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KL2020・OD・037
「社会人として失格だ」と言われる代表行為の1つとして無断欠勤が挙げられます。
無断欠勤をしたら即クビになったという話も珍しくありませんが、果たして無断欠勤は会社でどのような罰が問われるのが妥当なのでしょうか?
この記事では無断欠勤と解雇の関係について紹介していきますので、無断欠勤が原因で悩んでいる場合はぜひ参考にしてみて下さい。
目次
法律では「何日欠勤したら解雇できる」という規定はありませんので、無断欠勤何日以上で直ちに解雇ということはできません。
ただ、無断欠勤が相当期間続くことで通常の労務提供が期待できないとか、労働者としての適格性がないと認められる場合には、就業規則上の解雇事由に該当し、普通解雇されることはあるかもしれません。
この場合の「相当期間」が何日程度かはケース・バイ・ケースですが、例えば突然出社しなくなり、30日間ずっと連絡も取れず、仕事の引継ぎもされずに業務に支障が生じたという場合であれば普通解雇はやむを得ないように思われます。
他方、無断欠勤が1~2周間程度あったが従前勤務態度がまじめであったとか、業務に特段支障が出なかったとか、連絡を取れない相応の理由があった(心身の故障等)、会社の方で積極的に出勤を促さなかったという場合であれば普通解雇も難しいということはあり得ます。
このように、解雇が相当か否かは単純に日数のみの問題ではなく、無断欠勤の内容・理由・影響、労使双方対応、業務への支障の有無その他諸般の事情を考慮して総合的に判断されます。
無断欠勤で普通解雇を超えてペナルティとしての懲戒解雇まで認められるケースは相当特別なケースと思われます。
例えば、会社の方で出勤を促すための手をつくしているにも拘らず、労働者側が正当な理由もなく不誠実な対応を継続し、結果、業務の支障も著しく企業秩序に相当な害悪を与えたというケースであれば懲戒解雇はあり得るでしょう。
しかし、それでも会社としては出勤命令違反による軽微な懲戒処分(譴責や減給等)を積み重ね、十分に警告し、それでも改善しない場合に懲戒解雇処分を行うといった慎重な対応が求められます。
なお、懲戒解雇は、仕事を失うという直接的な影響だけでなく、「社会人失格」の烙印として他社に発覚した場合に再就職が非常に困難となります。
懲戒解雇の事実を黙って転職しても、後々これが発覚した場合に経歴詐称で再度普通解雇又は懲戒解雇されてしまうということもあるかもしれません。このように、懲戒解雇とは労働者の生活に極めて重大な影響を与える人事処分であるため、会社には慎重な対応が求められるのです。
労働者は会社に対して、労務提供義務を負担しており、無断欠勤は正当な理由のない労務提供義務の不履行として債務不履行を構成します。そのため、理論的には会社は労働者に対して、無断欠勤により生じた損害の賠償を求めることが可能です。
例えば、無断欠勤者がプロジェクトの責任者を任されているなど、自分が休んだことで多大な損害が生じる状況であることを知りながら、何の連絡も引継ぎもなく無断欠勤を続けたというケースでは、会社が損害賠償を検討することはあるかもしれません。 |
もっとも、会社は労働者を組織的に使用するため、一部労働者が無断欠勤したからといって直ちに損害が発生するとは認めにくいのも事実です。
また、仮に何らかの損害が認められたとしても、会社は労働者を使用して利益を得ているため、会社に生じた損害の全部を労働者に負担させるのは不公平であると考えられており、労働者に対する全額の賠償請求は基本的に認められません(せいぜい20%程度)。
そのため、実務的には労働者に無断欠勤があったとしても、会社から労働者に対して損害賠償請求をする事例は極めて珍しいと思われます。
無断欠勤をした日は当然には有休扱いとはなりませんので基本的には無給です。他方、無断欠勤前に働いていた日数分は当然給与が発生しますので、その後の解雇の有無に拘らず賃金請求ができます
もっとも、無断欠勤を理由として減給の懲戒処分を受けた場合、法律の定める範囲内で給与が減額される事はあり得ます。
万が一、無断欠勤を理由として解雇される場合、30日前に解雇を予告しないのであれば会社は解雇予告手当を支払う必要があります。
会社は労働者の帰責事由を理由として予告手当の除外認定を申請することは可能ですが、実務的にはほとんど利用されていないので、解雇の場合には30日前の解雇予告かこれに満たない日数分の解雇予告手当の支払が生じるのが通常であることは覚えておいてください。
退職金の有無は会社の規定次第ですが、退職金規定がある場合には以下の点に留意してください。
就業規則で「懲戒解雇者には退職金を支給しない」という記載がある場合、懲戒解雇されれば退職金は受け取れません。他方、逆に何も記載がない場合、懲戒解雇であるからといって当然には退職金は減額されません。
また、退職金の減額規定があったとしても、懲戒解雇による退職金の減額は『長期間の勤続の効を抹消してしまうほどの信義に反する行為があった場合』に限ると考えられていますので、当然に全額が不支給となるものでもありません。
無断欠勤をしていると会社から直ぐに電話がきますが、無視をせずにしっかり対応をするようにして下さい。
労働者と連絡が取れなければ会社は休んでいる理由が分からないので、「事件に巻き込まれていないか」「病気で倒れているのではないかと」あなたの身を案じ大事に発展して周囲の人間にも迷惑をかけてしまう恐れがあります。
電話に出るのが難しい状況ならメールでも大丈夫ですので、理由は言えなくても会社に行けない状態であるということだけはしっかり伝えておきましょう。
会社を辞めたい場合は、退職の意思を明確に伝えてください(口頭ではなく、メール又は文書で伝えてください。)。よく「会社が辞めさせてくれない」とか「退職届が受理されないので辞められない」という声を聞きますが、有期雇用でない場合は退職に会社の承諾は不要です。
労働者は会社に対して退職の意思を一方的に伝えれば足り、会社の承諾も退職届の受理も不要です(退職の通知後2週間で当然に退職の効果が生じます。)。出勤できないほど会社を辞めたいのであれば、さっさと辞めてしまうのが最も合理的でしょう。
なお、退職を通知する方法に決まりはなく、メール、LINE、FAX、郵便となんでもOKです。ただ、後々証拠として残すことを考えるとメール又は内容証明郵便が最も確実かもしれません。
冒頭で紹介しましたが、無断欠勤で懲戒解雇されるケースはよほど特別な場合のみです。無断欠勤で普通解雇される場合も相当悪質なケースに限ります。そのため、2~3日の無断欠勤でクビ扱いをされても通常は不当解雇であり、雇用契約は当然には終了しません。
普通解雇や懲戒解雇が有効か無効かの判断は、最終的には裁判所が行います。そのため、普通解雇又は懲戒解雇に納得いかない場合、裁判所に訴訟提起や労働審判申立を行うことを検討しましょう。
労働審判は審理体が主導して手続を進めてくれるので個人でも取り組みやすいのが特徴ですが、企業側は弁護士を雇ってくる可能性があるので、そのような場合は弁護士と共同で裁判を進めていくことをおすすめします。
無断欠勤は社会人として許される行為ではありませんが、法律上ではすぐ普通解雇、懲戒解雇とすることができるわけではありません。
ただ、正当な理由の名愛無断欠勤をずっと続けていると普通解雇、懲戒解雇になってしまう可能性は否定できません。会社にもう行く気がない場合でも必ず退職の意思だけは伝えておくことをおすすめします。
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