遺留分の放棄が許可される判断基準と手続きを解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
遺留分の放棄が許可される判断基準と手続きを解説

被相続人の生前に遺留分を放棄するとき念書を書いた人もいるかと思いますが、実は法的な効果はありません。遺留分を被相続人の生前に放棄するためには所定の手続きが必要であり、念書を書いたから遺留分を法律的に放棄したとは言えないのです。

この記事では遺留分放棄に関して、念書を書いたときに撤回できるかどうかを紹介していきます。

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遺留分の生前放棄は裁判所で申請・認定する

権利放棄は単独行為であり、権利者の一方的行為によって行うことができるのが原則です。しかし、遺留分を被相続人の生前に放棄するときは、家庭裁判所へ申請しなくてはいけません。

この点については民法1043条1項目にて記されています。

相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けた時に限り、その効力を生ずる。(引用:民法

生前放棄が認められる判断基準

また、遺留分の放棄ですが、家庭裁判所に申請すれば自動的に許可されるものではありません。家庭裁判所では放棄が正当なものかどうか判断する3つの基準を設けています。

・遺留分の放棄が本人の自由意思に基づいている

・遺留分放棄に合理的理由と必要性がある

・遺留分放棄に対して見返りがある

これら3つの基準を満たした場合に限り、放棄が認められるのです。

遺留分放棄の書式

遺留分を放棄するときに必要になる書類の書式は裁判所(※外部リンクへ飛びます)で紹介しています。ここでも、どうして放棄するのか、その理由をきちんと記さなくてはいけません。

前述にて紹介した基準を満たす内容になる理由と、被相続人が所持していた財産目録を細かく記入しないといけないのです。

放棄の取り消し・撤回は原則不可

裁判所の基準をクリアして遺留分の放棄が認められたあと、放棄を取り消したいといっても原則として取り消しや撤回はできません。

放棄後の取り消しが認められるためには、放棄した理由である前提条件が覆ったなど、合理的な理由がそこにある場合です。この時も家庭裁判所の許可が必ず必要になるので、申請を忘れないようにしましょう。

相続放棄と遺留分放棄の違い

遺留分放棄の話をすると、よく混同されるのが相続放棄についてです。同じように見えて、全く別のものになります。

相続放棄について

相続放棄は相続人の地位そのものを放棄する行為であり、遺留分だけでなく法定相続分の一切を放棄するものです。端的にいうと、相続放棄を行った相続人は、相続開始時から相続人ではなかったことになります。

なお、相続放棄は自身に相続が生じたことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申請しなくてはいけません。この期間を徒過した場合は、原則として被相続人の財産を相続することを認めたことを意味します。そのため、被相続人が生前に持っていた借金などの負債も相続されてしまいます。

遺留分の死後放棄について

遺留分放棄は、相続人に最低限保証される遺留分のみを放棄するものであり、相続人たる地位は失われません。そのため、他相続人に影響をあたえることはありません。

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遺留分放棄に関する相談例

遺留分放棄に関する相談例

遺留分の放棄に関する相談は、何も念書を書いたかどうかだけではありません。世間には様々なケースで悩まれている方もおり、中には複雑な事情に見舞われている人もいます。

今回はそんな遺留分に関して寄せられる相談例をいくつかご紹介します。

夫に婚外子がいた

「私たち夫婦には子供がいませんでしたが、夫が婚外子を作っていることがわかりました。離婚こそしていませんが、もし私が死んだときに遺産が夫のものとなり、顔も知らないこのために使われ、夫の死後はその後に相続されてしまいます。

夫とよく話し合い、私が死んだときの遺産は私の親兄弟に譲ることに同意していますが、同時に遺留分の放棄もしてもらおうと考えています。

この場合、遺留分の放棄は家庭裁判所でどのくらいの確率で認められるのでしょうか。」

参考:遺留分の放棄は可能かどうか(※リンク先へ飛ぶと回答もご覧になれます)

生前贈与の代償とした遺留分の放棄

「母が亡くなる前にお金を受け取りましたが、死後に上の兄たちから遺留分減殺請求を受けてしまい、支払うことになりました。

その時はまだ父が生きていたのですが、贈与について秘密にする代わり、父が死んだあとの遺留分を放棄するよう条件を付けてきました。知られたくなかったので、その条件をやむなく飲むことにしました。

父が亡くなったとき、電報で知りましたが送られてきた当日にお通夜、翌日に告別式があることを知りました。家から実家までは距離があるので、どちらにも参加することができませんでした。

父の最期を看取ることも出来なかったこともあり、以前条件として交わされた父の遺留分放棄を撤回することはできないのかと考えるようになりました。

こういった場合でも、遺留分放棄をすることはできるのでしょうか。」

参考:遺留分を放棄したが撤回したい(※リンク先へ飛ぶと回答もご覧になれます)

まとめ

遺留分を放棄する旨の念書を書かされた時、あとになって撤回したいと思う人もいるでしょう。基本、裁判所を介した手続きでないと遺留分、特に被相続人が生前の時は念書での効果はほとんどありません。

遺留分の放棄と相続の放棄がどのように違うのか、分からない人も多いでしょう。

複雑な遺留分問題で、念書を書かされて困ったという人はこちらの記事を参考にしてみてください。

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梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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