遺言書が無効になる事例と無効を争う方法|絶対に避けたい失敗と対策

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
遺言書が無効になる事例と無効を争う方法|絶対に避けたい失敗と対策

故人の持ち物を整理していたら遺言が出てきた、という話は、誰にでも起こりうることです。

その証拠に、裁判所による遺言の検認数は1万6,888件(平成27年度)、公証人連合会が公表している公正証書遺言の作成件数は10万5,350件(平成28年度)となっており、近年は遺言を利用する人が増加傾向にあります。
遺言書が無効になる事例と無効を争う方法|絶対に避けたい失敗と対策

(参考:裁判所 司法統計公証人連合会

遺言書といえば、故人が「○○を誰々に相続させる」といった内容が分かりやすいかと思いますが、有効な遺言として効果を生じさせるためには、法定の方式を守って作ることが大前提です。

そこで今回は、遺言書が無効になる事例と遺言の有効無効を争う方法について、絶対に避けたい遺言作成上の失敗例を交えてご紹介いたします。

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遺言が無効になる事例

一口に遺言が無効になるといっても、遺言自体が無効なのか、それとも内容の一部が無効なのかといった点で争う方法が異なりますし、自分では無効だろうと思っていても法的には無効でないと判断されるケースも充分ありえます。

まずは、遺言が無効になる事例を具体例とともにご紹介いたします。

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そもそも遺言無効とはどういうケースを言うのか

そもそも遺言無効とは、大きく分けて3種類が考えられます。

①遺言の作成過程などに瑕疵があり遺言そのものが無効になる場合

下記の表に、遺言の作成中に方式違背が起こって無効となる事例をまとめてみました。

遺言の種類 よくある無効原因 要注意ポイント
自筆証書遺言 全文が自筆で書かれていない ワープロ等での作成や録音・録画による遺言は直ちに無効になります。
押印が抜けている 本文中の押印漏れについては、変更等の場合でなければ封筒の綴じ目の押印がある場合に限り、遺言自体が無効にならずに済むケースもあります。
作成日付が特定できない ○年○月吉日といった、日付をぼかす表現は避けましょう。もっとも、明らかにこの日であると分かるような表現であれば有効と認められる場合もあります。(例:遺言者満○歳の誕生日など)
そもそも遺言能力がなかった 15歳未満の人は有効に遺言をすることはできません。仮に法定代理人の同意があっても、満15歳未満の人は遺言ができません。被保佐人と被補助人は常に単独で遺言ができますが、成年被後見人の場合は事理を弁識する能力を一時回復した時に2名以上の意思の立ち会いの下で単独で遺言ができます(民法973条1項)。
公正証書遺言 証人が証人適格(証人になるための条件)を満たしていなかった 証人は、未成年者・推定相続人および受遺者並びにこれらの配偶者および直系血族・公証人配偶者・4親等内の親族・書記及び使用人以外の人から2名以上を選ばなければなりません。
実は証人の人数が足りていなかった
秘密証書遺言 遺言書本文に使用された印鑑と封筒にした押印の印鑑が異なっている 遺言書本文に使用した印鑑はその後も使用するため、なるべく実印を使用するのが無難です。
(証人について公正証書の場合と同様)  

また、遺言者の遺言を妨げるようなことをした相続人については、相続欠格によって相続権が剥奪されるのが基本ではありますが、相続人以外の人が遺言者をそそのかして自己に有利な遺贈をさせるというケースも少なからず存在します。

このような遺言は調停や裁判によって無効と判断される可能性がありますが、きちんと裁判所を介した手続きをしなければ、法的に無効と扱われない危険があります。

 

②遺言自体は有効に成立しており、内容に不備があってその部分が無効になる場合

遺言内容を訂正する場合にも、その方法は明確に定められており、この方式が守られているか否かによって変更後の遺言が一部無効とされる場合があります。

なお、遺言が無効となるわけではありませんが、遺言自体は法定の方式を守って作成されており、有効に成立したものであっても、遺留分が侵害されている場合、遺言により財産を取得した者が、遺留分を侵害されている相続人から、遺留分減殺請求を受ける場合があります。

例えば相続人が配偶者と子ども2人であったケースで、遺言で親友に全財産を相続させるという内容が記されていたケースでは、有効に成立した遺言であっても、配偶者と子どもの遺留分を侵害しています。そこで、配偶者や子どもが親友に対して遺留分減殺請求をすれば、遺留分の範囲で遺言が無効になります。

 

③形式的には有効に成立した遺言だが、法的効力を持たない内容しか書かれていなかった場合

民法では遺言によってできることを明確に定めており、それ以外のことをいくら遺言中に記しても、その部分については法的な効力を持たない付言事項として扱われるに過ぎません。

遺言によってできることは、大きく4つあり、相続分や遺産分割についての指定など「相続に関する事項の指定」、遺贈や信託の設定などの「相続以外での財産処分方法の指定」、後見人等の指定や認知などの「身分上の行為に関する事項の決定」、遺言執行者の指定など「遺言の執行に関する事項の決定」とされています。

そのため、単に「家族みんなで仲良く暮らしてくださいね」といった内容だけが記されている遺言書は、民法上の遺言には該当せず、単なる遺書としてメッセージを伝える機能だけを有することになります。

遺言が有効か無効かの判断ポイントとは

遺言が有効か無効かの判断ポイントですが、基本的には遺言者の「作成時の状況」、「作成過程での手続き上の問題点の有無」、「成立した遺言の内容」の3つのポイントを確認することで、ある程度判断が可能になっています。

稀に「見つけた遺言書を勝手に開封するとその遺言は無効になるのか」という質問を耳にしますが、結論から言えば、相続人等が勝手に開封した遺言書であっても、それだけで無効になることはありません。開封した相続人等に過料が科されることはあっても、基本的には遺言の有効無効にはほぼ影響がないのです。

そこで、遺言の有効無効を争いたい場合には、是非以下の観点から遺言を確認していただきたいと思います。

項目 確認のポイント
作成時の状況
  • 遺言者に遺言能力があったか(満15歳以上であるか)
  • 遺言者に精神疾患や認知症などの症状はなかったか(誰かにそそのかされていないか)
  • 自筆証書遺言の場合、遺言者に筆記能力があったか
  • 公正証書遺言の場合、証人等に不備はなかったか
作成過程での問題点の有無
  • 法定の方式に沿って作られているか
  • 遺言としての要件を満たしているか
  • 訂正などの変更があった際に、法定の方式で行われているか
成立した遺言の内容
  • 遺言としての効力を有する内容か否か
  • 遺留分への配慮がなされているか

 

よくある遺言に関するトラブル

遺言に関するトラブルの典型例は、以下のようなものです。

トラブル事例 解決手段 厄介度
遺言書を勝手に開封してしまった 速やかに家庭裁判所に検認の申し立てを行う
あると言われていた遺言書がどうしても見つからない 相続人で手分けして被相続人の持ち物を整理する(銀行等の貸金庫なども確認する)、公正証書遺言の場合は最寄りの公証人役場で遺言検索システムを利用する ★★
遺言書がないと思って遺産分割をしたのに後から遺言書が出てきた 自筆証書・秘密証書遺言の場合は検認を行い、遺言と遺産分割協議の結果のどちらに従うかを再度協議する(相続人全員の同意があれば遺言で指定された以外の分割もOK) ★★
特定の相続人ばかり財産がもらえるような、ものすごく不公平な遺言が出てきた 遺産分割協議で交渉する、遺留分等の調停を行う ★★★
相続人や親族以外の第三者に全財産を相続させる遺言が出てきた
実は隠し子がいたことが発覚した
遺言に書かれていた財産と実際に残っている財産が違う 相続財産の調査を行う、遺産分割協議で話し合う、場合によっては遺産確認の訴えを行う ★★★

遺言にまつわるトラブルにおいてやはり一番厄介なのは、相続人間での紛争のもとになる内容の遺言が出てくるというケースです。

特定の相続人だけが得をしたり、第三者への遺贈でほとんどの財産を渡してしまったり、隠し子を認知したりという内容の場合、高確率で遺産分割協議では済まずに調停や裁判にもつれ込む事態に発展します。

そして、このような遺言によって生じたトラブルの場合は、遺言自体の無効を確認するための裁判に発展する可能性が高く、解決までに長い時間を要することは珍しくありません。

こういった遺言トラブルを避けるためには、遺言者自身が相続の基礎知識を学ぶことと、遺言者や相続人が生前からそれなりに仲良く暮らしておくことが大切かもしれませんね。

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遺言を争う方法とは

遺言の無効を争う場合には、「遺言の成立や効果について争うケース」と「遺言内容について争うケース」とで手続き方法が異なります。

前者の場合は遺言自体が有効か無効かを争うことになりますので、「遺言無効確認調停・訴訟」により、後者の場合は遺言の存在自体は認めて「遺留分減殺請求」や「遺産確認の訴え」等で具体的な財産の範囲や取り分を争っていくことになるかと思います。

遺言の成立自体を争いたい場合

遺言無効確認請求について裁判所で判断してもらうためには、まずは「遺言無効確認調停」を相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所へ申し立てることになっています。

しかし、ほとんどの場合、遺言が偽造されたことや、遺言能力の有無が争いになっている場合ですから、話し合いでの解決ができないことが考えられます。このような場合には、調停を申し立てずに、いきなり遺言無効確認請求訴訟をすることができます。

「遺言無効確認訴訟」は、被相続人の最後の住所地の地方裁判所もしくは遺言執行者の住所地の地方裁判所・遺言によって利益を受ける人の住所地の地方裁判所に対して提起します。こちらは通常の裁判手続きになるうえ、独力で勝つのは非常に難しい部類の訴訟なので、あらかじめ弁護士へ相談しておくことをおすすめします。

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遺言内容の一部について争いたい場合

遺留分減殺請求を行う場合は、調停を利用せずとも話し合いなどで足りるケースもありますが、遺産の範囲を争う「遺産確認の訴え」や、話し合いおよび調停決着がつかなかった遺留分減殺についての「遺留分減殺請求訴訟」を行う場合には、それぞれ裁判手続きが必要になります。

遺産に関する紛争については、基本的には「調停前置主義」といって裁判の前に調停を利用する必要があり、遺留分に関しても話し合いで決着がつかなければ家庭裁判所での調停、その後に訴訟といった流れで進んでいくことになります。

遺産の範囲を確定するための争い方は、分割協議や調停での主張を行うほか、遺産確認訴訟という地方裁判所での裁判手続きによる方法も考えられます。なお、遺言内容の一部を争いたい場合であっても、遺言無効確認訴訟を起こさなければならないケースもありえます。

いずれにせよ、調停だけならともかく裁判所が絡む方法での争いになる場合には、早めに弁護士へ相談して、依頼せずとも自分の主張や方針を固めたりするのがコツになります。

 

遺言を作成する際の注意事項まとめ

遺言を作成する際の注意事項まとめ

遺言を作成する際の基本的なガイドラインになるのが、自筆証書遺言から秘密証書遺言までが書かれた民法968条~970条です。

自筆証書遺言の場合

968条(自筆証書遺言)

1 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

参考:民法第968条

要約すると・・・

  • 遺言者本人が全文を自筆で書く
  • 作成年月日は確実に入れる
  • 署名押印も忘れない
  • 訂正等を行う場合は所定の方法を守る(通常の二重線+印鑑での訂正後、余白部分に変更箇所を明記し、都度署名することが必要)

 

公正証書遺言の場合

969条(公正証書遺言)

公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

① 証人2人以上の立会いがあること。

② 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。

③ 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。

④ 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。

⑤ 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

参考:民法第969条

要約すると・・・

  • 証人2名は確実に選ぶ(丁度いい人がいなければ公証人役場で紹介してもらう)
  • 作成が始まったら終了まで極力席を外さない(全員が揃った状態で遺言が行われるのが原則)

 

秘密証書遺言の場合

970条(秘密証書遺言)

1 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

① 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。

② 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。

③ 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。

④ 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

参考:民法第970条

要約すると・・・

  • 原則として、自筆証書遺言の方式を守る(秘密証書遺言として無効でも自筆証書遺言として有効にできる可能性あり)
  • 使う印鑑は1種類、できれば実印に固定する(本文と封印の印鑑が異なると無効になる可能性あり)

 

注意点のまとめ

これらの条文を整理すると、普通方式の遺言方法としては、最低でも下記の内容を守らなければならないということになります。

  自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
書き方の基本
  • 全文遺言者の自筆に限られる
  • 日付、氏名、押印が必要
  • 訂正や変更は法定の方式を守る必要あり
  • 公証人が全文を筆記(本人は遺言内容を口授するのみ)
  • 遺言書作成時に遺言者・公証人・証人全員の署名押印が必要
  • ワープロやパソコン作成、代筆も可
  • 作成日付の明記が必要
  • 本文中に本人の署名押印が必要
  • 遺言書本文に使用した印鑑で封筒の綴じ目に押印が必要
  • 公証人役場で認証が必要
遺言書を書く人 遺言者本人 公証人 遺言者本人・その他の人
証人の要否 不要 2名以上 2名以上
費用 特に不要 相続財産の価額に応じて異なる(5,000円~数十万円) 手数料11,000円
遺言書の保管場所 原本:遺言者本人が保管 原本:公証人役場で保管正本:遺言者本人が保管 原本:遺言者本人が保管

また、自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合は、遺言書原本を遺言者本人の責任で保管しなければなりません。これらの遺言書は、被相続人以外の者が勝手に開封するとペナルティが科されることになりますので、封筒には「遺言書」などときちんと明記し、開封厳禁という旨を添えておくのがおすすめです。

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まとめ

いかがだったでしょうか。

遺言書にまつわるトラブルでは、遺言自体の効力を争うケースが多く、大抵の場合で泥沼の紛争にもつれ込んでいます。遺言を作成する人は年々増えていますが、作成前に基本的な知識を押さえて、場合によっては専門家に相談しながら遺言するというのが、相続人間での紛争を回避する一番の方法になるでしょう。

弁護士等の専門家は無料相談を積極的に行っているほか、相談=必ず依頼という圧力は決してかけませんので、上手にこれらを利用して納得いく遺言を作成していただけたらよいかと思います。

本記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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