弁護士に聞いた、芸能人が高額な離婚慰謝料を支払う本当の理由

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弁護士法人DREAM
松江 仁美
監修記事
弁護士に聞いた、芸能人が高額な離婚慰謝料を支払う本当の理由

「不倫が原因で芸能人が離婚」そんな見出しが頻繁にニュースを賑わす昨今。不倫はよくない――多くの人がそう思いながらも、 “昼顔” な一面を持つ男女は絶えません。

長年連れ添ったおしどり夫婦でさえも、不倫が発覚して離婚するというケースも目立ちます。

そして離婚につきものなのが、慰謝料の話題。芸能人の離婚ニュースであれば「慰謝料は●●億円」といった高額慰謝料も注目を集めます。

過去には大物歌手が50億円の慰謝料を支払った、なんて話も。50億円の慰謝料を支払えるのもすごいのですが、そもそもなぜ芸能人の離婚慰謝料はそこまで高額なのでしょうか。

そこで今回、弁護士法人淡路町ドリームの松江仁美弁護士にお話を伺いました。

弁護士に聞いた、芸能人が高額な離婚慰謝料を支払う本当の理由

弁護士法人淡路町ドリーム

代表弁護士 松江 仁美 (東京弁護士会 所属)

静岡県出身。中央大学法学部卒。

東京の淡路町に事務所を構え、家事事件では離婚・相続問題を積極的に取り組んでいる。離婚を人生の再生と捉え、依頼者の本当の利益になる事をめざしている。

「ペナルティという側面もある」そもそも離婚慰謝料とは何なのか

松江弁護士まず離婚における慰謝料とは何かについてお話すると、慰謝料は「損害賠償」、つまり「精神的苦痛に対する金銭的対価」なんですね。

そして結婚年数や、子どもがいるかどうか、不貞行為の長さ、不貞行為の悪質性など、いろいろな要素から判断して慰謝料の額を決めていきます。

「壊したものの大きさ」「責任の大きさ」で判断していくわけです。

一方で、離婚における慰謝料は「ペナルティ」という側面もあります。年収10億円のような方にとっての100万円と、年収500万円の方にとっての100万円は、重みが違いますよね。

そこで “罰” として成り立たせる上で、慰謝料の金額はその方の年収に影響を受けることは珍しくありません。

ただし、離婚慰謝料は教育費などと違って算定表があるわけではないため、弁護士は経験値からおおよその額を予想することはできますが、実際に金額を決めるのは裁判官。

離婚にいたるまでの様々な要素から総合的に判断されますので、一概に年収が高いからといって離婚慰謝料が高額になるとは限らないのです。

芸能人の高額な離婚慰謝料は、ある意味「宣伝費」であった

様々な要素から総合的に判断されるという離婚慰謝料。一般人の離婚慰謝料の相場はどの程度なのだろうか。

そして芸能人と一般人の慰謝料の違いが発生している理由に、納得の回答が松江弁護士から返ってきた。

松江弁護士一般の方の離婚慰謝料の相場は、ざっくり100〜300万円程度です。300万円いけば「すごいな」という感覚ですね。

判決で離婚慰謝料1,000万円といった金額になるのは、年に1〜2回あるかないか程度。

稀に「夫婦関係を壊した相手に1億円を請求したい」というご相談をいただくこともありますが、裁判になってどんどん金額が下がっていきます。

しかも1億円を請求するとなると印紙代だけで30万円近くかかってしまいますから、仮に財産が1億円以上あるのであれば、慰謝料ではなく「財産分与」という形がありますよ、というお話をさせていただくこともあります。

では、なぜ芸能人が何億円もの離婚慰謝料を支払っているかと言うと、簡単に言えば「高額の慰謝料を支払うことがステータスだから」です。

よく芸能人の離婚慰謝料のニュースを見るかと思いますが、そういったニュースをキッカケに「この人はこれだけの金額を払えるんだ」「これだけの問題解決能力があるんだ」というのを世の中に発信するためなんですね。

ある意味、名前を売るための営業経費、宣伝費として高額な離婚慰謝料を支払っている、と言ってもいいでしょう。

そのため、もちろん彼らは “任意” で高額の慰謝料を支払っています。もし裁判官が慰謝料の金額を決めるのであれば、2桁は低くなります

芸能人は夢を売る職業ですから、「よくぞ、払った」と思ってもらうための慰謝料でもあるんですね。

DVが原因で離婚の場合、慰謝料は1,000万円になることも

芸能人の高額な離婚慰謝料は年収などで決まるのではなく、あくまでも「宣伝費」として支払われていた

――では相場が100〜300万円の中、一般人が高額な離婚慰謝料を支払うケースはどういったシチュエーションなのだろうか。

松江弁護士過去には、年収4億円、同僚と不倫し、さらに不倫相手との間に7歳の子どもがいた、という方で1,500万円の慰謝料で和解していた、というケースがありました。

また離婚の原因が相手からのDV家庭内暴力という場合は、慰謝料が1,000万円というケースは比較的多くあります。

しかし、DVがあったことを立証する必要があるため、録音などの証拠を残しておくことが重要です。

またDV以外にも、「相手の不貞行為で仕事に影響を受けた」といったことを立証できる場合は慰謝料に反映されることもあります。

しかし多くの場合は因果関係が曖昧なことが多く、明らかに被害に直結する場合を除いて、慰謝料は相場の範囲内に収まることが大半です。

興味の対象はどうしても慰謝料の金額にいってしまうが、慰謝料が発生しないケースというのも存在する。

それはどういった状況なのだろうか。

松江弁護士婚姻期間中にすでに夫婦関係が壊れていた場合、たとえば数年別居していたなどで離婚の原因が相手にあることを立証できない場合、慰謝料は発生しないこともあります。

どんなに相手が悪いと思っていても、立証できなければ慰謝料は発生しないんですね。ある意味、人が人を裁くことの限界とも言えるでしょう。

また、夫の不貞行為で離婚、女性側が慰謝料をもらうというケースがほとんどです。

そのため、たとえ慰謝料をもらったところで、その女性が専業主婦であった場合は「稼ぎ方がわからない」という状況に陥りがち。

特に一度も働かずに結婚してしまい離婚した女性は、ひとりで生きていくスキルが乏しい状況にあります。

“捨てられ損” にならないためにも、女性の就労教育、男女の賃金格差などは社会で解決すべき問題ですね。

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松江 仁美
静岡県出身。中央大学法学部卒。東京の淡路町に事務所を構え、家事事件では離婚・相続問題を積極的に取り組んでいる。離婚を人生の再生と捉え、依頼者の本当の利益になる事をめざしている。東京弁護士会所属。

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