決して安くない弁護士費用。いざという時に備えてベンナビ弁護士保険への加入がおすすめです。
離婚、相続、労働問題、刑事事件被害、ネット誹謗中傷など、幅広い事件で弁護士費用の補償が受けられます。
【ベンナビ弁護士保険が選ばれる3のポイント】
- 保険料は1日あたり約96円
- 通算支払限度額1,000万円
- 追加保険料0円で家族も補償
保険内容について詳しく知りたい方は、WEBから資料請求してみましょう。
KL2020・OD・037
交通事故に遭った被害者がむち打ち症を負ってしまった場合、治療費などの損害賠償金だけでなく精神的苦痛に対する慰謝料を請求できるようになりますが、慰謝料の基準になる相場が定められています。
加害者側の任意保険会社と示談を進める上で、相場よりも低い額の慰謝料を提示された場合には交渉する必要があるため、被害者である自分がどれだけの慰謝料を請求できるのか、あらかじめ知っておくべきでしょう。
そこで今回は、交通事故で負ったむち打ち症で獲得できる慰謝料の相場と併せて、慰謝料額を増額するためのポイントを取り上げていきます。算定基準によって慰謝料額が大きく変わるので、確実におさえておきましょう。
目次
むち打ち症を負った被害者は、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類を請求することができますが、3種類ある算定基準によって慰謝料額が変わることについて始めに説明したいと思います。
入通院慰謝料は治療費とは別で、入院(または通院)における精神的苦痛への損害賠償金になります。基本的には通院慰謝料よりも入院慰謝料の方が高くなりますが、入通院期間が長いほど慰謝料額が増えることになるでしょう。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に認定される後遺障害を負った場合に請求できる慰謝料になります。後遺障害等級は14段階に分かれており、後遺障害の部位・程度によって後遺障害の認定条件が定められています。
【関連記事】
▶「後遺障害等級の認定基準|適切な等級に認定されるための基礎知識」
▶「後遺症と後遺障害の違い|後遺障害等級認定を受けやすくなるポイント」
入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の両方で相場が定められていますが、以下の算定基準によって相場額が変わります。
自賠責基準は最低限の補償を目的とする自賠責保険が定める算定基準であり、慰謝料額は最も低くなります。
参照元:「自賠責保険における後遺障害慰謝料の支払基準と算定方法」
任意保険基準は各保険会社が定める算定基準であり明確な相場はありませんが、目安として自賠責基準より多少高くなります。
弁護士基準は過去の裁判事例を基に定められた算定基準であり、最も慰謝料額が高くなります。ただし、誰でも弁護士基準で慰謝料請求ができる訳ではなく、専門家である弁護士による交渉がある限られます。
弁護士基準での慰謝料請求は慰謝料額を上げるためのポイントとして欠かせませんが、慰謝料増額の方法を確認する前に3種類の算定基準によって決められた慰謝料額を見ていきましょう。
まずは慰謝料の相場ですが、それぞれの算定基準に対応した算定の方法があるので以下で取り上げていきます。
自賠責基準における入通院慰謝料は、原則として1日あたり4,200円で決まっていますが、入通院日数については以下のような算定基準があります。
A:全体の治療期間(病院に通っていない自宅静養の期間も含む)
B:実質的な通院日数(入院日数+通院日数)×2
(※AとBの日数のうち、『少ない方』に4,200円をかけて算出するのが決まりです)
参照元:「交通事故慰謝料を正しく計算し適正な慰謝料を獲得する全手順」
全体の治療期間に対して実際に病院へ行った日数が極端に少ない場合を考慮し、実質的な治療日数との比較がされます。
任意保険基準の場合はあくまで目安になりますが、以下表のような算定基準になります。
《表:任意保険基準における入通院慰謝料の相場目安(万円)》
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | |
通院 | 25.2 | 50.4 | 75.6 | 95.8 | 113.4 | |
1月 | 12.6 | 37.8 | 63.0 | 85.6 | 104.7 | 120.9 |
2月 | 25.2 | 50.4 | 73.0 | 94.6 | 112.2 | 127.2 |
3月 | 37.8 | 60.4 | 82.0 | 102.0 | 118.5 | 133.5 |
4月 | 47.8 | 69.4 | 89.4 | 108.4 | 124.8 | 138.6 |
5月 | 56.8 | 76.8 | 95.8 | 114.6 | 129.9 | 143.6 |
弁護士基準の場合は通常の相場に加えて、他覚症状のないむち打ち症で適用される算定基準もあるので、併せて以下表で取り上げます。
他覚症状のないむち打ち症とは、首や頭の痛みなど自覚症状があるものの、レントゲン検査などで症状を客観的に証明することができない状態を意味します。他覚症状がないと後遺障害等級の認定が難しくなりますが、それでも後遺障害として認めてもらえるケースはあります。
※むち打ち症における後遺障害等級認定の基準については、『後遺障害第12級と第14級の違いは?』で説明します。
《弁護士基準における入通院慰謝料の相場(万円)》
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | |
通院 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | |
1月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 |
2月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 |
3月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 |
4月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 |
5月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 |
《他覚症状のないむち打ちなどで適用される入通院慰謝料の相場(万円)》
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | |
通院 | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | |
1月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 |
2月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 |
3月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 |
4月 | 67 | 95 | 119 | 136 | 152 | 165 |
5月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 |
上記の算定基準を参考に、それぞれの相場を比較した結果が以下の通りです。3つの基準の中では、裁判所基準が最も高額になります。
入通院期間 |
自賠責基準 |
任意保険基準 |
裁判所基準 |
通院:3ヵ月 |
336,000円 |
378,000円 |
530,000円 |
入院:1カ月 |
462,000円 |
604,000円 |
690,000円 |
続いて後遺障害慰謝料の相場について説明しますが、むち打ち症における後遺障害等級の認定条件にも触れていきたいと思います。
むち打ち症に関する後遺障害等級は以下表の通り、第12級と第14級の2つがありますが、むち打ち症での後遺障害等級認定の件数は多く、平成27年度の統計でも第12級と第14級の件数が高い割合であることが分かります。
《むち打ち症で認定される後遺障害等級》 |
|
後遺障害第12級13号 |
局部に頑固な神経症状を残すもの |
後遺障害第14級9号 |
局部に神経症状を残すもの |
後遺障害は症状の重さによって等級が分かれるため、より高い等級であるほど後遺障害慰謝料の額が上がり、最大で3,000万円近くなる場合もあります。
対してむち打ち症は後遺障害等級の中では軽い後遺症になり、後遺障害等級の中では最も低い第14級ではあまり期待できないと思うかもしれませんが、それでも以下の通り100万円以上の慰謝料をもらえる可能性はあります。
むち打ち症での認定に該当する後遺障害第12級と第14級の慰謝料相場を、上記でご説明した基準にまとめました。入通院慰謝料と同様に、最低限の補償である自賠責基準と比較して弁護士基準の請求では倍以上に増額されます。
《後遺障害慰謝料の相場》
認定等級 |
自賠責基準 |
任意保険基準(推定) |
弁護士基準 |
第12級 |
93万円 |
100万円 |
280万円 |
第14級 |
32万円 |
40万円 |
110万円 |
参照元:「むち打ちの後遺症で後遺障害等級認定を受けるための5つのポイント」
後遺障害第12級と第14級の違いは、病院での診断でむち打ち症が医学的に証明できるかどうかという点になります。レントゲン写真や検査でむち打ち症が確認できれば第12級として認定されますが、神経症状を画像診断で見ることができない場合も多いです。
その場合、被害者による自覚症状や通院実績など、むち打ち症を抱えていることを別の手段で証明することになります。第12級と比較して等級認定の判断が厳しくなりますが、自覚症状を正しく伝えれば第14級で認定を受けられる可能性はあるでしょう。
【関連記事】
▶「後遺障害等級12級の症状と認定基準|12級の慰謝料相場まとめ」
▶「後遺障害等級14級の症状と慰謝料|14級の認定基準まとめ」
むち打ちで慰謝料を獲得できた事例として、横浜地方裁判所で平成24年3月15日に判決が下された以下のケースを取り上げます。
被害者である27歳の男性公務員が運転中に、車線変更をした加害者側の車両に衝突されて頸椎捻挫(むち打ち症)などのケガで10カ月の通院をした後、後遺障害第14級の認定を受けました。
訴訟提起による被害者側の要求と、裁判側の判決結果は以下の通りです。後遺障害慰謝料は相場額よりも多少高い140万円で容認されましたが、労働能力喪失を原因とする収入面での損害は認められなかったため、後遺障害逸失利益は否定されました。
・後遺障害慰謝料要求額:110万円→140万円での容認
・後遺障害逸失利益要求額:212万円→支払いを否定
むち打ち症では全ての損害賠償金(慰謝料)の請求は難しいですが、被害状況を考慮して慰謝料額を多少増額してもらえる可能性はあるようです。
むち打ち症の慰謝料相場について解説しましたが、加害者側の任意保険会社と示談交渉する上で知っておくべきことを最後にまとめました。事故後の治療も含めて正しく対応することで慰謝料増額へとつながります。
【関連するQ&A】主婦が交通事故でむち打ちになったときの妥当な慰謝料金額
交通事故に遭った後は早めに病院へ行き、完治するまで治療を続けましょう。むち打ち症の通院期間目安は3ヵ月程度ですが、週2日~3日程度の通院をしないと治療の必要性があまりないケガであると見なされて、慰謝料額や治療費を下げられてしまう可能性あります。
参照元:「むち打ち症の適切な通院期間|入通院慰謝料を増額させる方法まとめ」
治療を継続してもむち打ち症が治らない場合は後遺障害の疑いがあるので、症状が良くも悪くもならない症状固定の診断を医師から受けて後遺障害等級認定の申請をする必要があります。
一つの基準として、むちうち症の症状固定時期は治療を開始してから半年以上だとされています。治療期間が短いと後遺障害であるかどうかが怪しくなり、逆に長すぎると治療を無駄にし過ぎていることが疑われるため、医師と相談して適切なタイミングで症状固定を決めるのが良いでしょう。
参照元:「症状固定で損しない方法|示談を有利に進めるために知るべき全知識」
後遺障害等級の認定申請では後遺障害診断書のほか、むち打ち症を証明する検査結果や入通院記録などの書面を準備します。後遺障害診断書の内容によって等級認定の可否が決まるため、不備のないように担当の医師に記載してもらうべきです。
参照元:「むち打ち症の診断書や後遺障害診断書の作成が必要になる理由まとめ」
慰謝料請求に関しては原則、加害者と直接交渉するのではなく加害者が加入している任意保険会社(自動車保険会社)と話し合うことになります。
その際、被害者側から請求できるのは慰謝料に限らず治療費などの実費のほか、休業損害や後遺障害逸失利益など収入の損失に関する損害賠償金の請求も場合によって可能になるため、任意保険会社の言いなりにならず正当に主張した方が良いでしょう。
参照元:「交通事故の示談金相場|示談金の一部である慰謝料額を決める基準」
慰謝料相場で説明した通り、弁護士による示談交渉で適用される弁護士基準を利用することで、慰謝料の増額が期待できます。
後遺障害の中では軽症であるむち打ち症でも、弁護士基準によって100万円単位の増額が可能になるケースもあるため、交通事故に遭ったら早めに弁護士へ相談してみることをオススメします。
参照元:「交通事故の示談交渉で弁護士に依頼するメリットとタイミング」
むち打ち症の慰謝料相場について説明しましたが、軽いケガだと思っていても後遺症になって症状が残り、今後の生活や仕事に支障が出る可能性もあります。むち打ち症だからといって安易に考えず、弁護士に依頼して慰謝料請求の交渉をしてみてはいかがでしょうか。
決して安くない弁護士費用。いざという時に備えてベンナビ弁護士保険への加入がおすすめです。
離婚、相続、労働問題、刑事事件被害、ネット誹謗中傷など、幅広い事件で弁護士費用の補償が受けられます。
【ベンナビ弁護士保険が選ばれる3のポイント】
保険内容について詳しく知りたい方は、WEBから資料請求してみましょう。
KL2020・OD・037
本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
※あなたの弁護士に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。
詳しくはあなたの弁護士の理念と信頼できる情報提供に向けた執筆体制をご覧ください。
※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。