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KL2020・OD・037
後遺障害等級第9級は視力の著しい低下や手足などの欠損など外傷的な障害に加え、脳神経の機能や精神に関する障害など、幅広い項目があります。全部で14段階ある後遺障害等級の中では比較的軽めの障害ですが、それまで難なく行えていた身体の動作が、困難になる程の支障があります。
後遺障害第9級の認定申請と慰謝料請求について、被害者側が知っておくべきことをまとめました。後遺障害を背負った被害者自身が損をしないよう、精神的・肉体的負担に見合った額の慰謝料を獲得するためにご確認いただければと思います。
目次
後遺障害等級では各等級に応じた労働能力喪失率が決められています。第9級の労働能力喪失率は35%で、重度の後遺障害である第1級~第3級は100%の労働能力喪失率になっています。第9級の後遺障害は下記表の通り、17種類に分かれています。
後遺障害等級 | 後遺障害 概要 | |
第9級 | 1号 | 両眼の視力が0.6以下になったもの |
2号 | 1眼の視力が0.06以下になったもの | |
3号 | 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの | |
4号 | 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの | |
5号 | 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの | |
6号 | 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの | |
7号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの | |
8号 | 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの | |
9号 | 1耳の聴力を全く失ったもの | |
10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | |
11号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | |
12号 | 1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの | |
13号 | 1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの | |
14号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの | |
15号 | 1足の足指の全部の用を廃したもの | |
16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの | |
17号 | 生殖器に著しい障害を残すもの |
後遺障害第9級に認定される症状は種類が多く、肉体的な損傷に関する事項で細かく分かれています。
交通事故が原因で両目の視力が0.6以下になった状態です。ただし、この視力は眼鏡やコンタクトレンズを着用した矯正視力であることが条件で、裸眼視力とは異なります。
片目の視力が0.06以下になった状態です。第9級1号と同じく、矯正視力であることが条件です。また、後遺障害の重さによって等級が決められますので、仮に片目が失明すれば等級が上がるようになっています。
視力とはまた別の障害で両目が半盲症、視野狭窄(きょうさく)、または視野変状を残した場合に第9級3号に該当します。
視野の右半分または左半分が見えなくなってしまう症状のことですが、見えなくなる領域に応じて更に下記の通り分類されます。
視野が半分に欠ける半盲症とは違い、視野狭窄は視野自体が狭まる症状です。下記の2種類に分類されます。
視野変状は部分的に視野が欠ける症状のことで、視界の中で島状の穴が空いて見えない部分があるような状態です。このような視覚異常は交通事故が原因で視神経に障害が残っている可能性があります。視界に違和感を覚えた時は病院へ行き、早急な検査をすることが大切です。
視野狭窄と視野変状について、簡単な図で表すと以下の通りになります。
両目のまぶたに著しい欠損がある状態です。欠損の程度としては、まぶたを閉じた際に黒目と白目を合わせた全体の眼球が隠れていない場合だと第9級4号に認定されます。また、外見への影響も出るような後遺障害なので外貌の醜状として認められる場合もあります。著しい外貌醜状だと判断されれば、上級である第7級12号で認定されます。
鼻の軟骨を全部、または大半を失ってしまい、加えて呼吸機能や嗅覚を大きく喪失した状態です。第9級4号と同様、外見に影響する後遺障害でもあるので外貌醜状の第7級12号に認定される場合もあります。
食べ物を噛む咀嚼機能と言語機能の両方に後遺症があった場合、第9級6号に該当します。
第9級6号の場合はご飯やパンなど一般的な食事は自力で可能ですが、ピーナッツやせんべいなど硬い食べ物は噛めない状態のことを指します。これより更に咀嚼機能が低下するようであれば、上位の後遺障害等級で認められます。
言語機能が失っているかどうかは、4種類の発音が可能かどうかで判断されます。第9級6号の認定条件は、『口唇音』、『歯舌音』、『口蓋音』、『咽頭音』の4種類のうち1種類の発音が出来ないことになります。
両耳の聴力が低下している状態で、具体的な数値基準は下記の通りです。
純音聴力レベルとはピー、といった単純な音を聞き取る能力であり、明瞭度は言葉を認識出来る程度といった意味合いです。
第9級7号は両耳の平均聴力を認定条件としていますが、8号の場合は右耳と左耳で聴力が偏っている状態です。聴力がより悪い方の耳であると触れるほど近くに寄らなければ大声でさえも聞こえない程度で、聴力がまだ良い方の耳でも1メートル以上離れると普通の会話が聞こえないとされています。こちらも具体的な数値基準があります。
第9級9号については片耳の聴力だけが認定条件になりますが、完全に聴力を喪失した深刻な場合に該当します。具体的な数値は90dB以上の純音聴力レベルとなります。
脳神経や精神的な後遺障害により、『服することができる労務が相当な程度に制限される』ことが第9級10号の認定条件です。症状は複数に分類されています。
脳機能の障害により、問題解決能力など自分で判断する力や作業の維持能力を失ってしまい、他者からのサポートがなければ健常者と同じ仕事に就くのが難しい状態です。
脊髄を損傷したことにより片腕または片脚に麻痺が残ってしまった状態です。歩行障害や文字を書く動作に影響が出ます。
うつ病や統合失調などを原因に、精神的な傷を負ってしまい労務が続けられなくなってしまった状態です。目に見える外傷や症状とは違い客観的な立証が難しくなりますので、医師の診断を受けて医学的に証明する必要があります。
転倒する以外の発作が数ヵ月に1回以上発生しているか、服薬によりてんかんの発作を抑えている状態のことです。うろうろと歩き回ってしまう症状も出るので、労務の継続が困難になる場合があります。
交通事故が原因で頭蓋骨に傷が残ったり血管が圧迫されたりして、習慣的な頭痛を引き起こしている状態です。
麻痺や発作など分かりやすい後遺障害もありますが、ちょっとした頭痛や精神的な苦痛など交通事故の前後で少しでも変わったことであれば、早めに病院へ行くことをおすすめします。
第9級11号は内臓等の後遺障害により労働能力を喪失した場合に該当します。部位別で認定条件を解説します。
胃の全部(または一部)を失い、著しい食事制限を受けることになった場合や食事後のめまいが生じるようであれば認定されます。胃の他にも、小腸の切除や肝硬変、すい臓の後遺障害でも第9級11号に該当します。
肺機能が低下した状態です。認定条件は第9級11号の場合、動脈血の酸素圧力が60Torr~70Torrの範囲内で、加えて動脈血の炭酸ガスの圧力が限界値(37~43Torr)範囲内であれば認められます。
心機能の低下で健常者と同レベルの身体機能が制限されてしまい、または心臓にペースメーカーをつけることになった場合に認定されます。
腎臓や膀胱に後遺障害が残った場合も第9級11号に認定される可能があります。主な認定条件としては腎臓の喪失や尿路変更術の有無となります。
よく聞く病名としては椎間板ヘルニアがありますが、第9級11号の場合は『腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニア』と呼ばれる症状が一般的な条件になっています。腹壁瘢痕ヘルニアは腹部の手術が原因で、腹腔内の臓器が腹筋の外へ飛び出してしまった状態のことです。立ち仕事を医者から止められているほど症状が酷い場合、第9級11号に認定されます。
片手の親指を含む1本の指がなくなった状態か、親指以外の2本の指がなくなった状態です。指を失ったと見なされる基準は親指ならば第1関節より先、それ以外の指であれば第2関節より先の欠損となります。また、欠損した指の本数が増えると重い後遺障害だとされて、上級に該当するようになります。
片手の親指を含む2本の指か、親指以外の3本の指の機能を失った状態です。麻痺による運動障害で指を動かせなくなった場合や、可動域が制限されている場合に該当します。具体的な認定基準は下記の通りになります。
親指を含む片足の指2本を失った状態です。この全てとは、中足指節関節(足の付け根)以上を欠損したということですが、片足の指すべてを失った場合は第8級10号に等級が上がります。
片足の指すべての機能を喪失した状態です。第9級13号と同じく機能的喪失の基準があり、以下の通りになります。
機能的喪失(用を廃した)という言い方ですが、実際は指の一部を切断したケースが多いとされています。
外見的な後遺障害である第9級16号は、顔や頭、首などの露出している部分に醜状があるケースです。相当程度という条件は第7級12号の『外貌に著しい醜状を残すもの』と区別をつけていて、5cm以上の線状の傷が顔面に残る程度が第9級16号の相当程度だとされています。
生殖器に関する後遺障害が第9級17号に該当します。交通事故により、以下のような状態になると認定されます。
後遺障害による損害に対し、自賠責保険の補償による支払額は後遺障害等級別で決められています。
後遺障害第9級の場合、自賠責保険の支払限度額は616万円です。なお、補償範囲は後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益などです。
後遺障害の残存の有無が確定する症状固定までの期間の傷害部分に関する損害賠償の場合は、一律で120万円の支払限度額となっています。補償範囲は入通院慰謝料、休業損害、治療費などです。
また、後遺障害と傷害部分のいずれの場合も支払限度を超える時は加害者側の任意保険で適用されます。
後遺障害第9級の認定を受けるためには、上記で説明した全17種類の後遺障害のいずれかに当てはまる必要があります。しかし、単独の症状に限らず第9級より下位の後遺障害について複数該当した際も、場合によっては第9級で認定される可能性があります。それを『併合認定』といい、第9級は併合認定のケースが多い等級なので、併合認定のルールをおさえておくべきでしょう。
例えば、第10級の後遺障害と第12級の後遺障害の認定を受けた場合に、併合9級が認められることになります。ですが、必ずしもこの通りにはならない例外もあります。
片目の視力が0.06以下である第9級と片目の視力が0.1以下の第10級を併合させることは、序列を乱すことになります。併合8級になった際、単独の第8級認定条件である片目の視力が0.02以下を満たしていないと(例えば実際の視力が0.05の場合)矛盾が生じますので、併合が認められない例外となります。
片腕に偽関節を残す第8級とその部位に神経症状を残す第12級の二つは症状的に派生している関係であるため、等級が上である第8級として認定され、併合7級にはなりません。
後遺障害第9級の認定条件に加えて、慰謝料の相場も被害者側が知っておくべきことです。後遺障害等級に応じて慰謝料額の程度が決まりますが、それ以外にも3種類の慰謝料基準がありますので、同じ後遺障害の等級でも慰謝料額が増えたり減ったりします。
後遺障害の慰謝料基準は『自賠責基準』と『任意保険基準』、『弁護士基準』の3つに分かれます。等級別の後遺障害慰謝料の相場は以下の通りですが、弁護士基準が最も高額になっています。
等級 | 自賠責保険基準 | 任意保険基準(推定) | 弁護士基準 |
1級 | 1,100万円 | 1,300万円 | 2,800万円 |
2級 | 958万円 | 1,120万円 | 2,400万円 |
3級 | 829万円 | 950万円 | 2,000万円 |
4級 | 712万円 | 800万円 | 1,700万円 |
5級 | 599万円 | 700万円 | 1,440万円 |
6級 | 498万円 | 600万円 | 1,220万円 |
7級 | 409万円 | 500万円 | 1,030万円 |
8級 | 324万円 | 400万円 | 830万円 |
9級 | 255万円 | 300万円 | 670万円 |
10級 | 187万円 | 200万円 | 530万円 |
11級 | 135万円 | 150万円 | 400万円 |
12級 | 93万円 | 100万円 | 280万円 |
13級 | 57万円 | 60万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
自動車損害賠償保障法によって定められている後遺障害第9級の慰謝料額は255万円です。
任意保険の場合は加害者側で加入している保険会社により基準が異なりますので一概には言えませんが、後遺障害第9級の推定額は300万円だとされています。
裁判事例を基準に妥当だと思われる慰謝料額が弁護士基準です。後遺障害第9級の場合、670万円程度が目安になります。
慰謝料額の相場を決める上では後遺障害の等級と3つの慰謝料基準だけでなく、被害者と加害者の状況も考慮されます。
被害者本人やその家族が背負う精神的苦痛の度合いで慰謝料が増額されます。例えば、被害者が一家の経済を支える主人である場合は、家族全体の被害が大きくなるため慰謝料増額の対象になります。または、未成年者が後遺障害を負う場合も、その後の苦痛な人生が若いとより長いため、相場より2割ほど慰謝料が増えるケースが考えられます。
悪質な飲酒運転や事後現場からの逃走、筋の通らない弁解など加害者側に故意や重過失が見られた場合も慰謝料額が増える理由になります。
後遺障害慰謝料の相場をお話しましたが、それ以外にも請求するべき損害賠償金はあります。特に後遺障害等級の認定申請を検討している被害者で事故前に労働している場合、必ず関わってくる損賠賠償になります。
その一つが『休業損害』です。これは交通事故後に入通院で休業した期間に得られるはずであった収入のことで、被害者は失った分の収入を補償してもらう権利があります。
自賠責基準の場合、原則として5,700円 × 休業した日数で算出されます。また、書面等で1日あたりの基礎収入額が5,700円より上回ることを証明できた場合、1日あたりの上限額である19,000円までを条件に請求が可能になります。
対して弁護士基準の場合、1日あたりの基準額は設定されていません。1日あたりの基礎収入 × 休業した日数で算出されますので、弁護士基準の方が自賠責基準よりも多額の賠償金を得られやすくなっています。後遺障害慰謝料と同じく、休業損害の場合も弁護士基準での請求をおすすめします。
後遺障害逸失(いっしつ)利益も労務に携われなくなることでの収入的な損害を補償するものですが、一時的に働けなくなった休業損害と違い、今後の将来全てに対する賠償金という考え方です。後遺障害がなかったら得られていたはずの収入を補償する後遺障害逸失利益の算出方法は下記の通りです。
算定式に入っているライプニッツ係数は被害者の就労可能年数(労働能力喪失年数)を加味した数値になっていて、基本的には被害者の年齢が若いほど大きな値となります。
被害者側の事実を正確に伝えて後遺障害の程度に見合った慰謝料を得るためには、確実な認定申請の手続きと専門家への相談が求められます。
納得がいく慰謝料を獲得するためのポイントをご紹介します。
弁護士が出てくると保険会社側は訴訟される可能性があることを理解しているので、示談の段階で弁護士基準に近い高額の慰謝料を提示してくれるようになります。
弁護士に相談するメリットやタイミングについては「交通事故で弁護士に相談すべき理由と相談にベストなタイミング」をご覧ください。
後遺障害第9級の認定を受けるための条件と後遺障害慰謝料の相場を解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
後遺障害慰謝料のほかにも後遺障害逸失利益など多くの損害賠償金を獲得したい場合、医学的な証拠を用意することと専門家による交渉が必要になると思われます。被害者自身が分からないことは、弁護士と医師に相談して解決しましょう。
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