中絶の慰謝料は難しい?認められやすい4つのケース

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中絶の慰謝料は難しい?認められやすい4つのケース

中絶に至るまでの経緯はさまざまですが、中絶手術による母体への精神的・身体的負担は図りしれません。男性が誠実な対応をしてくれなければ、せめても慰謝料を請求したいと思うのは当然でしょう。

また、自分の娘が望まない妊娠をしてしまった場合、交際相手もしくはその親に何らかの責任を追及したいと思っているのではないでしょうか。

合意で行われた性行為によって妊娠した場合、原則として慰謝料請求できる可能性は低いでしょう。あくまで両方に責任があるとされ、請求できるのはせいぜい中絶費用の半額程度ではないでしょうか。

しかし、妊娠後の男性側の対応や妊娠に至る状況によっては、慰謝料を請求できる可能性があります

この記事では、中絶に至った場合に慰謝料や責任を請求できるかについて紹介します。

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交際相手に中絶慰謝料は請求できるのか?

交際相手に中絶慰謝料は請求できるのか?中絶による心身への負担は図りきれません。しかし、慰謝料請求できるのはあくまで「不法行為(他人の利益や権利を侵害したこと)により精神的苦痛を受けた場合」もしくは、相手が支払いに合意した場合のみです。

冒頭でも紹介した通り、合意による性交渉で妊娠に至った場合、二人の合意による行為の結果ですので、原則として慰謝料請求は難しいでしょう

ただし、次で紹介するようなケースでは、慰謝料請求が認められる可能性があります。

中絶により慰謝料が認められる可能性が高いケース

合意による性交渉で妊娠に至った場合、「中絶」のみを理由に慰謝料請求が認めらえるケースは多くはないと思われますが、「中絶」に至った背景を考慮し慰謝料が認められるケースはあります

以下では、慰謝料が認められる可能性が高いと思われるケースを紹介します。

①強姦などの性的犯罪により妊娠させられた

強姦などの性的犯罪により妊娠・中絶に至った場合、「強姦」に対し慰謝料が請求できます。

ただし、中絶した事実は、強姦の様態が悪質である、精神的苦痛が大きいと判断され、慰謝料が増額する要因になるでしょう。民事訴訟による強姦の慰謝料は100~300万円が相場と考えられます。

また、強姦などの犯罪の被害に遭った場合は、強制性交等罪(旧 強姦罪)などの刑事責任を追及することも可能です

(強制性交等)

第百七十七条  十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

引用元:刑法第177条

強姦により250万円の慰謝料が認められた判例

職場の男性から2年にわたり性的嫌がらせや強姦被害に遭うなどして、PTSDによる入院を余儀なくされたことに対し、250万円の慰謝料が認められました。(東京地判平成15年9月30日・Westlaw Japan文献番号2003WLJPCA09300005)

②妊娠報告後の男性の心変わり(婚約破棄・一方的な別れ)により中絶を余儀なくされた

婚約者へ妊娠を報告した後に、一方的に婚約破棄され、中絶を余儀なくされた場合、不当な婚約破棄に対し慰謝料請求が可能です

また、婚約が成立していなくても、無責任な態度や一方的な理由で別れを告げられた場合、慰謝料が認められる可能性があります。

妊娠中の婚約破棄により120万円の慰謝料が認定された判例

婚約者の子供を妊娠中の一方的な婚約破棄に対し、慰謝料請求した事件です。

裁判所の判断として、

  • 被告は婚約破棄により中絶する可能性を十分理解していたものの、一方的な理由で婚約破棄を行った
  • 妊娠しているのが自分の子供か疑わしいとして、DNA鑑定で証明できなければ中絶同意書を作成しないといい、原告に強い精神的苦痛を与えた
  • 身重の身で産婦人科を探し回る等の過重な負担を負わせた
  • 他方で、婚約から破棄までが長くとも5ヶ月と短期間であった

これらを考慮し120万円の慰謝料が認められました。(東京地判平成21年6月22日Westlaw Japan文献番号2009WLJPCA06228003)

交際相手の無責任な対応により中絶に至ったことに対し160万円の慰謝料が認められた判例

原告が妊娠する可能性を理解しつつも、避妊せず性交渉を行い、妊娠発覚後に責任は取らないなど被告の無責任な対応により中絶を余儀なくされ、強い精神的苦痛を受けたことに対し、慰謝料を請求した事件です。

裁判所の判断として、

  • 被告は、原告の妊娠により生じる苦痛や負担を軽減、もしくは解消に努める義務に違反している
  • 被告から中絶を求められた後に、原告が自殺を図ったこと
  • 被告の不誠実な対応により、原告が多大な精神的苦痛を被ったこと

これらを考慮し、160万円の慰謝料が認められました。(東京地判平成27年7月31日Westlaw Japan文献番号2015WLJPCA07318020)

③中絶の強要により中絶を余儀なくされた

暴言や暴力、脅迫などにより中絶を強要され、中絶に至った場合、慰謝料が可能性あります。

また、暴力や脅迫の様態によっては、民事責任だけではなく刑事責任を追及できる余地が十分にあるでしょう

中絶の強要により120万円の慰謝料が認められた判例

妊娠した原告に対し、被告が結婚や認知を謝絶した上で、虚偽の発言や知人とともに中絶を要求したことが、不法行為に該当すると認められ、慰謝料120万円が認められた判例です(東京地判令和元年5月30日 Westlaw Japan文献番号2019WLJPCA05308028)

④男性側が妊娠の責任を回避し話し合いを拒否・放棄した

②妊娠報告後の男性の心変わり(婚約破棄・一方的な別れ)により中絶を余儀なくされた」で紹介した裁判例(東京地判平成27年7月31日Westlaw Japan文献番号2015WLJPCA07318020)によれば、男性には「妊娠により女性が受ける、苦痛や負担を軽減、もしくは解消に努める義務」があり、これに違反すると、女性側が有する法律上の利益を違法に害するとして、不法行為にあたる、と考えられます。

妊娠発覚後に出産に関する話し合いをすることや、中絶費用の支払いをすることなどが、女性の「苦痛や負担を軽減、もしくは解消に努める」行為だと考えられます。

そのため、妊娠発覚後に話し合いを拒否し、「おまえの好きなようにすればいい」などと放置されたり、中絶費用の支払いを一方的に拒否されたような場合には、慰謝料が認められる可能性があります。

未成年の子供による妊娠・中絶による交際相手へ請求できる責任とは

未成年の子供による妊娠・中絶による交際相手へ請求できる責任とは未成年の娘が妊娠してしまった場合、交際相手にどのような責任を請求できるのでしょうか。

交際相手が未成年・成人だった場合の責任について紹介します。

交際相手が未成年だった場合

双方が合意のうえでの性交渉であった場合、妊娠させたこと自体については、基本的には不法行為は成立しないと思われます

もっとも、妊娠発覚後に、交際相手が中絶を強要したりするような事情があれば、そのことを理由に不法行為が成立する可能性も否定できません。

ただし、この場合でも、交際相手が学生でほぼ無収入であるような場合には、請求したとしても回収可能性は低いと思われます

なお、交際相手の未成年者の親に監督義務違反を理由とする不法行為が成立する場合もあるかもしれませんが、ケースバイケースでしょう。

いずれにせよ、未成年者同士で解決するのは困難な問題ですので、双方の親を交えて話し合うことが現実的かと思われます

交際相手が成人していた場合

双方が合意のうえでの性交渉であった場合、妊娠させたこと自体について基本的に不法行為は成立しないであろうことは、交際相手が成人していた場合も同様です

ただし、交際相手には、各都道府県が定める青少年健全育成条例違反として、刑事責任が問われる可能性があります

また、性交渉に対し、金銭の授受があった場合は児童買春に該当する可能性もあります

実際にあった判例では、成人男性がネットで知り合った18歳未満の少女と性交渉を行い、妊娠・中絶させたとして慰謝料を請求された事件がありました。

裁判所は

被告は関係性を考慮すれば出産して養育できないことは承知しており、避妊する責任は成人男性である被告にあったもののこれを怠り、妊娠・中絶させた事実は不法行為に当たる」と判断し慰謝料150万円を認めました。(東京地判平成25年12月19日 Westlaw Japan文献番号2013WLJPCA12198014)

ただし、必ずしも未成年の妊娠・中絶に対し、慰謝料請求できるわけではありませんので、請求前に弁護士へ相談しましょう。

慰謝料以外で交際相手へ請求できる費用一覧

慰謝料が認められない場合でも、中絶費用の支払いは認められてしかるべきです。

妊娠・中絶は二人の行為の結果によるものなので、せめて中絶費用の半額は支払ってもらうべきでしょう

話し合いによってどのくらい負担するか決めていきましょう。

中絶の手術代以外にも、以下のような費用を請求することが考えられます。

  1. 妊娠中の診療費
  2. 診察・中絶にかかった交通費
  3. 休業損害(妊娠により会社を休んだ場合)
  4. 中絶によって後遺障害が残った場合は、症状に応じた慰謝料・治療費・逸失利益など

これらを請求するには、領収書や診断書、休業証明などの証拠を用意できればよいでしょう。実際に獲得できるかは、証拠の有無や相手の経済状況にもよりますが、これらの費用の請求も、検討の余地はあるかと思われます。

交際相手に中絶慰謝料や中絶費用を請求する方法

慰謝料や中絶費用を請求する方法は3つあります。

  1. 示談交渉によって請求する
  2. 民事調停によって請求する
  3. 少額訴訟や民事裁判を利用して請求する

慰謝料や中絶費用を請求する方法について、それぞれ詳しく見て行きましょう。

①示談交渉

慰謝料や中絶費用を請求するには、まず当事者間でよく話し合いましょう。相手に直接連絡してもいいですし、示談したい旨を文書で郵送することも可能です。

基本的には、直接電話やメール、内容証明郵便の送付により示談交渉(話し合い)の申し込みを行うのが基本的な流れです。

示談交渉は裁判所の手続きではないため、相手が合意すればすぐにでも話がまとまる、大きな費用は掛からないなどのメリットがあります。

ただし、話がこじれてしまい、最終的に「言った」「言わない」という水掛け論に発展したり、相手が全く応じなかったりなどのリスクがあるため、注意が必要です。

相手によっては言い逃れや連絡無視などを行う可能性もあるため、弁護士に同席や介入をお願いした方がスムーズに進みます

相手の住所や氏名など個人情報がわからない場合

相手の住所や連絡先などの情報が一切わからない場合、弁護士へ相談しても請求できない可能性が高いと思われます

氏名を知っており、「住所・実家の住所」「連絡のつく連絡先」「勤務先」のいずれかを知っている場合は、相手と連絡がとれ、請求できる可能性もあります。

しかし、請求しても応じない可能性はあるので、どのように請求するのが良いかは弁護士に相談してみてください。

②民事調停

相手方が示談交渉に応じない場合、民事調停を申し立てることが考えられます。

民事調停は裁判所での手続きのひとつで、話し合いによる解決を目的とした手続きです。裁判所で、調停委員を介して慰謝料や中絶費用の支払い等について話し合い、合意できる条件を探します

民事調停では、調停委員が間に立って話し合いをまとめてくれるので、当事者だけの話し合いよりもこじれにくく、スムーズに進みます

民事調停はあくまで話し合いの性質が強い手続きなので、双方の主張が食い違う場合や意見がまとまらない場合は、手続きが長期化し、調停が不成立となる可能性があります。

③民事訴訟(少額訴訟)

交渉や調停でまとまらないような場合には、訴訟を提起する、という方法もあります。

なお、請求する金額が小さい場合には、「少額訴訟」という手続があります。

少額訴訟は、原則1回の期日で判決まで終わらせる裁判です。60万円以下の請求を行うケースに使うことができます

訴訟では、当事者同士の主張や証拠を出し合うことになります。

証拠や主張を弁護士などと整理した上で臨むことが重要です。少額訴訟の場合は原則1期日で判決まで終わらせるため、証人や証拠も1期日で調べられる範囲に限られます。

金額や事情によって適切な裁判形態が変わってくるため、弁護士とよく相談することをおすすめします。

まとめ

妊娠・中絶に至った経緯によっては、相手への慰謝料が認められることもあります。

尊い命を授かったにもかかわらず、自らの選択により新しい命を手放さなければならないことは大変辛いことだと思います。

相手を恨んだり、ご自身を責めたりするお気持ちはわかります。

しかし、たくさん後悔をするよりも、この出来事とどう向き合っていくのか考えることが大切かと思います。ご自身の納得いく答えが見つかるようによく考えてください。

慰謝料や費用を請求し、少しでも相手にもこの事実を背負ってほしい人は、証拠を用意し弁護士にご相談ください。

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