『寄与分』として具体的金額が記載されていた場合、これが遺贈と評価されて当該財産を受け取れる可能性はあります。
遺留分とは、相続人に最低限の相続を保証する制度のことですが、ここで問題となる点が1つあります。それは、ある相続人に対して寄与分が与えられた場合、それによって侵害された(減額された)他の相続人の遺留分減殺請求は認められるのかということです。
遺留分減殺請求の対象財産は遺贈と贈与に限られるため、寄与分に対しての遺留分減殺請求はできないと考えられています。しかし、そもそも遺留分を侵害するほどの寄与分を与えるのは問題視されており、そのような寄与分自体が認められない可能性もあります。
したがって、遺留分と寄与分の優劣という概念はないという考え方もあります。
実際に寄与分の受け取りを主張する際、どのようなものを用意しておけばよいのでしょうか?
療養看護をした場合であれば、診断書やカルテ、介護ヘルパーの利用明細など、被相続人に対してどれだけ介護をしたかがわかる資料を用意しておきましょう。
また、介護のために会社を休んだ日付、それによって給料が下がったのであればその記録などですね。
財産を贈与した場合には、その領収書や通帳も用意しておきましょう。寄与分を主張する際には、自分自身でこのような証拠を慎重に集める必要があります。
相続人が複数いる場合には、それが原因で揉めてしまうことにもなりかねませんので、その際は1人で悩むことなく、専門家へ相談をするのが一番最適な方法だといえます。
今回は、寄与分について、その計算方法や注意点などについて解説してきました。
寄与分の制度を使うことにより、相続人の間での不平等を解消することができると考えられます。
しかし、相続が原因で家族関係が崩壊してしまうこともよくある話ですので、寄与分を主張する際にはしっかりと証拠を集め、他の相続人とのコミュニケーションをしっかりとって円滑に話を進めていくことが大切です。
迷うことや不安なことがありましたら、一度専門家への相談をしましょう。
こちらの記事もぜひ参考に、寄与分の理解を深めていっていただけたらなと思います。
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