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KL2020・OD・037
上司に妊娠を報告したら数日後に解雇された、いきなり労働契約を更新してもらえなくなったという場合は企業に解雇無効の交渉をすることができます。
今回は妊娠による解雇を無効にする方法と、解雇を言い渡されないための予防策についてご紹介します。
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目次
上司に妊娠を報告したら「業務上の理由で…」など不明確な理由で即日解雇されてしまったという場合は、解雇が無効になる可能性が高いでしょう。妊娠を理由とした女性労働者の解雇は無効とされているため、他に理由がなければ解雇することはできないのです。
また、妊娠による降格・減給・解雇(雇い止め)や嫌がらせは「マタハラ」にあたるので、マタハラとして相談窓口を利用することもできます。
妊娠を理由とした解雇は男女雇用機会均等法で無効とされています。退職理由が「妊娠をしたこと」でなかったとしても、上司に妊娠を報告した翌週に解雇を言い渡されたなど、妊娠がきっかけと思われる解雇は違法とされています。
第九条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項 の規定による休業を請求し、又は同項 若しくは同条第二項 の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
引用元:男女雇用機会均等法
妊娠したことのみを理由とする解雇は法律上許されません。このような場合、労働者側は解雇の効力を否定しつつ、解雇期間中に支払われなかった賃金を請求することができます。
以下、このような解雇に対する対象方法を解説します。
妊娠を理由とした解雇は、男女雇用機会均等法に違反する行為です。もしもあなたが妊娠中に解雇に遭った場合は解雇を無効にするため交渉をしていきましょう。
妊娠を理由とした解雇はマタハラにあたるので、解雇の無効を書面で交渉することができます。会社に妊娠による解雇の無効書面で交渉する際は、書面を内容証明郵便で送ることをおすすめします。
内容証明郵便とは、郵便局が送った書面の内容を証明してくれるサービスです。これにより企業との間で「言った・言わない」などのトラブルを防ぐことができます。
企業に書面を送ったのに応じなかったと言う場合は、妊娠による解雇をマタハラとして労働基準監督署に相談しましょう。労働基準監督署に相談する際は、「9月4日に妊娠報告をしたところ、同月15日に解雇を言い渡された」など解雇が妊娠をきっかけとしたものであることを整理して説明すると良いでしょう。
労働基準監督署は、労働者から相談があると内容によって会社に調査に入ったり、指導や解決のためのあっせんなどを行います。
妊娠による解雇を労働基準監督署に相談しても取り合ってもらえなかったと言う場合は、妊娠による解雇の無効を労働審判で訴えましょう。労働審判とは、労働問題を専門とする審判員2名と審判官1名が問題解決のための判断を下す制度のことです。
労働審判での判決に納得がいかないなどの場合は民事訴訟に移ります。民事訴訟では、妊娠による解雇の無効や慰謝料の請求などを行うことができます。妊娠による解雇に関して訴訟を起こす場合は、弁護士の力が必要不可欠になります。
妊娠している女性労働者を、妊娠を理由に解雇することは違法です。しかし、解雇などの不利益に対して労働者が合意している場合や業務に重要な支障が出る場合等には不利益扱いをすることが認められる場合があります。この項目でお伝えする内容は会社側が妊娠解雇の際に「言い訳」として用いる場合もあるので、注意しましょう。
妊娠中、身体に負担がかかってきたら業務を軽易なものに転換することができます。その際、軽易な業務に転換するために、降格させるという場合があります。このように、不利益な扱いが労働者と会社の間で合意が取れている場合は、妊娠を理由に降格・減給・解雇(雇い止め)をすることができるのです。
なお、労働者が拒否をした場合は合意になっていないので違法になります。
男女雇用機会均等法では妊娠、出産などをした女性労働者の退職や解雇について以下のように定めています。
第九条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
引用元:男女雇用機会均等法
会社が解雇を「妊娠が理由ではない」と証明した場合は、妊娠をしている女性であっても解雇される場合があります。
労働基準法は、妊産婦に対して複数の保護規定を置いています。
それぞれ法律上で保護されている内容について確認していきましょう。
妊娠中の女性に重い荷物を取り扱わせたり、有毒ガスが発散する場所等での業務を行わせることを制限されています。
もし上記のような労働環境での就業している場合は、早急に職場環境の変更を申し出ることをお勧めします。
3 使用者は、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性(以下「妊
産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。
2 前項の規定は、同項に規定する業務のうち女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務につき、厚生労働省令で、妊産婦以外の女性に関して、準用することができる。
3 前2項に規定する業務の範囲及びこれらの規定によりこれらの業務に就かせてはならない者の範囲は、厚生労働省令で定める。
引用元:労働基準法第64条
企業には、出産予定を控える労働者が休業を請求した場合に、応じる義務があります。
また、産後8週間を経過していない労働者を就業させることも医師の許可なしでは出来ません。
1 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
2 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。引用元:労働基準法第65条1,2項
妊娠中の女性が、企業側に軽作業の業務内容への変更を請求した場合に企業は応じる必要があります。
例えば、妊娠中の労働者が重い荷物を運ぶような業務から事務仕事等への変更を請求した場合は、応じなければならないということです。
3 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
引用元:労働基準法第65条3項
妊娠中の労働者が定時での業務終了を請求した場合に、企業は1日8時間以上の労働時間を超えて労働させることはできません。
他にも妊娠中の労働者から要請があれば、休日出勤や、深夜行業を企業が指示することが禁止されています。
1 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第32条の2第1項、第32条の4第1項及び第32条の5第1項の規定にかかわらず、1週間について第32条第1項の労働時間、1日について同条第2項の労働時間を超えて労働させてはならない。
2 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第33条第1項及び第3項並びに第36条第1項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。
3 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。引用元:労働基準法66条
生後1年未満の幼児を育てる女性労働者は、通常労働者に認められている1時間の休憩時間以外に、1日に2回それぞれ最低30分以上育児をのための時間を企業に請求することが出来ます。
1 生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
2 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない
引用元:労働基準法第67条
労働基準法以外にも、雇用機会均等法や育児・介護休業法等により、妊産婦である労働者の保護が定められています。
冒頭で挙げた、妊娠を理由とする解雇も育児・介護法で禁止されています。
(不利益取扱いの禁止)
第十条 事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。引用元:育児・介護休業法第10条
妊娠中の労働者は妊娠週数に応じて、保健指導や健康診査を受けるための時間を確保することが出来ます。
(妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置)
第十二条 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならない。
なお、上記規定を受けて雇用機会均等法施行規則2条の3は以下のとおり定めています。
一 当該女性労働者が妊娠中である場合にあつては、次の表の上欄に掲げる妊娠週数の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる期間内ごとに一回、当該必要な時間を確保することができるようにすること。ただし、医師又は助産師がこれと異なる指示をしたときは、その指示するところにより、当該必要な時間を確保することができるようにすること。
妊娠週数 期間
妊娠23週まで 4週
妊娠24週から35週まで 2週
妊娠36週から出産まで 1週
ニ 当該女性労働者が出産後1年以内である場合にあっては、医師又は助産師が保健指導又は健康診査を受けることを指示したときは、その支持するところにより、当該必要な時間を確保することができるようにすること。引用元:雇用機会均等法第12条
本来、子供を授かることは喜ばしいことですよね。しかし、妊娠をすると体調が安定しない、身体や胎児に負担がかかることができなくなるなど、業務に一定の支障が出てくることも事実です。
この項目では、妊娠による解雇を言い渡されないための対策を妊娠初期から出産までの段階ごとにお伝えします。
妊娠初期は悪阻(つわり)などで体調が安定しない状態が続きます。産婦人科で検査し、妊娠の確定と大まかな出産予定日などがわかったら上司に妊娠の報告をしましょう。会社への妊娠報告は、最初に直属の上司に報告するようにしましょう。
妊娠初期では産婦人科への定期健診などで会社を休まなければならないことがあります。また、体調が不安定なため、医師から時短勤務などを勧められる場合もあります。その際、妊娠した女性の体調や医師とのやりとりを会社に伝えるために「母性健康管理指導事項連絡カード」というものがあります。医師からの妊娠中の指導内容は、口頭だけでなく、書面で会社に伝えることも重要です。
お腹が大きくなるにつれ、今までの業務をこなすことが難しくなってきたと感じたら軽易な業務への転換を会社にお願いすることができます。なお、軽易な業務に転換する際に降格させられる場合もあります。合意のもとで降格をする場合は、復帰後のキャリアについても話し合っておきましょう。
第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
○3 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
引用元:労働基準法
労働基準法では、産前産後について以下のように定めています。
第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
○2 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
○3 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
引用元:労働基準法
出産後は休業期間などに関わるため、速やかに会社に連絡するようにしましょう。周囲の人に連絡をお願いしたり、メールで連絡できるようにするなどを出産前に決めて、会社に伝えておくと良いでしょう。
妊娠による解雇の他にも、妊娠を理由とする降格や減給など労働者にとって不利益になる扱いは違法になります。また、育児休暇などの制度利用を妨害したり、嫌がらせをして退職に追い込もうとするなどはマタハラになるので違法性が高いのです。
育児休業を申請したら退職を勧められたため取得を諦めたなど、育児休業の取得を妨害することは違法になります。
育児休業の取得は育児介護休業法10条で以下のように定められており、会社は労働者から育児休業を申請された場合、原則拒否することはできません。また、育休を取得したことによって労働者に不利益な扱いをすることも違法とされています。
第十条 事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
引用元:育児介護休業法
上記でもお伝えしている通り、妊娠や出産、子育てを理由に降格・減給・解雇(雇い止め)をするのはマタハラにあたるとされています。マタハラは、労働基準法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法など、さまざまな法律に違反する行為なのですが、会社では往往にして存在するトラブルです。
「マタハラの事例」では妊娠から出産、子育てまでで起こり得るマタハラの例をまとめました。どうぞご覧ください。
妊娠解雇だけでなく、妊娠・出産・育児を理由とした降格・減給・解雇(雇い止め)などの不利益扱いや嫌がらせはマタハラです。マタハラは、労働基準法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法などの様々な法律に違反する行為なので、厚生労働省が会社に防止措置を義務付けているハラスメントです。
もしも、妊娠解雇以外にもマタハラを思われる不利益扱いや嫌がらせに遭った場合は必ず相談しましょう。マタハラは溜め込んでしまうと取り返しのつかない事態を招く可能性があります。
多くの企業では、コンプライアンスやハラスメントの相談窓口が設置されています。妊娠解雇もマタハラになるので、会社内に相談窓口がある場合は必ず相談をしましょう。また、相談窓口が設置されていない場合は人事課や厚生課で相談することもできます。
会社の相談窓口では取り合ってもらえなかった、妊娠を理由に嫌がらせに遭っているなどの場合は会社外の相談窓口を利用するのも良いでしょう。厚生労働省が運営している「あかるい職場応援団」ではメール相談やよくあるトラブルのQ&Aなどを掲載しています。
妊娠解雇について会社に交渉したのに取り合ってくれなかった、相談を受け付けてくれなかったと言う場合は、各都道府県の労働局に設置されている雇用環境・均等部(室)に相談すると良いでしょう。雇用環境・均等部(室)では、マタハラ、セクハラなどのハラスメントの相談を受け付けています
妊娠解雇やマタハラは労働基準法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法などの様々な法律に違反する行為なので、弁護士に相談することも可能です。
妊娠解雇を弁護士に相談すると、企業と解雇無効の代理交渉をしたり、労働審判や民事訴訟(裁判)をしたりする際にあなたの強い味方となってくれます。
妊娠すること、子供を授かることは喜ばしいことです。そんな妊娠への喜びもつかの間、突然解雇を言い渡されるのはショッキングなことですよね。妊娠を理由とする解雇は違法なので、この記事で身につけた知識を武器に会社と交渉していきましょう。
この記事で、働きながら母になるあなたのお手伝いができれば幸いです。
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