失敗しない遺言書の書き方とすぐに使える文例集|正しい遺言の作り方

弁護士法人ネクスパート法律事務所
監修記事
失敗しない遺言書の書き方とすぐに使える文例集|正しい遺言の作り方

遺言書(いごんしょ、ゆいごんしょ)とは、故人が死後の財産等の用途や処分方法を指定するための文書で、法律上はいわゆる遺書と区別して扱われます。

日本では、民法が遺言の作り方や効力をきちんと規定しており、民法上の定義としては「人がその死亡後において効力を生じせしめる目的で、法定の事項について、法定の方式に従って行う、相手方のない単独の意思表示」となっています。

このため、死の直前に家族等へのメッセージなどを記すいわゆる遺書とは区別され、有効に成立した遺言書は財産処分等の場面で強力な効果を生じます。

そこで今回は、遺言の基本的な知識をお伝えするとともに、失敗しない遺言書の書き方と、遺言を作成する際に利用できる文例集をご紹介いたします。

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遺言書を書く前に知っておくべき種類

遺言書を作成する際に、まずはどの種類の遺言を作成するのかを選ばなければなりません。

実は、遺言には法定のフォーマットが何種類かあり、通常利用される「普通方式の遺言」が3種類(民法967条、968条~970条)、特殊な状況下で利用される「特別方式の遺言」が4種類(976条~979条)、それぞれ準備されています。

自筆証書遺言

遺言書を作ろうとした際に、真っ先に候補になるのが「自筆証書遺言」という、自分ですべての文章を手書きして作るタイプの遺言書で、遺言の中で最もポピュラーなものといっていいでしょう。(民法968条)。

自筆証書遺言の特徴としては、

  • フォーマットに厳密な決まりがあるわけではない
  • 全文を遺言者が自署することと
  • 作成日付・遺言者の署名押印が記されていればよい

ということで、広く利用されている典型的な遺言です。上の3つ以外の方式には厳密な決まりがなく、例えば作成の際に使う用紙や筆記具・印鑑の種類に関しては、絶対にこれを使わなければならないといったルールはありません。

ところが、自筆証書遺言の場合、この緩やかな条件がかえって裏目に出て、法律上の要件を正しく満たせず遺言書としての効力を否定されてしまうケースも少なからずあります。

公正証書遺言

普通の遺言の中で最も証明力が高く、ほとんどの場合で有効に成立するのが「公正証書遺言」(こうせいしょうしょ-いごん)です(民法969条)。

公正証書遺言は、満15歳以上の人が利用でき、公証人役場において遺言者自らが公証人に遺言の趣旨や内容を口授し、これに加えて2名以上の証人の立ち会いのもと作成する方式の遺言です。

秘密証書遺言

「秘密証書遺言」(ひみつしょうしょ-いごん)は、自筆証書遺言と公正証書遺言の中間のような性質を持つ遺言で、簡単に言えば「自分で作成した遺言書を公証人役場に持って行って公証人にその存在を証明してもらう」遺言方式です(民法970条~972条)。

遺言書の書き方

遺言書の書き方

遺言の種類が分かったところで、次は実際に遺言書を書く際の注意点などを整理してみましょう。

遺言を作ろうと考えた場合、ほとんどのケースで自筆証書遺言か公正証書遺言の二択になると思いますので、基本的にはこちらの2種類を重点的にご説明したいと思います。

準備するもの

遺言を作成するにあたり、どの作成方法を選ぶとしても準備しておいた方がよいものがあります。

それは、あなたの相続人が誰になるのかを整理したメモと、遺言に記す財産の一覧です。

なぜこれらの資料が必要になるかというと、あなたの遺言をより確実に執行するための土台になるからです。

詳しくは後述しますが、遺言は万能でなく、遺言によってできることとできないことが明確に決まっています。そのうち遺言によってもできないことが、「遺留分権利者の有する遺留分の侵害」です。遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者・子・直系尊属)に保障された最低限の遺産の取り分のことをいい、相続財産の一部については必ずこれらの人が取得できるように保障された制度です。したがって、あなたがどんな遺言を残しても、遺留分に該当する部分の財産だけは自由に処分できないという制限があります。

遺言を有効に成立させるためには、法に則った方法で作成するのはもちろんですが、内容の不備を回避するための努力も欠かせません。したがって、相続人の全体像を把握することで遺留分についても配慮し、これを侵害しない内容の遺言を作成するのが大切です。

 

①自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言を作成する際に準備するものは至ってシンプルで、「遺言本文を書く紙」と「書いた遺言を入れる封筒」、「遺言を書くための筆記具」、「本文や封緘の際に使用する印鑑等」だけです。その他に特に必要なものはありませんが、訂正の際に役に立つ定規や、押印の際に便利なゴムマットなどを準備しておいても良いでしょう。

②公正証書遺言の場合

公正証書遺言の場合、公証人役場での手続きがメインになりますので、まずはざっくりとした遺言の内容(原案)をメモします。それが終わった段階で公証人役場に連絡し、内容について相談するとともに遺言を行う日時を決めて、必要書類を揃えるという流れになります。

その後証人2名を確保し、指定された日時に公証人役場へ行って遺言を行うことになりますが、基本的には公証人役場の指示に従って書類を揃える作業がメインになるかと思います。

なお、証人になれるのは、以下の人を除いた人で、あなたにツテがない場合には公証人役場で紹介してもらうこともできます。

<証人になれない人> 民法974条
  • 未成年者
  • 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  • 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人

最低限書くべきこと

公正証書遺言の場合は公証人のチェックが入るので、自筆証書遺言の場合に最低限書くべきことを整理してみましょう。

①日付

自筆証書遺言の作成においては、作成年月日の記載が必要不可欠とされています。

作成年月日のない遺言書は無効とされ(大判大正5年6月1日)、○○年○月吉日のように年月だけで日の記載がないものも無効という判例があります(最判昭和52年11月29日)。そのため、遺言書本文には必ず作成年月日を記載するようにしましょう。

ただし、遺言者の満○歳の誕生日や、遺言者の○回目の結婚記念日というように、年月日の特定ができるような記載であれば、暦日の記載でなくても許容されます。

②氏名

自筆証書遺言では、遺言者自らが全文を自筆で作成したという事実が何よりも重要な意味を持ちます。したがって、氏名の記載は確実に行う必要があり、同一性が示せるのであれば、芸名やペンネームでの記載も許容されることになりますが、単なるあだ名や作成中に思い付いた愛称などを記載するのはおすすめできません。もしどうしてもこのような呼称を用いたいのであれば、○○こと○○というように、きちんと氏名も併記するのがおすすめです。

③押印

先述のとおり、自筆証書遺言にする押印は、実印・認印・拇印のどれを利用して行ってもよいとされています。

ただし、最低限忘れずに押していただきたいのが「遺言書本文の入れられた封筒の綴じ目」です。もちろん遺言書本文の自署名下に押印があるのが望ましいのですが、封筒の綴じ目に押印があれば、本文に押印がなくても直ちに遺言が無効とされることはありません。

作成前の注意点

それぞれの遺言に共通する作成前の注意点としては、何人かで共同して遺言を行うことはできないのが原則という点が挙げられます。

遺言は遺言者単独の意思によって行われる必要があり、遺言者の最後の自由な意思を確保して遺言の撤回や変更が容易にできるよう、共同遺言は原則として禁止されています。

ただし、同じ用紙に全く独立の数名分の自筆証書遺言が記載されている場合や、2通の自筆証書遺言が同じ封筒に入れられている場合などは、共同遺言にあたらないとされており、わざと氏名を自署しない方式違背があるなどのケースでは共同遺言と判断されることになります。

そして、各遺言で作成前に必ず注意すべき点は、以下のとおりです。

 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
 全文を遺言者が必ず自筆で書くこと 証人2名が証人資格を有していること  自筆証書遺言・公正証書遺言それぞれの注意点を参照

なお、秘密証書遺言については、自筆証書遺言と公正証書遺言それぞれの注意事項を参照していただければよいかと思いますが、自筆証書遺言と異なりパソコンやワープロでの作成も認められている反面、それらを利用して作成した後でもし書式に不備があれば遺言自体が無効になってしまうので、基本的には自筆証書遺言と同様の作り方をすることをおすすめします。

遺言書の構成とすぐに使える文例集

遺言書の構成とすぐに使える文例集

公正証書遺言の場合は、公証人と相談して遺言の構成等を決定することができるので、ここからは自筆証書遺言(および秘密証書遺言)を作成する際の構成のポイントと文例集をご紹介いたします。

遺言書の構成

自筆証書遺言の構成では、最初にどの順番で遺言を書いていくかを決定するのがおすすめです。

つまり、「相続人ごとに相続させたい財産を列挙していく」形にするのか、「財産ごとに相続させたい相続人やその取り分を列挙していく」形にするのかを、初めに決めてしまうのです。

構成例:

  相続人ごとに相続させたい財産を列挙 財産ごとに相続させたい人を列挙
財産の内容を指定して相続させたい場合 1.配偶者 アシロ花子
  • 自宅不動産 持分1/2
  • ○○銀行△△口座の○○円
 
2.長男 アシロ一郎
  • 自宅不動産 持分1/2
  • ○○証券会社 ○○の株 △株
1.自宅不動産
  • 配偶者 アシロ花子 持分1/2
  • 長男 アシロ一郎 持分1/2
 
2.定期預金(○○銀行・預金番号○○○○・△円)
  • 配偶者 アシロ花子
 
3.○○証券会社 ○○株
  • 長男 アシロ一郎
財産の内容を特に指定せず、割合だけ決めておきたい場合 1.配偶者 アシロ花子
  • 相続財産の1/2
 
2.長男 アシロ一郎
  • 相続財産の1/2
1.相続財産の2/3
  • 配偶者 アシロ花子
 
2.相続財産の1/6
  • 長男 アシロ一郎
 
3.相続財産の1/6
  • 孫 アシロ太郎

自筆証書遺言の場合は書式に決まりがないので、どのように書いても問題はないのですが、相続人ごとに項を分けるのか、財産ごとに項を分けるのかを最初に決めることで、遺言内での矛盾抵触を回避することができますし、作成途中に内容を確認する際にもスッキリとしていて見やすいというメリットがあります。

すぐに使える文例集

自筆証書遺言を書き始める際には、冒頭および文末を以下のように組み立てると内容の不備をある程度避けられます。

 

遺言書の書き始め方

 

遺言書

 遺言者アシロ太郎は、次のように遺言する。

(本文)

タイトルを遺言書としたうえで、初めに「遺言者〇〇は、次のように遺言する。」という一文を入れることで、誰のどういった文書なのかを明示します。

 

遺言書の結び方

(文末)

 
○年○月○日
遺言者 アシロ太郎 印
住所 東京都新宿西新宿7-7-△△
 

本文を書き終わったら、必ず作成日時を記入します。

その後、遺言者の氏名押印と、住所を記載しておくと、自筆証書遺言としての最低限の体裁を守ることができます。

 

文例集

それでは、実際にどのような文章で遺言を組み立てるのが良いのか、詳しく見てみましょう。

ケース1:財産の内容を指定し、相続人ごとに相続させたい財産を列挙していく形式
構成 文例
1.配偶者 アシロ花子
  • 自宅不動産 持分1/2
  • ○○銀行普通口座△△の○○円
1.配偶者 アシロ花子(昭和○○年○月○日生)に以下の財産を相続させる。(1)不動産
土地
所在:東京都新宿西新宿7-7-△△
地番:
地目:宅地
地積:
持分2分の1
建物
所在:東京都新宿西新宿7-7-△△
家屋番号:△△
種類:居宅
構造:
床面積:1階○○㎡
2階○○㎡
持分2分の1
(2)遺言者名義の預金債権等
○○銀行普通口座△△ ○○円
2.長男 アシロ一郎
  • 自宅不動産 持分1/2
  • ○○証券会社 ○○の株 △株
2.長男 アシロ一郎(昭和△△年△月△日生)に以下の財産を相続させる。(1)不動産
土地
所在:東京都新宿西新宿7-7-△△
地番:
地目:宅地
地積:
持分2分の1
建物
所在:東京都新宿西新宿7-7-△△
家屋番号:△△
種類:居宅
構造:
床面積:1階○○㎡
2階○○㎡
持分2分の1
(2)遺言者名義の有価証券
○○証券会社△△支店 ○○会社の株式 △株

 

ケース2:財産の内容を指定し、財産ごとに相続させたい相続人を列挙していく形式
構成 文例
1.自宅不動産
  • 配偶者 アシロ花子 持分1/2
  • 長男 アシロ一郎 持分1/2
1.以下の不動産を、配偶者 アシロ花子(昭和○○年○月○日生)と長男 アシロ一郎(昭和△△年△月△日生)に、各持分2分の1の割合で相続させる。(1)土地
所在:東京都新宿西新宿7-7-△△
地番:
地目:宅地
地積:
(2)建物
所在:東京都新宿西新宿7-7-△△
家屋番号:△△
種類:居宅
構造:
床面積:1階○○㎡
2階○○㎡
2.定期預金(○○銀行△△支店のものすべて)
  • 配偶者 アシロ花子
2.○○銀行△△支店に有する定期預金のすべてを、配偶者 アシロ花子に相続させる。○○銀行△△支店 口座番号×××××
定期番号 ○○○○
同  上 △△△△
3.○○証券会社△△支店の株式すべて
  • 長男 アシロ一郎
3.○○証券会社△△支店に有する株式のすべてを、長男 アシロ一郎に相続させる。○○証券会社△△支店 預託
○○株式会社 △株
□□商事   ○株
株式会社△△ ×株

 

★ケース1・ケース2のポイント:
  • 相続人等を特定するため、氏名と生年月日を最初に登場する部分で記載しておくと良いでしょう。
  • 不動産を相続させたい場合には、最新の登記簿謄本を取得し、内容をきちんと明記します。登記簿通りの記載でないと、その後の相続登記の際に支障をきたす場合がありますので、面倒でも確認しながら正しく記載して行きましょう。また、所有権以外の権利の相続の場合は、その旨(例:遺言者の持分○分の○、など)を記載します。
  • 預金債権等を相続させたい場合には、どこの銀行のどんな口座(普通・当座・総合・定期など)で、口座番号は何なのか、金額はいくらなのかを明記します。定期預金などの場合は、その番号も書いておきます(例:定期預金番号○○、など)。A銀行はXに、B銀行はYに、それぞれ相続させたい場合には、「A銀行の遺言者名義口座の預金債権すべて」といったような記載でも良いのですが、こちらの場合でも、残高はともかく口座種別や口座番号は記載しておきましょう。
  • 有価証券(株式)の相続の場合も、どこの証券会社に預けてあるどこの会社の株で、何株を相続させるのかを明記します。すべての株を特定の誰かに相続させたい場合には、「○○証券会社△△支店に有する遺言者名義の株式すべて」という記載でもOKですが、最低限どこの証券会社のどこの支店に預託してあるのかは明記しましょう。

 

ケース3:財産の内容を指定せず、割合だけを決めて相続させたい場合
構成 文例
1.配偶者 アシロ花子
  • 相続財産の3/4
 
2.長男 アシロ一郎
  • 相続財産の1/4
【完全に相続割合だけを指定する場合】1.遺言者の有する一切の権利・財産を、以下の割合で相続させる。
配偶者 アシロ花子(昭和○○年○月○日生) 4分の3
長男  アシロ一郎(昭和△△年△月△日生) 4分の1
 
【財産ごとに相続する相続人を列挙していく方式】※今回は不動産が財産の3/4相当、預金債権が財産の1/4相当であるというケースで考えます。
1.以下の不動産を、配偶者 アシロ花子(昭和○○年○月○日生)に相続させる。
(1)土地
所在:東京都新宿西新宿7-7-△△
地番:
地目:宅地
地積:
(2)建物
所在:東京都新宿西新宿7-7-△△
家屋番号:△△
種類:居宅
構造:
床面積:1階○○㎡
2階○○㎡
2.○○銀行△△支店に有する定期預金のすべてにつき、アシロ一郎に相続させる。
★ポイント
  • 財産ごとに個別の割合を指定したい場合には、「どの財産につき誰にどういった割合で相続させるのか」を意識して記載しましょう。
その他の財産の記載方法
概要 文例 ポイント
○○以外の財産を相続させたい場合 ○○を除くすべての財産を○○に相続させる。 割合を指定する場合には「○○を除くすべての財産につき、○○に△分の△、△△に×分の×割合で相続させる」といった文例になります。
自動車を相続させたい場合 以下の自動車につき、○○に相続させる。登録番号:
種別:
用途:
車名:
型式:
車体番号:
自動車の相続の場合も、車検証等を確認しながら登録番号等を正しく記載します。
非上場の株式を相続させたい場合 以下の株式につき、○○に相続させる。社名:A株式会社
本店所在地 東京都新宿西新宿○-○
代表者   △△
券種:普通株式
記号:
番号:
非上場株式の場合は、社名および本店所在地・代表者氏名を記載するのが一般的です。また、株式の種類も特定し、記号番号も漏れなく記入します。
動産等の相続
  • 以下の絵画につき、○○に相続させる。
作品名:
作者 :
サイズ:
 
  • 以下の貴金属につき、○○に相続させる。
○○の婚約指輪
材質:プラチナ、ダイヤモンド0.5カラット
動産等の相続は、誰が見ても対象物が分かるように特徴や材質を記載するのが一般的です。
遺言執行者の指定 この遺言の執行者につき、下記の者を指定する。アシロ 甲太(弁護士)
住所:東京都新宿西新宿A-B-C
アシロ弁護士事務所
遺言執行者は未成年および破産者以外であれば誰でも選任できますので、あらかじめ指定しておくとスムーズです。

 

自筆証書遺言の訂正方法

自筆証書遺言の訂正の際には、2種類の方法があります。すなわち、民法968条2項所定の方法で同じ遺言内で訂正等を行う方法と、全く別の遺言書を作り直してしまう方法です。

 

(1)加筆・修正・削除等の変更を同じ遺言内で行う方法(民法968条2項)

自筆証書遺言の内容を変更したい場合には、以下の方法で行います。

①変更場所の指示方法と実際の変更 削除したい場合 該当箇所に二重線を引き、遺言書に使う印鑑と同じ印鑑で二重線に印を押す
加筆・修正したい場合 { などを利用し、加筆の場合は加えたい文言を追加し押印する。修正の場合は二重線で該当箇所を消してから修正内容を記載し押印する。
②変更した旨の付記 遺言書の余白部分に遺言書のどこを変更したのかを付記し、署名する 何行目の○○(△字などでも可)を削除、何行目の○○を訂正、何行目に○○加入といったように、どこを変更したかを具体的に明記する。○○を○○に訂正、といった方法でも良いが、△字訂正といったように文字数も特定する方法が一般的。
③最終確認 変更箇所すべてを一度確認しておく
  • 変更箇所が明白にわかるか
  • 印鑑間違い、押印もれはないか
  • 付記の際に署名を忘れていないか
  • 付記部分の内容が変更と整合しているか

この方法を守らないと変更についての効力を生じないため、自筆証書遺言の変更の際には細心の注意を払いましょう。

 

(2)新たな遺言を作り、前の遺言を変更する方法

遺言の訂正等を行う際に、あまりにも変更箇所が多い場合は、新しい遺言を作り直して前の遺言の内容を変更・撤回することが可能です(民法1022条)。

原則として、遺言は作成日付の新しいものが優先されることになりますから、前の遺言と異なる部分については後の遺言が有効であるとみなされることになります。

前の遺言と後の遺言が抵触する場合の扱い 抵触する部分については前の遺言が撤回されたとみなされる(1023条1項)
遺言者が遺言内容と抵触する生前贈与等を行った場合 遺言の後になされた生前贈与等が優先される(1023条2項)
遺言者が故意に遺言書を破棄した場合 前の自筆証書遺言を破棄したり、遺贈の目的物を破棄した場合には、破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされる(1024条)

遺言の撤回を更に撤回するということも可能なように思えますが、遺言者の意思が不明になることや混乱の元になるため、この場合は最初の遺言は復活せず、遺言がなかったことにされるので注意しましょう(1025条)。

なお、公正証書遺言を後から自筆証書遺言で撤回すること(その逆など)も可能です。

遺言の効力とは

遺言の効力とは

遺言書の効力は、遺言者の死亡時から生じます。そのため、遺言者の死亡と同時に、受遺者は当然に特定遺贈の目的物についての権利を取得しますが、遺言による死後認知の効力は、死亡前に遡って発生することになります。

なお、以下に遺言によってできることをまとめてみましたので、こちらも併せて参考にしていただくと良いかと思います。

【関連するQ&A】
遺言書の効力と遺留分について
遺言書と遺留分、優先されるのはどちら?

遺言によってできること

民法上、遺言によってできることは明確に規定されており、それ以外のことを遺言書に書いたとしても、法的な効力を持たないということがあります。

遺言によってできることは、大きく下記の4つです。

①相続に関する事項を指定すること

遺言では、遺産分割や相続分についての指定が可能になっています。○○は誰々に相続させる、といったものがこれに該当する内容になります。

また、一定の法定相続人は遺留分という最低限の遺産の取り分の権利を有しますが、この権利を行使する際に、どの財産から回収していくのかといったことも指定が可能になっていますし(1034条ただし書き)、相続人の廃除や廃除の取り消しも遺言で行うことができます。

 

②相続以外の遺産の処分に関する事項を指定すること

遺言では、遺贈や信託の設定といったことができます。遺贈に関しては生前行為でも可能ですが、相続人以外の人に財産を与える場合に、遺言によって遺贈するケースも多く見られます。

 

③身分上の行為に関する事項を定めること

後見人等の指定に関する事項や、認知をすることができます。先に述べたように、認知の効力は生前に遡って発生することになる結果、認知された子は相続人として相続に関わることになります。

 

④遺言の執行に関する事項を定めること

遺言執行者の指定等が遺言でも可能になっています。

 

法的な効力を持たないが、遺言書に書かれることが多いこと|付言事項

「家族仲良く暮らしてください」というように、法的な効力は持たないものの、遺言者の意思やメッセージを遺言書に記載するケースがよくあります。これらの言葉は「付言事項」と呼ばれ、書かれているからと言って守らなければならない部分にはなりません。

しかし、あなたの意思を汲んで相続人等が行動してくれる場合もありますので、「なぜこのような遺言をしたのか」「遺言内容の理由」などを具体的に記載しておいて損をすることはないでしょう。

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遺言が無効になる場合と無効を争う方法

遺言が無効になる場合と無効を争う方法

遺言は、法定の方式に従ってなされていない場合には、容赦なく無効として扱われてしまう可能性が非常に高いものです。

ここでは、遺言が無効になるケースと遺言の無効を争う方法についてご紹介しましょう。

遺言が無効になるケースとは

遺言が無効になるケースの多くは、法定の方式を守っていない方式違背の場合と、相続人等が不当に関与したり遺言者自身の遺言能力がない場合といえます。

①方式違背

  • 自筆証書遺言が自筆でなくワープロ等で作成されていた
  • 日付や押印が抜けていた
  • 公正証書遺言等で証人の数が足りなかった、または証人になれない人が混ざっていた

②遺言者の真摯な意思でない遺言がなされた場合

遺言者の遺言を妨げるようなことをした相続人については、相続欠格によって相続権が剥奪されるのが基本ではありますが、相続人以外の人が遺言者をそそのかして自己に有利な遺贈をさせるというケースも少なからず存在します。

このような場合は、あなたの相続権を守るためにも、遺言の無効を争うことを視野に入れなければならないでしょう。

 

遺言の無効を争う方法

遺言の無効を争う場合には、「遺言の成立や効果について争うケース」と「遺言内容について争うケース」とで手続き方法が異なります。

前者の場合は遺言自体が有効か無効かを争うことになりますので、「遺言無効確認調停・訴訟」により、後者の場合は遺言の存在自体は認めて「遺留分減殺請求」や「遺産確認の訴え」等で具体的な財産の範囲や取り分を争っていくことになるかと思います。

遺言の作成にかかる費用相場

遺言の作成にかかる費用相場

ここまでご覧いただいた中で、やはり気になるのが費用の面かと思います。

そこで、ここでは遺言の作成にかかる費用と、遺言によって死後にかかる費用が変動するかについて一覧表を作成してみました。

  自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成の際にかかる費用
  • 特になし(家にあるペンや用紙・封筒で問題なし)
  • 遺言作成キットなどを利用する場合は数千円
  • 公証人役場での手続費用
  • 遺言書に書かれた財産の価額によって異なり、5,000円~数万円まで一般的に高額になる
  • 公正証書遺言の謄本の発行手数料:1枚あたり250円
  • 証人を公証役場で紹介してもらった場合の日当:6,000円~7,000円程度
  • 公証人による自宅や病院などへの出張費:日当20,000円
  • 交通費、輸送料実費など
  • 公証人役場での手続費用:11,000円
  • その他自筆証書遺言を参考
死後(執行)の際にかかる費用
  • 裁判所での検認費用:1通につき800円+連絡用の切手代
  • 検認済証明書の発行費用:遺言書1通につき150円
  • 特になし
  • 裁判所での検認費用:1通につき800円+連絡用の切手代
  • 検認済証明書の発行費用:遺言書1通につき150円

 

遺言を確実に執行したい場合に頼れる専門家

遺言を確実に執行したい場合に頼れる専門家

遺言の作成は実は少し難しく、所定の方式を守って作成された遺言でなければその効力が発揮されないということはお分かりいただけたでしょうか。

普段から家族仲がよく、相続も時間をかけて綿密に準備してきた家庭であれば、多少遺言に不備があっても相続がうまくいく可能性が高いですが、円滑な相続およびあなたの意思を確実に反映させるためには、やはり専門家に相談するのがベターかとは思います。

最後に、遺言を確実に執行したい場合に頼れる専門家と、その費用(報酬)相場をご紹介いたします。

弁護士

遺言の作成から執行、相続人間での紛争予防まで、ありとあらゆる相続問題の相談ができるのが弁護士です。

弁護士の最大のメリットは「法律のプロ」である点に尽きるでしょう。また、弁護士が遺言執行者となることで、相続人間での争いの抑止力になることも期待できます。

ただし、遺言執行者を依頼した際の報酬はやや高めになる傾向があり、多くの事務所で相続財産の1~3%ほどで設定されています。

 

司法書士

司法書士も民事系に特化した「法律のプロ」の一員なので、こちらを遺言執行者の候補にされる方も多いのではないでしょうか。

司法書士のメリットは、弁護士よりも報酬が安い傾向にあることと、相続不動産に関する業務が得意である事務所が多いという点です。

こちらの費用相場としては、30万円~相続財産の1%ほどを報酬に設定している事務所が多いですが、もし生前に相続人廃除など裁判所での手続きを利用する可能性がある場合は、すべての手続を代理してもらえる弁護士の方が適任かもしれません。

 

税理士

遺言を考えるにあたり、遺産分割の税金面からのアドバイスが期待できるのが税理士です。

税理士の遺言執行者報酬の相場としては、相続財産の価額に応じて10万円~数十万円という事務所が多いです。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。

相続の際に遺言書が出てくるといった事例は珍しいものではなく、また遺言自体が無効とされてしまう事例も珍しくありません。

無効にならない遺言書を作成するためには、遺言についての正しい知識と、相続に関するある程度の知識を蓄えてから作成に取りかかるのが一番の方法になります。

折角遺言を準備しても、不備があって無効になってしまっては目も当てられませんから、どの遺言を利用する場合であれ、専門家の無料相談等を利用してアドバイスをもらっておくのが良いかもしれませんね。

本記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。

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この記事を監修した法律事務所
弁護士法人ネクスパート法律事務所
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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