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KL2020・OD・037
故人の財産を相続する際、相続人として真っ先に浮かぶのが「配偶者」と「子ども」かと思いますが、誰が相続人になるのかをきちんと理解している人は少ないのではないでしょうか。
日本の民法では、相続人の順位として、①配偶者は常に相続人になること、②子ども>直系尊属>兄弟姉妹の順で順位の高いグループが相続人になることの2点を定めています(民法887条~890条)。
ここでお分かりいただけたかもしれませんが、どんなに仲良く可愛がっていた孫であっても、原則としてあなたの相続人になることはありません。
あなたの子どもがあなたよりも先に死亡したなどで相続権を失い、その時点で孫がいるのであれば、例外的に孫が子の代わりに代襲相続人となりますが、基本的には孫はあなたの相続と無関係です。
しかし、相続人でない孫には絶対に財産を残せないというわけではなく、方法次第ではきちんと孫へ遺産を渡すことができます。今回は、相続における孫の立場と、孫に遺産相続するための方法について、詳しくご紹介していきたいと思います。
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目次
冒頭で述べたように、民法上、孫は推定相続人(相続人になる予定の人)ではありません。孫が推定相続人になるケースとは、孫の親、すなわち被相続人の子が被相続人よりも先に亡くなっている場合や、孫と被相続人が生前に養子縁組を済ませていた場合だけです。
まずは、相続における孫の立場をご説明したいと思います。
相続における孫は、被相続人の「直系卑属」の一員として数えられるに留まり、相続人になる予定の人=推定相続人の中には数えられていません。
つまり、基本的に孫はあなたの相続では無関係の親族ということになります。
あなたの相続において、例外的に孫が法定相続人になるのは、「代襲相続」と「養子縁組」の場合です。
代襲相続とは、被相続人の子が相続の開始以前に死亡したとき、もしくは相続欠格・廃除に該当し、相続権を失っている場合に、その子の子(=孫)が相続権を失った子の代わりに被相続人を相続するという制度です。ただし、被相続人の直系卑属でない孫は代襲相続ができません。
相続権を失った子は実子・養子を問いませんが、代襲相続人となる孫は注意が必要で、例えば相続権を失った子が養子であった場合に、養子縁組前に生まれていた孫は直系卑属になりませんが、養子縁組後に生まれた孫は直系卑属になります。また、相続権を失った実子・養子に更に養子がいた場合も、基本的にこの養子と被相続人は法定血族関係にありませんから、代襲相続はできません。
養子縁組とは、親子でない者の間に法律上の親子関係を生じさせる制度で、通常の養子縁組(普通養子縁組)と厳格な要件を満たした場合に利用できる特別養子縁組が規定されています。
孫と養子縁組をすると、その効果として法定血族関係が生じ、孫には子どもと同じ相続権が与えられることになります。言い換えれば、血の繋がり的には孫であるものの、法律上は子どもが1人増えたという扱いになるということです。
以上が相続における孫の立場の概要ですが、ここからは孫に相続させたい場合にどのような方法があるのか、注意点とともにご紹介いたします。
遺産を孫にも残したいのであれば、シンプルに孫と養子縁組するのも方法のひとつです。
養子縁組のメリットとしては、①養子となった孫にも子と同様の権利や相続分が与えられる、②人数制限はあるものの相続税の基礎控除額の算定対象となる相続人の数が増える、③子から孫への相続時の節税につながる、といった点が考えられます。
民法上の養子縁組は、養親が養子より年上でさえあれば両者の合意ほか諸要件のもと比較的容易に縁組をなすことができますが、相続税法上は控除枠に数えられる養子の人数に制限があります。このため、単に節税になるからと安易に養子縁組するのは、親族間での争いの種にもなりかねませんので、最低限相続人間で、ある程度は縁組に対しての合意を模索しておくのが良いでしょう。
また、養子縁組によって孫は被相続人の扶養義務を負うことになり、養親の氏を称することになりますから、この点についての配慮も必要です。
孫に遺産を残したい場合、相続以外で一番簡単な方法が生前贈与の活用です。
2015年の税制改革により、祖父母から孫への教育資金の一括贈与(1,500万円まで非課税)、結婚・子育て資金の一括贈与(1,000万円まで非課税)、住宅取得等資金の一括贈与(住宅等の構造・性質により非課税額が異なる)、贈与税の特例税率の新設など、親族間の生前贈与で非常に役に立つ制度が増えました。
もちろん、コツコツと少額の暦年贈与を活用することによって相続財産自体を減らして節税につなげることもできますし、比較的早い段階から孫への贈与を考えるのであれば、生前贈与は有効な手段になります。
一括贈与の制度に関しては、使える期間や祖父母と孫の年齢に制限があることと、それぞれ所定の年齢までに使い切らないと残高に対して別途贈与税が課税されるという点に注意が必要です。また、これらの一括贈与を利用する際には、領収書の保管が必須であったり、使える額の制限があったりと少し複雑な運用になっていますので、細かな規定をよく確認しておきましょう。
なお、一括贈与制度を利用する場合には、非課税申告書の提出が必要になりますので、こちらも併せて注意しましょう。
遺贈とは、遺言による贈与のことをいい、財産の全部や○分の1などその内容を特定しないで行う「包括遺贈」と、特定の不動産や特定の債権などその内容を具体的に特定して行う「特定遺贈」の2種類があります。
遺贈の場合、被相続人の自由な意思が反映しやすく、方式としても相手方の同意は不要で遺言にその旨を示せばよいので、孫に相続させたい場合に利用しやすい制度といえるでしょう。
遺贈の場合、孫にはそれを拒む(辞退する|遺贈の放棄といいます)権利があり、必ずしも孫に希望通りの遺産が渡るという保障はありません。
また、遺留分を侵害する遺贈は権利者から減殺請求を受けた際に返還する必要がありますので、その内容には特に注意が必要です。
孫にまとまったお金を残したいのであれば、受取人を孫とする生命保険契約を締結するという手段もあります。
相続人でない孫を受取人に生命保険契約をすると、孫の相続税の税率は他の法定相続人に比べて20%高くなります(二割加算)。
また、相続人でない孫が受け取った生命保険金は「遺贈」とみなされ相続財産に含まれることになり、その全額が相続税の課税対象になる点にも注意しましょう。
ここまで話してきたように、孫は基本的に相続権がありませんから相続分も当然ありませんが、例外的に孫が相続人になる場合、その相続分は相続人としての性質に応じたものになります。
すなわち、代襲相続人なのか、養子として相続人になるのかによって、相続分の考え方が変わってきます。
孫が代襲相続人の場合、その相続分は被代襲相続人である相続権を失った被相続人の子が有していた割合を超えることはありません。
分かりやすく言えば、2人の孫が1人の子を代襲する場合、孫らは子1人分の相続分を分け合うことになるということです。その結果、被相続人の相続人が配偶者・子ども・代襲相続人の孫2人のケースでは、配偶者1/2、子ども1/4、孫はそれぞれ1/8が法定相続分になります。
もちろん、遺言によって相続分が変動する可能性はありますが、法定相続分による遺産分割がなされる場合には、1つの権利を孫の人数で分割して相続するということになります。
孫が養子として法定相続人になる場合には、その相続分は被相続人の他の実子と全く同じ割合になります。
例えば被相続人には子が2人いて、1人の孫が養子縁組した場合には、法律上は実子が3人という扱いになり、配偶者がいる場合なら1/6、子どもだけが相続人になる場合には1/3が法定相続分となります。
孫が遺産相続すること自体は珍しくありませんが、相続では最低限注意しなければならない手続きが2つありますので、最後に確認しておきましょう。
孫が遺産相続する際には、税金の申告が必要か否かについてきちんと調査・把握しなければなりません。
遺贈や代襲相続によって財産を取得した場合には相続税が、特例の一括贈与等を利用する場合には利用時の非課税申告および終了時の残額についての贈与税申告手続き等が、それぞれ問題になってきます。
遺贈で財産を取得した場合には二割加算による相続税の計算が必要になりますが、代襲相続で財産を取得した場合は控除枠を踏まえたうえで通常の税率による相続税課税がなされるため、両者を混同しないようにしましょう。
被相続人の生前に特例の一括贈与等を利用する場合には、利用開始時点で非課税申告が必要になるほか、所定の期限が来て利用が終了するときには残額に応じて贈与税の申告が必要になりますので、こちらも併せて確認するのが大切です。
不動産の相続登記自体は必ずしなければならないわけでもなく、また手続きの期限が決められているものでもありません。
しかし、相続登記をしないでいると、不動産を処分したり抵当権を設定したりといったことができないばかりか、不動産を長期間放置してしまうと知らないうちに第三者に時効取得されてしまう可能性がありますから、面倒でも早めに登記を済ませるのが吉です。
孫に遺産を渡す方法はいくつかありますが、どの方法によってもメリット・デメリットがありますので、あなたの状況に応じて適切な方法を選択できるよう、相続に強い専門家に相談するのがおすすめです。
特に、民法上の手続きや税法上の特例に関しては素人が理解するのは難しい部分もありますし、安易に自力で手続きを行って取り返しのつかないトラブルに発展するケースも珍しくありませんから、もし不安な点がある場合には、気後れせずに無料相談などを利用して専門家の意見も聞いてみてください。
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KL2020・OD・037
本記事はあなたの弁護士を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。
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