遺留分として獲得できる割合と放棄した遺留分との関係性まとめ

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
遺留分として獲得できる割合と放棄した遺留分との関係性まとめ

遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者・子・直系尊属)に認められた最低限の遺産の取り分を保障する制度です。被相続人には遺言等による財産処分の自由が認められており、原則としてその意思は尊重されることになっており、極端に言えば「○○に遺産の全てをわたす」といった遺言書であっても直ちに無効にはなりません。

しかし、遺留分の認められた法定相続人がいる場合には、このような遺言があったとしても、遺留分に相当する部分の遺産について取得する権利が与えられることになっており、その意味では被相続人の意思によっても奪うことのできない遺産の取り分とされています。

ところでこの遺留分ですが、権利者ごとに所定の割合が定められているのをご存じでしょうか。今回は、遺留分権利者が獲得できる遺留分割合について、あらゆる角度からご紹介いたします。

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遺留分権利者が獲得できる遺留分割合とは

遺留分の認められる法定相続人は、配偶者・子・直系尊属の3種類の人たちです。これは遺留分制度が遺族の生活保障をその趣旨としていることから、「血の遠い」法定相続人である兄弟姉妹に遺留分を認めてしまうと、不用意にその権利を主張する相続人が増えてしまい、被相続人の財産処分の自由とのバランスを失するという理由に起因します。

相続欠格・廃除をされない限りは、基本的にこれらの遺留分権利者が遺留分減殺請求権を有することになります。ここではまず、遺留分権利者と獲得できる遺留分割合についてご紹介いたします。

遺産全体に占める遺留分の割合

遺留分割合は、全遺留分権利者の遺留分を合計した「総体的遺留分」と、各権利者の具体的な取り分である「個別的遺留分」の2種類に分かれています。

総体的遺留分は民法1028条に定められており、個別的遺留分は総体的遺留分に権利者の法定相続分(民法900条※ただし遺留分権利者が1名のみの場合は100%)を掛け合わせることで算出することができるようになっています。

遺産全体に占める遺留分の割合

(遺留分の帰属及びその割合)

1028条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。

一  直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二  前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

つまり、遺留分権利者が直系尊属のみの場合は相続財産の1/3が、そうでない場合は1/2が総体的遺留分として確保される部分になりますから、これを侵害する遺言や遺贈がなされている場合には、遺留分減殺請求ができる可能性があるということになります。

ただし、遺留分減殺請求は「遺留分が侵害されている場合」しか行使することができないので、実際に遺留分が侵害されていることが必要になります。

遺留分割合の例

例えば、相続人が配偶者と子ども2人の場合において、被相続人が配偶者に全財産を譲る旨の遺言を遺していたとします。この場合、遺留分を侵害されているのは子ども2人だけなので、当然ながら配偶者は遺留分権利者であっても遺留分減殺請求をすることはできません。

そして、子どもたちの遺留分はそれぞれ1/4になるので、侵害された相続財産の1/4に相当する部分を配偶者に対して減殺請求することになります。

配偶者

配偶者は相続欠格・廃除の場合を除いて必ず法定相続人になると同時に、遺留分権利者にもなります。

それぞれの場合において、個別的遺留分を侵害する遺言が遺されていた場合には、遺留分減殺請求権を行使して遺留分を取り戻すことができます。

法定相続人の組み合わせ 法定相続分 遺留分
配偶者のみ 100% 1/2
配偶者+子ども 1/2 1/4
配偶者+直系尊属 2/3 1/3
配偶者+兄弟姉妹 3/4 100%(相続財産の1/2)

子ども(直系卑属)

被相続人に子どもがいる場合は、こちらも相続欠格・廃除の場合を除いて必ず法定相続人になります。

子どもが法定相続人になる場合には、直系尊属の遺留分はありません。この場合も、個別的遺留分を侵害する遺言が遺されていた場合には、遺留分減殺請求権を行使して遺留分を取り戻すことができます。

法定相続人の組み合わせ 法定相続分 遺留分
子どものみ 100%を子の人数で割る 1/2を子の人数で割る
配偶者+子ども 1/2を子の人数で割る 1/4を子の人数で割る

直系尊属

被相続人に子どもがいない場合には、配偶者の有無にかかわらず一番近い世代の直系尊属も法定相続人になります。つまり、被相続人の父母が生きていればその人たちが、父母が既に亡くなっており祖父母なら生きている場合にはその人たちが法定相続人に加えられることになりますが、父母と祖父母が一緒に法定相続人になることはありません。

法定相続人の組み合わせ 法定相続分 遺留分
直系尊属のみ 100%を人数で割る 1/3を人数で割る
配偶者+直系尊属 1/3を人数で割る 1/6を人数で割る

孫の場合|代襲相続と遺留分

被相続人の子どもが早世し、残されたその子ども(被相続人から見て孫)が代襲相続を行う場合には、この孫も遺留分権利者になります。その際、被代襲者である被相続人の子どもの権利をそのまま受け継ぐことになるため、孫が複数いる場合には、被代襲者の遺留分割合を人数で割ったものが孫1人あたりの個別的遺留分になります。

法定相続人の組み合わせ 孫の法定相続分 孫の遺留分
子ども
(代襲相続の孫を含む)のみ
100%を子の人数で割り、更に孫の人数で割る 1/2を子の人数で割り、更に孫の人数で割る
配偶者+子ども(同上) 1/2を子の人数で割り、更に孫の人数で割る 1/4を子の人数で割り、更に孫の人数で割る

遺留分権利者になれる人となれない人

以上が遺留分割合の概要になりますが、そもそも遺留分とはどのような制度なのでしょうか。ここでは、遺留分についての基礎知識をご紹介いたします。

遺留分制度の概要

何度もご紹介しているとおり、遺留分とは民法1028条以下に定められた、兄弟姉妹を除く法定相続人に認められた最低限の遺産の取り分という制度です。

民法において、財産権については使用・収益・処分について自由に行うことが認められていることから、被相続人も自分の財産をどのように処分するかについては自分で決定することができ、遺産の全部を特定の誰かに譲ったり、相続させたくない相続人には財産を渡さないよう遺言することも原則として可能です。

しかし、そもそも相続というのは被相続人の近親者に財産を残すという趣旨のもと定められた制度であり、ひいては遺族の生活保障という側面も持っていることから、被相続人の財産処分の自由を完全に認めてしまうと、例えば愛人や第三者に全財産が渡ってしまって妻子が困ってしまうといった問題が起こり、相続制度と矛盾しかねません。

そこで、遺留分として一定範囲の相続財産の処分について制限をかけ、財産処分の自由との調整を図ったのが現在の遺留分制度と言えます。

このため、近親者ではあるものの、被相続人との繋がりが他の相続人と比較して薄いとされる兄弟姉妹については、被相続人の財産処分の自由を優先させ、遺留分が認められないという運用に至っています。

遺留分がもらえる人ともらえない人

遺留分がもらえる人は、配偶者・子どもなど直系卑属・直系尊属の3種類の人たちのうち、実際に遺留分を侵害されている人ということになります。先述のとおり、兄弟姉妹は遺留分権利者ではないので遺留分はもらえませんが、直系尊属についても、被相続人に子どもがおらず法定相続人になる場合にしか遺留分は認められません。

簡単に言えば、遺留分がもらえる人は「遺留分権利者であり、かつ、実際に遺留分を侵害されている人」に限られるということです。

相続放棄をしたら遺留分はどうなるか

被相続人の財産を一切相続しないための手続きが相続放棄ですが、この場合は当然ながら遺留分の権利も失うことになります。

しかし、相続人全員が相続放棄をした場合はともかく、誰か1人だけが相続放棄をすると他の遺留分権利者の遺留分に影響が出るのかについて疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、相続放棄をしたら遺留分がどうなるのかについて、様々な側面からご紹介いたします。

相続放棄と遺留分の関係

相続放棄をした相続人は、その相続において始めから相続人でなかったものとして扱われることになります。

そのため、その相続人が遺留分権利者であったとしても、後から遺留分減殺請求権を行使することはできないうえ、生前贈与などで被相続人から多くの財産を譲り受けていた場合には、他の相続人(遺留分権利者)から遺留分減殺請求をされる可能性がゼロではないということになります。

さて、複数いる相続人のうち、遺留分権利者でもある相続人が相続放棄をしたとします。この場合、他の遺留分権利者が取得できる遺留分額に変動があるのかどうかについて、気になる方も多いのではないでしょうか。

結論から言えば、他の相続人の相続分が増える結果、遺留分も増える可能性があります。

相続人の組み合わせ 相続放棄をした人 他の相続人の相続分 遺留分の変動
配偶者+子ども2人 配偶者 子ども 各50%ずつ 各1/8→1/4
子ども 配偶者 100% 1/4→1/2
子ども3人 子ども1人 各50%ずつ 各1/12→1/4
配偶者+母 配偶者 100% 1/3→1/2
配偶者 100% 1/6→1/3
配偶者+弟 配偶者 100% なし
配偶者 100% 1/2(変動なし)

なお、相続放棄をする場合には、自己のために相続があることを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で相続放棄の申述という手続きをしなければなりませんのでご注意ください。

代襲相続は遺留分割合もそのまま承継される

被相続人よりも先にその子が亡くなっている場合、被代襲者の子(被相続人の孫)が代襲相続人として相続に関わることがあります。代襲相続の場合、被代襲者が遺留分権利者であれば、代襲相続人もその遺留分割合を承継して相続に参加することになります。

例えばAよりも先に子Cが亡くなっており、その子E・Fが代襲相続人として配偶者B、子Dと共にAの相続をする場合を考えてみましょう。

  法定相続分 遺留分
配偶者B 1/2 1/4
子C(代襲相続人E・F) E・F2人で1/4(各1/8) E・F2人で1/8(各1/16)
子D 1/4 1/8

このように、E・FはCの権利を2人で分けることになるので、同順位の相続人であるDよりも個別の取り分は少なくなるのがお分かりになったかと思います。

代襲相続人が1人であれば問題ありませんが、複数いる場合には「被代襲者の権利を代襲相続人の人数で割った分が個別的遺留分になる」と覚えておくのが良いでしょう。

ただし、代襲相続の場合は被代襲者の遺留分割合がそのまま承継されるため、被代襲者が生前に遺留分放棄をしていた場合には、当然ながら遺留分の権利は承継できないという点に注意してください。

この場合、代襲相続人は相続権は承継できますが、遺留分権は既に放棄されているため承継できません。代襲相続人は被代襲者が有していた以上の権利を取得することはできないので、上記の例で言えばこのような結果になるのです。

  法定相続分 遺留分
配偶者B 1/2 1/4
子C(代襲相続人E・F)※遺留分放棄済 E・F2人で1/4(各1/8) なし
子D 1/4 1/8

遺留分権利者が配偶者Bと子Dのみになりますが、民法10432項では、他の共同相続人の遺留分に影響を及ぼさないと規定されていますので、子Dの遺留分は1/8のままです。

 

相続放棄と遺留分放棄は違う

相続放棄と遺留分放棄について、どちらも「放棄」という言葉が使われているため混同しがちですが、実は大きな違いがいくつかあります。

①相続権の有無

相続放棄は相続権を失わせるための手続きなので、当然相続権は残りません。対して、遺留分放棄は単に「遺留分は要らないですよ」という意思表示になりますから、相続権には何の影響もなく、法定相続分相当の財産を受け取る権利が残ります。

ただし、相続放棄の場合はそもそも遺留分権が残らないのですが、遺留分放棄をした場合にも遺留分減殺請求権を失うという点は共通しています。

②放棄の時期の制限

相続放棄は相続開始後でなければすることができないのに対し、遺留分放棄は被相続人の生前・死後どちらでもすることができます。

被相続人の生前に遺留分放棄をする場合には、家庭裁判所の許可が必要になり、所定の申立てを行わなければなりませんが、死後の遺留分放棄であれば特に何の手続きも必要なく自由に行うことができます。

遺留分減殺請求権には期間制限がありますから、死後に遺留分放棄をしたい場合には、被相続人の死後1年間に遺留分減殺請求権を行使しなければ、自動的に遺留分減殺請求権が消滅するということになります。

③他の遺留分権利者に与える影響

相続放棄の場合、放棄した相続人が遺留分権利者であれば他の遺留分権利者の遺留分が増える可能性があるのに対し、遺留分放棄の場合は他の相続人の遺留分割合に影響を与えることはありません。

したがって、遺留分権利者の1人が遺留分放棄をしたからといって他の遺留分権利者の取り分が増加するわけではなく、単にその人の遺留分がなくなっただけという扱いになることに注意しましょう。

また、相続放棄は債務を相続することはありませんが、遺留分放棄は相続権が残るので、法定相続分に応じた負債を相続することがあります。

まとめ

遺留分割合は、相続財産に占める遺留分全体を指す「総体的遺留分」と、具体的な各権利者の取り分である「個別的遺留分」の2種類で構成されています。

個別的遺留分は、基本的には総体的遺留分×法定相続分で求めることができますが、遺留分権利者が1人しかいない場合や同順位の相続人のみである場合には計算が変わることもありますので、実際に計算する際には遺留分権利者の人数や相続順位にも注意しましょう。

また、相続放棄や代襲相続人が混ざる相続の場合は、同順位の相続人であっても取得できる個別的遺留分が異なる場合がありますので、相続関係が複雑な場合は弁護士等の専門家を頼るのもお勧めです。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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