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KL2020・OD・037
不意の交通事故で被害に遭った際、自分に支払われる慰謝料がどれほどになるのか気になる方が多いはずです。
しかし慰謝料といっても、入院費や後遺障害に関する賠償など、様々な種類がありますので、それらをどう計算すればいいのか悩んでいませんか?
自分が何を請求すればいいのか理解するためには、慰謝料に関する一通りの知識を持っておくことが大事です。
今回は交通事故慰謝料の計算方法を取り上げ、適正な額の慰謝料を獲得するためのポイントを解説しますので、是非参考にしていただければと思います。
目次
交通事故に運悪く遭い自分が被害者となった場合、加害者に対して金銭の要求を行う権利があります。その要求する金銭を一般的には慰謝料または損害賠償といった言い方をしますが、二つは厳密には同じ意味ではありません。
そもそも損害賠償は、慰謝料も含めた交通事故によって被った損害に対する賠償金のことで、慰謝料は被害者から受けた精神的な苦痛に対する金銭です。
ですので、これから話す慰謝料は被害者本人の精神的な苦痛に見合ったお金の話になります。
【関連記事】交通事故の慰謝料相場|妥当な慰謝料を獲得するための全知識
交通事故によって得られる可能性がある慰謝料は、「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」の3種類です。ケガによる入通院の場合と後遺障害を負った場合、それと被害者が死亡した場合に分かれます。交通事故における慰謝料とはそれら全ての総額を指し示します。
また、その慰謝料を決める際には3つの基準がありますので、個別に解説します。
交通事故によるケガで入院、及び通院したことに対して支払われる慰謝料です。入院期間と実通院期間の長さで応じて慰謝料額が決められます。
1級から14級までの等級が定められている後遺障害等級の認定を受けた被害者に対して支払われる慰謝料です。1級が最も重い後遺障害で、14級が最も軽い後遺障害です。慰謝料額は障害の重さに応じて調整されています。
交通事故により被害者が死亡した場合に支払われる慰謝料です。死亡事故の被害者本人だけでなく、残された家族に対する慰謝料も含まれます。
慰謝料額を左右する基準は「自賠責基準」と「任意保険基準」と「弁護士基準」の3つがあります。自賠責保険及び任意保険の場合は基本、補償最低額として設定されていますので、弁護士基準と比較して慰謝料額は大きく下がります。
こちらは強制加入となります自賠責保険に対して、被害者の人身傷害に関する慰謝料を請求する際の算定基準です。国土交通省より明確な算定基準が設けられていますので、慰謝料の種類別で解説します。
自賠責基準における入通院慰謝料は1日あたり4,200円と決まっています。ただし、入通院の日数を決める上では治療期間と実際に治療した期間の二つを比較する必要があります。
(※AとBの日数のうち、『少ない方』に4,200円をかけて算出するのが決まりです)
全体の治療期間と実際に病院で診てもらった日数を比較する理由としては、実際に治療をしていない日や静養した日を加味して妥当的な日数を判断するためです。
後遺障害慰謝料は認定された後遺障害等級に応じた額が基準となります。自賠責基準における等級別の後遺障害慰謝料は下記の表に従います。
表1:自賠責基準による後遺障害慰謝料の相場
第1級 | 第2級 | 第3級 | 第4級 | 第5級 | 第6級 | 第7級 |
1,100万円 | 958万円 | 829万円 | 712万円 | 599万円 | 498万円 | 409万円 |
第8級 | 第9級 | 第10級 | 第11級 | 第12級 | 第13級 | 第14級 |
324万円 | 245万円 | 187万円 | 135万円 | 93万円 | 57万円 | 32万円 |
自賠責基準による死亡慰謝料の場合、被害者(死亡者)本人の慰謝料と遺族に対する慰謝料で分割されます。基準額は下記の表でまとめました。被害者の家族人数や扶養に応じて慰謝料が加算されます。
表2:自賠責基準による死亡慰謝料の請求額
死亡者本人に対する慰謝料 | 350万 |
死亡者に扶養されていた場合 | 200万 |
慰謝料を請求する遺族が1人の場合 | 550万 |
慰謝料を請求する遺族が2人の場合 | 650万 |
慰謝料を請求する遺族が3人以上の場合 | 750万 |
自賠責保険では支払いが賄えない多額の損害に備え、個人の判断で加入するのが任意保険です。こちらは自賠責保険と異なり、各保険会社によって基準額に違いが生じますので明確な算定方法はありません。ただ、一般的には自賠責基準と弁護士基準の中間の慰謝料額であるとされています。
自賠責基準と同様に慰謝料の種類別で取り上げますが、あくまで一例を基にした数値なので参考までにご確認いただければと思います。
下記の表が任意保険基準による入通院慰謝料の推定相場です。表を基にすると、3ヵ月の通院をした場合は378,000円程度の慰謝料額が見込まれることが分かります。また、入退院を組み合わせた場合、1ヵ月の入院と2ヵ月の通院をした際は504,000円程度の慰謝料額が推定されます。
表3:任意保険基準による入通院慰謝料の推定相場(単位:万円)
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | |
通院 | 25.2 | 50.4 | 75.6 | 95.8 | 113.4 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | 170.2 | |
1月 | 12.6 | 37.8 | 63.0 | 85.6 | 104.7 | 120.9 | 134.9 | 147.4 | 157.6 | 167.6 | 173.9 |
2月 | 25.2 | 50.4 | 73.0 | 94.6 | 112.2 | 127.2 | 141.2 | 152.5 | 162.6 | 171.4 | 176.4 |
3月 | 37.8 | 60.4 | 82.0 | 102 | 118.5 | 133.5 | 146.3 | 157.6 | 166.4 | 173.9 | 178.9 |
4月 | 47.8 | 69.4 | 89.4 | 108.4 | 124.8 | 138.6 | 151.3 | 161.3 | 163.8 | 176.4 | 181.4 |
5月 | 56.8 | 76.8 | 95.8 | 114.6 | 129.9 | 143.6 | 155.1 | 163.8 | 171.4 | 178.9 | 183.9 |
6月 | 64.2 | 83.2 | 102.0 | 119.8 | 134.9 | 147.4 | 157.6 | 166.3 | 173.9 | 181.4 | 185.4 |
7月 | 70.6 | 89.4 | 107.2 | 124.3 | 136.7 | 149.9 | 160.1 | 168.8 | 176.4 | 183.9 | 188.9 |
8月 | 76.8 | 94.6 | 112.2 | 128.6 | 141.2 | 152,4 | 162.6 | 171.3 | 178.9 | 186.4 | 191.4 |
9月 | 82.0 | 99.6 | 116.0 | 131.1 | 143.7 | 154.9 | 165.1 | 173.8 | 181.4 | 188.9 | 193.9 |
10月 | 87.0 | 103.4 | 118.5 | 133.6 | 146.2 | 157.4 | 167.6 | 176.3 | 183.9 | 191.4 | 196.4 |
基本は後遺障害等級に応じて慰謝料額が増減します。任意保険基準における等級別の後遺障害慰謝料の参考額を下記の表に記載しました。
表4:任意保険基準による後遺障害慰謝料の推定相場
第1級 | 第2級 | 第3級 | 第4級 | 第5級 | 第6級 | 第7級 |
1,600万円 | 1,300万円 | 1,100万円 | 900万円 | 750万円 | 600万円 | 500万円 |
第8級 | 第9級 | 第10級 | 第11級 | 第12級 | 第13級 | 第14級 |
400万円 | 300万円 | 200万円 | 150万円 | 100万円 | 60万円 | 40万円 |
推定値となりますので遺族の人数を加味した慰謝料額の基準は明確にはありませんが、被害者(死亡者)本人の立場によってある程度の相場が設けられています。
表5:任意保険基準による死亡慰謝料の推定額
死亡者本人の立場 | 任意保険基準(推定) |
一家の支柱(夫など) | 1,500〜2,000万円 |
18歳未満の子ども | 1,200〜1,500万円 |
高齢者 | 1,100〜1,400万円 |
その他(配偶者など) | 1,300〜1,600万円 |
自賠責基準は国が制定しており、任意保険基準は各保険会社の裁量で決められていますが、この弁護士基準は簡単に言いますと、弁護士を介する示談交渉や裁判で得られる見込みのある慰謝料基準になっています。過去の判例に基づいて設定されているため、3つの慰謝料基準の中では最も高額です。
下表が弁護士基準による入通院慰謝料の相場です。なお、この相場は交通事故に関する損害賠償額が記載された本を基準にしています。日弁連交通事故相談センター東京支部で販売されている『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(通称:赤い本)という本です。
表を基にすると、3ヵ月の通院をした場合は730,000円程度の慰謝料額が見込まれることが分かります。また、入退院を組み合わせた場合、1ヵ月の入院と2ヵ月の通院をした際は980,000円程度の慰謝料額が推定されます。ただし、通院が長期に伸びるか不規則になった場合には、目安として実通院日数の3.5倍で通院期間を計算されることがあります。
表6:裁判所基準による入通院慰謝料 (赤い本 別表Ⅰ)
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 13月 | 14月 | 15月 | |
通院 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | 284 | 297 | 306 | 314 | 321 | 328 | 334 | 340 | |
1月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 | 274 | 191 | 303 | 311 | 318 | 325 | 332 | 336 | 342 |
2月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 | 281 | 297 | 308 | 315 | 322 | 329 | 334 | 338 | 344 |
3月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 | 287 | 302 | 312 | 319 | 326 | 331 | 336 | 340 | 346 |
4月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 | 292 | 306 | 316 | 323 | 328 | 333 | 338 | 342 | 348 |
5月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 | 296 | 310 | 320 | 325 | 330 | 335 | 340 | 344 | 350 |
6月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 | 300 | 314 | 322 | 327 | 332 | 337 | 342 | 346 | |
7月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 | 304 | 316 | 324 | 329 | 334 | 339 | 344 | ||
8月 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 | 306 | 318 | 326 | 331 | 336 | 341 | |||
9月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 | 308 | 320 | 328 | 333 | 338 | ||||
10月 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 | 310 | 322 | 330 | 335 | |||||
11月 | 150 | 179 | 207 | 234 | 258 | 278 | 296 | 312 | 324 | 332 | ||||||
12月 | 154 | 183 | 211 | 236 | 260 | 280 | 298 | 314 | 326 | |||||||
13月 | 158 | 187 | 213 | 232 | 262 | 282 | 300 | 316 | ||||||||
14月 | 162 | 189 | 215 | 240 | 264 | 284 | 302 | |||||||||
15月 | 164 | 191 | 217 | 242 | 266 | 286 |
また、むち打ち症で他覚症状が無かったり、打撲等の軽症であったりした際には下の表で適用さます。なお、こちらも同様に通院が長期に伸びるか不規則になった場合には、目安として実通院日数の3倍で通院期間を計算されることがあります。
表7:他覚症状のないむち打ち症等で適用される入通院慰謝料 (赤い本 別表Ⅱ)
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 13月 | 14月 | 15月 | |
通院 | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 | 165 | 176 | 186 | 195 | 204 | 211 | 218 | 223 | 228 | |
1月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 | 171 | 182 | 190 | 199 | 206 | 212 | 219 | 224 | 229 |
2月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 | 177 | 186 | 194 | 201 | 207 | 213 | 220 | 225 | 230 |
3月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 | 181 | 190 | 196 | 202 | 208 | 214 | 221 | 226 | 231 |
4月 | 67 | 95 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 | 185 | 192 | 197 | 203 | 209 | 215 | 222 | 227 | 232 |
5月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 | 187 | 193 | 198 | 204 | 210 | 216 | 223 | 228 | 233 |
6月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 | 188 | 194 | 199 | 205 | 211 | 217 | 224 | 229 | |
7月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 | 189 | 195 | 200 | 206 | 212 | 218 | 225 | ||
8月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 | 190 | 196 | 201 | 207 | 213 | 219 | |||
9月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 | 191 | 197 | 202 | 208 | 214 | ||||
10月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 | 192 | 198 | 203 | 209 | |||||
11月 | 117 | 135 | 150 | 160 | 171 | 179 | 187 | 193 | 199 | 204 | ||||||
12月 | 119 | 136 | 151 | 161 | 172 | 180 | 188 | 194 | 200 | |||||||
13月 | 120 | 137 | 152 | 162 | 173 | 181 | 189 | 195 | ||||||||
14月 | 121 | 138 | 153 | 163 | 174 | 182 | 190 | |||||||||
15月 | 122 | 139 | 154 | 164 | 175 | 183 |
弁護士基準における等級別の後遺障害慰謝料の参考額を下記の表に記載しました。等級にもよりますが、自賠責準と比較すると2倍以上も高くなっています。
表8:弁護士基準による後遺障害慰謝料の相場
第1級 | 第2級 | 第3級 | 第4級 | 第5級 | 第6級 | 第7級 |
2,800万円 | 2,370万円 | 1,990万円 | 1,670万円 | 1,400万円 | 1,180万円 | 1,000万円 |
第8級 | 第9級 | 第10級 | 第11級 | 第12級 | 第13級 | 第14級 |
830万円 | 690万円 | 550万円 | 420万円 | 290万円 | 180万円 | 110万円 |
任意保険基準と同じく、被害者とその遺族全体の慰謝料額で設定されていますが、任意保険基準と比較して弁護士基準だと5割以上増額されます。
表9:弁護士基準による死亡慰謝料の相場
死亡者本人の立場 | 弁護士基準 |
一家の支柱(夫など) | 2,800〜3,600万円 |
18歳未満の子ども | 1,800〜2,600万円 |
高齢者 | 1,800〜2,400万円 |
その他(配偶者など) | 2,000〜3,200万円 |
上記では3つの基準における慰謝料の相場を説明いたしましたが、具体的に算定しながらそれぞれの慰謝料の計算方法と基準による慰謝料額の違いを確認していきます。
例えば、120日の入通院期間において入院で30日、退院後の通院期間で90日(実際に病院へ通った日数は45日)あったとします。この事例における入通院慰謝料の算定を基準別で考えてみましょう。
よって、日数の少ない方であるAの治療期間が使われ、4,200円 × 135日 = 567,000円の慰謝料が自賠責保険の相場だと判断されますが、一つ注意点として、保険会社が被害者側に払う額が120万円を超えない場合に限り、この自賠責基準が採用されます。
なお、保険会社が払う慰謝料はこの入通院慰謝料の他にも、休業損害や治療費なども含まれますが限度額の120万を超えた場合は加害者側の任意保険から支払われることになります。
表3:任意保険基準による入通院慰謝料の推定相場を参照しますと、入院で1ヵ月、退院後の通院で3ヵ月の基準に該当します604,000円であることが分かります。
表6:裁判所基準による入通院慰謝料を参照しますと、入院で1ヵ月、退院後の通院で3ヵ月の基準に該当します1,150,000円であることが分かります。また、他覚症状のないむち打ち症や軽症の場合は表7:他覚症状のないむち打ち症等で適用される入通院慰謝料を参照して、830,000円であると判断します。
等級に応じた後遺障害慰謝料について、3つの基準を比較した表が以下の通りです。後遺障害等級の第1級を認定された場合の慰謝料は自賠責保険で1,100万円、任意保険は推定で1,300万円、弁護士基準で2,800万円であると分かります。
表10:後遺障害慰謝料の推定相場(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)
等級 | 自賠責保険基準 | 任意保険基準(推定) | 弁護士基準 |
1級 | 1100万円 | 1300万円 | 2800万円 |
2級 | 958万円 | 1120万円 | 2370万円 |
3級 | 829万円 | 950万円 | 1990万円 |
4級 | 712万円 | 800万円 | 1670万円 |
5級 | 599万円 | 700万円 | 1400万円 |
6級 | 498万円 | 600万円 | 1180万円 |
7級 | 409万円 | 500万円 | 1000万円 |
8級 | 324万円 | 400万円 | 830万円 |
9級 | 255万円 | 300万円 | 690万円 |
10級 | 187万円 | 200万円 | 550万円 |
11級 | 135万円 | 150万円 | 420万円 |
12級 | 93万円 | 100万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 60万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
例えば、一家の大黒柱である夫が交通事故で死亡し、自分(妻)と子ども1人が残された場合に適用される死亡慰謝料を考えてみましょう。
表2:自賠責基準による死亡慰謝料の請求額を参照すると、死亡者本人に対する慰謝料:350万円+死亡者に扶養されていた場合:200万円+遺族が2人の場合:650万円の累計で1,200万円の死亡慰謝料が見込まれます。
表5:任意保険基準による死亡慰謝料の推定額を確認すると、1,500〜2,000万円の死亡慰謝料が推定されます。
表9:弁護士基準による死亡慰謝料の相場を確認すると、2,800~3,600万円程度の死亡慰謝料が見込まれます。
3種類の慰謝料を一通り解説しましたが、基本は弁護士基準による慰謝料額が最も高くなります。ですので、弁護士基準を前提にした慰謝料請求のポイントをおさえる必要がありますが、その前に他にも請求可能な種類の慰謝料もありますので、そちらを先に説明します。
入通院慰謝料と後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類以外にも忘れてはならない損害賠償や費用があります。
交通事故後、入院や通院をした期間だけ休業する必要があります。その休業によって減少した収入のことを休業損害といいます。特に一家を経済的に支えている大黒柱が被害者の場合、請求しなければならない損害賠償となります。
自賠責基準の場合、原則として5,700円 × 休業日数で計算します。ですが、書面等で1日あたりの基礎収入額が5,700円より上であることが証明できれば、1日あたりの上限額である19,000円を条件に支払われるとされています。
また、弁護士基準の場合は1日あたりの基準額は設定されてなく、1日あたりの基礎収入 × 休業日数を基本として算定されます。なので、弁護士基準の方が自賠責基準よりも多額の賠償金を得られやすくなっています。入通院慰謝料等と同様に、こちらも弁護士基準での請求をおすすめします。
交通事故によって後遺障害が生じ、後遺障害等級に認定された場合に関係する損害賠償請求です。考え方は上記の休業損害と似ていて、後遺障害によってそれまで可能だった仕事が不可能になってしまい、収入が減少したことに対する補償です。後遺障害が生じなければ普通に得られているはずだった収入のことを逸失利益と呼ばれています。
後遺障害逸失利益は、1年あたりの基礎収入 × 後遺障害該当等級の労働能力喪失率 × 後遺障害確定時の年齢を加味したライプニッツ係数で計算されます。算定上の基準となる数字について、もう少し補足します。
後遺障害等級全14等級に設定されている、労働能力の喪失度合いです。詳細は下記表にて記載していますが、重症である第1級~3級は100%の労働能力喪失率になっています。
表11:後遺障害等級の労働能力喪失率
中間利息を考慮した係数であり、被害者の年齢が若いほど高い数値になっています。この先続く労働能力喪失の年数の長さに応じた数値とも言えます。
入通院慰謝料だけでなく、治療費自体も原則として全額の請求は可能です。しかし、いくつか例外もありまして、医療費が自己負担額を超過してしまう高額診療や医療的に必要性が感じられない過剰診療のケースだと、全額の請求が認められないこともあります。
それと、もう一つ注意すべき点があります。基本的には被害者のケガが症状固定(治療をこれ以上続けても回復や悪化が見られない場合)になるまで加害者側の保険会社から治療費を支払ってもらう権利はあるのですが、保険会社から治療費の打ち切りを言われる可能性があります。
ここで気を付けてもらいたいのは、治療費が打ち切られてしまうと休業補償の方も止まってしまいます。なので、被害者側の経済的な負担が増えますが、未払いの治療費を再度請求することは可能ですので、治療がまだ必要な時は通院を続けるべきです。医療費が打ち切られた場合は医師から診断書等の証明をもらった上で、保険会社側と再交渉しましょう。
入院中で使用する日用雑貨品や通信費、見舞いに来る家族の通院交通など、治療費以外の支出となる入院雑費に加えて、入院や通院の際にかかった交通費も請求することは可能ですが、下記のような基準があります。
自賠責基準では1日あたり1,100円で認定されます。また、裁判基準になると1日あたり1,400~1,600円で請求できるとされています。
電車やバス、タクシーなどの公共機関を利用した場合、原則として実費の請求が可能です。また、自家用車を使用した場合も同様に、ガソリン代や駐車料金などの実費相当分を請求できるとされています。
弁護士基準による慰謝料請求が最も高額になることを上記で取り上げましたが、それ以外にも慰謝料を増額させるための方法があります。加えて、加害者側の保険会社より慰謝料の減額をさせられるような交渉も考えられますので、慰謝料額を下げられないための注意点としても、是非ご確認いただきたく思います。
交通事故の原因はどちらにあるのかを示すのが過失割合ですが、大抵は被害者側にも過失があるとされ、10:0のケースはあまりなく、8:2や7:3などが考えられます。この過失割合が直接慰謝料額に反映されますで、当然7:3(元々の慰謝料の7割)より8:2(元々の慰謝料の8割)の方が被害者にとってより多くの慰謝料を受け取れます。
逆に保険会社側からは、加害者側の過失割合を下げるように要請してくることが考えられるため、過失が自分に無いことを正当に主張することが大切です。
過失割合の是非を問う上で重要な情報になるのが『判例タイムズ』という本です。この本は裁判の判例を基に、過失割合の認定基準を典型例で定めています。保険会社側も基本は判例タイムズの事例を参考に過失割合を決めることになっています。
ただし場合によっては過去事例に沿わず、被害者にとって不利な過失割合を提示されることがありますので、そのためには確実な情報であります判例タイムズを引き合いに交渉することが求められます。過失割合の基準となる見地を用意しておくことが大切です。
後遺障害等級に認定されることで後遺障害慰謝料だけでなく後遺障害逸失利益の請求も可能になりますので、後遺障害に該当する症状を自覚したら早急に病院へ行って診断を受けましょう。
また、後遺障害は各等級に応じて認定条件が定められていますが、申請内容によっては、本来該当すべき等級より下げられて認定されてしまうこともあります。等級が下がると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の補償額にも影響が出てしまいますので、後遺障害の内容を的確に証明する資料を提出するべきでしょう。
こうした後遺障害等級の認定申請を含め、弁護士のサポートが大事になることを次項にて説明します。
保険会社との交渉は被害者本人でも出来なくはありませんが、過失割合の判断や希望する慰謝料額の主張立証など、専門的な知識がないと難しいこともあります。それと、繰り返しになりますが慰謝料額については弁護士基準が最も高水準であるため、慰謝料の増額を希望するならなおさら弁護士の支援が必要になってきます。
保険会社と交渉する上では弁護士が代理人になってもらわないと、保険会社側の最低基準額で提示される可能性が高くなります。現実問題、被害者側の立場は弱く、保険会社の言いなりになってしまうことも珍しくありません。そこで、保険会社側が譲歩してもらうためには弁護士による示談交渉が効果的です。
交渉が決裂すれば裁判になることを保険会社側は危惧していますので、示談の時点で弁護士基準に近い額の慰謝料を提示してもらうことが可能となります。加えて、治療費の打ち切りなど思わぬトラブルが発生した場合も、専門家の見解を聞けば正しい対応が取れます。専門家が責任をもって対応してくれる安心感もあり、被害者の精神的な不安も取り除いてくれるでしょう。
後遺障害等級の認定申請をするためには、医者から後遺障害診断書を書いてもらい、医学的な資料を揃えるといった労力を要します。そうした場面でも弁護士のサポートがあることで、認定申請がより通りやすくなりますので、弁護士を依頼した際にかかる費用を考慮しても、支援を求める価値はあります。
交通事故の慰謝料について相場と算定方法を解説しましたが、お分かりいただけましたでしょうか。被害者側には慰謝料を請求する権利はありますが、保険会社との不利な交渉によって不十分な慰謝料額にされてしまう恐れもあります。そうならないために慰謝料の請求手順をしっかり把握していただき、適切な額の慰謝料を手に入れてもらえれば幸いです。
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KL2020・OD・037
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