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KL2020・OD・037
電子計算機使用詐欺罪(でんしけいさんき-しよう-さぎ-ざい)とは、コンピュータなど人以外を欺く行為が詐欺罪の対象外となることから、この不都合を解消するために作られた詐欺罪の補充規定です(刑法246条の2)。
具体的には、不実の電磁記録を作出したり、虚偽の電磁記録を供用することで、財産上不法の利益を得たり他人にこれを得させることが処罰対象になっており、銀行のシステムを悪用して銀行から金銭をだまし取った事件などが話題になりました。
ここ最近は、新たなフィッシング詐欺である「スミッシング」や転売目的でのチケット取得などにも電子計算機使用詐欺罪が適用されるなど、典型的な詐欺以外の事件でこの条文が広く適用できるのではないかと注目されています。
今回は、電子計算機使用詐欺罪について、基本的な考え方や具体的な事件をご紹介していきたいと思います。
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目次
電子計算機使用詐欺罪とは、コンピュータ等に対する詐欺的行為が詐欺罪(人を欺く行為を処罰する規定)に該当しないことから、この不都合を解消するために作られた詐欺罪の補充規定です。
(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
(電子計算機使用詐欺)
第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。
(引用元:刑法246条・246条の2)
まずは、通常の詐欺罪と電子計算機使用詐欺罪との違いをしっかり押さえていきましょう。
電子計算機使用詐欺罪と通常の詐欺罪との大きな違いは、詐欺行為(欺く行為)が人に向けられたものか、電子計算機(機械やシステム)に向けられたものかという点です。
通常の詐欺罪を適用するには、人を欺く行為がなされ、それによって財物の交付や財産上不法の利益の取得があったことが必要になりますが、コンピュータを欺く行為はこれらの要件を満たすことができません。
コンピュータの普及に伴い、従来の詐欺罪でコンピュータに対する詐欺行為を処罰できないという不都合が看過できなくなったため、昭和62年に新設されたのが電子計算機使用詐欺罪ということになり、こういった経緯からコンピュータ詐欺罪と呼ばれることもあります。
電子計算機使用詐欺罪の構成要件は、【①不実の電磁的記録の作出または虚偽の電磁的記録の供用】と【②財産上不法な利益の取得】で、法定刑は10年以下の懲役となっています。
不実の電磁的記録の作出とは、窃取したクレジットカードの番号や名義人の氏名等を冒用してインターネットショッピングの決済を行うなど、人の事務処理に利用されている電磁的記録に虚偽のデータを入力して、真実に反する内容の電磁的記録を作出する行為をいいます。
また、虚偽の電磁的記録の供用とは、行為者が所持する虚偽の内容の電磁的記録を、他人の事務処理用の電子計算機に差し入れて使用させることをいい、通話可能度数を虚偽のものに改ざんした変造テレホンカードを利用して電話をかける行為や、プリペイドカード等の残額を改ざんして利用するなどの行為が該当するかと思います。
▶参照元:条文で使われている用語の意味
人の事務処理に使用する電子計算機 |
他人がその事務を処理するために使用する電子計算機をいい、事務の内容は問わないものの娯楽目的の電子計算機は除外されます。ここでいう他人は自然人でも法人でも該当します。 |
虚偽 |
電子計算機を使用する当該事務処理システムにおいて予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が真実に反するもののことをいいます。 |
虚偽の情報(中略)を与える |
当該事務処理システムにおいて予定されている事務処理目的に照らし、その内容が真実に反する情報を入力させることをいいます。 |
不正な指令を与える |
その電子計算機の使用過程において本来与えられるべきでない指令を与えることをいいます。 |
財産権の得喪若しくは変更に係る(中略)電磁的記録 |
財産権の得喪・変更があったという事実または得喪・変更を生じさせるべき事実を記録した電磁的記録であって、取引の場面においてそれが作出されることによってその財産権の得喪・変更が行われるものをいいます。具体的には、オンラインシステムにおける預金残高の記録やプリペイドカード等の残度数・残額の記録等がこれにあたるでしょう。 |
単に不実の電磁的記録を作出したり、虚偽の電磁的記録を供用するにとどまる場合には、支払用カード電磁的記録不正作出等罪(刑法163条の2~5)などが問題になるかと思いますが、これらのものを利用して財産上不法な利益を得た場合には、電子計算機使用詐欺罪が成立すると考えていただくのが良いかと思います。
なお、他人の電子計算機から財産的価値のある情報を不正に写し取ってそれを売却して利益を得たようなケースでは「不法な利益の取得」にはあたらないとされること、詐欺罪が成立するケースでは補充規定である電子計算機使用詐欺罪は成立しないという点に注意が必要です。
電子計算機使用詐欺罪は詐欺罪の補充規定でもあるので、詐欺罪との量刑の差はありません。いずれも10年以下の懲役刑のみが規定されていて、直接詐欺を行っていない人であっても、詐欺行為によって利益を得ている場合には、共同正犯として行為者と同じように処罰されることになるでしょう。
電子計算機使用詐欺罪の公訴時効は詐欺罪と同様に7年となります。
公訴時効は刑事訴訟法250条によって期間が定められていますが、量刑内容ごとに時効期間が決まることから、他の犯罪についても量刑を見れば簡単に時効が分かるようになっています。
第二百五十条 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
二 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
三 前二号に掲げる罪以外の罪については十年
2 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年
(引用元:刑事訴訟法250条)
※なお、殺人罪・強盗殺人罪など人を死亡させた罪で最高刑が死刑にあたるものについては、公訴時効がありません。
▶参照元:量刑内容と公訴時効の早見表
量刑内容 |
時効期間 |
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人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑にあたるもの (※法定刑が死刑にあたるものを除く) |
無期懲役または禁錮 |
30年 |
20年の懲役または禁錮 |
20年 |
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上記以外の場合 |
10年 |
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上記以外の罪 (人を死亡させていない場合や人を死亡させたものの禁錮未満の刑である場合) |
最高刑が死刑 |
25年 |
無期懲役または禁錮 |
15年 |
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15年以上の懲役または禁錮 |
10年 |
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15年未満の懲役または禁錮 |
7年 |
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10年未満の懲役または禁錮 |
5年 |
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5年未満の懲役もしくは禁錮または罰金 |
3年 |
|
拘留または科料 |
1年 |
以上が電子計算機使用詐欺罪の基礎知識になりますが、ここからは実際に電子計算機使用詐欺罪で逮捕者が出た事件をご紹介したいと思います。
大規模な犯罪から身近なサービスを悪用した犯罪まで様々な逮捕事例がありますので、厳選した5種類をまとめてみました。
キセル乗車とは、鉄道を利用する際に乗車駅から降車駅までの乗車券を購入せず、乗車駅から途中駅までの安い乗車券を利用するなどして行う不正乗車のことをいいます。
キセル乗車の方法はいくつもありますが、これが電子計算機使用詐欺罪に該当する理由としては、「自動改札機や入場記録をだましたりごまかしたりして不正に財産的利益を得る(本来の運賃との差額分の得をする)ため」と言えるでしょう。
この事件で逮捕された男は、未払い運賃が合計約40万円にも上るほどのキセル乗車を繰り返しており、非常に悪質な事件と言えます。
なお、キセル乗車に関しては、従来の詐欺罪を適用した裁判例(大阪高判昭和44年8月7日)と、電子計算機使用詐欺罪を適用した裁判例(東京地判平成24年6月25日)のどちらを採用するかで見解が分かれることがありますので、詳しくは弁護士に尋ねることをおすすめします。
▶「7年前から暇つぶしに毎日」キセル乗車容疑で男逮捕(朝日新聞DIGITALより)
佐川印刷事件は、インターネットバンキングに虚偽の情報を入力して、佐川印刷の子会社の資金を騙し取ったとして元取締役等が電子計算機使用詐欺罪の容疑で逮捕された事件です。合計29億円もの資金を騙し取るという非常に規模の大きい詐欺事件であったことから、裁判の動向が注目されています。
インターネットバンキングの悪用ということで、スタンダードに電子計算機使用詐欺罪が問題になる事件と言えますね。
なお、佐川印刷事件は未だ裁判の最中ですが、大阪タクシー協会から約2億円を騙し取った同協会元経理部の男には懲役5年の実刑判決が、三井住友銀行の外貨取引システムを悪用して同行から約10億円近くを騙し取った同行元副支店長には、懲役8年の実刑判決がそれぞれ出されていますので(※どちらも地裁判決)、今回の事件でも実刑判決が出される可能性が高そうです。
▶佐川印刷事件 会長「29億円流用知らず」 京都地裁公判で証言(産経WESTより)
スミッシング(SMShing)詐欺とは、SMS(ショートメッセージサービス)を悪用して、銀行等を騙ってメッセージを送付し、特定のサイト(マルウェア感染サイトやアプリのダウンロードサイト、ショッピングサイトなど)に誘導してユーザーの個人情報を盗み取るものを言います。
この事件では、スマートフォンがウイルスに感染したと思わせて、SMSを利用しグーグルによく似たサイトに誘導した後、偽サイトで架空のウイルス対策ソフトを販売した男が摘発されました。スミッシング詐欺の摘発はこの事件が全国初で、電子計算機使用詐欺罪および詐欺の被疑事実での逮捕となっています。
▶新手の詐欺「スミッシング」初摘発 グーグル装いメール送付の巧妙手口(東スポWebより)
リクルートの運営する旅行サイト「じゃらん」では、2015年に新規アカウント作成者に千円相当のポイントをプレゼントするキャンペーンを実施しましたが、ゲストハウスを経営する男とその共犯者の男はキャンペーンを悪用し、大量に取得したメールアドレスを利用してリクルートからポイント分の現金を騙し取りました。この場合、リクルートのサイトを悪用しての詐欺にあたり、電子計算機使用詐欺罪で逮捕に至ったというわけです。
▶「じゃらん」詐欺、1千万円以上か 利用客「まさか…」(沖縄タイムスより)
ライブなどのチケットは転売行為が禁止されていることがほとんどですが、どうしてもライブに行きたいファンが転売チケットを高値で購入することは珍しくありません。そこにつけ込み、人気アーティストのライブチケットを転売目的で取得し、チケット会社からチケットを騙し取ったとして電子計算機使用詐欺罪の被疑事実で男が逮捕されました。
府警によると、インターネット上でのチケットの転売目的購入を条例で規制している自治体はあるが、京都府の条例には同様の規制がなく、全国で初めて電子計算機使用詐欺容疑を適用した。
(引用元:サンスポ.COM)
引用記事のとおり、転売目的でのチケット取得行為についても電子計算機使用詐欺罪が適用される場合があることが明らかになりましたので、今後の動向が気になるところですね。
▶「嵐」チケット詐取疑いで防衛技官を逮捕 ネットで転売、2000万円売り上げか(サンスポ.COMより)
電子計算機使用詐欺罪で逮捕されると、次のような流れで手続きが進んでいきます。
逮捕後勾留されるかどうかは裁判所の判断で決まるわけですが、国選弁護人は勾留後でなければ利用できませんので、まずは当番弁護士を利用して逮捕後の方針を決定するほか、私選弁護人の利用を検討するのが良いでしょう。
電子計算機使用詐欺罪と聞くと、何か専門的な詐欺のようにも思われがちですが、チケットの転売目的での取得や新規会員登録によるキャンペーン等の悪用など、誰でも簡単にできてしまうようなことが元で逮捕に至るケースもあるのです。
軽い気持ちでコンピュータ等のシステムを悪用したり、改ざん・虚偽の入力などを行ってしまうと、想像以上に重い罪に問われるおそれがありますので、こういった行動は理性で慎むことが大切でしょう。
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