少年院とは|少年院の収容期間から種類・流れ・刑務所や鑑別所との違い

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弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
監修記事
少年院とは|少年院の収容期間から種類・流れ・刑務所や鑑別所との違い

少年院(しょうねんいん)とは家庭裁判所の判断で、事件を起こした未成年者を更生させるために収容する施設のことです。

この記事では少年院に関して、少年院の対象年齢、目的、種類、少年院に送致されるまでの流れなどについて解説していきます。

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少年院とは?

少年院とは?少年院は、家庭裁判所の判断で、保護処分として送致した未成年者を、更生のために収容する施設のことで、全国に52ヶ所あります。

少年院は刑の執行をする刑務所とは異なり、更生のための施設で、主に教育指導などが行われます。

もちろん少年のみの更生施設なので、女子は、通称、女子少年院に送致されます。

ここでは少年院に関して、対象年齢、少年院の目的、収容期間、前科について解説していきましょう。

対象年齢

収容されている人々の年齢は12歳から26歳未満と幅広く、少年院送致という処分の対象は12歳から20歳までの少年となっています。

また年齢や犯罪傾向の進度、心身の障害の有無によって収容される少年院が異なります。

少年院の目的

少年院が目的としているのは、事件を起こしてしまった未成年者を更生させることです。

少年院と聞くと、収容し、罪を償わせる刑務所と同じであると思われるかもしれませんが、少年院はあくまで更生のための施設。

そのため、収容し刑務作業という強制労働を行わせる刑務所とは異なり、少年院で行われるのは更生のための教育が主です。

ただし後述する第4種少年院でも、少年受刑者が収容され懲役刑や禁錮刑などを執行するとされていますが、今現在第4種少年院に収容されている少年受刑者がいるかどうかは明らかにされていません。

第4種少年院で刑の執行を受けるというのは、2018(平成30)年現在では、通常でないのかもしれません。

少年院の収容期間

少年院の収容期間の平均は約1年とされていますが、家庭裁判所の判断によって処遇が異なります。

特修短期処遇

4ヶ月以内で仮退院を目指す矯正教育メニュー

一般短期処遇

6ヶ月以内程度での仮退院を目指す

長期処遇

原則2年以内

比較的短期

8ヶ月から10ヶ月程度

機関についての処遇勧告なし

1年程度

比較的長期

18ヶ月程度

相当長期

2年(24ヶ月)以上

また矯正教育を受けている段階で、規律違反を犯したり、生活態度が悪い場合には期間が延びることもあります。

その他|前科

家庭裁判所が行った少年審判(裁判)により、少年院送致という決定され、少年院に送致されたとしても前科がつくことはありません。

少年院送致に限らず家庭裁判所で下された保護観察処分、試験観察、児童自立支援施設への送致などの決定で前科がつくことはないのです。

それはいずれにしても更生に重きを置いているからと考えられます。もっとも逮捕された場合、逮捕前歴がつくことにはなります。

また、少年事件で保護処分を受けた履歴も当然残ります。

一方で事件の重大性などによっては、家庭裁判所の判断で、刑事処分が相当とし、事件を検察に戻し(検察官逆送という)、成年と同様に刑事裁判にかけられる場合があります。

刑事裁判で有罪判決が下されれば、前科がつくことになります。

少年院には4種類ある

少年院には4種類ある

少年院には4種類あり、年齢などによって収容される少年院が異なります。

2015年に改正された少年院法(現行少年院法)による区分

改正以前の旧法

第1種少年院

心身に著しい障害がないおおよそ12歳から23歳を収容

旧法の初等少年院と中等少年院に相当

初等少年院

心身に著しい故障のないおおよそ12歳から16歳が対象

第2種少年院

心身に著しい障害がないおおよそ16歳から23歳を収容

旧法の特別少年院に相当

中等少年院

心身に著しい故障のないおおよそ16歳から20歳が対象

第3種少年院

心身に著しい障害のあるおおよそ12歳から26歳を収容

旧法での医療少年院に相当

特別少年院

心身に著しい故障のない、犯罪的傾向が進んだおおよそ16歳から23歳、16歳未満の少年院収容受刑者が対象

第4種少年院

少年院で刑の執行を受ける受刑者を収容

実際に収容者がいるのかは明らかとされていない

医療少年院

心身に著しい故障があるおおよそ12歳から26歳までが対象

 少年院送致までの流れと少年院以外の更生施設

 少年院送致までの流れと少年院以外の更生施設ここではどういった流れで少年院に送致されるのか解説していきましょう。

少年院送致までの流れ

事件を起こし警察に連行された未成年者、あるいは生活態度に問題があり、非行が著しいなどの理由で児童相談所から家庭裁判所へ送致された未成年者が、家庭裁判所で少年審判(裁判)を受けることになります。

逮捕された場合は、成人と同様に取調べを受け、留置所へ勾留(最大20日間)されますが、その間に検察は事件の記録を家庭裁判所に送り、事件送致を受けた家庭裁判所は観護措置の要否(少年鑑別所で鑑別する必要があるか否か)や、刑事訴追の要否を判断します。

観護措置の要否で“少年鑑別所”へ送致された未成年者は、“鑑別”を受けたのち、少年審判が行われ、少年院送致などの各種判断が下されます。

他方、刑事訴追が相当であると判断された場合は、検察官に再送致(逆送といいます)が行われ、大人と同様、被告人として刑事裁判を受けることとなります。

裁判所|少年事件の処分について

引用元:裁判所|少年事件の処分について

少年鑑別所とは

少年院と混同されがちなのが鑑別所でしょう。

少年鑑別所とは、少年審判で非行少年に対し、的確な更生方法が受けられるように鑑別する施設で、全国に52ヶ所あります。

家庭裁判所の調査官が、非行少年の非行性や性格、原因・動機、更生方法などを医学・心理学・社会学・教育学・人間科学などの観点から面接、心理テスト、行動観察などを行い、鑑別します。

少年鑑別所の収容期間はおおむね4週間以内、最大でも8週間です。

鑑別所はあくまでどの処遇が適当であるか判断を下すため、少年審判前に調査を行う施設であり、更生のために少年審判後に収容される少年院とは異なります。

 

目的

違い

鑑別所

判断を下すために調査を行う

少年審判前に収容される

少年院

更生のために収容される

少年審判後に収容される

また少年院と比べれば私語禁止などの規則を課されることもなく、職員が優しい、食事が美味しい、と過ごしやすく快適であるようです。

少年審判の判断と更生施設

少年審判は、家庭裁判所の調査官の調査結果、鑑別所の鑑別結果にもとづいて、適切な処分(更生方法)が決せられます。処分の内容と更生施設はこちらです。

少年院送致

在宅・社会生活を送りながらの更生が困難と判断

検察官逆送

犯罪の程度や年齢から成人と同様刑事事件と処理すべきと判断

各施設送致

児童相談所送致

非行の程度が重くなく、家庭環境などの環境面の保護の不足、継続的な指導が必要などの場合

児童相談所や里親への委託などがある

児童自立支援施設

非行の程度が重くなく、家庭環境などの環境面の保護の不足、継続的な指導が必要などの場合

生活指導などを要する児童対象に援助を行う

保護者のもとから通わせる場合もある

児童養護施設送致

保護者がいない、あるいは虐待されている、環境上養護を要する児童対象

自立のための援助を行う施設への送致

保護観察処分

保護観察処分

更生施設(少年院など)に収容はしないが、保護観察所の保護観察官や保護司と定期的に面接を行いながら更生する

試験観察処分

最終的な判断を下すに当たり未成年者の生活態度を観察して判断を下すための制度。

在宅で調査官と面接する方法や、農家・お寺などで生活して様子を見る方法がある

不処分決定

保護処分にする必要がない場合などに保護処分を行わない決定

審判不開始決定

審判を行えない、審判を行うに相当でない場合、審判自体を開始しない決定

非行事実がない、少年の所在が不明、事案が微罪、十分に反省しているなどの場合審判が行われない

少年院の問題点|いじめと虐待

少年院の問題点で挙げられるのがいじめや虐待です。少年院にもいじめはあります。

しかし、いじめが発覚すれば懲罰を受けるなど収容期間が延びるため、教官の目を盗んで行われるようです。

入所者だけではなく、2009年には広島少年院で教官による虐待も発覚しています。

約50名の少年に暴行・虐待を行った法務教官5名は特別公務員暴行陵虐罪に問われ有罪判決が下されています。

この事件を契機に少年院の閉鎖性が指摘され、2015年には少年院法が改正されました。

まとめ

近年少年による重大事件の発生を受け、非行少年に対する世間の目は厳しいものがあり、実刑を下すべきだとする声は多く聞かれます。

しかし、家庭環境に恵まれないがために非行に走ってしまう少年などもおり、このような少年にとっては必要な施設なのかもしれません。

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この記事を監修した弁護士
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤 康二
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。第二東京弁護士会所属。

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