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KL2020・OD・037
恐喝罪(刑法249条)とは、「人を恐喝して財物を交付させた」り、「人を恐喝して財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた」ことに対する罪で、脅迫や暴行を手段として被害者の財産と自由を侵害することを処罰するものです。
恐喝罪は、身近なところだといわゆる「カツアゲ」が典型例ですが、最近も女性芸能人が逮捕されたなど、比較的イメージしやすい犯罪であり、誰にでも起こりうる犯罪のひとつです。
そこで、今回は恐喝罪について、脅迫罪との違いや未遂罪の有無、刑事と民事とで扱いの差があるのかなどをご紹介していきたいと思います。
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目次
恐喝罪とは、「人を恐喝して」「財物を交付させた」り、「財産上不法の利益を得」たり、「他人に財産上不法の利益を得させた」場合に成立する犯罪で、典型例としてはいわゆる「カツアゲ」が該当します。
(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
(引用元:刑法249条)
大雑把に言えば「人を脅すなどして」「金銭などを強請る・取得する」といった行為を処罰するのが恐喝罪ですが、未遂も罰せられる旨が規定されていることから(刑法250条)、構成要件をきちんと知っておくのは大切なことと言えます。
まずは、恐喝罪の基本的な知識を整理してみましょう。
恐喝罪が成立するための要件(構成要件)は、次の2パターンです。
1項恐喝罪 |
2項恐喝罪 |
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内容 |
人を恐喝して金銭や物などを交付させること | 人を恐喝して支払いを免れるなど財産上不法の利益を得ること |
具体例 |
カツアゲ、強請り、タカリなど |
家主を脅して家賃の支払いを猶予してもらったり、相手方が怖がるようなクレームをつけて食事代金を踏み倒すなど |
構成要件 |
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1項と2項との違いは、1項が「財物の交付」を対象としているのに対し、2項は「財産上不法の利益を得たこと・得させたこと」を対象としている点です。要は人を恐喝してモノを受け取れば1項恐喝罪、支払猶予などモノでない利益を得たら2項恐喝罪が問題になるということなので、このあたりは簡単に押さえておけば良いでしょう。
恐喝罪は「10年以下の懲役」という重い刑罰が規定されています。懲役刑を宣告された場合、執行猶予が付いていなければ刑務所に収監され、刑期を終えるまで刑務作業を行わなければなりません。
恐喝罪では「人を恐喝する」という行為が問題になるわけですが、恐喝とは「脅迫または暴行を手段として、その反抗を抑圧するに足りない程度に相手方を畏怖させる」ことを言います。
ここで言う「脅迫」は、人を畏怖させる(大いに怖がらせる)のに足りる、生命、身体、自由、財産、名誉に対する害悪の告知のことで、例えば「殺すぞ」「殴るぞ」といった直接的な表現から、「お前の秘密をバラしてやる」「俺は暴力団だ」といった間接的な表現まで幅広く含まれます。
害悪の内容に関しては、何に対する害悪かは問われず、また内容自体が不法であるか否かも問われません。そのため、警察に通報するとか裁判所に訴えるということをチラつかせて金銭を要求する行為も恐喝罪が成立する可能性があります。
また、恐喝罪における「暴行」とは、人に対する不法な有形力の行使を指しており、相手方の反抗を抑圧するまでは行かない程度のものが対象になります。
財産の交付や不法の利益を得たことについては、恐喝行為の結果として相手方から財産や利益を得たという因果関係が必要になります。
脅迫罪と恐喝罪は、どちらも「人を脅す」ことが構成要件に含まれるため、両者の区別がつきにくいという声も少なくありません。また、他にも恐喝罪と似た犯罪がいくつかありますので、ここで簡単にご紹介しておきたいと思います。
脅迫罪と恐喝罪の大きな違いとしては、脅迫したこと自体を罪とするのが脅迫罪であるのに対し、脅迫という手段を用いて財物等を得たことを罪とするのが恐喝罪という点が挙げられます。
恐喝罪と構成要件が似ている他の犯罪としては、「強要罪」「強盗罪」が挙げられます。
これらの犯罪の大まかな区別としては次の図のような考え方をしていただければ良いかと思いますが、個々の状況によって成立する犯罪も変わってくるので、実際に罪を犯してしまったり、事件に巻き込まれてしまった場合には、弁護士に具体的な状況を伝えて判断を仰ぐことが大切です。
刑事事件の被害者が加害者に対して損害賠償を求めるなどの裁判を起こすことは、刑事手続とは全く別の手続きである民事事件となります。同様に、逮捕後などに被害者と示談交渉を行うことも、厳密に言えば純然たる刑事手続きではありません。
加害者が被害者と行う示談交渉は、示談が成立すると被害者がそれ以上の賠償を請求できなくなるという民事的な側面とともに、加害者の処分や量刑を決定する際に一定の考慮がなされるという刑事的な側面を有しています。
原則として、刑事事件と民事事件は互いに干渉しあうことがない手続きではありますが、片方の結果が他方の結果に影響を及ぼす可能性はあります。
恐喝で逮捕されると、国との関係では刑事手続きが進行しますが、その過程で被害者との民事手続きが並行して進行する場合がありますので、手続きの相手方をきちんと把握して、どちらの手続きを行っているのか理解しながら進めることが大切です。
なお、「罰金・科料(刑事|国に支払うべきお金)」と「示談金・賠償金(民事|被害者に支払うべきお金)」は全く違う性質のものなので、これらに関しても混同しないようご注意ください。
刑法250条は、恐喝罪について未遂も処罰する旨を規定しています。例えば財物を交付させるつもりで恐喝を行ったものの相手方から財物を取得できずに終わった場合や、恐喝の結果相手方が不憫に思って財物を提供した場合などは、恐喝未遂罪となります。
未遂罪に留まれば罪が軽くなる可能性もありますが、恐喝罪自体が10年以下の懲役刑を規定した重い罪なので、初犯であっても執行猶予がつかない可能性は充分ありえます。したがって、もし逮捕されてしまった場合には、未遂罪だからといって安心せず、誠意を示していくことが大切です。
恐喝罪は、加害者(被告人)の自由を奪う「懲役刑」のみが規定されている重い犯罪なので、具体的な状況によっては逮捕される可能性が非常に高くなるおそれがあります。
ここでは、恐喝罪で逮捕されるケースについて、具体的な事例を踏まえてご紹介いたします。
恐喝罪の具体的な事例としては、女性芸能人が知人男性から現金を騙し取ろうとした「恐喝未遂罪」によって逮捕されたニュースが記憶に新しいかと思います。
※最終的に不起訴処分になっています。
恐喝罪は、被害者が警察に相談するなどして発覚するケースが多く、そこからの捜査によって逮捕に至ることも珍しくありません。他の犯罪のように現行犯逮捕される場合や、犯行から数日経って逮捕されることも充分ありえますので、恐喝行為がバレなかったとしても逮捕の危険が大きい犯罪と言えます。
恐喝罪で逮捕される可能性が高いのは、次の条件に当てはまるケースかと思います。
恐喝罪は比較的重い犯罪行為であるため、加害者が軽く考えて行った行為であっても逮捕に繋がる場合があります。そのため、カツアゲやタカリなどは安易に行うべきではなく、友人・知人間であっても冗談で済まされない可能性があることに充分留意していただければと思います。
一般的に、刑事事件で逮捕されると次のような流れで手続きが進んでいきます。
軽微な犯罪であれば逮捕後送検されたとしても勾留までされない可能性が高いですが、恐喝罪で逮捕されたケースでは、被疑者が罪を認めない場合や事件の内容が重大・悪質などの場合に勾留請求が許可されることは十分ありえますので、真摯な態度で向き合うことが大切と言えるでしょう。
また、恐喝罪は被害者との示談が成功するか否かによって処罰の重さが変わるケースも多いので、できるだけ早い段階から弁護士に相談し、適宜アドバイスを求めていくのがおすすめです。
恐喝罪は、未遂でも処罰されることから、逮捕されてしまった場合には極力素直な態度を心がけることが大切です。とはいえ、必要以上にへりくだって言われるがまま証言すると真意が伝わらず誤解を招くおそれもありますから、理性を保ち、冷静な対応を行うことが理想ではあります。
恐喝罪では、脅し取った金額が大きかったり、恐喝行為が悪質と判断された場合には、厳しい取り調べがなされることが予想されます。
犯した罪を認めることは大切なことですが、記憶があやふやなまま不用意な供述をしてしまったり、早く取り調べから開放されたいと思って事実と違うことを供述してしまっては本末転倒なので、1人で戦おうとせず、速やかに弁護士をつけましょう。
また、あなた自身や親族等が被害者に直接謝罪をするなどの行為は、かえって被害者が怖がったり、拒絶反応を起こす可能性がありますので、こういった謝罪をしたい場合であっても、弁護士というフラットな第三者を介したほうが良いでしょう。
刑事事件の経験豊富な弁護士であれば、被害者との示談交渉や処罰の軽減のためのノウハウを蓄積しているかと思いますので、最初についてくれた弁護士が合わないと感じた場合には、刑事事件に詳しい弁護士を探すのも良いかと思います。
恐喝罪は、カツアゲやタカリなど身近な行為・冗談のつもりでやった行為であっても充分逮捕のリスクがある犯罪なので、軽い気持ちでしつこく金銭をねだるなどの行為をすることは絶対に避けましょう。
また、相手方の受け取り方や周囲の状況でも罪に問われる可能性が大きく変わりますので、「自分ならこれくらいのことをされても大丈夫」という意識は止めておくのが無難といえます。
恐喝罪で逮捕された場合、弁護士による示談交渉の成否で処罰が左右されるケースも多いので、処罰の軽減を望むのであれば、刑事事件に詳しい弁護士を探すことをおすすめします。
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KL2020・OD・037
本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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