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KL2020・OD・037
児童ポルノ(じどうぽるの)とは、18歳に満たない児童の“性交または性交類似行為、性器に触れるなどの姿態”や、“衣服の全部または一部を着けない姿態、殊更に性的な性器・性器の周辺・臀部・胸部を露出または強調されているもの”など“性欲を興奮・刺激する”写真や電磁的記録を指します。
児童ポルノは、児童ポルノ規制法(正式名称:児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)によって規制されています。
児童ポルノ規制法は児童の保護を目的として1999(平成11)年に制定、2014(平成26)年には児童ポルノの定義の明確化や単純所持に対しても罰則が設けられるなど改正されました。
2017年には人気漫画家が児童ポルノを所持していたとして逮捕され話題になりました。
この記事では、児童ポルノの定義から罰則、児童ポルノの問題点について解説していきましょう。
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目次
一般的に言われる“ポルノ”とは、“ポルノグラフィー”の略で、わいせつな写真・絵・文学などを指していますが、児童ポルノの定義は児童ポルノ規制法によって明確に定められています。
ここでは児童ポルノの定義などを解説していきましょう。
下記のようなことが、児童ポルノに該当する“児童の姿態”と定義されています。
これらを視覚で認識可能となるような方法で記録(写真、電磁的記録など)・描写されたものが児童ポルノに該当します。
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
引用元:児童ポルノ規制法 第2条の3項
児童ポルノ規制法に該当するような児童ポルノとは、一般的に児童の性的な姿態が描かれた写真や電子データ、静止画、動画などです。
法務省によりますと、全裸や下着姿、性器が見えるポーズ、胸部を強調するポーズなどの写真などが該当すると考えられるようです。
しかし例え全裸であっても親が成長記録として撮影・保管しているようなものや、思い出としての卒業アルバムなどは、“殊更に児童の性的な部位が露出されまたは強調されている”とは言えないとしています。
児童ポルノ規制法では18歳に満たない者としています。
例えば児童ポルノの所持などで、被写体が18歳未満であると知らなかった場合、犯罪の故意がなければ処罰はされないと考えられています。
なお、児童ポルノの製造を行うために性行為をすれば各自治体の青少年保護育成条例などで別途処罰される可能性があります。
児童ポルノ規制法の保護法益(※)は、児童保護を目的としています。
※保護法益(ほごほうえき) |
児童ポルノ規制法を犯す加害者の中には「何をされているのかもわからないのだから、別にいいじゃないか。」と考える人もいるかもしれません。
しかし、児童ポルノは被害者たちの人格形成に影響を及ぼすことが明確であり、声を挙げられない被害者たちの人格・精神を著しく傷つけることになります。
児童ポルノが製造・公開・流通することで児童の人権が侵害されないよう保護しているのが児童ポルノ規制法なのです。
児童ポルノには、刑事事件の時効(公訴時効)と民事事件の時効(消滅時効)があります。
児童ポルノは、所持・製造・提供した場合の公訴時効が3年、不特定多数に提供・公然と陳列した場合の公訴時効は5年です。
公訴時効とは検察が事件を起訴するための期限のことです。また児童ポルノに限りませんが、民事の損害賠償請求権の時効は3年です。
損害や加害者を知った時から3年以内であれば被害者から加害者に対して賠償請求が行われる可能性があるでしょう。
(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
引用元:民法 第714条
児童ポルノ規制法に抵触する行為が下記です。
行為 |
目的 |
罰則 |
所持 |
自己の性的好奇心を満たす目的 |
1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
提供 |
児童ポルノの提供を目的 |
3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
製造 |
3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
|
不特定もしくは多数の者への提供 公然と陳列 |
不特定もしくは多数の者への提供 公然と陳列 |
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金 あるいはその両方 |
製造 |
不特定もしくは多数の者への提供 公然と陳列 |
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金 あるいはその両方 |
“自己の性的好奇心を満たす目的”で児童ポルノを所持・保管すれば処罰対象となります。
また児童ポルノの提供や公然と陳列する目的(インターネットでの公開・拡散)での製造・所持・運搬・輸入・輸出・保管もすべて処罰されます。
以下では児童ポルノの中で議論の対象となる所持・保管の定義と、児童ポルノを製造する他にも処罰対象となる可能性のある行為と罰則についてご説明します。
児童ポルノの所持・保管は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることになるでしょう。(児童ポルノ規制法 第7条)
法務省によると、“自己の性的好奇心を満たす目的”があり、“自己の意思にもとづいて所持するに至った者”であると明らかに認められる者が処罰対象とされるようです。
人から送られてきた場合やコンピューターウィルスなどで保存されてしまったデータ自体は該当しません。
しかし、そのデータの存在を認識した上で前述したような目的で、自己の意思にもとづいて画像を保存するなど所持・保管すれば処罰される可能性があるということです。
撮影した写真を所持・保管すれば当然処罰対象となるのは明確ですが、パソコン内のデータはどこまでが“所持・保管”に当たるのか、疑問の声があがっています。
児童ポルノを製造、つまり「児童ポルノの定義」で解説したような“児童の性的な姿態”を撮影した場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金刑が科されます。(児童ポルノ規制法 第7条第4項、第5項)
また2018年2月には東京都の青少年健全育成条例でも、スマートフォンで裸などの“自撮り画像”を求める行為が禁止され、違反をすれば30万円以下の罰金が科されるよう改正されました。
【参考元】東京都|東京都青少年健全育成条例の改正「自画撮り被害」の未然防止を!
製造目的であっても、13歳未満の児童と性行為を行えば強制性交等罪に問われ5年以上の有期懲役が科されることになるでしょう。
13歳以上であっても、18歳未満と同意の上で性行為行った場合は、各自治体により定められている青少年健全育成条例違反で2年以下の懲役または100万円以下の罰金(東京都の場合)、金銭の授受があれば児童買春罪で5年以下の懲役または300万円以下の罰金といずれも重い罰則が設けられています。(児童ポルノ規制法 第4条)
【参考元】警視庁|「淫行」処罰規定
児童ポルノ規制法は2015年7月に改正され、単純所持が禁じられるなど、話題となりました。
児童をポルノの被害から守るために、罰則強化や条文が具体化されましたが、適用には疑問や問題が残ると指摘されています。
ここでは児童ポルノの問題点について解説、ご回答していきましょう。
児童ポルノには“衣服を身に着けない児童” が含まれており、例えば子ども写真を成長の記録のために撮る、保管する親まで処罰対象となるのではなくかと不安視する声がありました。
これに対し法務省では、例え全裸であっても親が成長記録として撮影・保管しているようなもの、思い出としての卒業アルバムなどは、“殊更に児童の性的な部位が露出または強調されている”とは言えないとして処罰対象にはならないとしています。
しかし実の親でも子どもの児童ポルノを製造しないとは限らず、その線引きは難しいのではないでしょうか。
パソコン内に児童ポルノを読み込んだキャッシュが残されていた場合は、単純所持とみなされるのでしょうか。
いくらパソコン内のゴミ箱に捨てられていても、キャッシュだったとしても、簡単にアクセスし閲覧可能な状態であれば、罪に問われる可能性はゼロとは言い切れません。
所持・保管は、法律では“事実上の支配下に置くこと”と解されています。いつでも閲覧可能であれば、支配下にあると考えられるかもしれません。
児童ポルノ規制法は、所持・保管を処罰対象としていますが、児童ポルノが掲載されているサイトの閲覧や視聴のみのストリーミングを行うことについては処罰対象とされていません。
これに対しても、所持・保管は罰せられ、閲覧・ストリーミングが可というのは矛盾しているように感じられます。
18歳以上であっても、発育の程度によって18歳未満に見えるように、被害者の年齢を判別することは困難なのではないかと指摘がされています。
18歳未満に見えると摘発されたとしても、被害者や被写体が特定できなければ、実年齢は判明しません。
被害者の特定以外でも、警察では “タナー法”と呼ばれる成長期の判断基準をもとに、押収した映像や写真から被害者が18歳未満であるかどうかを鑑定するようですが、 “タナー法”は完璧ではない側面もあるようです。
実在の児童の裸体写真をもとに本物そっくりに制作されたCG画像が児童ポルノにあたるとして摘発された事件では、2017年に有罪判決が下されています。
被告側は「画像は写真を参考に制作したオリジナル作品。実在の児童ではない。」と無罪を主張。
裁判では一部の画像に対し実在する児童との同一性が認められ、児童ポルノと判断されました。
しかし制作に使用された写真は古く、児童への具体的な権利侵害は想定されない、違法性は高くないとして罰金刑にとどめられました。
“児童の性的な姿態”を描いたものは児童ポルノとみなされます。
児童ポルノの単純所持が発覚する経緯には、ダウンロードしたサイトが摘発されたなどが考えられ、いつ何時警察が訪ねてくるかわかりません。
もし不本意にも所持しているのであれば、自分の支配下にはないというはっきりした状況、例えばハードディスクを初期化して物理的に破壊、その様子を記録しておくなどして廃棄しましょう。
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本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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