遺言書に「遺産はすべて世話をしてくれた内縁の妻に譲る」と書かれていた。 娘の相続分は認められないのか?

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あすみ法律事務所
高野倉勇樹
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遺言書に「遺産はすべて世話をしてくれた内縁の妻に譲る」と書かれていた。 娘の相続分は認められないのか?

50代女性のAさんは、遺産相続問題に頭を悩ませています。3ヶ月ほど前、80歳の父親が亡くなりました。会社を経営していたこともある父だけに、Aさんは死後遺産の受け取りを希望し、「アテに」していたのですが…。

ところが父の残した遺言書には、「内縁の妻に全てを譲る。娘にはビタ一文渡さない」と書かれていたのです。Aさんはこの事実に大きなショックを受けていまいます。

疎遠になっていたのは事実だが…

父親はAさんが20歳のときに離婚。その後、結婚はしていませんでしたが、内縁関係にある女性が存在し、一緒に暮らしていたそうです。

Aさんは父親が気まずい空気にならないよう、敢えて距離を取っていたそうで、そのうち自分にも家庭ができたため疎遠になっていました。

父親が病魔に倒れてからも、なんとなく気まずさを感じていたAさんは、面会に行かずじまい。結局、容態が急変し、帰らぬ人となってしまいます。

「遺産相続の権利がない」と告げられる

葬儀のあと、遺産相続について話し合うと、内縁の妻の代理人弁護士が遺言書を取り出し、「全て内縁の妻に譲ると書いてある。したがって、あなたに遺産相続の権利はありません」と告げられてしまいました。

身の回りの世話などをしていなかったため、内縁の妻が遺産を受け取ることは致し方ないと感じているAさんですが、じつの娘にもかかわらず全く受け取ることができないことに大きな不満を持っています。

じつの娘でも、遺言書に「受け取らせない」と書かれていたら、遺産を手にすることは不可能なのでしょうか? あすみ法律事務所の高野倉勇樹弁護士にお聞きしました。

本当に遺産を受けることはできないのか?

高野倉弁護士:「原則として、遺言は有効です。遺言に従えば、娘さんに相続分はありません。

ただし、娘さんは、遺留分侵害額請求をすることができます。平成30年の民法改正前は「遺留分減殺請求」と呼ばれていた制度です。娘さんは、遺産の2分の1について遺留分(総体的遺留分)を持ちます(民法1042条1項2号)。

娘さんの他に相続人がいないのであれば、娘さんは、遺産全体の評価額(正確には、民法1043条に基づいて算出された「遺留分を算定するための財産の価額」)の2分の1にあたる金額を遺留分侵害額として請求することができます。

また、内縁の妻Aが同意するなら、遺産分割協議によって、遺言とは異なる内容で遺産を分けることもできます(内縁の妻Aは本来相続人ではありませんが、遺言によって全財産の遺贈を受けた包括受遺者であり、民法990条によって相続人と同視されることになるので、遺産分割協議に参加する資格があります)。

なお、Aが内縁の妻とはいえず、単なる不倫相手であり、不倫関係を継続する目的で作成された遺言については、公序良俗に反し無効とされる余地があります」

弁護士に相談を
Aさんにとっては納得がいかないかもしれませんが、原則としては遺言書の内容が尊重されなければいけないようです。

「どうしても納得できない」場合は、弁護士と話し合い対応を協議することが最善策と言えそうですね。

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この記事を監修した弁護士
あすみ法律事務所
高野倉勇樹
民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする。 「お勧めの解決策や代替案を提示して皆さまが,納得できる方法を選べるところまで,しっかりとお手伝いします。」

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