後遺障害診断書の書き方|等級認定が受けやすくなる3つのポイント

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弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
監修記事
後遺障害診断書の書き方|等級認定が受けやすくなる3つのポイント

後遺障害診断書(こういしょうがいしんだんしょ)とは、後遺障害等級認定の申請で必要になる書類です。等級認定の審査結果を左右する重要な資料であり、交通事故によって負った後遺障害を確実に証明するために、被害者の自覚症状や他覚所見(医師などが診て判明した症状)、治療の経緯などを医師に書いてもらいます。

交通事故が原因で後遺障害を負った被害者は、後遺障害等級を獲得することで慰謝料を獲得できます。しかし、認定申請をする上で提出する後遺障害診断書の内容によっては、下位の等級で認定を受けたり等級非該当になってしまったりする可能性もあります。

後遺障害診断書は多額の後遺障害慰謝料に関わる重要書類です。そこで今回は後遺障害診断書の適切な書き方を解説しますので、等級認定を受けやすくするためのポイントをしっかりおさえておきましょう。

後遺障害診断書について

まずは後遺障害診断書の概要と作成するタイミングについて説明しますが、正式には『自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書』という名称です。この書類は統一のフォーマットがあるため、歯科を除いて同じ定式で書かれます。しかし、書き方自体は決まっていませんので、同じ事例の後遺障害でも医師によって記入する内容が異なる場合があります。

後遺障害診断書は症状固定時に取得する書類

後遺障害診断書は症状固定した際、担当の医師に必ず書いてもらいます。なので、むち打ち症や打撲などのケガで整骨院に通う被害者もいますが、整骨院は医師でなく柔道整復師でありますので、整骨院では後遺障害診断書を作成してもらえません。なので、整骨院に通っている患者が後遺障害の認定を検討するのであれば、整形外科に移って治療を受ける必要があります。

症状固定とは治療を続けても症状が良くも悪くもならない状態

後遺障害を負っているかどうかは症状固定で判断します。一般的に治療を開始してから半年以上経っても、回復も悪化もしない場合に症状固定だと見なされます。この症状固定は本来的には診断してきた医師が決めるべきものですが、実際には被害者の希望や治療費の支払いを打ち切りたい保険会社の意向などが原因で、妥当ではないタイミングで症状固定にされてしまうことがあります。

後遺障害診断書の書き方は決まっていない

後遺障害診断書の記入項目は統一されていますが書き方は特に決まっていません。例えば患者からヒアリングした自覚症状をこと細かく記載する場合もあれば、箇条書きで簡潔に済ませる医師もいます。

また、医師によって項目未記入で済ませることがあります。後遺障害等級の認定基準を医師が完全に把握している訳ではありませんので、記入が必要な項目であることを知らず、空欄にしてしまう可能性もあります。

等級認定が受けやすい後遺障害診断書を作成する3つのポイント

後遺障害診断書は医師に書いてもらう書類ですが、患者である被害者側が気を付けるべきことはあります。被害者の対応次第では後遺障害診断書の内容が不十分になり等級認定を受けられない可能性もありますので、診断書を作成する上で重要な3つのポイントを確認しておきましょう。

自覚症状を正確に書いてもらう

後遺障害を含め、ケガなどの症状は通常『自覚症状』と『他覚症状』の両面で総合的に有無を判断されます。病院での診断や検査結果などで得られる医学的な証明は『他覚症状』になりますが、それに対して被害者(患者)が感じる痛みや痺れは『自覚症状』です。

もちろん他覚症状も後遺障害があるかどうかを決める上では重要な証拠ですが、被害者自身が担当の医師に自覚症状を伝え、後遺障害の内容を正確に後遺障害診断書に書いてもらうことも大切です。また、医師への申告に関して注意点があります。

一貫性があり、重い症状であることを医師に伝える

後遺障害等級に認定されるということは、ある程度の労働能力を喪失している重症であることだと言えます。今後の人生に重くのしかかる精神的苦痛があることを前提に、被害者は後遺障害等級を受けて慰謝料をもらうことになります。

ですので、軽い症状だと思われてしまったら、等級を下げられたり等級非該当になったりしてしまいます。もちろん嘘の自覚症状を言ってはなりませんが、痛みを感じる部位や痺れの箇所などを細かく伝えることで、自覚症状の重篤性を示すことができるでしょう。

症状の連続性に欠ける自覚症状はマイナス

症状の重さに関係するポイントになりますが、後遺障害の発症が連続していなければ一時的に回復していると判断されて等級認定してもらえなくなることもあります。

例えば、『昨日と違って今日は首の痛みが軽減している』と医師に伝えてしまうと症状の常時性が薄いとされてしまい、軽い後遺障害であると思われてしまいます。

なので一時的に痛みや痺れの程度が変化している場合でも、長期的に続く自覚症状を伝えた方が正確です。

作成は医師に任せ過ぎず被害者自身も内容を確認する

専門的知識を持っている医師の診察が全部正しいとは限りません。基本的には医師に自覚症状を伝えて後遺障害診断書の作成を任せることになりますが、一度書いてもらった後遺障害診断書の内容は必ず被害者自身の目で確認しましょう。

記載不備があれば医師に記入依頼をすること

『後遺障害診断書の書き方は決まっていない』で触れたように、医師によっては後遺障害等級の認定において必須記入項目であるかどうか分かっていない場合も考えられます。仮に記入漏れなどの不備があった際は、医師に追記のお願いをするようにしましょう。

後遺障害診断書を書いた経験のある医師を選ぶ

上記のように後遺障害診断書の書き方に詳しくない医師は不慣れなため、適切な内容を書いてくれない可能性があります。なので、後遺障害診断書の作成を依頼する医者が作成経験者なのかどうか、確かめる必要があります。

医師の都合や病院の方針によっては後遺障害診断書の作成を拒否することもある

ほとんどの病院では後遺障害診断書を書いてくれるはずですが、交通事故関係の問題に巻き込まれたくないことや医師や病院側が診断書を書かないと決めていることを理由に作成を拒否するケースがまれにあります。そういった可能性もあるため、後遺障害診断書の作成経験のある医師に依頼することが確実だと言えます。

後遺障害診断書に記載する項目

実際に後遺障害診断書を作成する上で、どのような項目を書く必要があるのかを見ていきます。なお、後遺障害診断書のフォーマットはインターネット上からダウンロードすることが可能です。

DL自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書のフォーマット

左側と右側にページが分かれていますので、順番に記載項目を取り上げていきます。

後遺障害診断書の左側の欄に書く項目

受傷日時

交通事故に遭った日付です。

症状固定日

基本的には医師の判断の基、患者の症状がこれ以上良くも悪くもない固定状態になったと確定した日のことです。

当院入院(通院)期間

後遺障害診断書を作成してもらった病院の入院・通院の期間です。

傷病名

症状固定した後遺障害に該当する病名です。

既存障害

交通事故前に患者が精神的・肉体的な障害があったかどうかを記載します。交通事故が原因で負った後遺障害かどうかを区別するためです。

自覚症状

被害者自身が感じている症状の申告内容です。後遺障害の重篤性を証明する上で重要な項目になりますので、詳細まで書いてもらうようにしましょう。

精神、神経の障害 他覚所見および検査結果

病院での検査結果や他覚所見(他覚症状)を記入する項目です。むち打ち症などの神経症状の内容がここに書かれます。

胸腹部臓器、生殖器、泌尿器の障害 眼球、眼瞼の障害

神経症状や精神的な障害以外で、それぞれの部位に対する検査結果や医学的な所見が記入されます。

後遺障害診断書の右側の欄に書く項目

聴力と耳介の障害

耳介(じかい)は耳の軟骨部分のことです。

鼻の障害

嗅覚機能のほか、外見的な障害(軟骨部分の欠損)も含まれます。

咀嚼、言語機能の障害

咀嚼(そしゃく)機能はものを噛む能力のことです。

醜状障害

顔面や首、手足などに醜状痕が残った場合に記入します。

脊柱の障害

背骨部分の圧迫骨折や脱臼があった際に記入します。また、むち打ち症(頸椎捻挫)の場合もこの項目に書かれます。

体幹骨の変形

鎖骨や肋骨などが変形していることを記載します。

上肢、下肢および手術、足指の障害

各部位の可動域が制限されたり欠損があったりした場合に記載します。

障害内容の増悪、緩解(かんかい)の見通し

良くも悪くもなく症状固定されていることや、今後症状が治まる(緩解する)ことがない旨を明記します。

後遺障害診断書を作成してもらう場合に知っておくと便利なこと

後遺障害診断書を作成するポイント以外にも被害者側が知っておくと便利な事がありますので、こちらも紹介していきます。

症状がわかりにくい場合に行うテストがある

後遺障害診断書だけでは症状の証明が難しい場合があり、特に神経症状であるむち打ちに関してはレントゲンやMRIの写真では証拠にならないため、医学的所見が不十分なことを理由に等級非該当にされてしまう可能性もあります。

その場合、客観的な証拠を補完するための検査を受けてみるのが一つの手段です。下記にて神経症状に関するテスト方法を取り上げますが、担当の医師と相談して後遺障害等級の認定申請上有効であるかを確かめた上で検査することをおすすめします。

ジャクソンテスト

椅子に座った患者の頭部を後ろに反らして、医師が患者の額を上から押すことで痛みや痺れが生じるかどうかを確かめるテストです。

スパークリングテスト

椅子に座った患者の頭部を側方に傾けて、医師が患者の頭を上から押さえて圧迫させるテストです。ジャクソンテストと同様、痛みや痺れがあるかどうかで神経症状の有無を判断します。

筋電図検査

電流を筋肉に流し、筋肉の異常反応を見て神経症状の状態を確認する方法です。

腱反射テスト

膝下をゴムのハンマーなどで叩き、その反射を確認する神経学的検査です。異常な反応が見られる場合は神経障害がある可能性が考えられます。

医師に後遺障害診断書を書かないと言われた場合

可能性としては低いですが、『後遺障害診断書を書いた経験のある医師を選ぶ』で取り上げたように後遺障害診断書を書いてくれない医師もいます。その場合は別の病院で診察を受け直し、改めて後遺障害診断書の作成を対応してくれる医者へお願いするようにしましょう。また、依頼する医者を選ぶ際には診断書の作成経験があるかどうか確認することも大事です。

後遺障害診断書の作成にかかる費用

後遺障害診断書を医師に作成してもらう際には費用が発生します。各病院によって様々ですが、一般的には5,000円~10,000円程度だとされています。被害者側で負担した作成費用は後遺障害等級に認定されれば、加害者側の任意保険会社へ請求することが可能です。しかし後遺障害等級に認定されない場合、任意保険会社への請求が難しいとされています。

もしも後遺障害等級の認定が下りなかった場合

後遺障害等級に認定されなかった理由として、後遺障害診断書の内容に不備があるほかに、被害者が申告した自覚症状を補足する医学的な所見が不足していたり、後遺障害等級に該当する重篤性が見られなかったりすることが考えられます。

等級非該当の結果になっても、被害者は自賠責保険会社へ異議申立てをすることは可能ですが、被害者自身の後遺障害を証明するための資料を集めて確実に後遺障害認定申請の手続きを行う必要があります。なので、異議申立ての場合は、被害者自身で後遺障害診断書と合わせて申請書類を集める『被害者請求』の申請方法をオススメします。
参照元:被害者請求のメリットと申請方法|被害者請求がオススメできる理由

まとめ

後遺障害の等級認定が受けやすくなる後遺障害診断書の書き方を解説しましたが、お分かりいただけましたでしょうか。専門的な知識がないと理解するのが難しいこともありますが、担当の医師に任せっきりにせず、後遺障害診断書に記載するべき点をしっかりと把握した上で医師と相談するようにしましょう。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人ネクスパート法律事務所
寺垣 俊介
2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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