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KL2020・OD・037
客引きとは、繁華街などで店員などが自分の店(居酒屋やカラオケ店、風俗店等)に入るよう呼び入れたり、誘うといった行為のことをいい、迷惑防止条例や風営法によって一定の規制がなされているものです。
刑法よりも条例・風営法に基づく逮捕の可能性が高いのが客引き行為になりますが、実際に逮捕に繋がるケースとそうでないケースの線引きはどのようなものになっているのでしょうか。
今回は、客引きで逮捕されたらどのような罪に問われるのか、逮捕されないためのポイントなどを交えてご紹介いたします。
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目次
客引き行為は各自治体で定められている迷惑防止条例違反によって逮捕されることがあります。迷惑防止条例は、自治体によって適用される範囲や罰則が異なるものですが、だからといって甘く見てはいけません。
迷惑防止条例を根拠に現行犯逮捕などに至る可能性も充分ありえますので(実際に、条例を適用した一斉摘発などで多数の人が逮捕されるケースが多々あります)、客引きで逮捕されるケースを知っておくのは大切かと思います。
ここでは、客引きが逮捕されるキッカケや、どういった客引きが逮捕の可能性が高いのかなどを整理していきたいと思います。
客引きが逮捕されるキッカケとなるのは、主に次のようなケースです。
特に①②の場合は警察官が関わることから、言い逃れのできない現行犯逮捕となるケースが多いため、バレてしまったら一発アウトの可能性が高いです。
他に客引きが逮捕される可能性が高いのは、客引きをしていた人(ここでは店員とします)が泥酔していたり、粗暴な態度を取っているケースや、実際に客に暴力を振るったり怪我をさせてしまったケースなどが考えられます。
また、ボッタクリ店などとして既に警察にマークされている店の客引きトラブルの場合や、何度も注意されているにもかかわらず強引な客引きを行うなどの場合にも、悪質と判断されて逮捕される可能性が高いと言えるでしょう。
悪質な客引きに該当するかどうかは各自治体の迷惑防止条例による部分が大きいですが、東京新宿区の条例では客引きに関して「客引き目的でのうろつきやたたずみ、たむろする行為」も禁止行為にあたるとしているため、こういった行為を繰り返していると逮捕される可能性が高くなると考えていただくのが良いかと思います。
具体的な事情によって違いはあるものの、客引きで逮捕されるか否かの線引きとしては、「店員(または店)が証拠を隠滅して逃げてしまうおそれがあるかどうか」も考慮事情といえるかと思います。
条例違反による逮捕では、店員と店の両方が責任を負う場合がほとんどなので、店員だけでなく店の評判や客引きの経緯なども判断材料になると考えておくのが良いでしょう。
基本的にどのような容疑で逮捕されたとしても、次のような流れで進みます。
一斉摘発などにより、もしも客引きで逮捕されてしまった場合には、速やかに弁護士をつけてもらうことが大切です。
何度も述べているように、客引きで逮捕されてしまうと、客引きした本人ばかりでなく店にも一定のペナルティがありますので、経営面でのリスクも非常に大きいものと言えます。
参照元:条例等による客引きへのペナルティ
地域 | 適用される条例等 | 客引きした従業員へのペナルティ | 店へのペナルティ |
東京都新宿区 | 新宿区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例 | 5万円以下の過料 違反者の公表など |
書類等の提出や立ち入り調査 店舗名等の公表 5万円以下の過料 |
東京都豊島区 | 豊島区客引き行為等の防止に関する条例 | 5万円以下の過料 違反者の公表など |
書類等の提出や立ち入り調査 店舗名等の公表 5万円以下の過料 |
大阪府大阪市 | 大阪市客引き行為等の適正化に関する条例 | 5万円以下の過料 違反者の公表など |
書類等の提出や立ち入り調査 店舗名等の公表 5万円以下の過料 |
愛知県名古屋市中区栄(3丁目~5丁目の一部)および錦3丁目 | 愛知県ぼったくり防止条例(特別区域) | 懲役6か月以下または50万円以下の罰則 | 違反店舗の営業停止命令・店名の公表など |
弁護士がついている場合、勾留や起訴の可能性が高い事件であっても、弁護活動次第ではそれらを避けられるケースがありますので、店の経営面なども考慮した上で、迅速な対処法を模索していただくのが良いでしょう。
いわゆる客引き行為には、大きく2つの種類があります。
ひとつは店の前で不特定多数の人に声をかけて呼び込みを行う「呼び込み」、もうひとつは適当な場所で特定の人に声をかけて店まで連れて行く「客引き」ですが、後者の客引きに関しては条例や法律で規制が設けられており、禁止される行為に該当することがあります。
まずは客引きの概要を整理してみましょう。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)では、風俗店の客引きを明文で禁止しています。
(禁止行為等)
第二十二条 風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 当該営業に関し客引きをすること。
二 当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
(略)
(引用元:風営法22条)
風俗店が客引きを行った場合、客引きをした人は6ヶ月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金(またはその両方)という重い罰が科されるため(風営法52条)、非常にリスキーな行為と言えます。
また、迷惑防止条例と呼ばれる都道府県や自治体ごとの条例では、一般に客引き行為を禁止しており、行った人や事業者へ罰金や科料などを定めています。
迷惑防止条例の名称や内容は自治体ごとに少しずつ違うのですが、例えば東京都新宿区では次のような内容の規定が置かれています。
(公共の場所における客引き行為等の禁止)
第7条 何人も、公共の場所において、客引き行為等をしてはならない。
2 何人も、金銭その他の財産上の利益を供与し、又はその供与を約束して、他人に公 共の場所における客引き行為等をさせてはならない。
(客引き行為等を用いた営業の禁止等)
第8条 飲食店等(法第2条第7項に規定する無店舗型性風俗特殊営業を除く。第3項第4項において同じ。)を営む者は、前条第1項の規定に違反する行為をした者その他の者から紹介を受けて、客引き行為等を受けた者を客として当該営業所内に立ち入らせてはならない。
(略)
(過料)
第19条 次の各号のいずれかに該当する者は、5万円以下の過料に処する。
(1) 第12条の勧告を受けた後に、特定地区において第7条又は第8条第1項の規定に違反する行為をした者
(略)
(両罰規定)
第20条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同条の過料を科する。
客引きを禁止する条例が制定されている場合、
といった順で規定が置かれることになります。また、大抵の場合で20条程度の短い条例になりますから、見出しなどを参考に、罰則等の有無を確認することがおすすめです。
さて、刑法と条例とで何が違うのか疑問に思われるかもしれませんが、刑法犯でなくとも罰則規定のある条例に違反することは犯罪になり、その結果逮捕・処罰が行われると、刑法犯と同じように前科・前歴になると考えていただければ良いでしょう。
したがって、「条例に違反しているだけでは罪にはならない」とは限らないため、客引きについては店と店員双方に充分な理解と注意が必要と言えます。
強引な客引きを行うと、条例や風営法でなく刑法を根拠に刑罰が科されるおそれがありますので、一例をご紹介いたします。
客引き中にトラブルになり、相手方に暴行したり近くの物を壊したりといった行為をしてしまうと、暴行罪(刑法208条|2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)が成立する可能性があります。
更にその行為がもとで相手に怪我を負わせれば傷害罪(刑法204条)、殺そうとする・殺してしまった場合には殺人未遂罪(刑法203条、199条)や殺人罪(刑法199条)が問題になります。
▶殺人未遂容疑で客引きの男逮捕 男性を執拗に暴行(産経ニュースより)
2016年には、新宿歌舞伎町のキャバクラ店で、客引きによって来店させた2人組の男性客へ高額な代金を請求し、1人を店内に監禁してもう1人に代金を準備するよう脅したなどとして、従業員らが逮捕された事件がありました。
監禁罪(刑法220条後段)は3月以上7年以下の懲役刑が科されますが、客引きからこういった罪に派生するケースも少なからずあります。
今年の5月には、他の店に入ろうとしていた客に対し、この店は満席だから系列店に案内するといった嘘をついて客引きを行ったケースです。
入ろうとしていた店の業務を妨害したとして偽計業務妨害罪(刑法233条後段|3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)による逮捕が初めて行われたというニュースが話題になりました。
このケースでは逮捕された男性が素直に罪を認めたため、逮捕後も比較的短時間で釈放されたようですが、客引き行為が他店の業務を妨害したと判断される可能性を明確にしたとも言えるかもしれないですね。
▶他の居酒屋「満席」うそつき客引き、業務妨害容疑で逮捕(朝日新聞より)
客引きについて、風俗店は風営法で、その他の店も一般的には条例で禁止されていることから、できるだけ行わないのがベターではあります。
しかし、やむを得ず客引きをしなければならない場合には、該当地域の条例を確認し、どういった行為が禁止されているのかを確認するほか、呼び込みで対処できないかなどを検討するのがおすすめです。
客引きによる逮捕がなされると、逮捕された人だけでなく店も営業停止処分になるなどの重いペナルティが課される自治体もありますので、軽い気持ちで行動せず、きちんと条例等を調べてから行うことを心がけましょう。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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